ファクタリング

偽装ファクタリングのヤミ金に騙された時の対策と解決法

2025.03.21

この記事の要点

  1. 偽装ファクタリングの判別方法と緊急対応手順を習得することで、被害の拡大を防止し法的根拠に基づいた適切な対処ができるようになります。
  2. 不法原因給付や過払い金返還請求などの具体的な解決手段を理解することで、業者への返済義務がないことを確信し毅然とした対応が可能となります。
  3. 弁護士選定から各種相談窓口の活用まで段階的な解決プロセスを把握することで、費用を抑えながら効果的な被害回復を実現できます。
ATOファクタリング

1. 偽装ファクタリングの手口と被害実態

偽装ファクタリングによるヤミ金融被害は、資金繰りに窮した中小企業を狙った悪質な犯罪行為です。一見正当なファクタリング契約に見せかけながら、実際には貸金業法や出資法に違反する高金利貸付を行う手口により、多くの企業が深刻な被害を受けています。

金融庁は令和3年以降、偽装ファクタリングに対する注意喚起を継続的に発表しており、関係機関と連携した取締り強化を進めています。被害に気づいた時点での適切な対応により、法的根拠に基づいた解決が可能であることから、本記事では具体的な対策手順と専門機関への相談方法について詳しく解説します。

1-1. 偽装ファクタリングとヤミ金融の関係性

偽装ファクタリングとは、正規のファクタリング取引を装いながら実質的に貸金業法違反の高金利融資を行う違法行為です。通常のファクタリングは民法第466条に基づく債権譲渡契約として、売掛債権の売買取引に位置づけられます。

しかし偽装ファクタリング業者は、債権買取を名目としながら売掛先からの回収不能リスクを利用者に負わせる仕組みを採用しています。この手法により貸金業登録を回避し、利息制限法の上限金利年15パーセントから20パーセントを大幅に超える手数料を徴収することが可能となります。

金融庁は「経済的に貸付けと同様の機能を有する取引については、貸金業に該当するおそれがある」と明確に警告しており、実際に複数の業者が貸金業法違反で逮捕されています。令和4年の大阪府警による摘発では、175社に対して総額6億円超の違法貸付が行われ、年率換算で300パーセントを超える手数料が徴収されていました。

1-2. 償還請求権による違法性の判別方法

偽装ファクタリングの最重要な判別基準は償還請求権の有無です。正規のファクタリングはノンリコース取引と呼ばれ、売掛先の信用リスクをファクタリング会社が負担します。利用者は売掛債権を確実に現金化でき、回収不能リスクから解放される仕組みです。

一方、偽装ファクタリング業者はリコース取引を採用し、売掛先の支払不能時に利用者へ債権買戻しや代位弁済を要求します。契約書では「債権譲渡契約」と記載されていても、実質的には売掛債権を担保とした融資契約となっており、この構造が貸金業法違反の根拠となります。

裁判例では、債権の一部買取や保証金設定、集金委託契約の併用により業者が回収リスクを回避している実態が認定され、利息制限法の類推適用による過払金返還が命じられています。特に売掛債権の全額ではなく一部のみを対象とする契約は、担保性が強く認定される傾向があります。

1-3. 悪質な取立て行為の特徴

偽装ファクタリング業者の取立て行為は、貸金業法第21条で禁止されている威圧的手法を用いるケースが多数報告されています。正規のファクタリング会社では売掛先からの回収が基本であり、利用者への過度な取立ては行われません。

悪質業者の典型的な手法には、深夜早朝の執拗な電話連絡、事業所や自宅への押しかけ、家族や従業員への嫌がらせ、取引先への接触があります。これらの行為は貸金業法違反として2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金の対象となります。

特に注意すべきは「ジャンプ」と呼ばれる手法です。元本支払いを延期し手数料のみを支払わせる仕組みであり、ヤミ金融でよく用いられます。正規のファクタリングでは債権売買が完結しているため、このような取引継続の概念は存在しません。

2. 被害発覚時の緊急対応手順

2-1. 支払い停止と法的根拠の確認

偽装ファクタリングの被害に気づいた時点で、最優先すべきは業者への支払い停止です。民法第708条の不法原因給付により、違法な貸付契約に基づく支払いには法的義務がありません。むしろ継続的な支払いは相手方の違法行為を助長する結果となります。

不法原因給付の適用には、貸付行為の違法性立証が必要です。具体的には貸金業登録の欠如、利息制限法違反の金利設定、出資法違反の高金利徴収などを証明し、契約の違法性を明確にする必要があります。

業者からの圧力に対しては、毅然とした態度を維持することが重要です。「少額でも支払えば解決する」といった提案に応じることは、契約の有効性を認めることになり法的立場を不利にする可能性があります。専門家の指導のもと一貫した方針を維持することが成功の鍵となります。

2-2. 証拠保全の具体的方法

証拠保全は偽装ファクタリング事案の解決において極めて重要な要素です。契約関係書類については、債権譲渡契約書、集金委託契約書、保証契約書など関連するすべての文書を原本とコピーで保管してください。

金銭授受に関する記録では、振込明細書、通帳の写し、領収書、手数料計算書を日付順に整理し、実際の手数料率と返済総額を明確にしてください。偽装ファクタリングでは契約時の説明と実際の条件が異なるケースが多いため、当初の説明資料と実際の取引記録の対比が重要です。

取立て行為については電話の録音、訪問時の記録、威圧的な言動の詳細を記録してください。可能であれば第三者の立会いのもとで記録を作成し、客観性を確保することが望ましいです。これらの証拠は後の法的手続きで決定的な役割を果たします。

2-3. 家族と従業員への協力体制構築

偽装ファクタリング被害は経営者個人の問題にとどまらず、家族や従業員にも影響が及ぶ可能性があります。事実関係を正確に説明し協力体制を構築することが、問題解決の重要な要素となります。

家族に対しては被害の概要と今後の対応方針を説明し、業者からの接触があった場合の対応方法を明確にしてください。従業員への説明では会社の財務状況や雇用への影響について正直に伝え、不安の解消に努めることが重要です。

業者からの威圧的な連絡に対して毅然とした態度を取るよう指導し、すべての接触について詳細な記録を残すよう依頼してください。これらの記録は後の法的手続きで重要な証拠となります。

3. 専門機関への相談と解決プロセス

3-1. 弁護士選定と相談準備

偽装ファクタリング事案の解決には、この分野に精通した弁護士への相談が不可欠です。最重要基準は、ヤミ金融や偽装ファクタリング事案の取扱実績です。一般的な企業法務の経験だけでは十分ではなく、この特殊分野における専門知識と解決実績を有する弁護士を選択することが重要です。

相談前の準備として、時系列での事実関係整理を行ってください。初回接触から契約締結、資金受領、問題発覚までの経緯を詳細に記録し、関係者の名前や連絡先、金額の詳細を明確にしてください。

弁護士への相談では法的見解の確認とともに、具体的な解決方針と費用の見積もりを求めてください。偽装ファクタリング事案では緊急性が高いため、受任後の対応スケジュールと期待される結果についても詳細な説明を求めることが重要です。

3-2. 金融庁と消費生活センターの活用

金融庁の金融サービス利用者相談室は、偽装ファクタリング被害の相談窓口として重要な役割を果たしています。電話番号0570-016811で平日10時から17時まで相談を受け付けており、業者の詳細情報と被害の概要を整理して伝えることが重要です。

消費生活センターへの相談は、全国統一の消費者ホットライン188番で最寄りのセンターに接続されます。消費生活センターでは事業者とのあっせんも行っており、弁護士への相談と並行して活用することが効果的です。

相談内容はPIO-NETシステムで全国的に共有されるため、類似事案の発見や対策立案にも貢献します。各機関への相談は相互に連携しており、情報共有により効果的な対応が期待できます。

3-3. 警察への相談と刑事告発

警察への相談については、最寄りの警察署の生活安全課または刑事課に相談し、被害届の提出について判断を求めてください。偽装ファクタリングは貸金業法違反や出資法違反の疑いがあるため、刑事事件として立件される可能性があります。

相談が必ずしも刑事事件化につながるわけではありませんが、警察の関与により業者に対する抑制効果が期待できます。威力業務妨害や脅迫などの行為があれば別途刑事事件として対応される可能性があります。

相談時には他機関への相談状況も併せて報告し、重複や矛盾のない対応を心がけてください。相談内容や回答については詳細な記録を残し、後の法的手続きで活用できるよう準備してください。

4. 法的解決手段による被害回復

4-1. 不法原因給付による返済拒否

民法第708条の不法原因給付は、偽装ファクタリング被害解決における最も強力な法的武器となります。この条文では「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と規定されており、違法な高金利貸付に対する支払いには法的義務がないことを明確に示しています。

弁護士による受任通知では、不法原因給付を法的根拠として今後一切の支払いを行わない旨を明確に記載し、業者に対して法的な意思表示を行います。この通知により多くの業者は取立てを停止しますが、継続的な対応が必要な場合もあります。

返済拒否の実行では、業者からの圧力に屈することなく毅然とした態度を維持することが重要です。一度でも支払いを行うと契約の有効性を認めたものと解釈される可能性があることから、弁護士の指導のもと一貫した方針を維持することが成功につながります。

4-2. 過払い金返還請求の手続き

偽装ファクタリングが実質的な貸付と認定された場合、利息制限法に基づく過払い金返還請求が可能となります。利息制限法では元本10万円未満で年20パーセント、10万円以上100万円未満で年18パーセント、100万円以上で年15パーセントという上限金利が設定されており、これを超過する部分は無効となります。

過払い金の計算では、実際に支払った手数料から法定利率で再計算した利息を差し引き、超過部分を過払い金として算定します。偽装ファクタリングでは月利20パーセントから40パーセントという法外な手数料が設定されているケースが多く、大幅な過払い金が発生している可能性があります。

返還請求では、まず業者に対して任意の返還交渉を行い、応じない場合は訴訟手続きに移行します。偽装ファクタリング業者は法的に不利な立場にあるため、訴訟を避けるため任意交渉で解決するケースも多数報告されています。

4-3. 口座凍結と被害回復分配金制度

振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結申請は、偽装ファクタリング被害回復において重要な手段となります。この制度では犯罪に利用された預金口座を凍結し、被害者に対して分配金を支払う仕組みが整備されています。

申請手続きでは、業者が使用している口座を特定し金融機関に対して口座の利用停止を要請します。警察への被害届提出や弁護士による申請も有効であり、複数のルートから同時に働きかけることで効果を高めることができます。

被害回復分配金の支払いでは、凍結口座の残高から金融機関の手数料を差し引いた金額が被害者に分配されます。分配の割合は被害額に応じて決定されるため、被害の立証と金額の確定が重要となります。

5. よくある質問

5-1. 偽装ファクタリングと気づいたら今後一切返済しなくても法的に問題ないのですか?

偽装ファクタリングが貸金業法違反や出資法違反の違法な貸付であることが確認された場合、民法第708条の不法原因給付により返済義務は発生しません。最高裁判例でも「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と明確に示されており、元本を含めて一切の返済義務がないことが確定しています。

ただし違法性の判断には専門的な法的検討が必要であり、自己判断での対応は危険です。契約内容の詳細な分析、業者の事業実態、取引の経済的実質などを総合的に検討し、弁護士による専門的な判断を仰ぐことが重要です。

返済停止の実行では弁護士による受任通知の送付が効果的です。受任通知により業者に対して法的根拠を明示し、今後の取立て行為の停止を求めることで適法な対応を行うことができます。

5-2. 業者から家族や取引先に嫌がらせが来た場合の具体的な対処法を教えてください

偽装ファクタリング業者による家族や取引先への嫌がらせは、貸金業法第21条で明確に禁止されている違法行為です。正当な理由なく債務者以外の者に対して連絡を取ることや、威圧的な言動により困惑させることが禁止されており、違反した場合は2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金の対象となります。

嫌がらせが発生した場合の対応として、まず詳細な記録を作成してください。連絡の日時、内容、相手方の名前、威圧的な言動の詳細などを記録し、可能であれば録音や第三者の立会いにより客観的な証拠を残すことが重要です。

警察への相談では威力業務妨害や脅迫の疑いがある場合は刑事事件として対応を求めてください。特に事業所への押しかけや大声での威嚇、取引先への営業妨害などは明確な犯罪行為であり、被害届の受理を求めることができます。

5-3. 弁護士費用が支払えない状況でも専門的な支援を受ける方法はありますか?

経済的な困窮により弁護士費用の支払いが困難な場合でも、複数の支援制度を活用することで専門的な法的支援を受けることが可能です。最も重要な制度は法テラスの民事法律扶助制度であり、資力基準を満たす場合は弁護士費用の立替えや分割払いが可能となります。

法テラスの利用条件では、単身者で月収18万2,000円以下、夫婦で25万1,000円以下という収入基準と、単身者で180万円以下、夫婦で250万円以下という資産基準が設定されています。偽装ファクタリング被害により経営が困窮している場合は、これらの基準を満たす可能性が高く積極的な活用を検討してください。

各弁護士会が実施する法律相談制度では、初回相談料が無料または低額に設定されており、事案の概要把握と対応方針の検討を行うことができます。また一部の弁護士事務所では偽装ファクタリング事案について成功報酬制を採用しており、初期費用の負担なく依頼することも可能です。

5-4. 警察に相談すると必ず事件として扱われるのですか?

警察への相談が必ずしも刑事事件化につながるわけではありません。警察では相談内容を検討し、犯罪の成立要件や証拠の状況、被害の程度などを総合的に判断して対応方針を決定します。偽装ファクタリング事案では民事事件として整理される場合も多く、警察による指導や助言にとどまるケースもあります。

刑事事件として立件されるためには、貸金業法違反や出資法違反の構成要件を満たし、かつ十分な証拠が存在することが必要です。業者の事業実態、違法な金利の設定、無登録営業の事実などが明確に立証できる場合に限り、刑事事件として処理される可能性が高くなります。

重要なことは、警察への相談により業者に対する抑制効果が期待できることです。警察が関与していることを業者が認識することで、違法な取立て行為の抑制や問題の早期解決につながる場合があります。

6. まとめ

偽装ファクタリングによるヤミ金融被害は、適切な対応により必ず解決可能な問題です。最も重要なことは被害に気づいた時点で速やかに支払いを停止し、専門家への相談を行うことです。民法第708条の不法原因給付により違法な貸付に対する返済義務は存在せず、むしろ過払い金の返還を求めることができます。

解決への道筋では証拠保全の徹底、弁護士による法的対応、関係機関への相談という3つの柱を同時並行で進めることが効果的です。業者からの威圧的な取立てに屈することなく、法的根拠に基づいた毅然とした対応を維持することで多くの事案で有利な解決を実現できています。

経済的な困窮により専門家への依頼が困難な場合でも、法テラスの民事法律扶助制度や各種相談制度を活用することで必要な支援を受けることが可能です。一人で抱え込まず早期に適切な支援を求めることが、被害の拡大防止と迅速な解決の鍵となります。

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