資金調達

新規開業創業後の資金調達で銀行融資以外の方法とは

2024.11.08

この記事の要点

  1. 新規開業後の資金調達では、銀行融資以外にエクイティファイナンスやデットファイナンスなど多様な選択肢があります。
  2. エクイティファイナンスでは株式発行による増資やVC出資、デットファイナンスでは社債発行やノンバンク借入などが可能です。
  3. 効果的な資金調達には、事業計画書の作成や複数の調達方法の組み合わせ、成長段階に応じた選択が重要です。
ATOファクタリング

1. 開業後の資金調達の重要性

1-1. 新規開業・創業後の資金ニーズ

新規開業や創業後の企業にとって、適切な資金調達は事業の成功と持続的な成長に不可欠です。初期段階の事業は、運転資金の確保や設備投資、人材採用など、多岐にわたる資金ニーズに直面します。

事業の立ち上げ時には、予想外の費用が発生することも少なくありません。市場環境の変化や競合他社の動向に迅速に対応するためにも、十分な資金の確保が求められます

また、事業規模の拡大に伴い、新たな商品開発やマーケティング活動の強化が必要となることがあります。これらの資金需要に適切に対応できるか否かが、企業の成長速度や市場での競争力に大きな影響を与えます。

1-2. 銀行融資の限界と代替手段の必要性

多くの新規開業企業や創業間もない事業者にとって、銀行融資の獲得は容易ではありません。金融機関は、融資の審査において財務状況や事業実績、担保の有無などを重視するからです。

新規事業の場合、過去の業績データが不足しているため、金融機関の審査基準を満たすことが困難です。また、個人保証や担保の提供を求められることも多く、経営者個人のリスクが高まる可能性があります。

このような状況下では、銀行融資以外の多様な資金調達手段を検討する必要があります。エクイティファイナンスやクラウドファンディング、政府系金融機関の活用など、新規事業に適した調達方法を選択することが重要となります。

2. エクイティファイナンス:株式を活用した資金調達

2-1. 増資(第三者割当増資・公募増資)

増資は、新たに株式を発行して資金を調達する方法です。第三者割当増資は特定の投資家を対象とし、公募増資は不特定多数の投資家から広く資金を募ります。

第三者割当増資では、事業に理解のある投資家から資金を調達できるメリットがあります。一方、公募増資は大規模な資金調達が可能ですが、上場企業でなければ実施が困難です。

増資によって調達した資金は返済義務がなく、長期的な事業拡大に活用できます。ただし、株式の発行は既存株主の持分比率の低下を招く可能性があるため、慎重な検討が必要です。

2-2. ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

ベンチャーキャピタルは、高い成長性が期待できる未上場企業に投資する投資会社です。VCからの出資を受けることで、多額の資金調達が可能となります。

VCは単なる資金提供者ではなく、経営支援やネットワークの提供など、事業成長をサポートする役割も果たします。高度な専門知識や業界経験を持つVCのアドバイスは、事業展開に大きな価値をもたらすことがあります。

ただし、VCは高いリターンを求めるため、急成長を志向する企業でなければ投資の対象とならない場合があります。また、経営への関与度が高まる可能性もあるため、企業の方向性とVCの方針の一致が重要です。

2-3. エンジェル投資家からの資金調達

エンジェル投資家は、個人の資産を活用して新興企業に投資する個人投資家です。創業初期段階の企業にとって、重要な資金源となる可能性があります。

エンジェル投資家は、自身の経験や人脈を活かして経営支援を行うことも多く、事業の成長に寄与します。VCと比較して小規模な投資が中心となるため、創業間もない企業でも資金調達の機会が得やすいという特徴があります。

一方で、個人投資家の判断に基づく投資であるため、投資の継続性や安定性には不確実性が伴います。また、投資家の意向が経営に反映される可能性もあるため、慎重な投資家選びが求められます。

2-4. クラウドファンディング(投資型)

投資型クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の投資家から小口の資金を募る方法です。従来の資金調達方法と比較して、幅広い層からの支援を得られる可能性があります。

この方法の特徴は、事業内容や製品・サービスに共感した投資家から直接資金を調達できることです。同時に、商品やサービスの市場性を検証する機会にもなり、マーケティング効果も期待できます。

ただし、目標金額に達しなければ資金調達が成立しない「All or Nothing」方式が一般的です。また、多数の投資家との関係維持やコミュニケーションに労力を要する点にも留意が必要です。

3. デットファイナンス:負債による資金調達

3-1. 社債(私募債・公募債)の発行

社債は、企業が債券を発行することで資金を調達する方法です。私募債は特定の投資家向けに発行され、公募債は不特定多数の投資家を対象としています。

私募債は、比較的小規模な資金調達に適しており、手続きが簡素化されているのが特徴です。一方、公募債は大規模な資金調達が可能ですが、厳格な審査と手続きが必要となります。

社債の発行には、信用力や財務状況の健全性が求められます。新規開業企業にとっては、私募債の発行から始めることが現実的な選択肢となるでしょう。

3-2. ノンバンクからの借入

ノンバンクは、銀行以外の金融機関を指し、消費者金融会社やリース会社などが含まれます。銀行と比較して審査基準が柔軟であることが特徴的です。

ノンバンクからの借入は、銀行融資を受けにくい新規開業企業にとって有効な選択肢となり得ます。迅速な審査と融資実行が可能な場合が多く、急な資金需要にも対応できる利点があります。

一方で、金利が銀行融資よりも高くなる傾向があります。返済計画を慎重に検討し、事業の収益性と照らし合わせて判断することが重要となります。

3-3. ファクタリング(売掛金の早期現金化)

ファクタリングは、企業が保有する売掛金を金融機関や専門業者に売却することで、早期に資金化する方法です。売掛金の回収を待たずに現金を得られるため、資金繰りの改善に効果的です。

この方法の利点は、財務状況や担保の有無にかかわらず利用できることです。事業の成長に伴い売上が増加している企業にとって、有効な資金調達手段となり得ます。

ただし、手数料や割引料が発生するため、コストを十分に考慮する必要があります。また、取引先との関係性にも配慮が求められるでしょう。

3-4. 政府系金融機関からの融資

政府系金融機関は、中小企業や新規事業者向けの融資制度を提供しています。日本政策金融公庫などがこれに該当し、民間金融機関と比べて融資条件が優遇されている場合があります。

これらの機関は、創業支援や新事業育成を目的としているため、新規開業企業にも融資の機会があります。長期・固定金利での借入が可能なケースも多く、安定的な資金計画を立てやすいという利点があります。

ただし、審査基準や必要書類は民間金融機関と同様に厳格です。事業計画書の作成や財務projectionの準備など、十分な準備が求められます。

4. その他の資金調達方法

4-1. 補助金・助成金の活用

補助金や助成金は、返済不要の資金として新規開業企業にとって魅力的な選択肢です。国や地方自治体、各種団体が提供するプログラムが存在し、産業振興や技術革新の促進を目的としています。

これらの制度は、特定の事業分野や目的に対して設けられていることが多く、自社の事業内容との適合性を慎重に検討する必要があります。申請には詳細な事業計画や予算書の提出が求められるため、綿密な準備が不可欠です。

採択されれば大きな資金的支援となりますが、競争率が高いケースも多いことに留意が必要です。また、使途に制限がある場合もあるため、条件を十分に確認することが重要です。

4-2. リースバック(固定資産の活用)

リースバックは、企業が所有する固定資産をリース会社に売却し、その後同じ資産を借り受ける方法です。設備や不動産を保有している企業にとって、資金調達の選択肢となり得ます。

この方法のメリットは、資産を手放すことなく必要な資金を調達できることです。バランスシート上の資産が負債に変わるため、財務比率の改善にも寄与する可能性があります。

ただし、長期的にはリース料の支払いが必要となるため、キャッシュフローへの影響を慎重に検討する必要があります。また、資産の評価額によって調達可能な金額が制限されることにも留意が必要です。

4-3. プロジェクトファイナンス

プロジェクトファイナンスは、特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを返済原資とする資金調達方法です。プロジェクトの事業性に基づいて融資が行われるため、企業の信用力に依存しない点が特徴です。

新規事業や大型プロジェクトの資金調達に適しており、リスクを分散させることができます。また、プロジェクトの収益性が高ければ、大規模な資金調達が可能となります。

一方で、綿密なプロジェクト計画と収益予測が求められ、審査プロセスも複雑になる傾向があります。さらに、プロジェクトの失敗時のリスクも考慮する必要があります。

4-4. 事業譲渡・M&A

事業譲渡やM&A(合併・買収)も、資金調達の一手段として考えられます。自社の一部事業や子会社を譲渡することで資金を得たり、他社との合併や買収を通じて事業基盤を強化したりすることが可能です。

この方法は、単なる資金調達にとどまらず、事業の再構築や成長戦略の一環として位置付けられることが多いです。シナジー効果や経営資源の獲得など、多面的なメリットが期待できます。

ただし、事業譲渡やM&Aは複雑なプロセスを伴い、法務や税務の専門知識が必要となります。また、企業文化の融合や人材の維持など、実行後の課題にも十分な注意を払う必要があります。

5. 各資金調達方法の比較

5-1. 調達可能額と期間

資金調達方法ごとに、調達可能な金額と期間は大きく異なります。エクイティファイナンスは、大規模な資金調達が可能で、期間の制限がありません。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資は、数千万円から数億円規模の調達が一般的です。

デットファイナンスの場合、社債発行は比較的大きな金額を長期間で調達できます。一方、ノンバンクからの借入やファクタリングは、中小規模の資金を短期間で調達する傾向があります。

政府系金融機関からの融資は、新規開業企業向けに数百万円から数千万円程度の長期融資を提供しています。補助金や助成金は、数十万円から数千万円規模で、使途に応じた期間が設定されています。

5-2. 金利・コスト比較

各調達方法のコストは、金利や手数料、株式の希薄化など、様々な形で現れます。エクイティファイナンスは直接的な金利負担はありませんが、株式の希薄化や配当の可能性を考慮する必要があります。

デットファイナンスの中では、政府系金融機関の融資が比較的低金利です。一方、ノンバンクからの借入は金利が高くなる傾向があります。ファクタリングは手数料が発生し、実質的な金利負担は高くなる可能性があります。

社債発行のコストは、企業の信用力によって大きく変動します。補助金や助成金は返済不要のため、コストの面では最も有利ですが、獲得の難易度が高い点に留意が必要です。

5-3. 経営への影響(株主・返済義務など)

資金調達方法によって、経営への影響度は異なります。エクイティファイナンスは返済義務がない反面、新たな株主の意向を考慮する必要が生じます。特にベンチャーキャピタルからの出資は、経営への関与が強くなる傾向があります。

デットファイナンスは返済義務が生じるため、キャッシュフロー管理が重要になります。社債発行やノンバンクからの借入は、財務レバレッジを高める効果がありますが、過度の負債は財務リスクを増大させる可能性があります。

ファクタリングは短期的な資金繰り改善に効果的ですが、取引先との関係に影響を与える可能性があります。補助金や助成金は経営の自由度を保ちやすいものの、使途に制限がある場合があります。

5-4. 審査・手続きの難易度

新規開業企業にとって、審査や手続きの難易度は重要な考慮点です。銀行融資と比較すると、エクイティファイナンスやノンバンクからの借入は審査基準が柔軟な傾向にありますが、投資家や貸し手の判断基準は様々です。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達は、事業の成長性や経営者の資質が重視されます。一方、政府系金融機関の融資は、事業計画の実現可能性や返済能力が審査のポイントとなります。

ファクタリングは比較的手続きが簡単ですが、取引先の信用力も審査の対象となります。補助金や助成金は、申請書類の準備に時間と労力を要することが多く、採択の難易度も高いことが一般的です。

6. 効果的な資金調達戦略

6-1. 事業計画書の重要性

効果的な資金調達を行うには、綿密な事業計画書の作成が不可欠です。事業計画書は、投資家や金融機関に対して事業の将来性と収益性を示す重要なツールです。

事業計画書には、事業の概要、市場分析、競合状況、マーケティング戦略、財務projectionなどを含める必要があります。特に財務projectionは、資金需要の根拠と返済能力を示す重要な要素となります。

計画の実現可能性と具体性が高いほど、資金調達の成功率が上がります。定期的に計画を見直し、市場環境の変化や事業の進捗に応じて柔軟に更新することが望ましいでしょう。

6-2. 複数の調達方法の組み合わせ

単一の調達方法に依存するのではなく、複数の方法を組み合わせることで、より柔軟で効果的な資金調達が可能になります。例えば、エクイティファイナンスとデットファイナンスを併用することで、資金調達の多様化とリスク分散を図ることができます。

短期的な資金ニーズにはファクタリングを活用し、中長期的な資金には政府系金融機関からの融資を利用するなど、資金の用途や期間に応じた使い分けも効果的です。

補助金や助成金の活用と併せて、不足分をノンバンクからの借入で補完するなど、状況に応じた柔軟な組み合わせを検討することが重要です。

6-3. 成長段階に応じた最適な選択

企業の成長段階によって、最適な資金調達方法は変化します。創業初期段階では、エンジェル投資家からの出資や政府系金融機関の融資が有効な選択肢となります。

成長期に入れば、ベンチャーキャピタルからの出資や社債発行など、より大規模な資金調達方法を検討することが可能です。事業が軌道に乗り始めた段階では、銀行融資の可能性も高まります。

各成長段階における資金需要と返済能力を見極め、企業価値の最大化につながる調達方法を選択することが重要です。

6-4. 専門家(税理士・公認会計士)の活用

資金調達の過程では、税務や会計の専門知識が必要となる場面が多々あります。税理士や公認会計士などの専門家の助言を得ることで、より適切な判断が可能になります。

専門家は、財務諸表の作成や事業計画の妥当性検証、税務上の影響分析など、多岐にわたるサポートを提供します。また、金融機関や投資家との交渉においても、専門的な見地からのアドバイスが有効です。

特に、複数の調達方法を組み合わせる場合や、M&Aなど複雑な取引を検討する際には、専門家の知見が不可欠です。早い段階から専門家と連携することで、スムーズな資金調達と適切な財務戦略の立案が可能となります。

7. 新規開業後の資金計画

7-1. 長期的視点での資金計画

新規開業後の事業運営において、長期的視点に立った資金計画の策定は極めて重要です。短期的な資金繰りに注力するあまり、将来の成長機会を逃すことがないよう、バランスの取れた計画が求められます。

まず、事業の成長段階に応じた資金需要を予測することが肝要です。初期段階では運転資金の確保が中心となりますが、成長期に入れば設備投資や人材採用など、より大規模な資金が必要となる可能性があります。これらの需要を的確に見積もり、適切なタイミングで必要な資金を調達できるよう準備することが重要です。

長期的な資金計画には、複数のシナリオを想定することも有効です。楽観的な成長シナリオだけでなく、市場環境の変化や競合の出現など、事業に影響を与える可能性のある要因を考慮し、それぞれのケースに対応できる柔軟な計画を立てることが望ましいでしょう。

また、資金調達の多様化も長期的な視点で検討すべき課題です。成長段階に応じて、エクイティファイナンスとデットファイナンスのバランスを適切に調整することで、財務の安定性と成長性を両立させることが可能となります。

7-2. 財務健全性の維持と成長の両立

新規開業企業にとって、急速な成長を追求しつつ財務の健全性を維持することは大きな課題です。過度な借入や無理な投資は、一時的な成長をもたらす一方で、長期的な財務リスクを増大させる可能性があります。

財務健全性の維持には、適切な自己資本比率の確保が重要です。エクイティファイナンスを活用して自己資本を増強することで、財務基盤の強化と成長資金の確保を同時に実現することができます。ただし、過度の株式発行は既存株主の持分の希薄化を招く可能性があるため、慎重な判断が求められます。

キャッシュフロー管理も財務健全性維持の要です。売上の拡大に伴う運転資金の増加や、設備投資のタイミングを適切に管理し、資金ショートを防ぐことが重要となります。ファクタリングなどの手法を活用し、短期的な資金繰りを改善することも一案です。

成長と財務健全性の両立には、定期的な財務分析と柔軟な戦略の見直しが不可欠です。財務諸表の各指標を注視し、問題が顕在化する前に適切な対策を講じることが求められます。

専門家の助言を得ながら、成長投資と財務安定性のバランスを取ることで、持続可能な事業発展が可能となります。長期的な企業価値の向上を目指し、慎重かつ積極的な財務戦略を展開することが肝要です。

8. まとめ

新規開業後の資金調達において、銀行融資以外にも多様な選択肢が存在します。エクイティファイナンスでは、増資やベンチャーキャピタル出資、エンジェル投資家からの資金調達が可能です。

デットファイナンスでは、社債発行やノンバンクからの借入、ファクタリングなどの方法があります。また、補助金・助成金の活用やリースバック、プロジェクトファイナンスなど、状況に応じた手法も検討できます。

効果的な資金調達戦略には、綿密な事業計画書の作成が不可欠です。複数の調達方法を組み合わせ、成長段階に応じて最適な選択をすることが重要です。長期的視点での資金計画を立て、財務健全性と成長の両立を図ることが、持続可能な事業発展につながります。

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