この記事の要点
- この記事では、2社間ファクタリングの仕組みや法的位置づけを理解することで、取引先に知られずに素早く資金調達できる方法を把握できます。
- 本記事を読むことで、銀行融資やビジネスローンと比較した2社間ファクタリングの特徴を知り、自社に最適な資金調達手段を選択するための判断材料が得られます。
- 信頼できるファクタリング業者の選び方や手数料交渉のポイントを学ぶことで、コストを抑えながら効果的に資金繰りを改善する具体的な方法を習得できます。

1. 2社間ファクタリングとは
1-1. 2社間ファクタリングの基本的な仕組み
2社間ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(未回収の請求書)を専門業者に売却して即座に資金化する金融サービスの一種です。通常のファクタリングと異なる点は、売掛金の債務者である取引先に通知せずに行える点にあります。
この取引は「売掛金の売主(資金調達企業)」と「売掛金の買主(ファクタリング業者)」の2社間で完結するため、「2社間ファクタリング」と呼ばれています。売掛金を売却する企業は、支払期日前に売掛金を現金化できるメリットがあります。
2社間ファクタリングでは、ファクタリング業者が売掛金を買い取る際に一定の手数料を差し引いた金額を支払います。この手数料は売掛金の金額や期間、取引先の信用状況などによって変動する傾向があります。
1-2. 3社間ファクタリングとの違い
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの最大の違いは、取引先への通知の有無にあります。3社間ファクタリングでは、売掛金の債務者である取引先に対して債権譲渡の通知を行います。これにより取引先は支払先がファクタリング業者に変更されることを認識します。
一方、2社間ファクタリングでは取引先への通知は行わず、支払いは通常通り売掛金を売却した企業に対して行われます。その後、売掛金を売却した企業がファクタリング業者に対して支払いを行う構造となっています。
3社間ファクタリングは債権譲渡の事実が取引先に明らかになるため、信用不安を招く懸念がある一方で、手数料は比較的低く設定されている傾向があります。2社間ファクタリングは取引先に知られずに資金調達できる利点がありますが、その分リスクが高いため手数料は高めに設定されているケースが多いです。
1-3. 2社間ファクタリングの法的位置づけ
2社間ファクタリングは、民法上の債権譲渡契約として法的に認められた取引です。民法第466条では債権の譲渡性が規定されており、債権者は自由に債権を第三者に譲渡できるとされています。
ただし、債権譲渡の対抗要件については民法第467条に規定があり、第三者に対抗するためには確定日付のある通知または承諾が必要となります。2社間ファクタリングでは取引先に通知しないため、法的対抗力の面では課題があることを理解しておく必要があります。
なお、金融庁に貸金業者として登録されているファクタリング業者であれば、法令遵守のもとで適切に業務を行っているため安心して利用できます。しかし、無登録業者の場合は貸金業法などの規制対象外となる可能性があるため注意が必要です。業者選びの際は、必ず貸金業登録の有無を確認することをお勧めします。
1-4. 最新の法改正と2社間ファクタリング
2020年4月に施行された民法改正により、債権譲渡に関する規定にもいくつかの変更がありました。特に2社間ファクタリングに関連する主な改正点は以下の通りです。
まず、債権譲渡制限特約(譲渡禁止特約)の効力が改正されました。改正前は譲渡禁止特約に違反する債権譲渡は原則として無効とされていましたが、改正後は譲渡禁止特約があっても債権譲渡自体は有効となり、債務者は特約の存在を譲受人に対抗できるにとどまることとなりました(改正民法第466条第2項・第3項)。これにより、譲渡禁止特約付きの売掛金であっても、一定の条件下でファクタリングの対象となる可能性が広がりました。
ただし、債務者(売掛先)は譲受人(ファクタリング業者)に対して特約の存在を主張でき、その場合には債務者から債権者(売掛金を売却した企業)への直接の支払いが有効となります。このため、2社間ファクタリングにおいては依然として譲渡禁止特約の有無を確認することが重要です。
また、債権譲渡の対抗要件に関しては、従来通り第三者に対抗するためには確定日付のある通知または承諾が必要とされています(改正民法第467条第1項)。さらに、債務者以外の第三者に対する対抗要件として債権譲渡登記も引き続き有効です(動産・債権譲渡特例法第4条第1項)。
将来債権の譲渡に関する規定も明文化され、将来発生する債権も譲渡可能であることが明確に規定されました(改正民法第466条の6第1項)。これにより、まだ発生していない将来の売掛金を対象としたファクタリング(いわゆる「前払いファクタリング」)の法的根拠が明確になりました。
さらに、2023年には貸金業法に関連する監督指針が改正され、ファクタリング取引における実質的な貸付け(償還請求権付きファクタリングなど)については貸金業登録が必要との見解が明確化されました。これにより、一部のファクタリング業者は貸金業登録を行う動きが広がっています。
これらの法改正により、ファクタリング取引の法的安定性が向上する一方で、一部の取引形態については規制が強化される傾向にあります。特に償還請求権付きの2社間ファクタリングについては、実質的な貸付けとみなされるリスクが高まっているため、契約内容の精査がより重要となっています。
法改正の動向は今後も継続的に注視する必要があり、最新の法的解釈や規制動向については、弁護士や専門家に相談することをお勧めします。また、日本ファクタリング協会などの業界団体も、法改正に関する情報提供や会員企業向けのガイドラインを随時更新しているため、そうした情報も参考になるでしょう。
ファクタリング取引を検討する際には、こうした法的枠組みの変化を理解した上で、自社のリスク許容度や取引目的に適した契約内容を選択することが重要です。特に譲渡禁止特約の有無や償還請求権の取り扱いについては、契約前に詳細を確認し、必要に応じて専門家の意見を求めることをお勧めします。
1-5. 2社間ファクタリングの市場規模と利用状況
日本におけるファクタリング市場は近年急速に拡大しており、2023年の市場規模は約5兆円に達すると推定されています。このうち2社間ファクタリングは全体の約30%程度を占め、年間約1.5兆円の取引規模と推計されています。(これらの数値は業界団体や民間調査会社の推計であり、公的機関による正確な統計ではない点にご留意ください)
利用企業の業種別割合を見ると、建設業(約25%)、製造業(約20%)、卸売業(約15%)、小売業(約10%)、サービス業(約20%)、その他(約10%)となっており、特に建設業や製造業など、支払いサイクルが長い業種での利用が多い傾向にあります。
企業規模別では、年商1億円未満の小規模企業が約40%、年商1億円以上10億円未満の中小企業が約45%、年商10億円以上の中堅・大企業が約15%と、中小企業を中心に幅広い規模の企業に利用されています。
利用目的としては、「運転資金の確保」が最多(約60%)で、次いで「緊急の支払い対応」(約20%)、「新規事業投資」(約10%)、「設備投資」(約5%)、「その他」(約5%)となっています。特に年度末や決算期などの資金需要が集中する時期に利用が増加する傾向が見られます。
ファクタリング市場全体の成長率は年率約15%程度と推定されており、特に中小企業向けのオンラインファクタリングサービスの伸びが顕著です。今後もフィンテック技術の進化やデジタル化の進展により、より利便性の高いサービスの登場が予想されます。
2. 2社間ファクタリングのメリット
2-1. 資金調達の即時性と迅速な現金化
2社間ファクタリングの主要なメリットは、通常の売掛金回収よりも大幅に短期間で資金化できる点にあります。一般的な売掛金の支払いサイクルは30日から120日程度に及ぶことが多い中、ファクタリングの利用により資金化のスピードを飛躍的に向上させることが可能です。
ただし、「最短即日」という表現については、現実的な前提条件を理解しておく必要があります。実際に即日での資金化が可能となるのは、以下のような条件が揃った場合に限られます。日本ファクタリング協会の調査(2023年)によれば、即日入金が実現するケースは全体の約15%程度とされています。
具体的な即日入金の条件としては、①売掛先が上場企業や大企業など信用力が極めて高い場合、②売掛金額が比較的少額(多くの場合500万円以下)である場合、③必要書類がすべて完璧に揃っている場合、④既存顧客として過去の取引実績がある場合、などが挙げられます。これらの条件を満たさない場合は、一般的に1〜5営業日程度の審査期間が必要となるケースが大半です。
また、金額が高額になるほど審査に時間がかかる傾向があり、1,000万円を超える案件では平均3〜7営業日程度、5,000万円を超える大型案件では1〜2週間程度を要することもあります。業者選びの際には、謳われている「最短即日」という表現を鵜呑みにせず、自社の条件に即した現実的な資金化のタイムラインを業者に確認することが重要です。
銀行融資などの従来型の資金調達手段と比較すると、それでも審査から入金までのスピードは格段に速いという特徴があります。通常、銀行融資では申し込みから融資実行まで数週間から数か月を要するケースが一般的であるため、緊急の資金需要や期日が迫った支払いに対応するための手段としては有効な選択肢といえるでしょう。
2-2. 審査基準が比較的緩やか
2社間ファクタリングは銀行融資と異なり、資金調達企業自身の財務状況よりも売掛先企業(債務者)の信用力を重視する傾向があります。そのため、自社の業績や信用情報に不安がある企業でも、取引先の信用力が高ければ利用できる可能性が高まります。
銀行融資では自社の財務諸表や事業計画、信用情報などが厳しく審査されますが、ファクタリングでは売掛金という資産そのものと、その支払元となる取引先の支払能力が主な審査対象となります。この点が審査のハードルを下げる要因となっています。
創業間もない企業や過去に資金繰りに苦労した経験がある企業、あるいは一時的な業績悪化に直面している企業にとって、比較的利用しやすい資金調達手段といえるでしょう。ただし、売掛先の信用力が極めて低い場合は利用が難しいケースもあるため、事前に確認が必要です。
2-3. 取引先に知られずに資金調達が可能
2社間ファクタリングの最大の特徴は、売掛金の債務者である取引先に通知することなく資金調達できる点です。通常のファクタリング(3社間ファクタリング)では債権譲渡の通知が必要となり、取引先に資金繰りの状況が知られてしまう可能性があります。
多くの企業にとって、取引先に資金繰りの苦しさを知られることは信用不安につながる懸念があります。特に大口取引先や長期的な取引関係を維持したい重要な取引先に対しては、このような情報を開示したくないと考えるのが一般的です。
ただし、注意すべき点として、法的な対抗要件の問題があります。2020年4月に施行された改正民法では、債権譲渡の第三者対抗要件として確定日付のある通知または承諾が依然として必要とされています。2社間ファクタリングでは通知を行わないため、取引先の倒産時など債権者間の優先順位争いにおいて不利になる可能性があることを理解しておく必要があります。
また、クレジットカード会社や信用調査機関などが独自に情報収集を行っているケースもあり、取引先に完全に知られないという保証はない点にも留意が必要です。日本ファクタリング協会の調査によれば、2社間ファクタリングの利用が何らかの形で取引先に判明したケースは全体の約5%程度存在するとされています。特に大企業が取引先の場合、定期的な与信管理の一環として債権譲渡登記の有無を確認しているケースもあるため、完全な秘匿性を期待するのではなく、リスクを認識した上での利用が望ましいでしょう。
2-4. 融資ではないため返済義務がない
2社間ファクタリングは厳密には「融資」ではなく「売買取引」であるため、返済義務が発生しないという大きなメリットがあります。銀行融資やビジネスローンでは借入金の返済義務が生じますが、ファクタリングでは売掛金という資産を売却する取引となるため、新たな負債を抱えることはありません。
このため、バランスシート上では「売掛金」という資産が「現金」に変わるだけで、負債は増加しません。財務状況をこれ以上悪化させたくない企業にとって、この点は非常に重要なメリットとなります。
また、返済計画を立てる必要がないため、資金繰り計画が立てやすくなる側面もあります。売掛金の回収時期が延びた場合でも、追加の金利負担や返済遅延のペナルティが発生する心配がありません。
2-5. 担保や保証人が不要
多くの2社間ファクタリングサービスでは、不動産担保や個人保証などを要求されないケースが一般的です。売掛金自体が担保の役割を果たすため、追加の担保設定が不要となる点は利用者にとって大きなメリットといえます。
銀行融資では不動産担保を求められることが多く、また代表者の個人保証が必要となるケースがほとんどです。担保となる不動産を保有していない企業や、個人保証のリスクを避けたい経営者にとって、ファクタリングは有効な選択肢となります。
特に中小企業やスタートアップ企業など、十分な担保資産を持たない企業にとって、担保不要で利用できる点は資金調達のハードルを大きく下げる要因となっています。ただし、業者によっては一定の条件下で担保を求める場合もあるため、契約前に確認することをお勧めします。
3. 2社間ファクタリングのデメリット
3-1. 手数料率が高い傾向にある
2社間ファクタリングの最大のデメリットは、手数料率が他の資金調達方法と比較して高い傾向にあることです。一般的に言われる2社間ファクタリングの手数料率5%から25%という数値は、あくまで市場の相場感を示したものであり、実際には様々な要因によって大きく変動します。
手数料率を決定する主な要因としては、①売掛先企業の信用力、②売掛金額の大きさ、③支払期日までの期間、④取引実績、⑤業界特性、⑥経済情勢、⑦ファクタリング業者の経営方針などが挙げられます。最も影響が大きいのは売掛先の信用力と支払期日までの期間であり、信用力の高い大企業向けの短期の売掛金であれば5%前後の低い手数料率が適用されるケースもある一方、信用力に不安のある中小企業向けの長期の売掛金では25%を超える手数料率が設定されることもあります。
以下は信用力と期間による手数料率の一般的な変動幅です(あくまで参考値であり、業者や条件によって異なります):
売掛先が上場企業・大企業で支払期日まで30日以内:3%〜8% 売掛先が上場企業・大企業で支払期日まで60日以内:5%〜15% 売掛先が中堅企業で支払期日まで30日以内:8%〜15% 売掛先が中堅企業で支払期日まで60日以内:10%〜20% 売掛先が中小企業で支払期日まで30日以内:12%〜20% 売掛先が中小企業で支払期日まで60日以内:15%〜25%以上
また、売掛金額にも大きな影響を受け、一般的に1,000万円を超える大口案件では相対的に低い手数料率が適用される傾向があります。さらに、業界や経済情勢による変動も大きく、特に不況時には手数料率が全体的に上昇する傾向が見られます。
実際の手数料率を把握するためには、複数の業者から見積もりを取得し、比較検討することが重要です。また、同じ業者であっても案件ごとに異なる手数料率が適用されるため、一度の取引実績だけで判断せず、継続的な比較検討を行うことをお勧めします。
3-2. 悪徳業者のリスク
ファクタリング業界には、残念ながら悪徳業者も存在しています。過度に高額な手数料を請求したり、契約書に不利な条件を小さな文字で記載したりするなど、不透明な取引を行う業者には注意が必要です。
日本ファクタリング協会は、ファクタリング業者の健全な発展と利用者保護を目的として2015年に設立された業界団体です。同協会では会員企業に対して自主規制ルールを設け、コンプライアンス遵守を促進している他、利用者からの相談窓口の設置や、優良業者の認定制度なども実施しています。同協会によれば、2023年時点での認定会員企業は約50社程度となっており、一定の審査基準をクリアした業者として信頼性の目安となります。
ただし、日本ファクタリング協会の認定を受けていない業者が必ずしも悪徳業者というわけではなく、新規参入企業や独自の経営方針を持つ業者も多数存在します。業者選びの際には、同協会の認定有無だけでなく、多角的な視点から信頼性を判断することが重要です。
悪徳業者を見分けるための注意点としては、①「即日入金」「審査なし」「100%審査通過」などの過度に魅力的な条件を謳う業者、②事前調査費用や審査料などの名目で前払い金を要求する業者、③契約書の内容が不明瞭または複雑で理解しづらい業者、④口コミや評判が極端に少ないまたは悪い業者、⑤オフィスの実態がない業者などが挙げられます。
また、金融庁の貸金業者登録を確認することも重要です。登録番号は「〇〇財務局長(〇)第〇〇〇〇号」または「〇〇都道府県知事(〇)第〇〇〇〇号」といった形式で表示され、金融庁のウェブサイトで公開されている「登録貸金業者情報検索サービス」で確認することができます。
3-3. 信用情報への影響
2社間ファクタリングは融資ではないため、直接的には信用情報機関に記録されません。しかし、取引先が倒産するなどして売掛金が回収できなくなった場合、契約条件によっては償還請求権(遡及権)が行使される可能性があります。
償還請求権とは、ファクタリング業者が売掛金を回収できなかった場合に、売掛金を売却した企業に対して代金の返還を求める権利のことです。この償還請求に応じられない場合、結果として債務不履行となり、信用情報に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、ファクタリングの利用自体は信用情報に記録されませんが、将来的に銀行融資を申請する際に、過去のファクタリング利用履歴を確認される場合があります。銀行によっては、ファクタリングの頻繁な利用を資金繰りの悪化のサインと捉え、融資判断に影響する可能性も考えられます。
3-4. 債権譲渡登記による取引先との関係性への懸念
2社間ファクタリングでは通常、取引先への通知は行いませんが、ファクタリング業者によっては債権譲渡登記を行う場合があります。債権譲渡登記は法務局で行われ、誰でも閲覧可能な公的記録となります。
債権譲渡登記が取引先との関係に与える影響については、取引先企業の規模や業種、与信管理体制などによって大きく異なります。上場企業や大企業では、定期的に取引先の債権譲渡登記情報をチェックしている場合が多く、債権譲渡登記の存在が判明するリスクは相対的に高いといえます。一方、中小企業では債権譲渡登記をチェックする習慣がない場合も多く、発覚リスクは相対的に低いと考えられます。
債権譲渡登記が発覚した場合の影響度については、業界による違いも大きいです。建設業や製造業など下請構造が一般的な業界では、資金繰りの厳しさが業界の常識として認識されているケースも多く、債権譲渡登記の発覚が直ちに取引停止などの深刻な事態に発展することは比較的少ないとされています。一方、金融機関や官公庁との取引がメインの業種では、債権譲渡登記の発覚が取引条件の見直しや入札資格の制限などにつながるリスクが高いケースもあります。
債権譲渡登記の有無は業者によって方針が異なり、原則として登記を行わない業者、案件によって判断する業者、原則として登記を行う業者など様々です。特に高額案件(多くの場合1,000万円超)では登記を行うケースが多い傾向にあります。
契約前に債権譲渡登記の有無について確認し、自社の取引状況や業界特性に応じたリスク評価を行うことが重要です。債権譲渡登記を行わない契約を選ぶ場合、法的な対抗力が弱まるリスクとのバランスを考慮する必要がありますが、取引先との関係性を最優先する場合には、登記を行わない契約を選択することも一つの判断といえるでしょう。
3-5. 長期的な資金繰り改善にはならない場合も
2社間ファクタリングは短期的な資金調達手段としては有効ですが、根本的な資金繰り問題を解決するものではありません。特に高額な手数料を支払って繰り返し利用すると、かえって資金繰りを悪化させる可能性があります。
売掛金という将来の入金予定を前倒しで現金化するため、その分将来の入金が減少します。つまり、今の資金ショートを解消するために将来の資金を前借りしている状態であり、根本的な収益構造の改善がなければ、資金繰りの悪循環に陥るリスクがあります。
ファクタリングは一時的な資金需要に対応するための「橋渡し資金」として活用するのが最適です。同時に、収益性の向上や経費削減、資金効率の改善など、根本的な経営改善策も並行して実施することが長期的な企業の健全性につながります。
4. 2社間ファクタリングの手続きと流れ
4-1. 必要書類と準備するもの
2社間ファクタリングを利用する際に必要となる基本的な書類は以下の通りです。業者によって若干の違いはありますが、一般的には次のような書類の提出が求められます。
まず、企業の基本情報を確認するための書類として、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、代表者の本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)、会社印鑑証明書が必要となります。これらは企業の実在性と代表者の本人確認のために使用されます。
次に、売掛金の実在性を証明する書類として、売掛先との契約書や基本取引契約書、発行済みの請求書、納品書や検収書などの取引証憑が求められます。これらの書類により、売掛金が実際の商取引に基づいて発生したものであることを証明します。
また、企業の財務状況を確認するための資料として、決算書(過去2〜3期分)や試算表、場合によっては税務申告書なども必要となることがあります。これらは企業の返済能力や経営状況を判断するための参考資料として使用されます。
4-2. 申し込みから入金までの流れ
2社間ファクタリングの一般的な利用手続きは以下のようなステップで進行します。業者によって多少の違いはありますが、基本的な流れは共通しています。
まず初めに、ファクタリング業者への問い合わせや相談を行います。この段階では、売掛金の金額や支払期日、取引先の情報などを伝え、概算の手数料や利用可能性について確認することが一般的です。多くの業者ではウェブサイト上の問い合わせフォームや電話での相談に対応しています。
次に、正式な申し込みを行い、必要書類を提出します。前述した登記簿謄本や請求書など、各種書類を業者に提出し、審査を受けることになります。書類の提出方法は郵送やメール、専用のアップロードシステムなど、業者によって異なります。
書類審査が終わると、売掛先企業の信用調査が行われます。これは取引先の支払能力や信用状況を確認するためのステップで、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用調査機関の情報が活用されることが一般的です。
審査が通過すると、買取金額や手数料などの条件提示があり、契約締結へと進みます。契約書には売買金額や手数料、償還請求権の有無など重要な条件が記載されるため、しっかりと内容を確認することが重要です。
契約締結後、指定の銀行口座に買取代金が振り込まれます。最短で即日、通常でも2〜3営業日以内に入金されるケースが多いです。入金額は売掛金額から手数料を差し引いた金額となります。
4-3. オンラインで完結するサービスの特徴
近年では、申し込みから契約締結、入金までの全プロセスをオンラインで完結できるサービスも増えています。これらのサービスには以下のような特徴があります。
まず、時間や場所を選ばず手続きが可能という利便性があります。営業時間外や休日でも申し込みができ、来店不要で手続きが完了する点は、忙しい経営者にとって大きなメリットとなっています。スマートフォンやパソコンさえあれば、いつでもどこでも手続きができるため、業務効率が向上します。
次に、手続きのスピードが大幅に向上する点が挙げられます。書類の電子提出やオンライン審査により、従来の対面取引よりも迅速に手続きが進行します。最短即日での資金化が可能なケースも多く、緊急の資金需要にも対応できます。
また、ペーパーレス化による手間の削減もメリットの一つです。書類の郵送や持参が不要となり、電子契約システムの活用により印紙税なども削減できる場合があります。書類の保管や管理も電子化されるため、紛失のリスクが低減されます。
一方で、オンラインサービスの利用にあたっては、セキュリティ面の懸念も存在します。個人情報や企業情報の漏洩リスクがあるため、業者のセキュリティ対策やプライバシーポリシーを事前に確認することが重要です。SSL暗号化など適切なセキュリティ対策が施されているか確認しましょう。
5. 2社間ファクタリングの手数料相場
5-1. 手数料の計算方法
2社間ファクタリングの手数料計算方法には主に「定率方式」と「日割り方式」の2つのタイプがあります。それぞれの特徴と具体的な計算方法について、より詳細に解説します。
定率方式は、売掛金額に対して一定の料率を掛けて手数料を算出する最もシンプルな方式です。例えば、100万円の売掛金を10%の料率でファクタリングする場合、手数料は10万円となり、実際に受け取れる金額は90万円となります。この方式の特徴は計算がシンプルで分かりやすく、支払期日までの期間が変動しても手数料が変わらない点にあります。
日割り方式は、売掛金額に対して日数に応じた料率を適用する方式です。例えば、100万円の売掛金で支払期日までの残り30日の場合、1日あたり0.2%の料率であれば、30日×0.2%=6%となり、手数料は6万円、受取金額は94万円となります。この方式の長所は支払期日までの期間が短いほど手数料が少なくなるため、早期に売却するインセンティブが働く点にあります。一方、支払期日が延長された場合には追加手数料が発生するリスクがある点は注意が必要です。
このほか、段階式料率を採用している業者も増えています。これは売掛金額や支払期日までの期間に応じて段階的に料率が変わる方式で、例えば「100万円までは15%、100万円超500万円までは12%、500万円超は10%」といった設定や、「支払期日まで30日以内は10%、31日以上60日以内は15%」といった設定が見られます。
また、近年では基本手数料と早期入金オプション料を分離する方式も登場しています。例えば、基本手数料を売掛金額の8%とし、即日入金を希望する場合は追加で5%、3営業日以内の入金なら追加で3%といった形で、利用者が入金のタイミングを選べる仕組みです。
業者によっては事務手数料や振込手数料などの追加費用が発生する場合もあるため、見積もり取得時には「手数料以外に発生する費用」についても必ず確認することをお勧めします。特に少額案件では、定額の事務手数料(多くの場合5,000円〜30,000円程度)が相対的に大きな負担となる場合もあるため注意が必要です。
手数料の支払いタイミングについても業者によって異なり、前払い方式(買取時に手数料を差し引く方式)と後払い方式(売掛金回収時に手数料を支払う方式)があります。一般的には前払い方式が多いですが、一部の業者では後払い方式を採用しているケースもあります。
5-2. 手数料に影響する要素
2社間ファクタリングの手数料率に影響を与える主な要素として、以下のような点が挙げられます。
まず、売掛先企業の信用力や規模が重要な要素となります。上場企業や大企業など信用力の高い企業に対する売掛金は、回収リスクが低いため手数料率も低く設定される傾向があります。一方、中小企業や創業間もない企業向けの売掛金は、相対的にリスクが高いため手数料率が高くなりやすいです。
次に、売掛金の金額も影響要素の一つです。一般的に売掛金額が大きいほど手数料率は低くなる傾向があります。これは大口取引の方が業者側の事務コストが相対的に低くなるためです。例えば、10万円の売掛金と1,000万円の売掛金では、1,000万円の方が手数料率は低く設定されることが多いです。
売掛金の支払期日までの残存期間も重要な要素となります。支払期日が近いほど回収リスクが低いため、手数料率も低くなる傾向があります。逆に支払期日まで長期間ある場合は、その分リスクが高まるため手数料率も高く設定されることが一般的です。
また、取引実績や継続性も手数料に影響します。同じファクタリング業者と継続的に取引を行っている場合、信頼関係が構築されるため手数料率が徐々に下がっていくケースも少なくありません。初回利用時と比較して、継続利用時の方が優遇される傾向があります。
5-3. 手数料交渉のポイント
2社間ファクタリングの手数料は固定されたものではなく、効果的な交渉によって大幅に削減できる可能性があります。特に以下の観点からの交渉は成功率が高いといえるでしょう。
まず、複数の業者から見積もりを取得することが重要です。日本ファクタリング協会の調査によれば、同一条件で5社以上から見積もりを取得した場合、最も高い見積もりと最も低い見積もりの差は平均で約40%にも達するとされています。少なくとも3社以上、できれば5社程度の業者に見積もりを依頼し、比較検討することをお勧めします。
見積もり取得の際は、すべての業者に対して同一の条件(売掛先情報、金額、支払期日など)を提示し、手数料率だけでなく、事務手数料や振込手数料などの追加費用の有無、償還請求権の有無、債権譲渡登記の有無なども含めた総合的な比較を行うことが重要です。また、見積書は必ず書面またはメールで取得し、口頭での説明だけに頼らないようにしましょう。
交渉の際は、売掛先の信用情報を積極的にアピールすることも効果的です。具体的には、売掛先の会社概要(設立年、資本金、従業員数など)、財務情報(可能であれば売上高や利益など)、過去の支払い履歴(遅延なく支払いが行われている実績)、取引年数などの情報を提供することで、回収リスクの低さを示すことができます。特に上場企業や大企業との取引がある場合は、その点を強調するとよいでしょう。
取引金額や頻度に関する交渉も有効です。複数の売掛金をまとめて売却する「包括ファクタリング」を提案したり、継続的な利用を前提とした「基本契約」の締結を提案したりすることで、スケールメリットを生かした手数料の引き下げを交渉できる可能性があります。実際、継続的な利用者に対しては当初の手数料率から20%以上の割引を適用している業者も少なくありません。
また、支払期日が近い売掛金から優先的に売却することも検討するとよいでしょう。支払期日が近いほど回収リスクが低くなるため、手数料率も低くなる傾向があります。例えば、支払期日まで60日の売掛金と30日の売掛金では、30日の方が5%ほど手数料率が低くなるケースも珍しくありません。
交渉の際は、競合他社の見積もり内容を具体的に示すことも効果的です。「他社では○%の手数料率で提案を受けている」といった形で競合情報を伝えることで、より良い条件を引き出せる可能性があります。ただし、過度の値下げ交渉は信頼関係構築の観点からマイナスとなる場合もあるため、WIN-WINの関係を目指した交渉を心がけることが大切です。
6. 2社間ファクタリングに向いている企業・状況
6-1. 売掛金回収の早期化が必要な場合
2社間ファクタリングが特に有効な状況として、売掛金の回収サイクルが長い業種や、季節的な資金需要がある企業が挙げられます。
建設業や製造業など、取引先からの支払いサイクルが60日や90日と長期にわたる業種では、資金繰りが逼迫しやすい傾向があります。このような場合、ファクタリングを活用して売掛金を早期に現金化することで、資金繰りの改善が期待できます。特に下請け企業など、大企業との取引で長期の支払いサイクルを強いられているケースでは効果的な選択肢となります。
また、季節的な需要変動が大きい業種(観光業、アパレル業など)では、繁忙期と閑散期で売上に大きな差が生じることがあります。閑散期の運転資金を確保するために、繁忙期に発生した売掛金をファクタリングで現金化する方法は、季節変動に対応するための有効な手段となります。
さらに、新規事業の立ち上げや大型プロジェクトの受注など、一時的に大きな資金需要が発生する状況でも、ファクタリングは有効な選択肢となります。特に新規の取引先からの入金までに時間がかかるケースでは、ファクタリングによる資金化が事業の円滑な推進をサポートします。
6-2. 銀行融資が難しい状況にある企業
創業間もない企業や財務状況が不安定な企業など、従来型の銀行融資の審査基準を満たしにくい企業にとって、2社間ファクタリングは代替的な資金調達手段として価値があります。
創業から間もなく、財務諸表の実績が乏しい企業は、銀行融資を受けることが難しいケースが多いです。しかし、信用力の高い取引先との取引実績があれば、その売掛金をもとにファクタリングを利用できる可能性があります。創業期の資金調達手段として検討する価値があるでしょう。
また、過去に資金繰りの悪化や返済遅延などの信用上の問題があった企業も、銀行融資の審査通過が困難な状況にあることが一般的です。そのような場合でも、現在の売掛金という資産をもとにしたファクタリングであれば利用できる可能性があります。
さらに、急速な成長フェーズにある企業なども、銀行融資の審査基準に合わないケースがあります。成長に伴う運転資金の需要が急増するにもかかわらず、過去の財務諸表が現状を反映していないため、銀行融資が追いつかないような状況では、ファクタリングを活用した機動的な資金調達が有効となります。
6-3. 信用度が低くても利用可能なケース
自社の信用度や財務状況に不安がある企業でも、売掛先の信用力が高ければ2社間ファクタリングを利用できる可能性があります。ファクタリングは自社の信用力よりも売掛先の支払能力を重視する傾向があるためです。
例えば、自社は中小企業であっても、売掛先が上場企業や大企業である場合、その売掛金は比較的高い評価を受けることが一般的です。売掛先の信用力の高さをアピールすることで、自社の信用状況に不安があっても、ファクタリングの利用が可能となるケースが多いです。
また、債務超過や赤字決算が続いている企業であっても、取引先との継続的な取引実績があり、支払いに問題がない場合は、その取引実績をもとにファクタリングを利用できる可能性があります。財務状況だけでなく、取引の実態や売掛先との関係性も審査の重要な要素となります。
ただし、売掛先の信用度が極めて低い場合や、過去に売掛金の未回収トラブルがある場合は、ファクタリングの利用が難しくなる可能性もあります。また、自社が法的整理中(民事再生、会社更生など)の場合は、ファクタリングの利用が制限されるケースが多いため、事前に確認が必要です。
7. 2社間ファクタリング業者の選び方
7-1. 信頼できる業者の見分け方
2社間ファクタリング業者を選ぶ際の最も重要な基準は、その業者の信頼性です。信頼できる業者を見分けるための主なポイントを紹介します。
まず、金融庁の貸金業者登録を確認することが重要です。貸金業者登録番号は各業者のウェブサイトや契約書に記載されていることが一般的で、金融庁のウェブサイトで登録状況を確認できます。登録業者は貸金業法に基づく規制や監督を受けているため、一定の信頼性があると考えられます。
次に、業歴や取引実績も重要な判断材料となります。長期間にわたって事業を継続している業者や、取引実績が豊富な業者は、一定の信頼性があると考えられます。ウェブサイトや会社案内などで、創業年や累計取引金額、取引社数などを確認するとよいでしょう。
また、口コミや評判も参考になります。インターネット上のレビューサイトや口コミ情報、知人や取引先からの評判など、実際に利用した人の声は貴重な情報源となります。複数の情報源から評判を確認することで、より正確な判断ができます。
さらに、日本ファクタリング協会などの業界団体への加盟状況も確認するとよいでしょう。業界団体に加盟している業者は、一定の基準や倫理規定を遵守していることが期待されるため、相対的に信頼性が高いと考えられます。
7-2. 契約前に確認すべきポイント
2社間ファクタリングを利用する際に、契約前に確認しておくべき重要なポイントを紹介します。
まず、手数料の内訳と計算方法を明確に理解することが重要です。表面上の手数料率だけでなく、事務手数料や振込手数料など追加で発生する費用がないかを確認しましょう。また、手数料の計算方法(定率方式か日割り方式か)や、早期入金のオプションがある場合はその条件なども確認が必要です。
次に、償還請求権(遡及権)の有無を確認することも重要です。償還請求権とは、売掛先が支払不能になった場合に、ファクタリング業者が売却企業に代金の返還を求める権利のことです。「償還請求権あり」の契約では、売掛先の倒産リスクを完全に転嫁できないため、その条件を十分に理解しておく必要があります。
また、債権譲渡登記の有無についても確認が必要です。債権譲渡登記を行う場合、法務局の登記簿に記録が残るため、取引先が調査した際に発見される可能性があります。取引先との関係に影響を与えたくない場合は、債権譲渡登記を行わない業者を選ぶことも検討するとよいでしょう。
さらに、契約解除の条件や違約金についても確認しておくことが重要です。何らかの理由で契約を解除する必要が生じた場合の違約金や、債権の買戻し条件などを事前に確認しておくことで、将来的なトラブルを防止できます。
7-3. 貸金業登録の確認方法
2社間ファクタリング業者の信頼性を確認する上で、金融庁の貸金業者登録の有無は非常に重要な要素です。貸金業登録の確認方法について詳しく説明します。
貸金業者登録は、各都道府県または財務局が管轄しており、登録した業者には「登録番号」が付与されます。この登録番号は「〇〇財務局長(〇)第〇〇〇〇号」または「〇〇都道府県知事(〇)第〇〇〇〇号」といった形式で表示されます。
業者の貸金業登録を確認する最も確実な方法は、金融庁のウェブサイトで公開されている「登録貸金業者情報検索サービス」を利用することです。このサービスでは、業者名や登録番号から登録状況を検索することができます。なお、検索結果に表示されない場合は、登録されていない可能性が高いため注意が必要です。
また、業者のウェブサイトや会社案内、契約書などに記載されている登録番号の形式が正しいかどうかも確認するとよいでしょう。偽の登録番号を掲載している悪質な業者も存在するため、実際に金融庁のデータベースで確認することが重要です。
なお、貸金業登録を受けていない業者がファクタリング業務を行うこと自体は必ずしも違法ではありませんが、貸金業法などの法令遵守やトラブル発生時の対応に不安が残るため、可能な限り登録業者を選ぶことをお勧めします。金融庁に登録されている業者であれば、少なくとも最低限の法令遵守体制が整っていると考えられます。
8. 2社間ファクタリングと他の資金調達方法の比較
8-1. 銀行融資との比較
2社間ファクタリングと銀行融資を比較する際は、それぞれの特性を多角的に理解し、自社の状況に最適な選択をすることが重要です。以下では、両者の主要な違いについて詳細に解説します。
審査基準については、銀行融資では企業の財務状況(特に自己資本比率や利益率)、事業の継続性、返済能力、担保価値、代表者の個人信用情報などが総合的に審査されます。これに対し、ファクタリングでは売掛先の信用力が最重視され、自社の財務状況は二次的な要素となります。2020年に日本ファクタリング協会が実施した調査によれば、銀行融資の審査通過率が約30〜40%であるのに対し、ファクタリングの審査通過率は約60〜70%と相対的に高いことが報告されています。
資金調達にかかる時間も大きく異なります。銀行融資では一般的に申込から実行まで2週間〜2ヶ月程度を要するのに対し、ファクタリングでは条件が整えば最短即日、通常でも3〜5営業日程度で資金化が可能です。緊急の資金需要や期日が迫った支払いに対応する必要がある場合は、ファクタリングの方が適しているといえるでしょう。
調達可能金額については、銀行融資では財務状況や担保力に応じて数百万円から数億円規模の調達が可能です。一方、ファクタリングでは売掛金の金額に依存するため、大口の売掛金がなければ大規模な資金調達は難しくなります。また、ファクタリングでは売掛金に対して一定の掛け目(多くの場合70%〜95%程度)が適用されるため、売掛金の全額を調達することはできない点も考慮する必要があります。
コスト面では、銀行融資が年率1%〜5%程度であるのに対し、ファクタリングの手数料率は売掛金額の5%〜25%程度と大きな開きがあります。単純な比較はできませんが、長期間にわたって資金を必要とする場合は銀行融資の方がコスト効率が高いといえるでしょう。
返済負担の面では大きな違いがあります。銀行融資では毎月の返済義務が発生し、資金繰りに継続的な負担がかかります。一方、ファクタリングでは「返済」という概念はなく、売掛金の支払いが行われれば取引は完了します。キャッシュフローに余裕がない場合や、返済負担を増やしたくない場合はファクタリングの方が適している場合もあります。
担保・保証人の要否も重要な違いです。銀行融資では多くの場合、不動産担保や代表者の連帯保証が求められます。一方、ファクタリングでは一般的に担保や保証人は不要であり、売掛金自体が「担保」の役割を果たします。担保となる不動産を保有していない企業や、個人保証のリスクを避けたい経営者にとっては、ファクタリングが有効な選択肢となります。
これらの特性を総合的に判断した上で、自社の状況(資金需要の緊急性、調達金額、財務状況、担保力など)に最適な資金調達手段を選択することが重要です。また、両者を相互補完的に活用することも一つの戦略といえるでしょう。例えば、急な資金需要にはファクタリングで対応しつつ、中長期的な資金需要には銀行融資を活用するといった組み合わせです。
8-2. ビジネスローンとの比較
2社間ファクタリングとビジネスローンを比較すると、それぞれ異なる特性を持っています。目的に応じた選択が必要です。
審査基準については、ビジネスローンもファクタリングも銀行融資と比較すると比較的緩やかな傾向があります。しかし、ビジネスローンでは自社の事業実績や代表者の信用情報などが重視されるのに対し、ファクタリングでは売掛先の信用力が重視される点が異なります。
資金調達の速度は、ビジネスローンもファクタリングも銀行融資よりは速い傾向がありますが、ファクタリングの方がより即時性が高い場合が多いです。ビジネスローンは早くても数日、通常は1〜2週間程度かかるケースが多いのに対し、ファクタリングは最短即日での資金化が可能です。
調達可能金額については、ビジネスローンは事業規模や信用力に応じて数十万円から数千万円程度が一般的です。一方、ファクタリングは売掛金の金額に連動するため、大口の売掛金があれば数千万円以上の調達も可能です。
返済負担においても大きな違いがあります。ビジネスローンでは毎月の返済義務が発生しますが、ファクタリングでは「返済」という概念はなく、取引先からの入金が行われればそれで完了します。キャッシュフローに余裕がない場合はファクタリングの方が負担が少ない場合もあります。
8-3. 3社間ファクタリングとの比較
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングには、いくつかの重要な違いがあります。状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
最も大きな違いは取引先への通知有無です。3社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡の通知が行われ、支払先がファクタリング業者に変更されます。一方、2社間ファクタリングでは取引先への通知は行われず、支払いは通常通り売掛金を売却した企業に対して行われます。取引先との関係性を維持したい場合は2社間ファクタリングが有利です。
手数料率には大きな差があります。2社間ファクタリングの手数料率は5%〜25%程度と比較的高いのに対し、3社間ファクタリングでは3%〜10%程度と低めに設定されていることが一般的です。これは、3社間ファクタリングの方が売掛金回収リスクが低いためです。コスト重視であれば3社間ファクタリングが有利といえます。
法的な安全性という点では、3社間ファクタリングの方が優れています。3社間ファクタリングでは取引先に対して正式に通知が行われるため、第三者に対する対抗要件(民法第467条)が満たされます。一方、2社間ファクタリングでは通知がないため、法的な対抗力に課題が残ります。
事務手続きの煩雑さは3社間ファクタリングの方が高い傾向があります。取引先への通知や支払先変更の手続きが必要となるため、事務負担が増加します。手続きの簡便さを重視する場合は2社間ファクタリングの方が適しているでしょう。
9. よくある質問
9-1. 個人事業主でも利用できますか?
はい、個人事業主でも2社間ファクタリングを利用することは可能です。法人に限らず、個人事業主が発行した請求書に基づく売掛金であれば、ファクタリングの対象となります。
ただし、個人事業主の場合、法人と比較して審査がやや厳しくなる傾向があります。事業の継続性や安定性、売掛先との取引実績などがより重視される場合が多いです。開業後の経過期間や売上規模などによっては、手数料率が高くなったり、利用限度額が制限されたりする可能性もあります。
個人事業主がファクタリングを利用する際に必要な書類としては、確定申告書や青色申告決算書、請求書や取引先との契約書、本人確認書類などが一般的です。法人と比較すると提出書類は若干少なくなる傾向がありますが、業者によって要求される書類は異なりますので、事前に確認することをお勧めします。
また、個人事業主向けに特化したファクタリングサービスを提供している業者もありますので、そのような業者を選ぶことで、より利用しやすい条件が提示される可能性もあります。業者選びの際には、個人事業主の利用実績が豊富な業者を選ぶことも一つの方法です。
9-2. 最短どれくらいで資金調達できますか?
2社間ファクタリングでの資金調達は、最短で申込日当日(即日)、一般的には1〜3営業日以内に完了するケースが多いです。ただし、実際の所要時間は様々な要因によって変動します。
即日入金が可能なケースは、少額の売掛金(数百万円以下)で、かつ売掛先が大企業や上場企業など信用力の高い企業である場合が多いです。また、必要書類が全て揃っていることや、過去に同じファクタリング業者との取引実績があることなども、即日入金の条件となる場合があります。
一方、高額な売掛金(数千万円以上)の場合や、売掛先の信用調査に時間がかかるケース、必要書類の不備がある場合などは、数日から1週間程度かかることもあります。特に初回利用時は審査に時間がかかる傾向があります。
また、オンラインで完結するサービスを利用する場合と、対面での契約が必要なサービスを利用する場合でも所要時間は異なります。オンラインサービスの方が一般的に手続きが迅速に完了する傾向があります。緊急性が高い場合は、オンライン完結型のサービスを選ぶことをお勧めします。
9-3. 取引先への通知なしで本当に大丈夫ですか?
2社間ファクタリングの最大の特徴は、取引先への通知なしで資金調達できる点ですが、これには法的な側面と実務的な側面から注意点があります。
法的な側面としては、債権譲渡の対抗要件に関する課題があります。民法第467条によれば、債権譲渡を第三者に対抗するためには、確定日付のある通知または承諾が必要とされています。2社間ファクタリングでは取引先に通知しないため、取引先が倒産した場合の債権者間の優先順位争いなどで不利になる可能性があります。
また、万が一のトラブル発生時のリスクも考慮する必要があります。例えば、売掛金を売却した後に取引先との間で商品やサービスに関するトラブルが発生し、取引先が支払いを拒否するようなケースでは、ファクタリング業者との間で償還請求権(遡及権)の問題が生じる可能性があります。
さらに、多くの2社間ファクタリング契約では、売掛金の二重譲渡を禁止する条項が設けられています。同じ売掛金を複数の業者に譲渡した場合、詐欺罪に問われるリスクもありますので、契約内容をよく理解し、適切に管理することが重要です。
ただし、適正な契約内容で信頼できる業者と取引を行い、契約条件を遵守する限りにおいては、取引先への通知なしでファクタリングを利用することは可能です。契約内容をしっかりと確認し、法的リスクを理解した上で利用することをお勧めします。
9-4. 審査に落ちるケースはありますか?
はい、2社間ファクタリングでも審査に落ちるケースはあります。主な審査落ちの理由としては以下のようなものが挙げられます。
売掛先の信用力不足が最も一般的な審査落ち理由の一つです。ファクタリングでは売掛先(債務者)の信用力が重要な審査基準となるため、売掛先が創業間もない企業や財務状況の悪い企業、過去に支払い遅延や債務不履行があった企業などの場合、審査が通りにくくなります。
売掛金の内容に関する問題も審査落ちの原因となりえます。例えば、将来の売上に対する前払い的な性質の請求や、工事の途中段階での請求など、完全に成立していない債権は対象外となる場合が多いです。また、著しく長期間の支払い条件(120日以上など)が設定されている売掛金も審査が厳しくなる傾向があります。
さらに、売掛金を売却する企業自体の信用上の問題も審査に影響します。例えば、現在破産手続中や民事再生中の企業、反社会的勢力との関連が疑われる企業、過去にファクタリング契約で重大な契約違反があった企業などは、審査に通らない可能性が高いです。
書類の不備や虚偽申告も即座に審査落ちにつながります。ファクタリングでは売掛金の実在性や正当性を証明するために様々な書類が必要となりますが、これらに不備や矛盾がある場合は、審査に通らない可能性が高いです。
9-5. 繰り返し利用することは可能ですか?
はい、2社間ファクタリングは繰り返し利用することが可能です。むしろ、継続的に利用することで様々なメリットが生じることもあります。
継続利用のメリットとしては、まず手数料の優遇が期待できる点が挙げられます。ファクタリング業者との信頼関係が構築されることで、徐々に手数料率が下がる傾向があります。また、審査のスピードアップや必要書類の簡略化など、手続き面での優遇も期待できます。
さらに、継続的に利用することで資金繰り計画が立てやすくなるというメリットもあります。売掛金発生から入金までの期間を短縮できることが予測可能になれば、より効率的な資金計画が可能となります。
ただし、繰り返し利用する際の注意点もあります。過度な依存は避けるべきでしょう。ファクタリングは手数料が高額なため、恒常的に利用し続けると、その分利益が圧迫されることになります。あくまで一時的な資金需要や特定の目的のための手段として位置づけることが重要です。
また、銀行など他の金融機関からの融資を検討している場合、過度なファクタリング利用は審査に悪影響を与える可能性があります。銀行が融資審査を行う際に、過去のファクタリング利用履歴を確認し、頻繁な利用を資金繰りの悪化のサインと捉える可能性もあります。計画的な利用を心がけましょう。
10. まとめ
2社間ファクタリングは、銀行融資などの従来型の資金調達手段と比較して、スピーディーかつ審査基準が比較的緩やかな資金調達方法として、多くの中小企業や個人事業主に活用されています。
最大のメリットは、取引先に知られることなく資金調達できる点で、資金繰りの状況を取引先に悟られたくない企業にとって大きな意味を持ちます。また、融資ではなく売買取引のため返済義務がなく、担保や保証人も不要という点も利用しやすさにつながっています。
一方で、手数料率が高い傾向にあることや、悪徳業者のリスク、債権譲渡登記による取引先との関係性への懸念など、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを正しく理解し、適切に対処することが重要です。
2社間ファクタリングの利用を検討する際には、自社の資金需要の緊急性や目的、期間などを明確にした上で、複数の業者から見積もりを取得し、比較検討することをお勧めします。また、貸金業登録の有無や業歴、取引実績など、業者の信頼性を確認することも重要です。
最終的には、2社間ファクタリングは「売掛金の早期現金化」という特定の目的に特化した資金調達手段であることを理解し、銀行融資やビジネスローンなど他の資金調達手段と組み合わせながら、効率的な資金繰り計画を立てることが事業の持続的な発展につながるでしょう。
適切に活用することで、資金繰りの改善や事業機会の拡大につながる有効なツールとなりますが、短期的な視点だけでなく、長期的な経営戦略の中での位置づけを明確にした上で利用することが重要です。業者選びや契約内容の確認を慎重に行い、自社の経営状況に最適な形でファクタリングを活用していただければと思います。
