ファクタリング

ファクタリングはブラックリストに載っていても利用できる?

2025.05.01

この記事の要点

  1. ブラックリスト状態でも法的根拠に基づきファクタリングが利用可能で、信用情報に一切影響せずに資金調達できます。
  2. 審査では利用者の信用情報より売掛先企業の信用力が重視されるため、優良な売掛債権があれば資金調達の可能性が高まります。
  3. 手数料負担と悪質業者への注意を怠らず、売掛先との関係に配慮した適切な利用により事業の資金繰り改善が期待できます。
ATOファクタリング

1. ブラックリスト状態でもファクタリングは利用可能

信用情報に事故歴があっても事業資金の調達ができるのか、多くの経営者が抱く疑問に法的根拠を基に詳しく解説します。

1-1. ブラックリストの正確な定義

いわゆる「ブラックリスト」という名称のリストは実際には存在しません。一般的にブラックリストと呼ばれているものは、信用情報機関に登録された事故情報のことを指しています。

信用情報機関に事故情報が登録される主なケースは以下の通りです。借入金の長期間にわたる返済延滞、自己破産や個人再生などの債務整理手続きの実施、代位弁済の発生といった金融事故が発生した場合に、CICやJICC、全国銀行協会の個人信用情報センターなどの信用情報機関に登録されます。

この情報は一般的に5年から10年程度保管され、その期間中は新たな借入やクレジットカードの発行が困難になります。法人の場合、信用情報機関に登録される情報は限定的で、主にJICCのみが法人の信用情報を保管していますが、その登録企業数も個人と比べて非常に少ないのが実情です。

1-2. ファクタリングが利用可能な法的根拠

ファクタリングがブラックリスト状態でも利用できる理由は、その法的性質にあります。金融庁の公式見解によると、ファクタリングは「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスであり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約」として定義されています。

この定義が示すように、ファクタリングは金銭の貸し借りではなく、あくまで資産である売掛債権の売却取引です。民法第466条に「債権は、譲り渡すことができる」と明記されており、債権譲渡による資金調達には法的な問題は一切ありません。

そのため、融資のように利用者の信用情報を審査する必要がなく、信用情報機関への照会も行われません。ファクタリング会社は信用情報機関に加盟していないため、そもそも信用情報を確認する権限も手段もないのが現状です。

1-3. 審査の重点が売掛先の信用力にある理由

ファクタリングの審査では、利用企業の信用状況よりも売掛先企業の信用力が重視されます。これは、ファクタリング会社にとって最も重要なリスクが、売掛金を確実に回収できるかどうかだからです。

ファクタリング会社は買い取った売掛債権から手数料と元本を回収するため、売掛先企業が期日通りに支払いを行う能力があるかが審査の中心となります。具体的には、売掛先企業の財務状況、過去の支払い実績、業界での信用度、取引の継続性などが詳細に調査されます。

このため、利用企業が信用情報に事故歴を持っていても、売掛先企業の信用力が十分であれば審査を通過できる可能性が高くなります。実際に、赤字決算や税金滞納がある企業でも、優良な売掛先からの債権であればファクタリングを利用できるケースが多数存在します。

2. ファクタリングと融資の根本的違い

2-1. 契約の性質と法的枠組み

ファクタリングと融資は、その契約の性質において根本的に異なります。融資は金銭消費貸借契約に基づく取引であり、利用者は借りた資金に対して利息を付けて返済する義務を負います。これに対して、ファクタリングは債権譲渡契約に基づく資産の売買取引です。

融資では貸金業法、利息制限法、出資法といった法規制が適用されるため、貸金業者は厳格な登録要件を満たし、上限金利を遵守する必要があります。一方、ファクタリングはこれらの法規制の対象外となっており、ファクタリング会社に貸金業登録は不要です。

この違いにより、融資では必ず信用情報の確認が行われますが、ファクタリングでは信用情報の照会が行われないという重要な差異が生まれています。

2-2. 総量規制の適用除外

貸金業法では、年収の3分の1を超える借入を制限する総量規制が設けられています。この規制により、既に年収の3分の1相当の借入がある個人事業主や法人代表者は、新たな借入が困難になります。

しかし、ファクタリングは債権譲渡契約であり貸付ではないため、総量規制の対象外となります。このため、既に多額の借入がある事業者でも、ファクタリングによる資金調達は可能です。

また、ファクタリングの利用が信用情報に記録されることもないため、将来的な借入審査に悪影響を与える心配もありません。これは、資金繰りに苦しむ事業者にとって重要なメリットといえます。

2-3. 償還請求権の有無による区別

正当なファクタリング契約では、償還請求権を持たないノンリコース契約が基本となります。これは、売掛先企業が倒産などにより売掛金を支払えなくなった場合でも、利用企業がファクタリング会社に返済義務を負わないことを意味します。

一方、償還請求権があるリコース契約の場合、売掛金が回収できない際に利用企業が補償する義務が生じるため、実質的に担保付き融資と同様の性質を持ちます。このような契約の場合、金融庁は貸金業に該当する可能性があると指摘しており、ファクタリング会社には貸金業登録が必要となります。

そのため、真正なファクタリング契約であるかを判断する際は、償還請求権の有無を必ず確認することが重要です。

3. 信用情報に影響しない理由と法的根拠

3-1. 与信取引ではない法的位置づけ

ファクタリングが信用情報に影響しない最大の理由は、与信取引に該当しないことです。信用情報機関が管理する信用情報は、主にクレジットカード、ローン、消費者金融などの与信取引に関する情報です。

ファクタリングは売掛債権という既存資産の売却であり、新たな債務を生じさせる取引ではありません。そのため、ファクタリングの申込みや利用実績が信用情報機関に登録されることはなく、信用情報に一切影響を与えません。

また、ファクタリングの審査に落ちた場合でも、その事実が信用情報に記録されることはありません。これは、融資の審査落ちが信用情報に記録される場合との大きな違いです。

3-2. 信用情報機関への照会権限がない

ファクタリング会社が利用者の信用情報を確認できない理由は、信用情報機関への照会権限がないことです。信用情報の照会には、信用情報機関への加盟と本人の同意が必要ですが、多くのファクタリング会社は信用情報機関に加盟していません。

加盟していない理由として、ファクタリングが与信取引ではないため加盟の必要性がないこと、加盟には厳格な要件と費用が必要であること、審査において信用情報よりも売掛先の信用力が重要であることが挙げられます。

このため、ファクタリング会社は利用者の信用情報を知ることができず、審査は提出された書類と売掛先企業の調査に基づいて行われることになります。

3-3. 法人信用情報の登録範囲の限定性

法人の信用情報については、個人と比べて登録される情報が非常に限定的です。法人の信用情報を保管しているのは主にJICCのみで、しかも過去に消費者金融などから融資を受けた法人の情報に限られています。

また、法人の信用情報は個人ほど詳細ではなく、登録企業数も相対的に少ないのが現状です。このため、仮にファクタリング会社が信用情報を照会したとしても、有用な情報を得られる可能性は低いといえます。

このような事情もあり、ファクタリング会社は法人の信用情報を確認するより、売掛先企業の企業調査や取引実績の確認に重点を置いているのが実情です。

4. 審査通過のポイントと利用時の注意点

4-1. 売掛先企業の信用力評価

ファクタリング審査において最も重要視されるのは、売掛先企業の信用力です。ファクタリング会社は帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用調査機関を通じて、売掛先企業の詳細な調査を実施します。

具体的な調査項目には、財務状況の健全性、業界での地位と競争力、過去の支払い実績、経営陣の信頼性、将来的な事業継続可能性などが含まれます。上場企業や大手企業、公的機関などは信用力が高く評価されやすい一方、新設企業や業績不振企業は慎重に検討されます。

また、売掛先企業との取引実績も重要な評価要素となります。長期間の継続取引がある場合は信頼性が高く評価される一方、新規取引や単発取引は慎重に審査される傾向があります。

4-2. 売掛債権の質と回収可能性

売掛債権そのものの質も審査における重要な要素です。支払期日までの期間が短く、金額が確定している債権ほど高く評価されます。一般的に、支払期日まで2ヶ月以内の債権が望ましいとされており、期間が長くなるほど回収リスクが高まります。

債権の種類についても評価が分かれます。商品代金やサービス料金のような確実性の高い債権は好まれる一方、工事代金のような検収が必要な債権や、成果報酬型の債権は慎重に審査されます。

また、債権の譲渡制限特約の有無も確認されます。2020年の民法改正により譲渡制限特約があっても債権譲渡は有効となりましたが、売掛先企業との関係悪化のリスクを考慮し、特約のない債権が優先される場合があります。

4-3. 手数料負担と資金繰りへの影響

ブラックリスト状態でファクタリングを利用する場合、最も注意すべきは手数料負担です。ファクタリングの手数料は一般的に2社間取引で5.0%から20.0%程度、3社間取引で1.0%から10.0%程度となっており、融資と比べて高コストとなります。

特に資金繰りが厳しい状況では、高額な手数料により一時的に資金を得られても、次回の資金繰りがさらに困難になるリスクがあります。手数料を年利換算して他の資金調達手段と比較検討することが重要です。

また、継続的なファクタリング利用は手数料負担の累積により収益を圧迫する可能性があります。ファクタリングは緊急時の資金調達手段として位置づけ、根本的な資金繰り改善策を並行して検討することが必要です。

4-4. 悪質業者の見極めと対策

ブラックリスト状態の事業者を狙った悪質なファクタリング会社が存在するため、十分な注意が必要です。金融庁は偽装ファクタリングについて注意喚起を行っており、悪質業者の特徴として法外に高い手数料の請求、償還請求権のあるリコース契約の強要、担保や保証人の要求、審査なしでの契約勧誘などが挙げられます。

また、契約書の名目が「債権譲渡契約」ではなく「金銭消費貸借契約」となっている場合は、ファクタリングを装った違法な貸付業者の可能性があります。このような業者は貸金業登録を受けていない違法業者である可能性が高く、利用は避けるべきです。

不審な業者については警察や金融庁金融サービス利用者相談室に相談することを推奨しています。契約前には業者の基本情報、手数料体系、契約内容を十分に確認することが重要です。

4-5. 将来的な資金調達への配慮

ファクタリングは信用情報に影響しませんが、売掛先企業との関係に配慮が必要です。2社間ファクタリングでは売掛先に通知されませんが、3社間ファクタリングでは売掛先の同意が必要となります。

売掛先企業によってはファクタリングの利用を好ましく思わない場合があり、今後の取引関係に影響する可能性があります。特に継続的な取引が重要な売掛先については、事前に相談するか2社間ファクタリングの利用を検討することが望ましいといえます。

また、ファクタリングの頻繁な利用は、売掛先企業に資金繰りの悪化を疑われるリスクもあります。業績回復の見通しを立て、段階的にファクタリング利用を減らしていく計画を策定することが重要です。

5. よくある質問

5-1. 個人事業主でもブラックリスト状態でファクタリングを利用できますか?

個人事業主であってもブラックリスト状態でファクタリングを利用できます。ただし、法人と比べて審査が厳しくなる傾向があります。これは、個人事業主の場合、事業の継続性や信用力の判断が困難であることが理由です。

個人事業主がファクタリングを利用する際は、確定申告書や青色申告決算書などによる事業実態の証明、売掛先企業との取引実績を示す契約書や請求書、継続的な売上を証明する通帳の写しなどの書類準備が重要となります。

また、売掛先が個人である場合、多くのファクタリング会社では取り扱いを行っていません。法人や公的機関からの売掛債権を保有している個人事業主の方が、ファクタリングを利用しやすいといえます。

5-2. 税金を滞納していてもファクタリングの審査に通りますか?

税金の滞納があってもファクタリングの審査に通ることは可能です。ファクタリングは債権譲渡による資金調達であり、税金滞納の有無は直接的な審査項目ではありません。

ただし、税務当局による売掛金入金口座の差し押さえがある場合や、差し押さえの可能性が高い場合は、ファクタリング会社が回収リスクを懸念して審査を慎重に行う場合があります。

税金滞納がある場合は、滞納額、滞納期間、分納などの取り決め状況、差し押さえの有無や可能性について正直に申告し、必要に応じて税務署との調整状況を説明することが審査をスムーズに進めるポイントとなります。

5-3. ファクタリングの利用履歴が他の金融機関に知られることはありますか?

ファクタリングの利用履歴が信用情報機関に登録されることはないため、他の金融機関がファクタリングの利用を知ることは基本的にありません。これは、ファクタリングが与信取引ではなく、信用情報の対象外であることが理由です。

ただし、金融機関が企業の財務状況を詳細に調査する場合、通帳の記録や決算書の内容からファクタリングの利用を推測される可能性があります。また、ファクタリング会社によっては業界内で情報を共有している場合もあります。

将来的な融資申込みの際は、必要に応じてファクタリング利用の経緯や資金使途について説明できるよう準備しておくことが望ましいといえます。

5-4. 債務整理中でもファクタリングを利用できますか?

債務整理中であってもファクタリングの利用は可能です。自己破産、個人再生、任意整理などの債務整理手続き中でも、ファクタリングは債権譲渡による資金調達であるため、債務整理の対象外となります。

ただし、破産手続き中の場合、売掛債権が破産財団に属する可能性があるため、破産管財人の同意が必要となる場合があります。また、個人再生中の場合、再生計画の履行に影響しないよう配慮が必要です。

債務整理中にファクタリングを利用する場合は、事前に債務整理を担当している弁護士や司法書士に相談し、手続きに影響がないことを確認することが重要です。

5-5. ファクタリング会社独自のブラックリストは存在しますか?

ファクタリング業界内では、支払いトラブルや契約違反を起こした利用者の情報を共有するシステムが存在する場合があります。日本ファクタリング信用情報機関のような業界団体では、加盟企業間で契約違反者の情報を共有しています。

このような情報共有により、過去にファクタリング契約で支払い遅延や契約違反を起こした事業者は、他のファクタリング会社でも審査が厳しくなる可能性があります。

そのため、ファクタリングを利用する際は、契約条件を確実に履行し、支払期日を守ることが重要です。一度でも契約違反を起こすと、業界内での信用を失い、将来的なファクタリング利用が困難になる可能性があります。

5-6. 売掛先企業にファクタリングの利用が知られるリスクはありますか?

2社間ファクタリングの場合、基本的に売掛先企業にファクタリングの利用が知られることはありません。ただし、債権譲渡登記を行う場合、登記情報を調査されると債権譲渡の事実が判明する可能性があります。

3社間ファクタリングの場合は、売掛先企業の同意が必要となるため、必然的にファクタリングの利用が知られることになります。売掛先企業との関係性を考慮して、契約形態を選択することが重要です。

また、ファクタリング会社から売掛先企業に対して調査が行われる場合、間接的にファクタリングの利用を疑われる可能性もあります。重要な取引先については、事前に相談するか、関係への影響を最小限に抑える方法を検討することが望ましいといえます。

6. まとめ

ブラックリスト状態であってもファクタリングの利用は可能であり、信用情報に事故歴がある事業者にとって重要な資金調達手段となります。ファクタリングは債権譲渡契約による資産の売却であり、融資とは根本的に異なる性質を持つため、信用情報の影響を受けずに利用できることが最大のメリットです。

民法第466条に規定される債権譲渡の法的枠組みにより、ファクタリングの合法性は明確に保障されています。また、金融庁の公式見解においても、適正なファクタリングは債権の売買契約として位置づけられており、貸金業法等の規制対象外とされています。

ただし、手数料負担や悪質業者のリスクに十分注意し、売掛先企業との関係に配慮した利用を心がけることが重要です。ファクタリングを緊急時の資金調達手段として適切に活用し、同時に根本的な経営改善に取り組むことで、健全な事業運営の実現を目指しましょう。

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