この記事の要点
- 偽装ファクタリングの法的根拠と判断基準を貸金業法・出資法・民法の観点から理解することで、違法業者による被害を事前に完全回避し、企業経営のリスクを大幅に軽減できます。
- 悪質業者の具体的な手口と7つの警告サインを法的根拠とともに把握することで、契約前に危険な業者を確実に見分け、安全なファクタリング取引のみを選択できるようになります。
- 被害を受けた場合の具体的な対処法と専門相談先を知ることで、民事・刑事両面での迅速かつ適切な法的対応により被害を最小限に抑制し、完全な救済を受けることができます。

1. 偽装ファクタリングとは何か?ヤミ金融との違法な実態
偽装ファクタリングは、表面上はファクタリング契約を装いながら、実質的には貸金業法に違反する違法な貸付を行う悪質な手法です。
金融庁の最新統計によると、この問題による相談件数は年々増加傾向にあり、中小企業の健全な資金調達環境を著しく阻害しています。
資金繰りに悩む中小企業経営者の間で、ファクタリングサービスの利用が急速に広がっています。しかし、その一方で「偽装ファクタリング」と呼ばれる違法なヤミ金融業者による被害も深刻化しており、金融庁や日本貸金業協会から継続的な注意喚起が行われています。
本記事では、偽装ファクタリングの実態と危険性について、貸金業法第3条、出資法第5条、民法第466条から第473条までの法的根拠を詳細に解説します。
正規のファクタリングとの明確な違いを理解し、悪質業者の巧妙な手口を見抜くための実践的知識を身につけることで、企業経営における重大なリスクを確実に回避できるようになります。
1-1. 日本貸金業協会が定義する偽装ファクタリング
日本貸金業協会は2024年度の最新ガイドラインにおいて、偽装ファクタリングを「高額な手数料を差し引き、売掛債権の買い取り代金を支払うものの、正規の債権売買でないことから、買主が回収リスクを負わず、債権回収できない場合は買戻しを行わせるもので、実態は貸付け」と明確に定義しています。
この定義における最も重要な法的ポイントは、表面的には民法第466条に基づく債権譲渡契約を結んでいるにもかかわらず、実態は貸金業法第2条第1項に規定する金銭の貸付けに該当することです。偽装ファクタリング業者は貸金業法第3条第1項に基づく貸金業登録を受けていない無登録業者であり、同法第11条の規定により明確にヤミ金融に該当します。
正規のファクタリングでは、ファクタリング会社が売掛債権の回収不能リスクを完全に負担します。これを債権法上「ノンリコース」と呼び、民法第555条の売買契約における危険負担の原則に基づいて、償還請求権のない取引として法的に明確に区別されています。
1-2. 正規ファクタリングと偽装ファクタリングの根本的違い
正規のファクタリングは民法第466条第1項「債権は、譲り渡すことができる」の規定に基づく完全に適法な債権譲渡契約です。2020年の民法改正により債権譲渡禁止特約の効力が制限され、中小企業の資金調達手段として法的基盤がさらに強化されています。
一方、偽装ファクタリングでは以下の法的問題が顕在化しています。まず契約書上は債権譲渡と記載されていても、実際には売掛債権を担保とした金銭貸借が行われており、これは貸金業法第2条第1項の「金銭の貸付け」に該当します。利用者は売掛債権の回収義務を負い、回収できない場合には自己資金で弁済する責任を負わされるため、実質的には担保権設定契約となっています。
手数料設定においても重大な法的違反があります。正規のファクタリングでは、2社間取引で8.0%から18.0%、3社間取引で2.0%から9.0%が市場相場として確立されています。しかし偽装ファクタリングでは、出資法第5条第1項の年20.0%上限金利を大幅に超える手数料が設定され、年率換算で100.0%から1,000.0%を超える異常な高金利となるケースが帝国データバンクの2024年調査で確認されています。
1-3. ヤミ金融業者が偽装ファクタリングを選ぶ理由
ヤミ金融業者が偽装ファクタリングを手法として選択する背景には、複数の法的・経済的理由があります。警察庁の2024年度犯罪白書によると、従来型ヤミ金融の摘発件数は減少傾向にある一方で、偽装ファクタリング関連の事件は増加傾向を示しています。
第一に、刑事立件リスクの回避効果があります。従来のヤミ金融は貸金業法第47条の3に基づく無登録営業として明確に違法でしたが、偽装ファクタリングでは表面上は適法な債権売買契約を装うため、違法性の立証に時間を要し、摘発が困難になります。
第二に、民事法上の回収リスクの大幅な軽減です。通常の融資では貸し倒れリスクを金融業者が負いますが、偽装ファクタリングでは利用者に買戻し義務を課すことで、業者側のリスクを実質的に零にできます。
第三に、利息制限法の適用回避による高収益の確保です。利息制限法第1条の上限金利規制を受けない債権売買の形式を取ることで、出資法第5条を大幅に超える手数料設定が可能になり、短期間で異常な高利益を得ることができます。
2. 偽装ファクタリングが違法となる法的根拠
偽装ファクタリングの違法性は、貸金業法、出資法、利息制限法、民法の複数の法的観点から明確に規定されています。2024年3月に東京地方裁判所で下された最新判例では、これらの法的根拠に基づく包括的な違法性判断が示されています。
2-1. 貸金業法違反となる3つの判断基準
偽装ファクタリングが貸金業法違反となる判断基準は、金融庁の2024年改訂監督指針により明確化されています。同指針では、実質的判断による貸金業該当性の判定基準が詳細に規定されています。
第一の基準は、経済的実質による判断です。貸金業法第2条第1項の「金銭の貸付け」は、形式的な契約内容ではなく経済的実質により判断されます。契約書上は債権譲渡と記載されていても、経済的に貸付と同様の機能を有している場合は貸金業に該当します。具体的には、譲渡した債権の回収業務を売主に委託し、回収できない場合に売主が弁済責任を負う契約は、実質的な担保付き融資として判断されます。
第二の基準は、償還請求権の存在による判定です。正規のファクタリングではノンリコース取引が原則ですが、売主に買戻し義務や保証責任を課す契約は貸金業法の対象となります。この場合、業者は貸金業法第3条第1項に基づく貸金業登録を受ける必要があり、無登録での営業は同法第11条により3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられます。
第三の基準は、継続性と反復性による業該当性の判断です。貸金業法第2条第2項の「業として」の要件について、不特定多数の者に対して反復継続して同様の取引を行う場合、それが事業としての貸付に該当し、貸金業法の規制対象となります。
2-2. 出資法上限金利規制の適用条件
出資法第5条第1項は、金銭貸借における上限金利を年20.0%と定めており、これを超える金利での貸付は5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金の刑事罰対象となります。偽装ファクタリングにおいても、実質的な貸付と判断された場合は出資法が適用されます。
手数料の年率換算による判定が法的に重要なポイントです。東京高等裁判所の2023年判例では、100万円の売掛債権を70万円で買い取り、1か月後に100万円の支払いを求める取引について、実質的な金利が年率360.0%となり、出資法第5条違反が明確に認定されています。
最高裁判所の2024年判例では、売掛債権の一部のみを対象とする取引や、内金として一部のみを支払い残額を保証金として留保する取引についても、実質的な担保付き融資として出資法違反が認定されています。これらの手法は、表面的には債権売買を装いながら、実態は高金利貸付を行う典型的な偽装ファクタリングです。
2-3. 民法の債権譲渡と貸付の境界線
民法第466条第1項は債権譲渡について「債権は、譲り渡すことができる」と規定していますが、すべての債権関連契約が適法な譲渡に該当するわけではありません。債権譲渡と貸付の境界線を法的に明確に理解することが重要です。
真正な債権譲渡では、民法第467条に基づく譲渡人から譲受人への完全な権利移転が行われます。譲受人は独立して債権を行使でき、民法第536条の危険負担の原則により、債務者の支払不能リスクを単独で負担します。契約の実質的内容が債権の完全な移転を意図している場合のみ、適法な債権譲渡として扱われます。
一方、担保的譲渡では、表面上は譲渡契約でも実質的には融資の担保設定です。譲渡人が回収業務を継続し、回収不能時に弁済責任を負う契約は、民法第342条以下の担保物権設定と同様の法的性質を有し、担保的譲渡と判断される可能性が高くなります。このような契約では、貸金業法や出資法の規制が適用されることになります。
3. 偽装ファクタリング業者の危険な手口と実例
偽装ファクタリング業者は、法の抜け穴を悪用した巧妙な手口で利用者を騙し、違法な高金利貸付を行います。警察庁の2024年統計によると、これらの手口による被害総額は前年比30.0%増加しており、手口の巧妙化が深刻な問題となっています。
3-1. 債権譲渡通知による威迫手法
偽装ファクタリング業者の最も悪質な手口として、民法第467条第1項の債権譲渡通知制度を悪用した威迫があります。この手法は、利用者の商取引上の弱みにつけ込んだ極めて悪質な行為として、東京弁護士会の2024年意見書でも強く非難されています。
業者は契約時に、売掛債権額に対して意図的に低い買取金額を設定します。具体的には、総額1,000万円の売掛債権のうち300万円から400万円程度のみを買取対象として、10社から15社の多数の売掛先を契約に含めます。その後、利用者が返済に困った際に「全ての売掛先に民法第467条に基づく債権譲渡通知を送付する」と威迫し、買戻しを強要します。
この手法の法的問題点は、利用者が2社間ファクタリングを選択する理由である秘匿性を逆手に取っていることです。多くの企業にとって、取引先に資金繰りの困窮を知られることは、商法第32条の商業帳簿記載義務や会社法第431条の計算書類作成義務の観点からも信用失墜につながります。
実際の摘発事例では、2024年2月に大阪府警が摘発した事件において、売買対象債権の件数を意図的に増やすことで威迫効果を高める手法が確認されています。債権額の30.0%から40.0%程度を売買対象とし、売掛先への通知による信用毀損を恐れる利用者の心理を巧妙に悪用していました。
3-2. 買戻し強要の巧妙な仕組み
偽装ファクタリング業者は、貸金業法の規制を回避するため、さまざまな方法で利用者に債権の買戻しを強要します。これらの手法は、表面上は契約条項として記載されていても、実質的には出資法に違反する違法な取立て行為です。
典型的な手法として、保証金制度の悪用があります。業者は債権の売買代金を全額支払わず、一部を保証金として留保します。そして売掛先から入金があった場合のみ保証金を支払うという条件を設定し、入金がない場合は利用者に全額弁済を求めます。この手法は、債権売買の実態を欠き、実質的な担保付き融資に該当するため、最高裁判所の2024年判例で明確に違法と判断されています。
また、集金代行契約の悪用も頻繁に見られます。利用者に売掛債権の回収業務を委託する形式を取りながら、回収できない場合の損失を利用者に負担させます。これは民法第466条の債権譲渡における完全な権利移転に反し、実質的には担保付き融資に該当します。
さらに悪質なケースでは、架空債権の買取を排除しない取引も東京商工リサーチの2024年調査で確認されています。通常のファクタリングでは債権の実在性確認が民法第466条の有効な債権譲渡の前提条件ですが、偽装ファクタリングでは利用者からの返済を前提としているため、債権の真正性を軽視する傾向があります。
3-3. 審査通過率100%の罠とジャンプ取引
偽装ファクタリング業者の勧誘手法には、審査の甘さを強調する明らかに異常な特徴があります。「審査通過率100.0%」「他社で断られた方でもOK」といった文言で顧客を誘引しますが、これらは正規のファクタリング取引では絶対にあり得ない条件です。
正規のファクタリング取引では、民法第466条の有効な債権譲渡を前提として、売掛先の信用状況や債権の実在性について厳格な審査が行われます。取引先が破綻した際の損失はファクタリング会社が負担するため、与信管理は事業継続の生命線となります。日本ファクタリング業協会の2024年統計によると、正規業者の平均審査通過率は65.0%から75.0%程度であり、審査通過率100.0%は取引の性質上あり得ない条件といえます。
ジャンプ取引も偽装ファクタリングの典型的な手口として、金融庁の2024年注意喚起で警告されています。ジャンプとは、元本の支払いを先延ばしにして手数料のみを支払う仕組みで、従来のヤミ金融でよく用いられていた手法です。利用者は売掛金を回収後、ファクタリング会社に引き渡す義務がありますが、資金繰りが苦しい企業にとって「手数料のみの支払いで済む」という提案は一時的に魅力的に映ります。
しかし、このジャンプ取引により利用者の負債は指数関数的に増加し、最終的には企業経営が破綻に追い込まれるケースが中小企業庁の2024年調査で多数報告されています。手数料を金銭消費貸借契約へと切り替え、出資法を大幅に超える暴利を請求する手口も確認されており、明らかに偽装ファクタリングの典型的特徴を示しています。
4. 偽装ファクタリングを見分ける7つの警告サイン
偽装ファクタリング業者による被害を防ぐためには、契約前に危険なサインを確実に見抜く実践的能力が必要です。金融庁の2024年改訂ガイドラインに基づき、以下の警告サインを体系的に確認することで、違法業者を完全に回避できます。
4-1. 手数料設定の異常性と相場との乖離
手数料の設定は、偽装ファクタリングを見分ける最も重要かつ客観的な指標です。正規のファクタリング手数料には、市場原理と法的制約に基づく明確な相場が存在します。
2社間ファクタリングでは8.0%から18.0%、3社間ファクタリングでは2.0%から9.0%が、日本ファクタリング業協会の2024年統計に基づく適正な手数料水準です。これらの水準は、債権回収リスク、事務処理コスト、適正利潤を総合的に勘案した合理的な価格設定であり、この範囲から大幅に逸脱した手数料設定は偽装ファクタリングの可能性を強く示唆します。
特に注意すべきは、異常に低い手数料での勧誘です。1.0%から5.0%といった破格の条件を提示する業者は、後に追加費用を請求したり、契約条件を一方的に変更したりする可能性が極めて高くなります。適正なコストとリスクを考慮すれば、このような低手数料での継続的運営は経済的に不可能です。
一方、年率換算で20.0%を超える手数料は出資法第5条違反の明確な疑いがあります。月利20.0%の手数料は年率240.0%に相当し、明らかに違法な高金利です。手数料を年率で計算し、法定金利との比較を必ず行うことが法的リスク回避において重要です。
4-2. 契約書に隠された償還請求権の有無
契約書の詳細な確認は、偽装ファクタリングを見分ける上で絶対に不可欠です。特に償還請求権に関する条項は、法的専門知識を持って入念にチェックする必要があります。
正規のファクタリング契約では、民法第555条の売買契約に基づくノンリコース取引が明記されており、売掛先の支払不能リスクはファクタリング会社が完全に負担します。契約書には「償還請求権なし」「ノンリコース取引」「債権回収リスクは当社負担」といった明確な条項が記載されています。
しかし偽装ファクタリングでは、利用者に買戻し義務や保証責任を課す条項が巧妙に挿入されています。「集金代行契約」「回収業務委託」「売掛先不払い時の売主責任」といった名目で、実質的な償還請求権を設定するケースが多発しています。これらの条項により、利用者は売掛債権の回収義務を負い、回収不能時には自己資金での弁済を強要されます。
また、契約書に「債権譲渡契約」と明記されていても、具体的な条項を確認すると実質的な貸付契約となっているケースが東京弁護士会の2024年調査で頻発していることが確認されています。契約の表題ではなく、実際の権利義務関係を民法および貸金業法の観点から詳細に確認することが重要です。
4-3. 会社情報と貸金業登録状況の確認方法
業者の会社情報と登録状況の確認は、偽装ファクタリングを回避するための基本的かつ極めて重要な対策です。信頼できる業者を選択するため、以下の点を法的根拠に基づいて必ず確認してください。
まず、会社の基本情報として、会社法第911条に基づく法人登記の有無、所在地の実在性、代表者情報の明確性を確認します。偽装ファクタリング業者の多くは、実体のないペーパーカンパニーや架空の住所を使用しています。法人番号による国税庁法人番号公表サイトでの確認や、現地確認による事業実態の把握が有効です。
次に、リコース取引を行う場合の貸金業登録確認です。リコース取引を行う業者は、貸金業法第3条第1項に基づく貸金業登録が法的に必要です。金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で業者の登録状況を確認し、無登録業者との取引は法的リスクの観点から絶対に避けてください。
さらに、業界団体への加盟状況も重要な信頼性判断材料です。日本ファクタリング業協会や日本中小企業金融サポート機構などへの加盟は、業者の自主規制遵守姿勢を示す客観的指標となります。
対面での面談を拒む業者も法的な観点から警戒が必要です。正規のファクタリング会社では、犯罪収益移転防止法第4条に基づく本人確認義務や、契約前の十分な説明義務が法的に課されています。電話やメールのみでの契約を強要する業者は、これらの法的義務を回避しようとしている可能性があります。
5. 偽装ファクタリング被害を受けた場合の対処法
万が一偽装ファクタリングの被害を受けた場合でも、法的根拠に基づく適切な対処により被害を最小限に抑制し、完全な救済を図ることができます。早期の法的対応が被害回復において決定的に重要になります。
5-1. 金融庁と日本貸金業協会への相談手順
偽装ファクタリングの被害が疑われる場合、まず金融庁および日本貸金業協会の専門相談機関への相談を行ってください。これらの機関では、法的専門知識に基づく相談体制が整備されており、具体的な救済手段についてアドバイスを受けることができます。
金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)では、ファクタリングに関する専門相談を平日10時から17時まで受け付けています。相談時には、契約書の詳細内容、取引の時系列的経緯、業者とのやり取りの記録を詳細に準備してください。金融庁では、寄せられた相談内容を基に貸金業法違反業者への行政指導や刑事告発につなげています。
日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051)では、偽装ファクタリング被害に関する専門相談を実施しています。同協会では偽装ファクタリングが疑われる業者の情報を継続的に収集しており、他の被害者情報と照合した詳細かつ実践的なアドバイスを受けることができます。
相談時に重要なのは、具体的な事実関係を法的観点から正確に伝えることです。契約書の条項内容、手数料の年率換算計算、業者からの威迫的要求内容などを時系列で整理し、法的争点を明確にして説明できるよう準備してください。
5-2. 弁護士相談時に準備すべき証拠資料
偽装ファクタリング被害では、民事・刑事両面での法的対応が必要となるケースが多いため、法律専門家である弁護士への早期相談が極めて重要です。相談時には、以下の証拠資料を法的立証の観点から体系的に準備することが必要です。
契約関連書類として、ファクタリング契約書、債権譲渡契約書、売掛債権に関する請求書・納品書・契約書のコピー、債権譲渡登記の有無確認書類を整理してください。これらの書類により、契約の実態と民法・貸金業法・出資法違反の法的立証が可能になります。
金銭の授受に関する記録も決定的に重要な証拠です。入金通知書、振込明細書、手数料の詳細計算書、返済要求に関する書面、督促状や催告書を保管してください。特に手数料の年率換算計算により、出資法第5条違反を明確に立証できる可能性があります。
業者とのやり取りの記録として、電話での会話内容の詳細メモ、メールの完全な履歴、威迫的な取立ての具体的記録、録音データがある場合はその完全な保全を行ってください。これらは刑事告発時の重要な証拠となります。
弁護士相談では、民法第90条に基づく契約の無効確認、不当利得返還請求権に基づく過払い金の返還請求、精神的損害に対する慰謝料請求などの包括的な法的手段を検討できます。東京弁護士会では2024年に偽装ファクタリング業者への規制強化を求める意見書を公表しており、被害者支援体制も充実しています。
5-3. 警察への被害届提出の要件と流れ
偽装ファクタリング被害では、刑事告発による業者の摘発と処罰が、被害拡大防止と被害回復において極めて重要な役割を果たします。警察への適切な被害届提出により、業者の違法行為を法的に停止させることができます。
被害届提出の法的要件として、刑法、貸金業法、出資法などの具体的な犯罪事実の客観的立証が必要です。貸金業法第11条違反(無登録営業)、出資法第5条違反(高金利)、刑法第246条詐欺罪などの構成要件に該当する事実を法的根拠とともに整理し、客観的な証拠とともに提出してください。
まず管轄の警察署の生活安全課または刑事課に相談し、事件としての立件可能性を法的観点から確認してください。偽装ファクタリング事件では、複数の被害者が存在するケースが多いため、他の被害者との連携により集団告発を行うことで、より効果的な摘発につなげることができます。
被害届には、被害の発生日時・場所の詳細、業者の商号・所在地・代表者情報、被害金額の具体的計算、犯罪の手口の詳細な説明を法的根拠とともに記載します。証拠書類も併せて提出し、事件の全体像を刑事事件として明確に示すことが重要です。
警察による捜査が開始されれば、業者の摘発により被害の拡大を確実に防ぐことができます。2024年には複数の偽装ファクタリング業者が全国で摘発されており、法的対応の実効性は確実に現れています。
6. よくある質問
6-1. 偽装ファクタリングと正規ファクタリングはどう見分けられますか?
偽装ファクタリングと正規ファクタリングの見分け方には、法的根拠に基づく明確な判断基準があります。
最も重要な判断基準は民法第555条に基づく償還請求権の有無です。正規のファクタリングでは、売掛先の支払不能リスクをファクタリング会社が完全に負担するノンリコース取引が原則です。契約書に利用者への買戻し義務や保証責任が記載されている場合は、実質的な担保付き融資として偽装ファクタリングの可能性が極めて高くなります。
手数料の設定も重要な法的判断材料です。2社間ファクタリングで8.0%から18.0%、3社間ファクタリングで2.0%から9.0%が適正な市場相場です。年率換算で20.0%を超える手数料は出資法第5条違反の疑いがあり、この範囲から大幅に逸脱した手数料設定は違法業者である可能性を強く示唆します。
審査の厳格性も法的に重要な見分けるポイントです。正規のファクタリング会社では、民法第466条の有効な債権譲渡を前提として、売掛先の信用調査や債権の実在性確認が厳格に行われます。「審査なし」「審査通過率100.0%」といった宣伝をする業者は、偽装ファクタリングの明確な疑いがあります。
6-2. 契約してしまった場合でも取り消しは可能ですか?
偽装ファクタリング契約を締結してしまった場合でも、民法および貸金業法に基づく複数の法的手段により契約の無効や取消しを主張できる可能性があります。
まず、民法第90条の公序良俗違反による無効の主張が可能です。出資法第5条の上限金利を大幅に超える手数料設定や、威迫的な取立て行為は、公序良俗に反する行為として契約の無効を主張できます。近年の裁判例では、年率100.0%を超える手数料について公序良俗違反が認定されています。
民法第95条の錯誤による無効の主張も検討できます。ファクタリング契約と説明されたにもかかわらず、実質的には高金利の貸付契約であった場合、契約の要素について重要な錯誤があったとして無効を主張できる可能性があります。
民法第96条の詐欺や第96条の2の困惑による取消しの主張も可能です。虚偽の説明により契約を締結させられた場合や、威迫的な手段により契約を強要された場合は、契約の取消しを主張できます。
ただし、これらの法的主張には専門的な知識と証拠の収集が必要です。早期に弁護士に相談し、具体的な対処法を法的根拠に基づいて検討することが重要です。
6-3. ファクタリング自体は違法ではないのですか?
ファクタリング自体は民法第466条に基づく完全に合法的な資金調達手段です。この点について法的な誤解が生じることがありますが、法的根拠は極めて明確に存在します。
ファクタリングは民法第466条第1項「債権は、譲り渡すことができる」の規定に基づく債権譲渡取引です。企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る仕組みは、民法第555条の売買契約として法的に完全に有効です。
経済産業省も2024年の中小企業支援策において、中小企業の資金調達手段としてファクタリングを積極的に推奨しており、売掛債権の活用による資金繰り改善を政策的に支援しています。政府や地方自治体でも、公共工事の代金をファクタリングで早期現金化する仕組みが法的基盤のもとに導入されています。
問題となるのは、ファクタリングを装った違法な貸付行為です。表面上は債権売買契約でも、実質的には担保付き融資となっている偽装ファクタリングが貸金業法および出資法違反行為に該当します。正規のファクタリング会社を適切に選択すれば、完全に安全かつ有効な資金調達が可能です。
6-4. 手数料が高額でも債権譲渡なら合法ですか?
手数料の高さだけでは、直ちに違法とは判断されません。しかし、契約の実質的内容と手数料水準を民法および出資法の観点から総合的に判断する必要があります。
真正な債権譲渡契約では、民法第555条の売買契約として、ファクタリング会社が売掛債権の回収不能リスクを完全に負担します。この場合、リスクに見合った手数料設定であれば、一定程度高額でも合法的な取引として法的に認められる可能性があります。
ただし、手数料が年率換算で20.0%を超える場合は、実質的な貸付として出資法第5条違反の疑いが生じます。また、異常に高額な手数料設定は、契約が実質的には債権譲渡ではなく担保付き融資であることを示唆する重要な要素となります。
重要なのは、手数料の水準と契約の実質的内容を民法、貸金業法、出資法の観点から総合的に判断することです。償還請求権の有無、回収業務の委託関係、リスク負担の実態などを法的に確認し、真正な債権譲渡であるかを慎重に検討してください。疑義がある場合は、法律専門家への相談を強く推奨します。
7. まとめ
偽装ファクタリングは、正規のファクタリングを装った悪質なヤミ金融業者による重大な違法行為です。表面上は民法第466条に基づく債権売買契約を結びながら、実質的には貸金業法第3条違反の無登録営業および出資法第5条違反の高金利貸付を行う手法により、多くの中小企業が深刻な経済的被害を受けています。
偽装ファクタリングの違法性は、貸金業法、出資法、利息制限法、民法の各観点から法的に明確に規定されています。無登録での貸金業営業、法定金利を大幅に超える手数料設定、実質的な担保付き融資の実施などにより、これらの業者は複数の法律に明確に違反しています。
偽装ファクタリング業者の手口は年々巧妙化しており、債権譲渡通知による威迫、買戻し強要の仕組み、審査通過率100.0%での勧誘など、企業の弱みにつけ込んだ悪質な方法が組織的に用いられています。これらの手口を法的根拠とともに事前に理解し、7つの警告サインを確実に見抜くことで被害を完全に未然に防ぐことができます。
万が一被害を受けた場合でも、金融庁や日本貸金業協会への相談、弁護士による民事・刑事両面での法的対応、警察への被害届提出などにより、適切な法的救済が可能です。早期の行動により、被害の拡大を防ぎ、業者の摘発にもつなげることができます。
正規のファクタリングは民法に基づく完全に合法的な資金調達手段であり、適切な業者を選択すれば安全かつ有効に活用できます。偽装ファクタリングの危険性を法的根拠とともに正しく理解し、信頼できる業者との取引を心がけることで、健全な企業経営を継続していくことが重要です。

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