確定申告・資金繰り

KSK2とは?2026年9月導入で個人事業主・無申告はどう変わる

2026.07.06

目次

ATOファクタリング

この記事の要点

  • KSK2は2026年9月24日に全面稼働する国税庁の基幹システム刷新で、データ統合の基盤
  • 国税・地方税・金融機関照会などの情報が統合され、「住民税は記録あり・所得税は無申告」のような矛盾が機械的に見えやすくなる
  • 調査対象の最終判断は今までどおり調査官(人間)が行い、無申告者全員に一斉に調査が入るわけではない
  • 稼働前の今なら、調査の連絡を受ける前の自主申告(無申告加算税5%)という最も軽いルートを落ち着いて選べる

「KSK2という国税庁の新システムで、税務調査が大きく変わるらしい」——2026年9月の稼働を前に、SNSやニュースでこうした情報を目にした個人事業主・フリーランスの方が増えています。なかには「AIが全員を監視する」といった誇張された表現も見られ、確定申告をしていない方や記帳が不十分な方ほど、実態がわからないまま不安だけが膨らみがちです。

本記事では、KSK2とは何か、何が実際に変わるのか、そして無申告や記帳が不十分な個人事業主にどのような影響がありうるのかを、国税庁の公表資料に基づいて整理します。誇張も楽観もせず、「正確に知って、今できる一番条件の良い動き方を選ぶ」ための材料をご案内します。

1. KSK2とは何か|30秒でわかる要約

まず結論から、KSK2の正体を要約します。細部より先に全体像を掴むことで、誇張された情報に振り回されずに済みます。

1-1. 国税庁の基幹システムの全面刷新

KSK2は、国税庁が全国の国税局・税務署で使っている基幹システム「国税総合管理システム(KSK)」の次世代版です。現行のKSKは1990年代から使われてきた仕組みで、税目ごとにデータベースが分かれた構造でした。KSK2ではこれを刷新し、2026年9月24日に全面移行することが公表されています(国税庁 e-Tax「国税システムの更改に伴う仕様公開」、参照日: 2026-07-06)。要点は次の3つです。

  • 正体: 調査を強化するための「新兵器」ではなく、古くなった基幹システムの刷新。データを一元的に扱える基盤への置き換え
  • 時期: 2026年9月24日に全面移行。e-Taxの様式や仕様もこれに合わせて更新される
  • 影響: 税目・機関ごとに分かれていた情報が統合され、突き合わせ(突合)が機械的にできるようになる

1-2. 「AI税務調査システム」ではない、という前提

SNSなどでは「KSK2=AIが自動で調査対象を決めるシステム」のように語られることがありますが、これは正確ではありません。調査対象の選定にデータ分析やAIを活用する取り組みは、KSK2とは別に以前から進められてきたものです。KSK2自体はあくまでデータ処理の基盤であり、どこを調査するかの最終判断はこれまでどおり調査官(人間)が行います。この区別を押さえておくと、「全員が監視される」といった誇張と、「何も変わらない」という楽観の、どちらにも偏らずに実態を見ることができます。

2. 何が変わるのか|データ統合の中身

KSK2で実際に変わるのは「税務署が持っている情報の使い方」です。どんなデータがつながるのかを具体的に見ていきます。

2-1. 税目を横断したデータの一元管理

現行システムでは、所得税・消費税・法人税などの情報が税目ごとに管理され、横断的に突き合わせるには人手がかかっていました。KSK2ではこれらが統合され、ひとりの納税者に関する情報を税目をまたいで一元的に扱えるようになります。国税庁は以前から「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」として、申告データや資料情報の分析活用を進める方針を公表しており、KSK2はその土台にあたります。

2-2. 外部データとの連携が広がる

統合されるのは国税の内部データだけではありません。公表されている方向性を整理すると、次のような情報の活用が見込まれています。

  • 地方税務当局との情報連携: 住民税の申告・給与報告など、市区町村側が持つ所得情報
  • 金融機関へのオンライン照会: 従来は書面でやり取りしていた口座情報の照会が効率化
  • インボイス・支払調書などの取引記録: 支払う側の申告から、受け取った側の売上が把握できる資料情報
  • 資産に関する情報: 不動産や自動車など、生活水準・資産状況と申告所得の突き合わせに使われうる情報

ひとつひとつは以前から存在した情報です。変わるのは、それらが「つながった状態で、機械的に突き合わせられる」ようになる点です。

3. 無申告・記帳が不十分な場合に「見える」ようになるもの

それでは、確定申告をしていない、あるいは記帳が不十分な個人事業主にとって、データ統合は何を意味するのでしょうか。典型的な3つのパターンで整理します。

3-1. パターン1: 住民税に記録があり、所得税の申告がない

アルバイトや以前の勤め先の給与報告、あるいは住民税だけの申告など、市区町村側に何らかの所得記録がある一方で、所得税の確定申告がない——このずれは、国税と地方税のデータが統合された環境では、抽出条件を設定すれば機械的に一覧化できる類のものです。これまで「別々の機関が別々に持っていたから照合されにくかった」情報のずれが、そのまま浮かび上がる形になります。

3-2. パターン2: 取引先側の記録だけが存在する売上

取引先が支払調書を提出していたり、インボイス制度のもとで支払いを経費計上していたりすれば、あなたが受け取った売上は税務署側の資料情報として既に存在しています。売上側の記録だけが揃い、本人の申告が無い状態は、統合データの上では「片側だけが空欄」の形で目立ちます。現金取引が中心の場合でも、入金に使っている銀行口座の情報は照会の対象になりえます。

3-3. パターン3: 申告所得と資産・生活水準の開き

申告所得が低い(または申告がない)にもかかわらず、車両や不動産などの資産情報が存在する場合、その開きも突合の対象になりえます。これも従来から調査の端緒とされてきた観点ですが、データが統合されることで、人手をかけずに抽出しやすくなる方向に働きます。

3-4. ただし「見える」ことと「調査される」ことは別

繰り返しになりますが、これらが「見える」ようになることと、実際に調査や連絡が来ることは別の段階です。調査リソースには限りがあり、対象の選定は金額規模や情報の確度を踏まえて調査官が判断します。変化の本質は、「そもそも把握されていない」という状態が成り立ちにくくなり、時間の経過が味方でなくなっていくことにあります。

4. 影響を受けやすいのはどんな状況か(一般論)

特定の誰かが対象になると断定することはできませんが、一般論として、データ統合の影響を受けやすい状況には共通のパターンがあります。ご自身の状況を落ち着いて棚卸しするための観点として整理します。

4-1. 無申告の期間が続いている

事業所得があるのに確定申告をしていない期間が複数年に及んでいる場合、前章のパターン1・2に該当する記録が年数分蓄積していることになります。期間が長いほど、延滞税や無申告加算税の計算対象も大きくなるため、影響の受けやすさと動いたときの負担軽減の効果が、どちらも大きい状況といえます。

4-2. 売上の一部だけを申告している・記帳が実態と離れている

申告はしているものの、現金分の売上が記帳から漏れている、経費の根拠資料が残っていないなど、記録が実態と離れているケースです。取引先側の資料情報やインボイスの記録と本人の申告額が突き合わせられる環境では、「申告していない」より「申告額が合わない」方が先に見えることもあります。日々の記録を仕組みで残すこと(レシート撮影・口座連携など)が、意図しないずれを防ぐ土台になります。

4-3. 周囲に調査事例がなく、危機感を持ちにくい環境にいる

現金商売の小規模事業者は、これまで調査の優先度が相対的に低く、「周りで調査に入られた人がいない」という経験則が成り立ちやすい環境でした。ただ、その経験則は「照合に人手がかかっていた時代」の産物でもあります。データ統合は、まさにこの層の把握コストを下げる方向に働くため、過去の経験則を今後もそのまま当てはめるのは前提が変わっている、というのが客観的な整理です。

5. 稼働前の今できること|最も軽いルートの選び方

ここまでの内容は「放置の前提が変わる」という話でした。重要なのは、今はまだ、最も条件の良い選択肢を自分のタイミングで選べる段階だということです。

5-1. 自主的な申告と、指摘されてからの申告では負担が大きく違う

期限後に申告する場合の無申告加算税は、どちらから動くかで税率が変わります(国税庁タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」、参照日: 2026-07-06)。

申告のタイミング 無申告加算税の税率
調査の連絡を受けるに自主的に申告 本税の5%
調査を受けてから申告 本税の15%(50万円超の部分20%、300万円超の部分30%)

同じ過去分を精算するのでも、上乗せの負担が3倍から6倍変わる構造です。データ統合で把握されやすくなるほど、「自分から動ける期間」の価値は相対的に上がっていきます。なお、納付が難しい場合も、税務署への相談で分割納付の仕組みを利用できる場合があります。

5-2. 記録は「今日から」自動で溜まる仕組みを作る

過去の記録がなくても、まず今日からの記録を残し始めることはすぐにできます。会計ソフトのアプリでレシートを撮影すれば日付・金額が自動で読み取られ、銀行口座やカードを連携すれば入出金も自動で取り込まれます。記録が仕組みで溜まる状態を作っておくことは、申告の準備であると同時に、毎月いくら手元に残っているかという資金繰りの見える化にも直結します。

5-3. 複数年分・判断に迷う場合は税理士へ

未申告が複数年に及ぶ場合や、遡る年数・経費の立証など個別の判断が必要な場合は、税理士に相談するのが結果的に最短です。過去分の期限後申告は税理士にとって定型的な業務であり、手元の記録が不完全な段階で相談しても問題ありません。KSK2の稼働前後は同様の相談が増えることも予想されるため、早めに動くほど段取りに余裕が生まれます。

6. 自分の場合の損得を概算してみる

「申告したら、いくら取られるのか」——この不安が動き出しを止める最大の要因ですが、実は利益が少ない帯では逆の結果になることがあります。

6-1. 利益が少ないほど「申告した方が支出が減る」場合がある

国民健康保険の均等割には、所得に応じた法定の軽減制度(7割・5割・2割)があります。この軽減は申告によって所得が確認できる世帯にしか適用されないため、未申告のままだと、実際の所得がどれだけ少なくても保険料は満額のまま請求され続けます。単身・青色申告特別控除65万円・東京23区の令和7年度料率というモデルケースの概算では、利益がおおむね130万円程度までの帯は、申告で納める税金より申告で下がる国保の方が大きく、申告した方が年間の支出が少なくなる目安になります。

6-2. 30秒でできる簡易チェックから

ご自身の年間売上と経費のざっくりした割合を入れるだけで、税金・国保・軽減額の目安を確認できる簡易チェックツールを用意しています。まず概算を眺めて全体像を掴んでから、正確な金額や過去分の扱いは税理士に相談する、という順番が最も負担の少ない進め方です。

7. よくある質問(FAQ)

KSK2について寄せられることの多い疑問を一般論として整理します。個別の判断が必要な内容は税理士にご相談ください。

7-1. Q. KSK2はいつから動きますか?

国税庁の公表資料では、2026年9月24日に現行システムからの全面移行が予定されています。移行に合わせてe-Taxの仕様や申告書の様式も更新されます。稼働日をもって何かが一斉に起きるというより、稼働以降、統合されたデータの活用が段階的に進んでいくと考えるのが実態に近い理解です。

7-2. Q. 過去の分もさかのぼって見られるのですか?

税務署が過去に遡って課税できる期間(除斥期間)は原則5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です(国税通則法70条)。この枠組み自体はKSK2で変わりません。変わるのは、期間内の情報が突き合わせやすくなることです。支払調書や住民税の記録など、過去分の資料情報はすでに存在しているため、「稼働前の分は見えない」ということにはなりません。

7-3. Q. きちんと申告していれば関係ありませんか?

申告内容が実態と合っていれば、KSK2を特別に意識する必要はありません。むしろ突合が機械化されることで、誤りのない申告者への無用な接触は減る方向が期待されています。注意したいのは「申告はしているが記帳が実態とずれている」場合で、取引先側の記録との不一致は無申告と同様に浮かび上がりやすくなります。

7-4. Q. マイナンバーとはどういう関係ですか?

マイナンバーは、所得や口座の情報を名寄せする際の共通キーとして機能します。支払調書や金融機関の手続きでマイナンバーの記載が広がってきたことで、同一人物の情報を紐づける精度は年々上がっており、KSK2のデータ統合はその紐づいた情報を活用する基盤にあたります。両者は別の制度ですが、実務上は補完関係にあります。

7-5. Q. 9月までに申告しないと手遅れになりますか?

いいえ。2026年9月24日は「締切」ではなく、稼働後に申告や相談ができなくなるわけでもありません。調査の連絡を受ける前であれば、稼働後でも自主的な期限後申告の加算税軽減(5%)は同じように適用されます。期限に追われて慌てる必要はない一方、把握されやすくなる方向への変化は進んでいくため、「いつかやる」を「日程を決めて進める」に変えるきっかけとして捉えるのが建設的です。

KSK2の稼働は、無申告の状態を続けるコストが上がっていくことを意味しますが、裏を返せば、稼働前の今は最も条件の良いタイミングで動けるということでもあります。ご自身の売上規模で「申告すると支出がいくら増えるのか・減るのか」の目安を知りたい方は、簡易チェックで概算を確認するところから始めてみてください。過去分の整理や個別の判断が必要な場合は、税理士への相談が近道です。

本記事はKSK2および関連制度に関する一般的な解説であり、個別の税務判断・申告要否の判断ではありません。制度の詳細は国税庁の公表資料を、個別の取り扱いは税理士にご確認ください。

監修: (編集長)

発行元: ATO株式会社

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