この記事の要点
- この記事を読むことで、偽装ファクタリングの危険な実態と違法業者の手口を詳しく理解し、資金調達時の被害を確実に防げます。
- 正規と偽装ファクタリングの明確な違いと具体的な見分け方を習得し、契約書確認や手数料判断で安全な業者選択ができます。
- 万が一被害に遭遇した際の適切な対処法と相談窓口を把握し、証拠保全から法的対応まで段階的な解決策を実行できます。

1. 偽装ファクタリングとは何か?基本的な仕組みと正規ファクタリングとの違い
資金調達が困難な状況に陥った企業経営者の中には、ファクタリングという資金調達手段を検討される方が多くいらっしゃいます。しかし、ファクタリングを装った違法な金融業者による被害が社会問題となっており、十分な注意が必要です。
偽装ファクタリングとは、表面的にはファクタリング契約を締結しているように見せかけながら、実際には高金利の違法な貸付を行う詐欺的な手法です。これらの業者は貸金業登録を行わず、法外な手数料を請求するヤミ金融業者に他なりません。
本記事では、偽装ファクタリングの危険性について詳しく解説するとともに、正規のファクタリング業者との見分け方や被害防止のための具体的な対策をご紹介します。資金調達をお考えの経営者の皆様には、安全で適切な資金調達方法を選択していただくための参考としてお役立てください。
1-1. 偽装ファクタリングの定義と特徴
偽装ファクタリングとは、日本貸金業協会が定義するところによると「高額な手数料を差し引き、売掛債権の買い取り代金を支払うものの、正規の債権売買でないことから、買主が回収リスクを負わず、債権回収できない場合は買戻しを行わせるもので、実態は貸付け」です。つまり、ファクタリングという名称を使用しながら、実際には違法な金銭貸借を行う詐欺的な手法なのです。
この偽装ファクタリングの最大の特徴は、業者側が債権の回収リスクを一切負担しないという点にあります。正規のファクタリング取引では、ファクタリング会社が売掛債権を買い取った時点で、その債権の回収不能リスクもファクタリング会社が負担することになります。しかし、偽装ファクタリングでは、売掛先が倒産するなどして回収不能になった場合、利用者に対して買戻しや弁済を強要するのです。
さらに、偽装ファクタリング業者は貸金業登録を行っていないにもかかわらず、実質的な貸付業務を行っています。これは明らかな貸金業法違反であり、いわゆるヤミ金融業者と同様の違法な営業形態です。手数料として請求される金額も、年率換算すると数百パーセントから千パーセントを超える異常な高利となるケースが多く報告されています。
1-2. 正規ファクタリングとの違いについて
正規のファクタリングは、民法第466条「債権の譲渡性」に基づく適法な債権売買契約です。企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を早期に現金化できる資金調達手段として、多くの中小企業で利用されています。
正規のファクタリングでは「ノンリコース」つまり「償還請求権なし」が基本原則となっています。これは、売掛債権を売却した後に売掛先が倒産等により支払い不能になったとしても、利用者がその損失を補填する義務を負わないということを意味します。債権の回収リスクは完全にファクタリング会社が負担するのです。
一方、偽装ファクタリングでは契約書上は債権譲渡契約となっていても、実際には利用者が債権の回収リスクを負担することになります。売掛先からの回収が困難になると、業者は利用者に対して様々な理由をつけて追加の支払いや買戻しを要求してきます。これは実質的な金銭消費貸借契約であり、債権の売買ではありません。
手数料についても大きな違いがあります。正規のファクタリングでは、2社間取引で8%から18%程度、3社間取引で2%から9%程度が一般的な相場となっています。これに対して偽装ファクタリングでは、40%を超える異常な高率の手数料を請求するケースが頻発しています。
1-3. ヤミ金融としての実態について
偽装ファクタリング業者の実態は、ファクタリング会社を装ったヤミ金融業者に他なりません。これらの業者は貸金業登録を一切行わず、法律で定められた上限金利を大幅に超える高利で金銭を貸し付けています。
ヤミ金融業者が偽装ファクタリングという手法を用いる理由は、違法性を隠蔽しやすいという点にあります。ファクタリング自体は適法な取引であるため、表面的にはファクタリング契約を締結し、問題が発生した場合にのみ実質的な貸付に切り替えるという両天秤の手法を取ることができるのです。これにより、摘発や規制を逃れながら違法な高利貸しを継続することが可能になります。
さらに、偽装ファクタリング業者の多くは、資金繰りに窮した中小企業を意図的にターゲットとしています。銀行融資や正規の金融機関からの借入が困難な状況にある企業の弱みにつけ込み、「審査なし」「即日資金化」などの甘い言葉で勧誘を行います。一度契約すると、法外な手数料の支払いにより企業の資金繰りはさらに悪化し、最終的には経営破綻に追い込まれるケースも少なくありません。
2. 偽装ファクタリングが違法である理由と法的根拠
2-1. 貸金業法違反について
偽装ファクタリングが違法とされる最も重要な理由は、貸金業法への違反です。貸金業法では、業として金銭の貸付を行う者は、財務局長又は都道府県知事の登録を受けることが義務付けられています。しかし、偽装ファクタリング業者の大部分は、この貸金業登録を行わずに営業を行っています。
貸金業登録を受けるためには、純資産額5000万円以上の維持、国家資格を持った貸金業務取扱主任者の常駐、適切な営業所の設置など、厳格な要件を満たす必要があります。これらの要件を満たすことができない、あるいは満たす意思のない違法業者が、貸金業登録を回避する手段として偽装ファクタリングという手法を用いているのです。
実際の裁判例においても、ファクタリング契約として締結された取引が実質的には金銭消費貸借契約であると判断され、貸金業法違反として処罰されるケースが増加しています。東京高裁令和3年7月1日判決では、売掛先が弁済しなかった場合に利用者が債権額以上の金額をファクタリング会社に支払う旨の公正証書を作成させていた事案について、ファクタリング業者が回収リスクを負担しておらず、貸金業法上の貸付けに当たると判断されました。
無登録での貸金業営業は、貸金業法第47条により10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれらの併科という重い刑事罰の対象となります。したがって、偽装ファクタリング業者との取引は、利用者も違法行為に関与することになるリスクを含んでいるのです。
2-2. 出資法違反について
偽装ファクタリング業者のもう一つの重大な違法行為は、出資法違反です。出資法では、金銭の貸付を行う際の上限金利が年率20%と定められています。しかし、偽装ファクタリングでは手数料として年率換算で数百パーセントから千パーセントを超える異常な高利を請求するケースが多数確認されています。
例えば、手数料40%で1ヶ月後の売掛金を買い取る取引を行った場合、これを年率に換算すると480%という途方もない高利になります。出資法で定められた上限金利20%を24倍も上回る違法な高利であり、明らかな出資法違反です。
出資法第5条では、年率20%を超える利息での金銭貸付について、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科という厳しい刑事罰を定めています。偽装ファクタリング業者の多くがこの出資法違反により摘発・逮捕されており、2019年には東京都のコンサルティング会社社長らが偽装ファクタリングによる出資法違反で逮捕される事件も発生しています。
さらに、これらの異常な高利は、利用者企業の経営を急激に圧迫します。本来受け取れるはずの売掛金から大幅に減額された資金しか調達できないため、一時的に資金繰りが改善されたように見えても、実際には企業の財務状況は大幅に悪化することになります。
2-3. 金融庁や貸金業協会からの注意喚起
偽装ファクタリングの被害拡大を受けて、金融庁と日本貸金業協会は積極的な注意喚起を行っています。金融庁では公式ウェブサイトにおいて「ファクタリングの利用に関する注意喚起」を発表し、偽装ファクタリングの危険性について詳細に解説しています。
金融庁が示している偽装ファクタリングの典型的な特徴として、以下の点が挙げられています。まず、譲渡した債権の回収業務がファクタリング業者から利用者に委託されており、利用者が集金できなかった場合に買戻しや弁済を求められること。次に、債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額であること。そして、利用者の信用状況によって買取代金の額が決定されることです。
日本貸金業協会でも「悪質な金融業者にご注意!」として、偽装ファクタリングに対する警告を発しています。同協会では、偽装ファクタリングの疑いがある業者の特徴として、高額な手数料を差し引くにもかかわらず債権回収リスクを負わない点、実態が貸付けであるにもかかわらず貸金業登録を行っていない点を挙げています。
これらの公的機関による注意喚起は、偽装ファクタリングが単なる民事上のトラブルではなく、社会全体に深刻な影響を与える違法行為であることを示しています。中小企業の健全な資金調達環境を守るためにも、これらの違法業者の排除は急務となっているのです。
3. 偽装ファクタリング業者の典型的な手口と勧誘方法
3-1. 高額手数料による実質的な貸付
偽装ファクタリング業者の最も典型的な手口は、異常に高額な手数料を設定することです。正規のファクタリングでは手数料が売掛債権額の10%から20%程度であるのに対し、偽装ファクタリングでは40%から50%、場合によっては60%を超える手数料を請求するケースも確認されています。
例えば、100万円の売掛債権に対して手数料40%を請求された場合、利用者が実際に受け取れる金額は60万円に過ぎません。しかし、売掛先からの回収時には100万円全額をファクタリング業者に支払わなければならないため、実質的には60万円を借りて40万円の利息を支払うという金銭消費貸借契約と同じ構造になります。これを年率に換算すると、回収期間が1ヶ月の場合で年率480%という異常な高利となります。
さらに悪質なケースでは、契約時に提示された手数料以外にも、審査手数料、事務手数料、出張費用、印紙代などの名目で追加の費用を請求し、利用者が実際に受け取れる金額を大幅に減少させる手法も用いられています。これらの追加費用により、当初説明された条件とは大きく異なる不利な条件での取引を強要されることになります。
また、複数回の取引を重ねることで利用者を債務の罠に陥れる手法も確認されています。初回は比較的低い手数料で取引を行い、利用者の信頼を得た後に徐々に手数料を引き上げていく、あるいは回収が困難な債権を意図的に買い取り、その後の買戻し要求により利用者から金銭を搾取するという悪質な手口です。
3-2. 償還請求権付きの契約内容
偽装ファクタリングの特徴的な手口として、償還請求権付きの契約内容があります。正規のファクタリングでは「ノンリコース」つまり償還請求権なしが原則ですが、偽装ファクタリングでは様々な理由をつけて利用者に債権の回収リスクを負わせようとします。
具体的には、売掛先が支払い遅延を起こした場合や倒産した場合に、利用者に対して売掛債権の買戻しを要求する条項を契約書に盛り込みます。また、売掛先の信用状況が悪化した場合の追加保証金の支払いや、回収業務の委託という名目で利用者に債権回収の責任を押し付ける条項も見受けられます。
さらに悪質なケースでは、利用者に対して連带保証人の設定や担保の提供を要求することもあります。ファクタリングは本来、利用者の信用状況ではなく売掛先の信用状況を基準に審査を行う取引であるため、利用者への保証人や担保の要求は明らかに異常です。これらの要求は、取引が実質的な金銭消費貸借契約であることを示す明確な証拠となります。
また、売掛先からの回収が遅延した場合に、遅延損害金や延滞金を請求する条項を設けることも多く見られます。これらの遅延損害金も年率換算で異常な高率に設定されており、利用者の負担をさらに重くする要因となっています。
3-3. 審査通過率100%の誇大広告
偽装ファクタリング業者は、資金繰りに困窮した企業を勧誘するために、「審査通過率100%」「他社で断られた方でもOK」といった誇大広告を多用します。しかし、正規のファクタリング取引において審査通過率100%ということは現実的にありえません。
正規のファクタリングでは、売掛債権の実在性、売掛先の信用状況、取引の継続性などを慎重に審査します。売掛先が既に倒産している場合や支払い遅延を繰り返している場合、また売掛債権の存在が確認できない場合などは、当然審査を通過することはできません。にもかかわらず審査通過率100%を謳う業者は、適切な審査を行っていない、あるいは審査の結果にかかわらず高額な手数料で契約を強要する意図があると考えられます。
また、「即日資金化」「最短30分で入金」といった過度にスピードを強調する広告も注意が必要です。正規のファクタリングでも比較的短期間での資金化は可能ですが、適切な審査と手続きを経るためには一定の時間が必要です。極端に短時間での資金化を謳う業者は、審査を省略している可能性が高く、後に様々なトラブルが発生するリスクがあります。
さらに、「ブラックリスト掲載中でも利用可能」「赤字決算でも問題なし」といった表現も、偽装ファクタリング業者の典型的な勧誘文句です。これらの表現は、取引が利用者の信用状況に基づく実質的な貸付であることを暗示しており、正規のファクタリングとは明らかに異なる性質の取引であることを示しています。
4. 偽装ファクタリングによる被害実例と逮捕事件
4-1. 実際の摘発事例について
偽装ファクタリングによる摘発事例は年々増加しており、社会問題として注目されています。最も注目された事件の一つは、2017年1月に大阪府警が行った初の偽装ファクタリング業者摘発です。この事件では、東洋商事の代表三浦容疑者らが、ファクタリングを装って売掛金を担保にした高利貸しを行ったとして逮捕されました。
この事件では、業者は売掛債権を買い取ると称しながら、実際には売掛金を担保として高金利での貸付を行っていました。被害額は総額3億円以上に上り、全国の中小企業約200社が被害を受けました。年率換算で300%を超える異常な高利での貸付が行われており、出資法違反と貸金業法違反の両方で起訴されています。
2019年には、東京都のコンサルティング会社社長らが偽装ファクタリングによる貸金業法違反と出資法違反で逮捕される事件も発生しました。この事件では、11人の容疑者が逮捕され、被害総額は数億円規模に達しました。業者はファクタリング業務を行うと称しながら、実際には売掛債権を担保とした高利貸しを継続的に行っていました。
2021年2月には、一般社団法人ハートフルライフ協会の幹部ら6名が、偽装ファクタリングによる貸金業法違反・出資法違反の容疑で逮捕されました。同協会は2016年11月から2020年4月にかけて、貸金業登録を行わずに中小企業経営者5名に対して計約1億3000万円を貸し付け、法定金利の8倍から34倍に相当する約3000万円の違法な利益を得ていました。
4-2. 利用者・業者双方の被害状況
偽装ファクタリングによる被害は、利用者側だけでなく業者側にも及んでいます。利用者側の被害としては、法外な手数料により本来受け取れるはずの売掛金が大幅に減額され、企業の資金繰りが急激に悪化するケースが多数報告されています。
具体的な被害事例として、売上高1億円程度の製造業A社のケースがあります。A社は急な資金需要に対応するため、1000万円の売掛債権を偽装ファクタリング業者に持ち込みました。業者は手数料40%で買い取ると提案し、A社は600万円を受け取りました。しかし、売掛先からの回収時には1000万円全額を業者に支払う必要があり、実質的に600万円を借りて400万円の利息を支払ったことになりました。
さらに深刻なケースでは、利用者が架空の売掛債権を作成してファクタリング業者を騙し、詐欺罪で逮捕される事件も発生しています。2020年には、製造販売会社の社長が大手電力会社への架空の売掛債権900万円を作成し、ファクタリング業者から290万円を騙し取ったとして詐欺容疑で逮捕されました。
業者側の被害としては、利用者による売掛債権の二重譲渡や架空債権の売却により、数百万円から数千万円規模の損失を被るケースが確認されています。また、正規のファクタリング業者にとっては、偽装ファクタリング業者の存在により業界全体の信用が失墜し、健全な事業運営に支障をきたすという間接的な被害も発生しています。
4-3. 社会問題化の背景
偽装ファクタリングが社会問題化している背景には、中小企業の資金調達環境の厳しさがあります。銀行融資の審査基準が厳格化される中で、従来の融資に代わる資金調達手段としてファクタリングへの注目が高まっています。この需要の高まりに乗じて、違法業者が偽装ファクタリングという手法で中小企業を標的にしているのです。
また、ファクタリング業界自体の法整備の遅れも問題を深刻化させています。ファクタリング業務を行うために特別な許認可は必要なく、参入障壁が低いため、違法業者が容易に参入できる環境が整っています。正規の業者と違法業者の区別が困難であることも、被害拡大の一因となっています。
さらに、コロナ禍による経済環境の悪化により、資金繰りに困窮する中小企業が急増したことも、偽装ファクタリング被害拡大の背景となっています。緊急性の高い資金需要に対して、十分な検討を行わずに契約してしまう企業が増加し、結果として被害が拡大しているのです。
インターネットの普及により、偽装ファクタリング業者の勧誘手法も巧妙化しています。ウェブサイトでは正規のファクタリング会社を装い、実際の契約段階で違法な条件を提示するという手法が多用されています。また、SNSやメールを利用した営業活動により、幅広い企業に接触することが可能になっています。
5. 偽装ファクタリング業者を見分ける具体的なポイント
5-1. 契約書の内容確認方法
偽装ファクタリング業者を見分ける最も重要なポイントは、契約書の内容を詳細に確認することです。正規のファクタリング契約では「債権譲渡契約」または「売買契約」と明記されていますが、偽装ファクタリングでは「金銭消費貸借契約」の要素を含む条項が散見されます。
まず確認すべきは、償還請求権に関する条項です。正規のファクタリングでは「ノンリコース」つまり「償還請求権なし」が明記されており、売掛先の倒産等により回収不能となった場合でも、利用者に支払い義務は発生しません。一方、偽装ファクタリングでは「売掛先が支払不能となった場合の買戻し義務」「回収不能時の補償責任」などの条項が設けられています。
次に重要なのは、利息や遅延損害金に関する記載です。ファクタリングは債権の売買であるため、本来利息という概念は存在しません。しかし、偽装ファクタリングでは「遅延利息」「延滞金」「遅延損害金」といった金銭消費貸借契約特有の条項が含まれています。これらの条項が存在する場合、取引の実態が貸付であることを示す明確な証拠となります。
また、分割払いに関する条項の有無も重要な判断基準です。正規のファクタリングでは、売掛先からの回収金額を一括でファクタリング会社に支払うのが原則です。しかし、偽装ファクタリングでは「分割での支払い可能」「リスケジュール対応」といった条項を設けることがあります。これらは実質的な返済条件の変更であり、貸付契約の特徴を示しています。
契約書に記載された会社情報の確認も欠かせません。正規のファクタリング会社では、代表者名、本社所在地、連絡先、資本金などが明確に記載されています。一方、偽装ファクタリング業者では、これらの情報が曖昧であったり、架空の住所が記載されていたりするケースがあります。
5-2. 手数料や条件の妥当性判断
手数料の妥当性を判断することは、偽装ファクタリング業者を見分ける重要な要素です。正規のファクタリングでは、2社間取引で8%から18%程度、3社間取引で2%から9%程度が一般的な相場となっています。これを大幅に超える手数料を提示する業者は、偽装ファクタリングの可能性が高いと考えられます。
特に注意すべきは、手数料40%以上を提示する業者です。このような異常に高い手数料は、実質的な貸付における法外な利息に相当します。例えば、手数料40%で1ヶ月後の売掛債権を買い取る取引の場合、年率換算で480%という出資法の上限金利を大幅に超える違法な高利となります。
また、当初の説明と契約時の条件に大きな乖離がある業者も要注意です。電話やメールでの初回相談時には低い手数料を提示しておきながら、実際の契約段階で審査手数料、事務手数料、出張費用などの名目で追加費用を請求し、実質的な手数料を大幅に引き上げる手法が多用されています。
さらに、利用者の信用情報や決算内容を重視する業者は偽装ファクタリングの可能性があります。正規のファクタリングでは、売掛先の信用状況が最も重要な審査要素であり、利用者の財務状況は二次的な要素に過ぎません。利用者の信用情報を詳細に調査したり、保証人や担保を要求したりする業者は、実質的な貸付を行おうとしている可能性が高いといえます。
5-3. 会社の信頼性確認方法
偽装ファクタリング業者を見分けるためには、会社の信頼性を多角的に確認することが重要です。まず、会社の基本情報として、法人登記の有無、本社所在地の実在確認、代表者の経歴や過去の事業歴などを調査する必要があります。
法人登記については、国税庁の法人番号公表サイトや法務局での登記事項証明書の取得により確認できます。偽装ファクタリング業者の中には、法人登記を行っていない個人事業者や、架空の法人名を使用している場合があります。また、登記住所と実際の営業所が異なる場合や、バーチャルオフィスを使用している場合も注意が必要です。
次に、貸金業登録の有無を確認することも重要です。偽装ファクタリング業者の多くは貸金業登録を行っていませんが、実質的な貸付業務を行っている場合には登録が必要となります。金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」や日本貸金業協会の「貸金業相談・紛争解決センター」で登録状況を確認できます。
さらに、インターネット上での評判や口コミ情報も参考になります。ただし、偽装ファクタリング業者の中には、自作自演の好意的な口コミを多数投稿している場合もあるため、情報の真偽を慎重に判断する必要があります。日本貸金業協会の「ヤミ金(悪質業者)の実例検索」で該当業者が掲載されていないかを確認することも有効です。
営業実態の確認も重要なポイントです。正規のファクタリング会社では、適切な営業所を構え、複数の従業員が勤務しています。一方、偽装ファクタリング業者では、携帯電話のみでの連絡、面談場所が喫茶店やレンタルオフィス、担当者が頻繁に変更されるなどの特徴が見られます。
6. 被害に遭った場合の対処法と相談窓口
6-1. 被害発覚時の初期対応
偽装ファクタリングの被害に遭ったことが判明した場合、迅速かつ適切な初期対応を行うことが被害拡大の防止につながります。まず最初に行うべきは、証拠の保全です。契約書、取引記録、メールやLINEでのやり取り、振込明細書、領収書など、取引に関するすべての書類や通信記録を整理して保管してください。
これらの証拠は、後の法的手続きや被害回復において極めて重要な役割を果たします。特に、業者が提示した当初の条件と実際の契約内容の違い、異常に高額な手数料の証拠、償還請求権に関する条項などは、偽装ファクタリングであることを証明する重要な材料となります。
次に重要なのは、追加の被害を防ぐための措置です。偽装ファクタリング業者からの追加の取引提案や金銭要求には一切応じず、連絡も最小限に留めるべきです。特に、「ジャンプ」と呼ばれる支払期日の延長や、新たな債権での取引提案は、被害をさらに拡大させる可能性が高いため、断固として拒否する必要があります。
また、業者からの違法な取立て行為がある場合には、その内容を詳細に記録してください。深夜や早朝の電話、勤務先への連絡、近隣住民への接触、暴力的な言動などは、すべて違法行為に該当する可能性があります。これらの記録は、後の刑事告発や民事訴訟において重要な証拠となります。
6-2. 公的相談窓口について
偽装ファクタリング被害に遭った場合、複数の公的相談窓口が利用できます。最も重要な相談先の一つは、金融庁の金融サービス利用者相談室です。この相談室では、偽装ファクタリングを含む金融トラブル全般について、専門的な相談を受け付けています。電話番号は0570-016811(ナビダイヤル)で、平日10時から17時まで相談可能です。
日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センターも重要な相談窓口です。偽装ファクタリング業者の多くは無登録の貸金業者であるため、同協会での相談が効果的です。電話番号は0570-051-051で、平日9時から17時まで相談を受け付けています。また、同協会のウェブサイトでは「ヤミ金(悪質業者)の実例検索」も提供されており、被害業者の情報確認にも活用できます。
消費者ホットライン188番も有効な相談先です。この番号に電話すると、居住地域の消費生活センターに自動接続され、専門の相談員から適切なアドバイスを受けることができます。消費生活センターでは、契約トラブルの解決支援やあっせん、法的手続きの案内なども行っています。
警察への相談も重要な選択肢です。偽装ファクタリングは貸金業法違反や出資法違反などの刑事犯罪に該当する可能性が高いため、最寄りの警察署や都道府県警察本部の生活安全課に相談することをお勧めします。また、警察庁のウェブサイトでは「違法な金融業者の検索サービス」も提供されており、業者の違法性確認に活用できます。
6-3. 法的対応の選択肢
偽装ファクタリング被害に対する法的対応には、民事訴訟と刑事告発の両方の選択肢があります。民事訴訟では、過払い金の返還請求や損害賠償請求を行うことができます。偽装ファクタリングが利息制限法や出資法に違反する貸付であると認定された場合、支払い済みの手数料のうち法定金利を超える部分について返還を求めることが可能です。
具体的には、年率20%を超える部分について過払い金として返還請求できる可能性があります。また、違法な取立て行為により精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料の請求も検討できます。ただし、民事訴訟には時間と費用がかかるため、弁護士との十分な相談のもとで判断することが重要です。
刑事告発については、偽装ファクタリング業者の貸金業法違反、出資法違反、詐欺罪などの刑事責任を追及することができます。刑事告発により業者が摘発されれば、社会全体の被害防止にも貢献できます。刑事告発の手続きについては、弁護士や司法書士のサポートを受けながら進めることをお勧めします。
また、集団訴訟という選択肢もあります。同一の偽装ファクタリング業者から被害を受けた複数の企業が共同で訴訟を提起することで、訴訟費用の軽減や証拠収集の効率化が図れます。被害者同士の情報共有により、業者の違法行為をより詳細に立証することも可能になります。
法的手続きを進める際には、必ず専門家のサポートを受けることが重要です。弁護士や司法書士は、事案の性質に応じて最適な解決方法をアドバイスし、手続きの代行も行います。また、法テラスの法律相談援助制度を利用すれば、経済的負担を軽減しながら専門的なサポートを受けることも可能です。
7. よくある質問
7-1. ファクタリング自体は違法ではないのですか?
A1. ファクタリング自体は民法第466条「債権の譲渡性」に基づく適法な資金調達方法です。問題となるのは「偽装ファクタリング」と呼ばれる、ファクタリングを装いながら実際には違法な高利貸しを行う業者の存在です。正規のファクタリング会社では、適切な手数料設定と償還請求権なしの契約により、健全な資金調達サービスを提供しています。
7-2. 偽装ファクタリングと正規ファクタリングの見分け方を教えてください。
最も重要な判断基準は手数料の水準です。正規ファクタリングでは2社間取引で8~18%程度が相場ですが、偽装ファクタリングでは40%以上の異常な高率となります。また、契約書に「償還請求権」「買戻し義務」「遅延損害金」などの条項がある場合、偽装ファクタリングの可能性が高いです。さらに「審査通過率100%」「即日資金化」などの過度な宣伝文句にも注意が必要です。
7-3. 偽装ファクタリング業者と契約してしまった場合、支払い義務はありますか?
偽装ファクタリングが利息制限法や出資法に違反する違法な貸付であると認定された場合、法定金利を超える部分については支払い義務がありません。むしろ過払い金として返還請求できる可能性があります。ただし、個別の事案により判断が異なるため、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
7-4. 被害に遭った場合、どこに相談すればよいですか?
複数の相談窓口があります。金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051)、消費者ホットライン(188番)などが主要な相談先です。また、刑事事件として警察への相談、民事事件として弁護士への相談も重要な選択肢です。
7-5. 偽装ファクタリング業者からの取立てが激しい場合はどうすればよいですか?
深夜早朝の電話、勤務先への連絡、威圧的な言動などは違法な取立て行為に該当します。まず、取立ての内容を詳細に記録し、証拠として保全してください。その上で、警察への相談や弁護士への依頼を検討することをお勧めします。また、貸金業協会への通報により、業者への指導が行われる場合もあります。
8. まとめ
偽装ファクタリングは、表面的にはファクタリング契約を装いながら、実際には違法な高利貸しを行う極めて悪質な犯罪行為です。これらの業者は貸金業登録を行わず、法外な手数料を請求し、中小企業の健全な経営を破綻に追い込む社会的害悪となっています。
本記事で解説した通り、偽装ファクタリング業者には明確な特徴があります。異常に高額な手数料、償還請求権付きの契約内容、誇大広告による勧誘などは、いずれも正規のファクタリングとは大きく異なる違法業者の典型的な手口です。これらの特徴を理解し、契約前に十分な検討を行うことで、被害を未然に防ぐことができます。
正規のファクタリングは、中小企業にとって有効な資金調達手段であり、政府も推進している適法なサービスです。適切な業者を選択し、契約内容を十分に確認した上で利用すれば、迅速かつ安全な資金調達が可能となります。手数料の相場、償還請求権の有無、契約書の内容など、本記事で紹介したチェックポイントを活用して、信頼できるファクタリング会社を選択してください。
万が一偽装ファクタリングの被害に遭った場合には、一人で悩まず、適切な相談窓口や専門家のサポートを受けることが重要です。証拠の保全、追加被害の防止、法的手続きの検討など、段階的かつ戦略的な対応により、被害回復の可能性を高めることができます。
健全な経営環境の維持と中小企業の発展のためにも、偽装ファクタリングという違法行為を社会全体で根絶していく必要があります。正しい知識と適切な判断により、安全で有効な資金調達を実現していただくことを強く願っています。

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