この記事の要点
- ファクタリング会社の収益構造と手数料設定の仕組みを理解することで、提示された条件の妥当性を適切に判断できるようになります。
- 2社間と3社間ファクタリングのビジネスモデルの違いを把握することで、自社の状況に最適な契約形態を選択できます。
- 法的根拠とリスク管理体制を知ることで、信頼できるファクタリング会社の見極めと安全な取引が実現できます。

1. ファクタリングのビジネスモデルとは?基本的な仕組み
ファクタリングは企業の資金調達手段として注目を集めていますが、ファクタリング会社がどのような仕組みで収益を得ているかご存知でしょうか。本記事では、ファクタリングのビジネスモデルについて、法的根拠から収益構造まで詳しく解説いたします。
ファクタリングのビジネスモデルを理解することで、手数料の妥当性や業界の特性を把握でき、より適切な資金調達の判断が可能になります。また、ファクタリング会社の選定や契約条件の評価においても重要な知識となるでしょう。
1-1. 債権譲渡による資金提供の仕組み
ファクタリングのビジネスモデルは、売掛債権の売買取引を基盤とした金融サービスです。事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた金額を即座に支払う仕組みとなっています。
この取引は民法第466条に基づく債権譲渡契約として実行されます。債権譲渡は「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない」と規定されており、売掛債権は財産権として自由に譲渡できる権利です。
ファクタリング会社は譲渡された売掛債権の支払期日に、売掛先から直接または利用企業を通じて債権額面を回収します。事前に支払った買取代金と回収した債権額面の差額が、ファクタリング会社の収益となる構造です。
従来の融資とは異なり、ファクタリングは債権の売買契約であるため、利息制限法の適用を受けません。これにより、リスクに応じた柔軟な手数料設定が可能となり、迅速な資金提供を実現しています。
1-2. 2社間と3社間ファクタリングのスキーム比較
ファクタリングのビジネスモデルは、契約形態により2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分類されます。それぞれ異なるリスク構造と収益モデルを持っています。
2社間ファクタリングでは、利用企業とファクタリング会社のみで契約を締結します。売掛先への通知や承諾は不要で、秘匿性を保ちながら迅速な資金調達が可能です。債権回収は利用企業が実施し、回収後にファクタリング会社へ送金する流れとなります。
このスキームでは、ファクタリング会社は二重譲渡や使い込みリスクを負担するため、手数料は8.0%から18.0%程度と高めに設定されています。また、債権譲渡登記(第三者対抗要件の確保手続き)により対抗要件を取得する場合があります。
3社間ファクタリングでは、利用企業、売掛先、ファクタリング会社の三者で契約を締結します。売掛先の承諾を得た上で債権譲渡を実行し、売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われます。
ファクタリング会社にとって債権の存在確認ができ、直接回収により未回収リスクが大幅に軽減されるため、手数料は2.0%から9.0%程度と低く抑えられています。一方で、売掛先との調整に時間を要し、資金化までの期間が長くなる傾向があります。
2. ファクタリング会社の収益構造と手数料体系
2-1. 手数料による収益モデルの詳細
ファクタリング会社の主要収益源は、売掛債権の買取時に設定する手数料です。この手数料は債権額面に対する一定割合で設定され、一回あたりの取引で徴収されます。
手数料の算定方式は、売掛債権額面から買取代金を差し引いた金額となります。例えば、500万円の売掛債権を450万円で買い取った場合、50万円が手数料収入となり、手数料は10.0%として計算されます。
融資における年利とは異なり、ファクタリングの手数料は支払期日までの期間に関係なく一律で適用されます。これは債権の売買という性質上、時間的要素よりもリスク要素が重視されるためです。
ファクタリング会社は手数料収入から、人件費、システム運営費、債権回収費用、貸倒損失などの経費を差し引いた金額が最終的な利益となります。業界全体では手数料収入の60.0%から70.0%程度が経費として計上されることが一般的です。
近年では、オンライン化やAI活用による審査効率化により、経費率の改善が進んでいます。これにより、従来よりも低い手数料での提供が可能となり、市場競争の激化に対応している状況です。
2-2. リスク評価と手数料設定の仕組み
ファクタリング会社の手数料設定は、主に売掛先の信用力評価に基づいて決定されます。売掛債権の最終的な支払いは売掛先が行うため、売掛先の支払能力が最も重要な審査要素となります。
大手企業や上場企業への売掛債権は支払確実性が高いと判断され、手数料は低く設定されます。一方、中小企業や新興企業への売掛債権は相対的にリスクが高いため、手数料も高めに設定される傾向があります。
債権額面の大きさも手数料に影響を与えます。高額な債権ほど手数料は低く設定されることが一般的です。これは、ファクタリング会社にとって審査や契約にかかる固定費を、より大きな収益で回収できるためです。
支払期日までの期間も重要な要素です。期日が近い債権は早期に回収できる見込みが高く、その間に売掛先の経営状況が悪化するリスクも低いため、手数料は抑えられます。
利用企業との取引実績も手数料に反映されます。過去に問題なく取引を完了している企業は信頼性が高いと評価され、継続利用時には手数料の優遇を受けられる場合があります。
3. ファクタリングビジネスの法的根拠と規制環境
3-1. 民法に基づく債権譲渡の法的基盤
ファクタリングのビジネスモデルは、民法における債権譲渡の規定を法的根拠としています。民法第466条では「債権は、譲り渡すことができる」と明記されており、売掛債権の譲渡は完全に合法な行為です。
債権譲渡の対抗要件については、民法第467条で規定されています。指名債権の譲渡では、譲渡人が債務者に通知するか、債務者が承諾することにより、第三者に対抗できるようになります。
ファクタリング契約は民法第555条の売買契約として位置づけられます。売買契約では「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する」と規定されており、売掛債権の売買は適法な取引です。
重要な点として、ファクタリングは融資ではないため、貸金業法の適用を受けません。これにより、貸金業登録や利息制限法の制約なしに事業を展開できます。ただし、実質的に融資と同様の機能を有する取引については、貸金業に該当する可能性があります。
金融庁は、ファクタリングを装った高利貸付を行う業者について注意喚起を行っています。適正なファクタリング事業と悪質な貸付業の区別は、償還請求権(買戻し義務)の有無や実質的なリスク負担の所在により判断されます。
3-2. 2020年民法改正による影響と変化
2020年4月に施行された民法改正は、ファクタリングビジネスの拡大に大きな影響を与えました。特に債権譲渡禁止特約に関する規定の変更により、利用可能な売掛債権の範囲が大幅に拡大しています。
改正前の民法では、債権譲渡禁止特約が付された債権の譲渡は無効とされていました。多くの大企業との取引契約には譲渡禁止特約が含まれており、これらの債権はファクタリングの対象外でした。
改正民法第466条第2項では「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」と規定されました。これにより、譲渡禁止特約があっても債権譲渡が有効となりました。
ただし、譲渡制限の意思表示を知っていた譲受人に対しては、債務者は履行を拒絶できます。また、相当期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がない場合には、譲受人に対して直接履行を求めることが可能です。
将来債権の譲渡についても民法第466条の6で明文化されました。これにより、将来発生予定の売掛債権についても法的根拠が明確となり、ファクタリングの対象範囲がさらに拡大しています。
4. ファクタリング事業の市場環境とビジネス特性
4-1. 融資との差別化要因とビジネス優位性
ファクタリングのビジネスモデルは、従来の融資事業と明確に差別化された特性を持っています。最も重要な差別化要因は、審査対象が利用企業ではなく売掛先の信用力に重点が置かれることです。
融資では借入企業の財務状況、返済能力、担保価値などが主要な審査項目となります。一方、ファクタリングでは売掛先の支払能力と売掛債権の確実性が最重要視されます。これにより、赤字決算や債務超過の企業でも資金調達が可能となります。
資金提供のスピードも大きな優位性です。融資では事業計画書の作成、担保設定、保証人の確保などで数週間から数か月を要します。ファクタリングでは売掛債権の存在確認と売掛先の信用調査により、最短即日での資金提供が実現できます。
担保や保証人が不要である点も重要な特徴です。売掛債権自体が取引対象であり、追加的な担保提供は原則として求められません。これにより、担保余力の少ない中小企業でも利用しやすい仕組みとなっています。
ファクタリングは償還請求権(買戻し義務)のないノンリコース(償還請求権なし)取引が基本です。売掛先の倒産等により債権が回収不能となった場合でも、利用企業に買戻し義務は発生しません。これは融資にはない重要なリスク移転機能といえます。
4-2. 審査基準と与信管理の特徴
ファクタリング会社の審査プロセスは、融資機関とは異なる独自の基準で実施されます。最も重視されるのは売掛先企業の信用力であり、利用企業の財務状況は副次的な要素として扱われます。
売掛先の信用調査では、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関のデータベースを活用します。企業の基本情報、財務状況、支払履歴、業界動向などを総合的に評価し、支払確実性を判断します。
売掛債権の真正性確認も重要な審査項目です。請求書、納品書、契約書などの関連書類により、債権の存在と金額を確認します。架空債権や水増し請求のリスクを排除するため、必要に応じて売掛先への確認も実施されます。
利用企業に対する審査では、事業の実態確認と過去の取引実績が重点的に調査されます。財務状況が厳しくても、継続的な事業活動が確認でき、売掛債権が適正に発生していれば審査通過は可能です。
与信管理においては、売掛先企業の継続的なモニタリングが実施されます。信用状況の変化を早期に察知し、必要に応じて取引条件の見直しや新規取引の停止などの措置が講じられます。
5. ファクタリング会社の事業運営とリスク管理
5-1. 債権回収プロセスと未回収リスク対策
ファクタリング会社の事業運営において、債権回収は最も重要なプロセスです。2社間ファクタリングでは利用企業が回収を代行し、3社間ファクタリングでは直接回収を実施するという異なるアプローチが採用されています。
2社間ファクタリングの回収プロセスでは、利用企業が売掛先から回収した資金をファクタリング会社に送金する仕組みです。この場合、利用企業による使い込みリスクが存在するため、厳格な管理体制が必要となります。
多くのファクタリング会社では、回収予定日の事前確認、入金確認の迅速化、遅延時の即座対応などの管理システムを構築しています。また、利用企業の資金状況を継続的にモニタリングし、リスクの早期発見に努めています。
3社間ファクタリングでは、売掛先から直接回収を行うため、使い込みリスクは回避できます。しかし、売掛先の支払遅延や経営悪化による未回収リスクに対処する必要があります。
未回収リスク対策として、多くのファクタリング会社では分散投資の原則を適用しています。特定の業界や企業への集中を避け、リスクの分散を図ることで、個別債権の未回収が全体の収益に与える影響を限定しています。
5-2. 業務効率化とテクノロジー活用
ファクタリング業界では、業務効率化とコスト削減を目的としたテクノロジー活用が急速に進展しています。特にオンライン化とAI技術の導入により、従来の人的作業を大幅に削減する取り組みが行われています。
審査プロセスの自動化では、AI与信システムにより売掛先の信用力評価を迅速に実施できるようになりました。膨大な企業データベースとの照合、財務指標の自動分析、リスクスコアの算出などが短時間で完了します。
オンライン契約システムの導入により、書面による契約手続きが不要となりました。電子署名技術を活用した契約締結により、申込みから契約完了まで全てWeb上で完結できる体制が整備されています。
債権管理システムでは、回収予定日の自動管理、入金確認の自動化、遅延アラートの発信などが実現されています。これにより、人的ミスの削減と管理業務の効率化が図られています。
ビッグデータ分析の活用により、より精密なリスク評価が可能となりました。過去の取引データ、業界動向、経済指標などを総合的に分析し、従来よりも正確な信用判定を実現しています。
6. よくある質問
6-1. ファクタリング会社ってどうやって儲けているの?
ファクタリング会社の主要な収益源は、売掛債権の買取時に設定する手数料です。売掛債権の額面金額から買取代金を差し引いた差額が手数料収入となります。
例えば、100万円の売掛債権を90万円で買い取った場合、10万円が手数料として収益に計上されます。この手数料から、人件費、システム運営費、審査費用、債権回収費用、貸倒損失などの経費を差し引いた金額が最終的な利益となります。
手数料は取引形態により異なり、2社間ファクタリングでは8.0%から18.0%程度、3社間ファクタリングでは2.0%から9.0%程度が相場となっています。売掛先の信用力、債権金額、支払期日までの期間などにより個別に決定されます。
6-2. 手数料が高い理由って何なの?
ファクタリングの手数料が融資の利息より高く設定される理由は、ファクタリング会社が負担するリスクの大きさにあります。最も重要なリスクは、売掛先の倒産や支払不能による債権の未回収リスクです。
特に2社間ファクタリングでは、利用企業による売掛金の使い込みリスク、二重譲渡リスク、架空債権リスクなど、3社間ファクタリングにはない追加的なリスクを負担します。これらのリスクを補填するため、手数料は高めに設定されています。
また、ファクタリングは融資と異なり利息制限法の適用を受けないため、リスクに応じた自由な手数料設定が可能です。迅速な資金提供と償還請求権(買戻し義務)のない取引という付加価値に対する対価でもあります。
6-3. 2社間と3社間でビジネスモデルに違いはあるの?
2社間と3社間ファクタリングでは、リスク構造と収益モデルに大きな違いがあります。2社間ファクタリングは高リスク・高収益モデル、3社間ファクタリングは低リスク・低収益モデルとして位置づけられます。
2社間ファクタリングでは、売掛先への通知なしに迅速な資金提供が可能ですが、ファクタリング会社は多様なリスクを負担するため手数料は高く設定されます。一方、3社間ファクタリングでは売掛先の承諾により取引の透明性が確保され、リスクが軽減されるため手数料は低く抑えられます。
事業運営面でも違いがあり、2社間では利用企業との関係管理と回収管理が重要となります。3社間では売掛先との関係構築と直接的な債権回収が主要業務となります。
6-4. ファクタリング事業を始めるには許可が必要なの?
ファクタリング事業を開始するために特別な許可や登録は必要ありません。ファクタリングは債権の売買業務であり、貸金業法などの金融業法の適用を受けないためです。
ただし、一般的な会社設立手続きは必要であり、法人登記、税務届出、各種保険加入などの基本的な事業開始手続きを完了させる必要があります。
事業運営においては、古物営業法、個人情報保護法、反社会的勢力の排除に関する法令などの一般的な法令遵守が求められます。また、適正な債権譲渡契約の締結、適切な与信管理、法令に基づく債権回収などの業務品質確保が重要です。
金融庁が注意喚起しているように、実質的に貸金業に該当する取引を行う場合は貸金業登録が必要となるため、事業スキームの適法性について十分な検討が必要です。
7. まとめ
ファクタリングのビジネスモデルは、売掛債権の売買を基盤とした独自の金融サービスです。民法の債権譲渡規定を法的根拠とし、手数料収入により収益を確保する仕組みとなっています。
2社間と3社間という異なる契約形態により、リスクレベルと収益性に差が生じており、それぞれ独自の市場ニーズに対応しています。2020年の民法改正により事業環境が改善され、今後も市場拡大が期待される分野です。
ファクタリング会社は売掛先の信用力を重視した審査体制と、効率的な債権回収プロセスにより事業を運営しています。テクノロジーの活用による業務効率化も進展しており、より迅速で低コストなサービス提供が実現されています。
事業者がファクタリングを利用する際は、これらのビジネスモデルの特性を理解することで、適切な業者選定と有利な条件での契約締結が可能となるでしょう。

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