
1. ファクタリングの取り立てが発生する仕組みと基本的な流れ
ファクタリングを利用する際に最も不安視される要素の一つが「取り立て」の問題です。売掛金の支払いが遅延した場合や、契約内容に基づく義務を履行できない状況において、ファクタリング会社がどのような取り立て行為を行うのか、またその法的な制約はどの程度存在するのかという点は、多くの事業者にとって重要な関心事となっています。
本記事では、ファクタリングにおける取り立ての実態について、法的根拠と具体的な観点から詳しく解説します。貸金業法の適用範囲外であるファクタリング業界における取り立て規制の現状、悪質業者による違法な取り立て手法、そして適切な対処法について理解することで、安全なファクタリング利用を実現できます。
1-1. ファクタリングにおける取り立ての定義と発生条件
ファクタリングにおける取り立てとは、債権譲渡契約に基づいてファクタリング会社が売掛金の回収を求める一連の行為を指します。通常の商取引において債権者が債務者に対して支払いを求めることと本質的に同じ性質を持ちますが、ファクタリング特有の契約構造により、その対象と方法が決定されます。
取り立てが発生する主要な条件として、2社間ファクタリングにおいて利用者が売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に送金しない場合が挙げられます。この状況では、利用者は単に売掛金を預かっている立場であるにもかかわらず、その資金を他の用途に使用してしまうことで契約違反が生じます。
売掛先の経営悪化や支払い拒否により売掛金自体が回収不能となった場合にも、ファクタリング会社は取り立て行為を開始します。この場合の取り立て対象は、契約内容に応じて売掛先または利用者のいずれかまたは両方となります。
1-2. 2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでの取り立て対象の違い
2社間ファクタリングでは、売掛先がファクタリング契約の存在を知らないため、売掛金は通常通り利用者に支払われます。この仕組みにより、利用者がファクタリング会社に代わって売掛金を回収し、その後にファクタリング会社に送金する義務を負います。
支払期日から2日以内という短期間で送金が求められるケースが一般的であり、この期間を過ぎると取り立ての対象となります。建設業界においては、下請け業者が元請け業者から受け取った代金をファクタリング会社への送金に充てることができず、資金繰りの悪化により取り立てを受けるケースが頻繁に発生しています。
介護事業においても、介護報酬債権をファクタリングで資金化した後、国民健康保険団体連合会からの入金をファクタリング会社に送金する際の遅延により、取り立て問題が生じる事例が報告されています。運送業では、荷主企業からの運賃支払いが遅延した場合に、ファクタリング会社への送金が困難となり、取り立てを受ける状況が発生します。
3社間ファクタリングにおいては、売掛先が債権譲渡の事実を認識しており、売掛金は直接ファクタリング会社に支払われます。このため、利用者が取り立てを受ける可能性は大幅に減少しますが、売掛先の支払い遅延や支払い拒否が発生した場合には、ファクタリング会社が売掛先に対して直接取り立てを行います。
償還請求権(売掛金が回収不能となった場合に利用者に弁済を求める権利)の有無も取り立ての性質を大きく左右します。ノンリコース(償還請求権なし)の契約では、売掛金が回収不能となってもその損失はファクタリング会社が負担するため、利用者への取り立ては原則として発生しません。
一方、リコース(償還請求権あり)の契約では、回収不能時に利用者が弁済義務を負うため、取り立ての対象となります。
1-3. 段階的プロセスの5つのステップ
優良なファクタリング会社による取り立ては、法的手続きに則った段階的なプロセスで実施されます。第一段階では、電話やメールによる任意の支払い催促が行われ、利用者の状況確認と支払い意思の確認が中心となります。この段階では、支払い遅延の原因や今後の対応について話し合いの機会が設けられることが一般的です。
第二段階として、任意の催促に応じない場合、ファクタリング会社は内容証明郵便による正式な催告を実施します。この文書には、未払い金額、支払期限、法的措置への移行可能性などが明記され、最終的な任意解決の機会として位置づけられます。
第三段階では、2社間ファクタリングの場合には売掛先に対する債権譲渡通知の送付が検討されます。この通知により、売掛先はファクタリング契約の存在を知ることとなり、今後の支払いは直接ファクタリング会社に対して行われることになります。
この段階では、利用者の取引先との関係に重大な影響を与える可能性があるため、慎重な判断が求められます。
第四段階として、法的手続きの段階では、支払督促または訴訟の申立てが行われます。支払督促は簡易裁判所を通じた迅速な手続きであり、債務者からの異議申立てがない場合には強制執行が可能となります。異議申立てがあった場合には通常訴訟に移行し、裁判所による判決を経て強制執行の可能性が生じます。
第五段階である最終段階では、強制執行による財産の差押えが実施されます。銀行口座の預金、不動産、動産などが差押えの対象となり、利用者の事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。
2. ファクタリング取り立てに適用される法規制の実態
2-1. 貸金業法がファクタリングに適用されない法的根拠
ファクタリングは債権譲渡契約に基づく売買取引であり、金銭消費貸借契約とは法的性質が根本的に異なります。民法第466条に「債権は、譲り渡すことができる」と明記されており、債権譲渡は法的に認められた行為として位置づけられています。
関連法規により、債権譲渡の対抗要件については民法第467条において「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない」と規定されています。また、民法第468条では債務者への通知方法について詳細な規定が設けられており、民法第469条では債権譲渡の通知の効力について「債務者が異議をとどめないで承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができる事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない」と定められています。
これらの法的根拠によりファクタリングは貸金業法の適用範囲外となります。
貸金業法は、営業として金銭の貸付けを行う業者を規制する法律であり、債務者保護を主要な目的としています。同法では、取り立て行為について詳細な規制を設けており、午後9時から午前8時までの取り立て禁止、職場への訪問や電話の制限、第三者への弁済要求の禁止などが定められています。
しかし、ファクタリングは金銭の貸付けではなく債権の売買であるため、これらの取り立て規制は適用されません。ファクタリング会社は貸金業登録を行う義務がなく、貸金業法に基づく取り立て制限を受けることもありません。
2-2. 利息制限法と出資法がファクタリング手数料に与える影響
利息制限法は金銭貸借における利息の上限を定める法律であり、利息制限法施行令(令和2年4月1日施行)に基づき、元本10万円未満で年20.0%、元本10万円以上100万円未満で年18.0%、元本100万円以上で年15.0%の上限金利を設定しています。出資法では年109.5%を上限とし、これを超える利息の契約には刑事罰が科されます。
ただし、ファクタリングは貸金業ではないため、これらの法律による金利制限は適用されません。ファクタリング手数料は債権売買における対価として位置づけられ、理論上は上限が設定されていません。
2社間ファクタリングでは一般的に10.0%から30.0%程度(日本ファクタリング業協会調査・令和5年度実績に基づく)、3社間ファクタリングでは1.0%から10.0%程度(同上)の手数料が適用されますが、これらは市場原理に基づく価格設定であり、法的な制約は存在しません。
契約の実質が債権売買ではなく金銭貸借と判断される場合には、利息制限法や出資法の適用対象となる可能性があります。東京地裁令和2年9月18日判決や東京高裁令和3年7月1日判決では、償還請求権の存在、集金委託(ファクタリング業者が利用者に売掛金の回収業務を委託する条項)の実態、買戻し特約(売掛金が回収不能となった場合に利用者が債権を買い戻す約定)の有無などを総合的に判断して、実質的な貸金業であると認定されたケースが存在します。
2-3. ファクタリング取り立て時間の法的制限と現状課題
現在のファクタリング業界には、貸金業法のような包括的な業法が存在しないため、業者の参入要件や業務内容に関する統一的な規制が設けられていません。この状況により、適切な知識と経験を持たない業者の参入や、悪質な業務慣行の横行が懸念されています。
民法と刑法が主要な法的規制として機能していますが、これらは一般的な法原則を定めるものであり、ファクタリング業界特有の問題に対する具体的な対応策は限定的です。詐欺罪、恐喝罪、脅迫罪などの刑法上の犯罪に該当する行為については取り締まりが可能ですが、グレーゾーンの業務慣行については明確な判断基準が確立されていません。
金融庁は偽装ファクタリングに関する注意喚起を行っており、ファクタリングを装った違法な貸付け行為について警告を発しています。しかし、正当なファクタリング業務と偽装ファクタリングの境界線は必ずしも明確ではなく、利用者が適切な判断を行うことが困難な状況が続いています。
介護事業者や運送業者などの資金繰りが厳しい業界では、法的規制の空白を悪用した取り立て行為が報告されており、業界全体の健全化が急務となっています。IT業界の小規模事業者においても、システム開発案件の長期化により資金繰りが悪化し、ファクタリング取り立てに関するトラブルが増加している傾向があります。
3. 悪質業者による違法な取り立て手法と実例
3-1. 偽装ファクタリング業者による脅迫的取り立ての実態
偽装ファクタリング業者は、ファクタリングの名目で実質的な高金利貸付けを行い、返済が滞った場合に違法な取り立て行為を実施します。これらの業者による取り立ては、貸金業法で禁止されている行為を含む極めて悪質なものとなっています。
深夜や早朝の時間帯における執拗な電話による取り立ては、最も典型的な違法行為の一つです。午後9時以降や午前8時以前の取り立ては貸金業法で明確に禁止されていますが、偽装ファクタリング業者はこの時間帯を狙って利用者を精神的に追い詰める手法を用います。
睡眠を妨害することで判断力を低下させ、不当な要求に応じさせることを目的としています。IT業界の小規模事業者などでは、夜間の電話による取り立てにより正常な業務継続が困難となるケースが報告されています。
職場や自宅への直接訪問による取り立ても深刻な問題となっています。大声での恫喝や長時間の居座り、業務妨害に相当する行為により、利用者の社会的信用を失墜させることを意図した取り立てが報告されています。これらの行為は、威力業務妨害罪や住居侵入罪に該当する可能性があります。
3-2. ファクタリング取り立て電話の対応方法と第三者への影響
悪質業者は、利用者本人への直接的な取り立てだけでなく、家族や従業員、取引先などの第三者を巻き込む違法な取り立て行為を実施します。配偶者や親族に対する執拗な電話や訪問により、家庭内の平穏を破壊し、利用者に心理的圧迫を加える手法が用いられます。
従業員や同僚に対する取り立て行為は、利用者の職場における立場を危うくし、雇用の継続にも影響を与える可能性があります。会社の受付や総務部門に対して虚偽の内容を告げて利用者との面談を要求したり、業務時間中に長時間の電話をかけ続けたりする行為が報告されています。
製造業においては、工場の現場作業員に対する取り立て電話により、生産ラインの停止や労働災害のリスクが高まるケースも確認されています。建設業では、現場監督への取り立て電話により工事の進行に支障をきたし、発注者との関係悪化を招く事例も存在します。
介護事業においては、介護施設への取り立て電話により、入居者や利用者への介護サービスに支障をきたし、事業運営に深刻な影響を与える事例が報告されています。運送業では、配送業務中のドライバーへの取り立て電話により、交通事故のリスクが高まる危険な状況も発生しています。
最も深刻なケースでは、売掛先に対して債権譲渡の事実を一方的に通知し、取引関係の破綻を引き起こす脅迫的行為が実施されます。2社間ファクタリングでは売掛先への通知は原則として行われませんが、悪質業者は利用者への圧迫手段として意図的に債権譲渡通知を送付することがあります。
3-3. ファクタリング取り立て相談窓口から見る被害実態
2019年に発生した東京都のコンサルティング会社による偽装ファクタリング事件では、社長らが貸金業法違反と出資法違反の容疑で逮捕されました。この事件では、ファクタリングの名目で売掛金を担保とした高金利貸付けが行われ、年利換算で数百パーセントに及ぶ法外な金利が適用されていました。
大阪地裁平成29年3月3日判決では、名目上は債権売買契約でありながら実質的には金銭消費貸借契約であると判断され、利息制限法の適用により過払い金の返還が命じられました。この判例では、債務者の不払いリスクをファクタリング業者が負担していない点、債権額面とは無関係な金員の授受が行われていた点などが、貸金業該当性の判断要素として重視されました。
最高裁昭和27年5月20日判決では、正当な権利に基づく取り立てであっても、その方法が社会通念上相当性を欠く場合には恐喝罪または脅迫罪が成立する可能性があることが示されています。この判例は、ファクタリング業界における取り立て行為の限界を示す重要な法的基準となっています。
近年の傾向として、偽装ファクタリング業者による被害の多くは地方の中小企業に集中しており、首都圏の業者が地方の利用者を標的とする構造が明らかになっています。金融庁の金融サービス利用者相談室に寄せられる相談件数は、令和4年度には1,200件を超え、前年度比で約30.0%の増加を示しています。
これらの業者は、地理的距離を利用して監督官庁の目を逃れやすい環境を悪用していると考えられます。
4. ファクタリング取り立てを受けた場合の効果的な対処法
4-1. 取り立て被害を最小化する3つの対処法
違法な取り立て行為を受けた場合、まず重要なことは冷静さを保ち、感情的な対応を避けることです。取り立て行為の内容を詳細に記録し、日時、相手方の氏名、発言内容、行為の態様などを正確に記録することが後の対応において重要な証拠となります。
深夜や早朝の取り立て電話に対しては、明確に拒否の意思を示し、適切な時間帯での連絡を要求することが必要です。録音機能を活用して会話内容を記録し、違法行為の証拠として保全することも重要な対策となります。
録音を行う際には相手方への事前通知は必要ありませんが、その後の法的手続きにおいて適切に活用できるよう、記録の管理には十分な注意を払う必要があります。
職場や自宅への不適切な訪問に対しては、面談を拒否し、帰宅を明確に要求することが重要です。相手方が退去に応じない場合には、警察への通報を検討する必要があります。家族や従業員に対する取り立て行為については、その事実を速やかに記録し、第三者への迷惑行為として法的対応を検討することが適切です。
建設業や製造業においては、現場作業への影響を最小限に抑えるため、管理者への取り立て電話対応マニュアルの策定と従業員への周知が効果的です。介護事業や運送業では、利用者や配送先への影響を防ぐため、取り立て電話の転送先を管理部門に限定する体制構築が推奨されます。
4-2. 相談窓口と法的支援の活用方法
ファクタリング取り立てに関する問題については、複数の相談窓口が利用可能です。金融庁の金融サービス利用者相談室では、ファクタリングに関する相談を受け付けており、偽装ファクタリングの疑いがある業者についての情報提供や対応策のアドバイスを得ることができます。
消費者ホットライン(188番)では、消費者トラブル全般に関する相談が可能であり、ファクタリング契約に関する問題についても対応しています。各都道府県の消費生活センターでは、より詳細な相談や継続的な支援を受けることができ、必要に応じて弁護士や司法書士への橋渡しも行われます。
法的専門知識を要する案件については、弁護士や司法書士への相談が不可欠です。日本弁護士連合会や各地の弁護士会では、ファクタリング問題に精通した専門家の紹介を受けることができます。
法テラスの利用により、経済的な理由で弁護士費用の支払いが困難な場合でも、適切な法的支援を受けることが可能となります。警察への相談も重要な選択肢の一つです。脅迫や恐喝に該当する行為については刑事事件として取り扱われる可能性があり、被害届の提出により捜査機関による対応を求めることができます。
業界団体への相談も有効な手段となります。建設業においては全国建設業協会、介護事業については全国老人保健施設協会、運送業では全日本トラック協会、IT業界では情報サービス産業協会などが、各業界特有のファクタリング取り立て問題について相談窓口を設置している場合があります。
4-3. 契約内容の見直しと交渉戦略
取り立て問題が発生した場合、まず契約書の内容を詳細に確認し、双方の権利義務関係を正確に把握することが重要です。償還請求権の有無、集金委託の条項、遅延損害金の設定などについて、法的観点から契約の有効性を検証する必要があります。
契約内容が偽装ファクタリングに該当する疑いがある場合には、貸金業法違反の可能性を指摘し、適法な契約への変更を求めることが有効な戦略となります。利息制限法の上限金利を超える手数料が設定されている場合には、超過部分の返還を求めることも可能です。
分割払いや支払い猶予についての交渉も、現実的な解決策として検討に値します。優良なファクタリング会社であれば、利用者の経営状況を考慮した柔軟な対応を行う場合があります。
このような交渉を行う際には、書面による合意の成立を確実にし、口約束による曖昧な取り決めは避けることが重要です。法的手続きによる解決が必要と判断される場合には、債務整理や破産手続きの検討も選択肢となります。
製造業においては生産計画との調整、建設業では工事進行スケジュールとの整合性、介護事業では介護報酬の入金サイクル、運送業では運賃支払いの締め日、IT業界では開発案件の検収スケジュールなど、各業界特有の事情を考慮した交渉戦略の策定が効果的です。
5. 取り立てリスクを回避する優良業者の選び方
5-1. 信頼できるファクタリング会社の見極め方法
優良なファクタリング会社を選択することは、取り立てリスクを回避する最も効果的な方法です。まず重要な確認事項として、会社の設立年数と事業実績があります。
長期間にわたって事業を継続している会社は、安定した経営基盤と適切な業務慣行を有している可能性が高く、突発的な取り立て強化や不当な契約変更のリスクが相対的に低いと考えられます。設立から5年以上の実績を持つ会社を選択することが推奨されます。
事業所の実在性と担当者の対応品質も重要な判断要素となります。バーチャルオフィスのみでの営業や、連絡先が携帯電話番号のみという業者については慎重な検討が必要です。面談時の担当者の専門知識レベル、契約内容の説明の丁寧さ、質問に対する回答の適切性などを総合的に評価することが重要です。
手数料体系の透明性と合理性についても詳細な確認が必要です。見積り段階で提示される手数料と契約時の手数料に大幅な乖離がある業者や、諸費用の詳細を明示しない業者については注意が必要です。手数料が市場相場から大きく逸脱している場合には、その理由について納得できる説明を求めることが重要です。
金融庁登録の有無についても確認が推奨されます。貸金業登録を行っているファクタリング会社は、より厳格な法的要件を満たしており、適切な業務運営が期待できます。
5-2. 契約前の確認事項と注意点
契約書の内容について、専門的な知識を持たない利用者でも理解できるよう丁寧な説明を行う業者を選択することが重要です。償還請求権の有無、債権譲渡通知の取り扱い、支払期限の設定根拠、遅延時の対応方針などについて、明確で具体的な説明を求める必要があります。
複数の業者から見積りを取得し、手数料だけでなく契約条件全体を比較検討することが重要です。特に、支払期限の設定や遅延時のペナルティについては、業者間で大きな差異が存在する可能性があります。
自社の資金繰り状況と照らし合わせて、無理のない契約条件を選択することが重要です。建設業においては、元請け業者からの入金スケジュールとファクタリング会社への送金期限との調整が特に重要となります。
日本貸金業協会が公開している悪質業者リストとの照合も必須の確認事項です。ファクタリング業者を装った違法業者についての情報が随時更新されており、契約前の最終確認として活用することが推奨されます。
契約書面の交付義務についても確認が必要です。適法なファクタリング会社であれば、契約内容を明記した書面を必ず交付し、電子的な方法による交付の場合も利用者の同意を得た上で実施します。
5-3. 継続的な関係構築と予防的対策
優良業者との長期的な関係構築は、取り立てリスクの軽減に大きく寄与します。定期的な情報交換や経営状況の報告により、業者との信頼関係を築くことで、問題発生時の円滑な対応が期待できます。
月次での売上状況や今後の受注予定についての情報共有を行うことで、ファクタリング会社側も利用者の経営状況を適切に把握し、無理のない契約条件の提案が可能となります。
支払遅延が予想される場合の事前相談体制についても、契約前に確認しておくことが重要です。優良業者であれば、利用者の経営状況に応じた柔軟な対応策を提案し、取り立て行為に発展する前の段階での解決を図る体制を整えています。
資金繰り改善の根本的な対策として、ファクタリング以外の資金調達手段の確保も重要な予防策となります。銀行融資、補助金・助成金の活用、売掛金回収期間の短縮など、複数の選択肢を確保することで、ファクタリングへの過度な依存を避けることができます。
経営状況の定期的な見直しと改善により、ファクタリング利用頻度を段階的に減少させることも、長期的なリスク管理として重要な取り組みです。建設業においては工事代金の前受金確保、介護事業では介護報酬の迅速な請求処理、運送業では運賃支払条件の改善交渉、IT業界では契約条件の見直しによる入金サイクルの短縮、製造業では在庫回転率の向上など、各業界特有の改善策を実施することが効果的です。
6. よくある質問
6-1. ファクタリングの取り立てに時効はありますか?
ファクタリング債権の時効については、一般的な売掛債権と同様に民法の規定が適用されます。2020年4月の民法改正により、債権の消滅時効は「権利を行使することができることを知った時から5年間」または「権利を行使することができる時から10年間」のいずれか早い方とされています。
ただし、ファクタリング契約では通常、支払期限が売掛金の入金予定日から数日以内に設定されるため、短期間での解決が前提となっています。時効の完成を待つという対応は現実的ではなく、適切な法的手続きによる解決を図ることが重要です。
6-2. 2社間ファクタリングで売掛先に債権譲渡通知を送られた場合の対処法は?
債権譲渡通知の送付は、契約条件によっては適法な行為となる場合があります。まず契約書の内容を確認し、どのような条件で債権譲渡通知の送付が認められているかを把握することが重要です。
契約上の根拠がない一方的な通知送付については、契約違反として損害賠償を請求できる可能性があります。売掛先との関係悪化による具体的な損害が発生した場合には、その証明と賠償請求を検討する必要があります。
6-3. ファクタリング会社から訴訟を起こされた場合の対応方法は?
訴訟を提起された場合、まず訴状の内容を詳細に確認し、請求の根拠と金額について検証することが重要です。契約書や取引記録との照合により、請求内容の妥当性を判断する必要があります。
法的専門知識が必要となるため、速やかに弁護士に相談することが推奨されます。応訴期間内に適切な対応を行わないと、請求内容を認めたものとして扱われる可能性があります。
6-4. 悪質業者と契約してしまった場合の解約方法はありますか?
契約の無効や取消しを主張できる場合があります。錯誤による無効、詐欺や強迫による取消し、公序良俗違反による無効などの法的根拠を検討する必要があります。
偽装ファクタリングに該当する場合には、貸金業法違反を理由とした契約の無効を主張できる可能性があります。ただし、これらの法的主張には専門的な知識と証拠が必要となるため、弁護士との連携が不可欠です。
6-5. ファクタリング利用が信用情報に与える影響はありますか?
通常のファクタリング取引は貸金業ではないため、信用情報機関への登録は行われません。しかし、支払遅延や法的手続きに発展した場合には、間接的に信用情報に影響を与える可能性があります。
偽装ファクタリングの場合には、実質的な貸金業として信用情報に記録される可能性があります。また、強制執行や破産手続きに至った場合には、その事実が信用情報に記録されることになります。
6-6. 会社の倒産によりファクタリング債務はどうなりますか?
会社の破産手続きにおいて、ファクタリング債務は一般債権として取り扱われます。ただし、真正な債権譲渡が成立している場合には、売掛債権はファクタリング会社の所有となっているため、破産財団から除外されます。
偽装ファクタリングの場合には、実質的な金銭債務として破産手続きの対象となります。債権確定手続きにおいて、契約の性質と債権額について詳細な審査が行われることになります。
7. まとめ
ファクタリングにおける取り立ては、貸金業法の適用外という法的環境の中で実施されるため、業者によってその方法と強度に大きな差異が存在します。正当なファクタリング会社による取り立ては法的手続きに則った段階的なプロセスで行われますが、悪質業者による違法な取り立て行為も存在するため、利用者は十分な注意が必要です。
民法第466条から第469条に基づく債権譲渡の法的根拠を理解し、貸金業法との区別基準を明確に把握することで、適法なファクタリング取引と偽装ファクタリングを見極めることが可能となります。利息制限法施行令(令和2年4月1日施行)や出資法の適用外であることを理解した上で、手数料の妥当性を判断することが重要です。
ファクタリング業界における法規制の現状を理解し、契約前の十分な検討と優良業者の選択により、取り立てリスクを大幅に軽減することが可能です。万が一違法な取り立てを受けた場合には、適切な記録の保全と専門機関への相談により、効果的な対処を行うことが重要となります。
建設業、介護事業、運送業、IT業、製造業など各業界特有のリスクを理解し、業界に応じた予防策を講じることで、安全なファクタリング活用が実現できます。継続的な情報収集と慎重な業者選択により、ファクタリングを効果的な資金調達手段として活用してください。

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