この記事の要点
- 売掛先に知られることなく最短即日での資金調達が可能となり、緊急時のキャッシュフロー改善に大きく貢献します。
- 手数料相場や業者選定のポイントを理解することで、適切なコストでの資金調達を実現できます。
- 法的根拠に基づいた合法的な取引であることを確認し、安心して利用できる資金調達手段として活用できます。

1. 2社間ファクタリングの基本的な仕組みと特徴
2社間ファクタリングは、売掛先に通知することなく利用者とファクタリング会社のみで完結する資金調達方法として、多くの中小企業から注目を集めています。スピーディーな資金調達が可能である一方、手数料の高さなど利用前に理解しておくべき重要なポイントが存在します。
本記事では、2社間ファクタリングのメリットとデメリットを詳細に解説し、実際の利用を検討される際に必要となる具体的な情報を提供いたします。法的根拠に基づいた正確な情報と最新の市場動向を踏まえ、適切な判断材料をお示しします。
1-1. 2社間ファクタリングの定義と契約形態
2社間ファクタリングとは、売掛債権を保有する利用者とファクタリング会社の2社間のみで契約を締結し、売掛債権を売却する資金調達方法です。民法第466条において「債権は、譲り渡すことができる」と明記されており、法的根拠に基づいた合法的な取引として位置づけられています。
この取引では、売掛先への通知や承諾を得る必要がないため、取引関係に影響を与えることなく資金調達を実現できます。利用者は売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を受け取ります。
その後、売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社に支払うという流れになります。債権譲渡登記制度(法務省が平成10年10月から運用開始した制度で、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく)の導入により、売掛先の承諾を得ずとも第三者対抗要件を満たすことが可能となったため、現在では2社間ファクタリングが広く利用されています。
この制度により、二重譲渡リスクを回避しながら取引の安全性が確保されています。経済産業省も中小企業の資金調達多様化の観点から、ファクタリングの適切な利用を推奨しており、健全な市場発展を支援しています。
1-2. 3社間ファクタリングとの根本的な違い
3社間ファクタリングとの最も大きな違いは、売掛先の関与の有無です。3社間ファクタリングでは、利用者、ファクタリング会社、売掛先の3社が契約に関与し、売掛先への債権譲渡の通知と承諾が必要となります。
2社間ファクタリングでは売掛先への通知が不要であるため、資金調達の事実を知られることなく手続きを完了できます。一方、3社間ファクタリングでは売掛先がファクタリング会社に直接支払いを行うため、利用者による売掛金の回収業務が発生しません。
資金調達スピードにも大きな差があります。2社間ファクタリングは最短即日での入金が可能ですが、3社間ファクタリングでは売掛先への通知や承諾取得に時間を要するため、一般的に数日から1週間程度の期間が必要となります。
リスク管理の観点では、2社間ファクタリングはファクタリング会社が売掛先の支払能力を直接確認できないため、審査がより慎重に行われます。また、利用者が回収した売掛金を他の用途に使用するリスクも存在するため、手数料が高く設定される傾向があります。
2. 2社間ファクタリングの主要なメリット
2-1. 最短即日での迅速な資金調達
2社間ファクタリングの最大のメリットは、スピーディーな資金調達が可能な点です。売掛先への通知や承諾取得の手続きが不要であるため、申込みから入金まで最短即日で完了するファクタリング会社も存在します。
近年のデジタル化により、必要書類の提出から審査、契約手続きまでインターネット上で完結できるサービスが増加しています。請求書、通帳コピー、身分証明書といった基本的な書類のみで利用可能なサービスも多く、手続きの簡素化が進んでいます。
緊急時の資金需要に対して、銀行融資では審査に数週間を要する場合が多いのに対し、2社間ファクタリングは当日中の資金調達が可能であることから、キャッシュフロー改善の有効な手段として活用されています。特に建設業や運送業など、売掛金の回収サイクルが長い業種において、資金繰りの安定化に大きく貢献しています。
2-2. 売掛先に知られることなく利用可能
2社間ファクタリングでは、売掛先に対してファクタリング利用の事実を通知する必要がありません。これにより、取引先との関係性を維持しながら資金調達を行うことができます。
資金繰りの悪化を売掛先に知られることで、今後の取引条件に影響が生じるリスクや、経営状況への不安から取引停止となる可能性を回避できます。特に、主要な取引先との関係が事業継続に重要な影響を与える中小企業にとって、この秘匿性は大きなメリットとなります。
売掛金の回収も通常の取引と同様に利用者が行うため、売掛先から見ると従来の掛取引と変わらない形で進行します。これにより、取引関係の継続性を保ちながら必要な資金を確保することが可能となります。
信用情報機関への登録も行われないため、将来的な融資申請時に影響を与えることもありません。このような機密性の確保により、企業の信用維持と資金調達を両立することができます。
2-3. 審査通過の可能性向上と回収リスクの軽減
2社間ファクタリングの審査では、利用者の信用状況よりも売掛先の信用力が重視されます。売掛先が信用力の高い企業である場合、利用者の経営状況が厳しい状況でも審査に通過する可能性があります。
銀行融資では利用者の財務状況、返済能力、担保の有無などが主要な審査項目となりますが、ファクタリングでは売掛債権の存在と売掛先の支払能力が中心となります。赤字決算や債務超過の状況でも、優良な売掛先を持つ企業であれば資金調達が可能です。
ファクタリングには償還請求権(ノンリコース)がないため、万が一売掛先が倒産等により支払不能となった場合でも、利用者がファクタリング会社に対して弁済責任を負うことはありません。この点は売掛債権の回収リスクを軽減する重要なメリットとなります。
創業間もない企業や業績回復途上の企業においても、取引先の信用力を活用した資金調達が可能となるため、事業継続性の確保と成長投資の実現に寄与します。
3. 2社間ファクタリングのデメリット
3-1. 手数料の高さによる資金調達コストの増大
2社間ファクタリングの最も大きなデメリットは、手数料の高さです。現在の市場相場では8%から18%程度の手数料が設定されており、3社間ファクタリングの2%から9%程度と比較すると大幅に高くなっています。
この手数料の高さは、ファクタリング会社が負うリスクの大きさに起因しています。売掛先への債権存在確認ができないことや、利用者が回収した売掛金を使い込んでしまうリスク、二重譲渡のリスクなどが手数料に反映されています。
年率換算すると非常に高い資金調達コストとなるため、短期的な資金繰り改善以外での利用は慎重に検討する必要があります。頻繁な利用は収益性を大幅に悪化させる可能性があるため、緊急時の選択肢として位置づけることが重要です。
継続的な利用を検討する場合は、事業収益性への影響を十分に分析し、他の資金調達手段との比較検討を行うことが求められます。特に利益率の低い事業においては、手数料負担が経営を圧迫する要因となる可能性があります。
3-2. 審査の厳格化と必要書類の増加
2社間ファクタリングでは、売掛先に直接債権の存在確認ができないため、ファクタリング会社は利用者が提出する書類のみで審査を行う必要があります。このため、書類の信憑性確認や詳細な調査が必要となり、審査が厳格化される傾向があります。
請求書、契約書、納品書、入金履歴など、売掛債権の存在を証明する複数の書類の提出が求められることが一般的です。また、利用者の信用調査も行われるため、決算書や税務申告書、登記簿謄本などの提出も必要となる場合があります。
架空債権や水増し債権の譲渡を防ぐため、ファクタリング会社は慎重な審査を行います。特に初回利用時や高額な債権の場合、審査期間が長期化する可能性があり、迅速な資金調達というメリットが制限される場合があります。
書類の不備や疑義が生じた場合は、追加書類の提出や詳細な説明が求められることもあり、手続き完了までに予想以上の時間を要することがあります。
3-3. 売掛金回収時の手続き負担
2社間ファクタリングでは、利用者が売掛先から売掛金を回収し、指定期日までにファクタリング会社に支払う必要があります。この回収業務は利用者の負担となり、支払期日の管理や入金確認などの事務作業が発生します。
回収した売掛金を他の用途に使用してしまうと、契約違反となり法的な問題が生じる可能性があります。売掛金はファクタリング会社の所有物となっているため、適切な管理と速やかな支払いが求められます。
万が一、支払期日に遅れた場合は遅延損害金が発生することが一般的です。また、継続的な遅延は信用を失うことにつながり、今後の利用に影響を与える可能性があるため、資金管理の徹底が必要となります。
売掛先からの入金確認や支払処理などの事務負担も考慮する必要があります。特に複数の債権を同時にファクタリングしている場合は、管理業務が複雑化する傾向があります。
4. 2社間ファクタリングの手数料相場と利用時の重要な注意点
4-1. 最新の手数料相場と決定要因
2025年現在の2社間ファクタリングの手数料相場は8%から18%程度となっており、市場の競争激化により若干の低下傾向が見られます。オンライン完結型のサービスでは、運営コストの削減により10%前後の手数料を実現するファクタリング会社も登場しています。
手数料は売掛先の信用力により大きく左右されます。上場企業や大手企業が売掛先の場合、回収の確実性が高いため手数料は低く設定される傾向があります。一方、設立間もない企業や業績不安定な企業が売掛先の場合、手数料は高く設定されます。
売掛債権の金額も重要な要因となります。高額な債権ほど効率的な収益確保が可能となるため、手数料率は低く設定される傾向があります。一般的に、1,000万円以上の高額案件では相場の下限に近い手数料が適用される場合が多くなります。
利用者の信用状況や過去の取引行績も手数料に影響を与えます。継続利用者や財務状況が良好な企業に対しては優遇条件が適用される場合があります。また、債権譲渡登記の実施により、手数料が引き下げられる場合もあります。
4-2. 悪徳業者の見分け方と適切な業者選択基準
2社間ファクタリング市場には悪徳業者が存在するため、業者選定時の注意が必要です。法外な手数料を請求する業者や、貸金業法に抵触する可能性のある契約条件を提示する業者は避ける必要があります。
償還請求権がある契約、担保や保証人を要求する契約、分割返済を認める契約などは、ファクタリングではなく貸付に該当する可能性があります。これらの条件を提示する業者は貸金業登録を行っていない違法な業者である可能性が高いため、契約を避けるべきです。
契約書の内容を十分に確認し、不明な費用や条項がある場合は詳細な説明を求めることが重要です。手数料以外に高額な事務手数料や調査費用を請求する業者も存在するため、総コストでの比較検討を行う必要があります。
ファクタリング会社の選択では、手数料の水準と併せて、サービスの信頼性と対応スピードを重視することが重要です。行績豊富な事業者や業界団体に加盟している事業者を選択することで、トラブルのリスクを軽減できます。
必要書類の少なさや審査スピードも重要な選択基準となります。緊急時の資金調達では、審査から入金までの期間が短い事業者を選択することが効果的です。オンライン完結型のサービスでは、24時間申込み受付や土日祝日対応を行う事業者も存在します。
5. 2社間ファクタリング利用時の具体的な成功要因
5-1. 効果的な利用タイミングと資金計画
2社間ファクタリングを効果的に活用するためには、適切な利用タイミングの見極めが重要です。季節的な売上変動や大型案件の受注に伴う一時的な資金需要、設備投資や人材採用などの成長投資時期など、明確な資金使途がある場合に最も効果を発揮します。
手数料負担を最小限に抑えるためには、利用頻度と金額の最適化が必要です。小額の債権を頻繁にファクタリングするよりも、まとまった金額の債権を計画的に活用することで、総コストを削減できます。
資金繰り表の作成により、将来の資金需要を予測し、ファクタリング利用の必要性とタイミングを事前に検討することが重要です。緊急時の選択肢として位置づけつつ、計画的な利用により事業成長を支援する資金調達手段として活用できます。
継続的な利用を検討する場合は、事業収益性の改善とセットで進めることが重要です。ファクタリングにより確保した資金を効果的に活用し、収益向上に繋げることで、手数料負担を上回る事業効果を実現できます。
5-2. 売掛債権の選択と管理方法
ファクタリングに適した売掛債権の選択は、手数料削減と審査通過率向上の両面で重要です。信用力の高い売掛先の債権を優先的に選択することで、より有利な条件での資金調達が可能となります。
支払サイトが適切な債権を選択することも重要です。一般的に、支払期日まで90日以内の債権が対象となりますが、30日から60日程度の債権が最も評価されやすい傾向があります。支払期日が遠い債権は回収リスクが高いと判断され、手数料が高く設定される場合があります。
複数の債権を同時にファクタリングする場合は、管理業務の効率化が重要です。専用の管理システムや表計算ソフトを活用し、各債権の状況、回収予定日、支払期日などを一元管理することで、手続きの漏れや遅延を防止できます。
債権の分散化により、特定の売掛先への依存度を下げることも重要です。一つの売掛先に集中した債権のファクタリングは、その企業の信用状況に大きく左右されるため、複数の優良な売掛先の債権をバランス良く活用することが推奨されます。
6. よくある質問
6-1. 2社間ファクタリングは違法性がないのでしょうか
2社間ファクタリングは民法第466条に基づく債権譲渡であり、完全に合法な取引です。経済産業省も中小企業の資金調達手段として利用促進を推奨しており、違法性は一切ありません。ただし、貸金業に該当する契約内容の業者は違法となるため注意が必要です。
6-2. 売掛先に知られるリスクはありますか
適切なファクタリング会社を利用する限り、売掛先に知られるリスクは極めて低いといえます。ただし、債権譲渡登記を行う場合は登記簿に記録されるため、売掛先が調査すれば判明する可能性があります。秘匿性を重視する場合は登記不要の業者を選択することをおすすめします。
6-3. 個人事業主でも利用できますか
多くのファクタリング会社で個人事業主の利用が可能です。ただし、事業者によっては法人のみを対象としている場合があるため、事前の確認が必要です。個人事業主の場合、事業行態の証明や継続性の確認が重視される傾向があります。
6-4. 手数料を下げる方法はありますか
手数料を下げるためには、信用力の高い売掛先の債権を選択することが効果的です。また、継続利用により優遇条件を受けられる場合があります。複数の業者から見積もりを取得し、条件の比較検討を行うことも重要です。
6-5. 審査に落ちる原因は何ですか
主な審査落ちの原因は、売掛先の信用力不足、債権の存在証明不足、利用者の信用状況の悪化などです。架空債権や既に他社に譲渡済みの債権、支払期日が過度に長い債権なども審査通過が困難となります。
6-6. 契約後にキャンセルは可能ですか
契約締結後のキャンセルは原則として認められません。ただし、クーリングオフ期間を設けている業者や、特定の条件下でのキャンセルを認める業者も存在します。契約前にキャンセル条件を十分に確認することが重要です。
7. まとめ
2社間ファクタリングは、売掛先に知られることなく迅速な資金調達を実現できる有効な手段として、多くの中小企業に活用されています。最短即日での入金が可能で、銀行融資では困難な状況でも利用できる可能性があることから、緊急時の資金繰り改善に大きな効果を発揮します。
一方で、8%から18%程度という高い手数料水準や、売掛金回収時の手続き負担など、利用前に十分な検討が必要なデメリットも存在します。特に手数料については年率換算で相当な負担となるため、短期的な資金需要に限定した利用が適切といえます。
2社間ファクタリングの利用を検討される際は、複数の事業者から見積もりを取得し、手数料だけでなく信頼性や対応スピードを総合的に評価することが重要です。適切な業者選択により、資金調達の効果を最大化しながらリスクを最小限に抑えることが可能となります。
売掛債権という既存の事業資産を活用した資金調達手段として、事業継続性の確保と成長投資の実現に大きく貢献する2社間ファクタリングを、適切な知識と慎重な検討のもとで活用していただくことを推奨いたします。

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