ファクタリング

ファクタリングとは?仕組みやメリットデメリットを解説

2024.10.31

この記事の要点

  1. ファクタリングの法的根拠から具体的な活用方法まで体系的に理解でき、民法や金融庁見解に基づいた安全で効果的な資金調達の判断ができるようになります。
  2. 業界団体調査に基づく具体的な手数料相場と総コスト計算方法を把握することで、他の資金調達手段との適切な比較検討が可能になります。
  3. 金融庁公表の判例を基にした悪徳業者を見分ける5つのチェックポイントを習得し、リスクを回避しながら信頼できる業者選定ができるようになります。

目次

ATOファクタリング

1. ファクタリングとは?基本を解説

企業経営において資金繰りは重要な課題となります。売上は順調でも売掛金の入金まで時間がかかるため、キャッシュフローが不安定になることは珍しくありません。

このような状況で注目されているのが「ファクタリング」という資金調達手法です。ファクタリングを活用することで、売掛金を期日前に現金化でき、資金繰りの改善が期待できます。

本記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから具体的な活用方法、利用時の注意点まで詳しく解説します。法的根拠に基づいた正確な情報と具体的な判断材料を提供し、適切な知識を身につけることで事業の安定的な成長に役立てることができるでしょう。

1-1. 売掛債権を現金化する資金調達手法

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することで、本来の支払期日よりも早く現金を受け取る資金調達手法です。金融庁は「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」と定義しています。

通常の企業間取引では、商品やサービスを提供した後、30日から90日程度の支払いサイトを経て代金が入金されます。この期間中は売上は計上されているものの、実際の現金は手元にない状態となります。

ファクタリングを利用することで、この待機期間を短縮し、売掛債権を即座に現金化することが可能になります。ファクタリング会社は手数料を差し引いた金額を利用者に支払い、後日売掛先から債権額面通りの金額を回収する仕組みとなっています。

具体的な事例として、100万円の売掛債権を手数料10%でファクタリングした場合、利用者は90万円を受け取ります。ファクタリング会社は後日売掛先から100万円を回収し、この10万円の差額が収益となります。

1-2. 民法に基づく債権譲渡契約の法的根拠

ファクタリングは民法第466条から第473条に規定される債権譲渡の法的枠組みに基づいて行われます。これは確立された法的制度であり、適正に実施される限り完全に合法的な取引です。

民法第466条第1項では「債権は、法令の制限内において、自由に譲り渡すことができる」と規定されています。第467条では債権譲渡の対抗要件として、債務者への通知または債務者の承諾が必要であることが定められています。

ファクタリングにおいては、売掛債権を保有する企業(債権者)が、ファクタリング会社(譲受人)に対して当該債権を譲渡することになります。この際、債権譲渡通知書の送付や債権者の承諾取得により、第三者に対する対抗要件を具備することが可能です。

2020年4月に施行された改正民法により、従来問題となっていた債権譲渡禁止特約についても制限が緩和されました。民法第466条の2により、債権譲渡禁止特約が付されている債権であっても、善意無重過失の第三者に対する譲渡は有効とされ、ファクタリングの利用範囲が拡大しています。

金融庁も「法的には債権の売買(債権譲渡)契約です」と明確に定義しており、正当な金融サービスとして位置づけられています。

1-3. 融資との決定的な3つの違い

ファクタリングと銀行融資には根本的な違いがあります。第一に、契約の性質が異なります。融資は金銭消費貸借契約に基づく借入れですが、ファクタリングは債権売買契約に基づく売却取引です。

第二に、審査の基準が大きく異なります。融資では利用者の信用力や返済能力が重視されますが、ファクタリングでは売掛先の信用力が最も重要な審査要素となります。そのため、自社の業績が思わしくない場合でも、売掛先が信用力の高い企業であればファクタリングを利用できる可能性があります。

第三に、貸借対照表への影響が異なります。融資を受けた場合は負債として計上されますが、ファクタリングは売掛債権の売却であるため負債は増加しません。これにより、財務指標の悪化を避けながら資金調達を行うことができます。

また、融資では担保や保証人が求められる場合がありますが、ファクタリングでは原則として不要です。入金までの期間も、融資が数週間から数ヶ月かかるのに対し、ファクタリングは最短即日での資金調達が可能となっています。

2. ファクタリングの種類と契約形態の選び方

2-1. 2者間ファクタリングの特徴と活用場面

2者間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社の間で直接契約を結ぶ形態です。売掛先に債権譲渡の通知を行わないため、ファクタリングの利用を秘匿できる特徴があります。

この形態では、売掛先から入金された代金を利用企業が一度受け取り、その後ファクタリング会社に送金する仕組みとなります。売掛先にとっては従来通りの取引相手に支払いを行うため、資金調達の実情を知られることがありません。

2者間ファクタリングが適している場面として、取引先との関係を重視する場合が挙げられます。ファクタリングの利用が知られることで、経営状況に対する懸念を抱かれる可能性を避けたい企業にとって有効な選択肢となります。

また、迅速な資金調達を必要とする場合にも適しています。売掛先の同意を得る必要がないため、手続きが簡素化され、最短当日での資金化も可能です。緊急の支払いや突発的な資金需要に対応する際に重宝されています。

ただし、ファクタリング会社にとってはリスクが高い取引形態であるため、手数料は3者間ファクタリングと比較して高く設定される傾向があります。一般的に5%から20%程度の手数料が適用されることが多くなっています。

2-2. 3者間ファクタリングのメリットと注意点

3者間ファクタリングは、利用企業、ファクタリング会社、売掛先の3者が関与する契約形態です。売掛先に債権譲渡の通知を行い、承諾を得た上で実施されます。

最大のメリットは手数料の低さです。売掛先が直接ファクタリング会社に支払いを行うため、回収リスクが軽減され、一般的に1%から10%程度の手数料で利用できます。継続的にファクタリングを利用する場合や、高額な債権を取り扱う場合には、コスト面での優位性が顕著に現れます。

また、売掛先の協力により確実な債権回収が見込めるため、審査通過率も高くなる傾向があります。売掛先が上場企業や官公庁などの信用力の高い組織である場合、より有利な条件での契約が期待できます。

一方で注意点として、売掛先にファクタリングの利用が明らかになることが挙げられます。これにより、資金繰りの状況について推測される可能性があります。取引先との関係性や業界の慣習を考慮した上で判断することが重要です。

手続き面では、売掛先の承諾を得るために時間を要する場合があります。売掛先の稟議や承認プロセスの都合により、資金化まで数日から数週間かかることも珍しくありません。緊急性の高い資金需要には適さない場合があることを理解しておく必要があります。

2-3. 買取型と保証型の使い分け

ファクタリングには大きく分けて買取型と保証型の2種類があります。買取型は一般的に認識されているファクタリングで、売掛債権を売却して資金を調達する形態です。

買取型ファクタリングは即座に現金を得ることができるため、資金繰りの改善や緊急の支払いに対応する際に活用されます。手数料を支払うことで確実に資金を調達できる点が最大の特徴となります。

保証型ファクタリングは、売掛債権の回収を保証するサービスです。売掛先が倒産や支払不能に陥った場合に、保証会社が代わりに支払いを行います。資金調達が目的ではなく、リスクヘッジが主要な目的となります。

保証型の活用場面として、新規取引先との取引開始時や、取引金額が大きい場合のリスク管理が挙げられます。売掛先の信用状況に不安がある場合や、取引先の集中リスクを軽減したい場合に有効です。

保証料は買取型の手数料と比較して低く設定されており、一般的に債権額の0.5%から3%程度となっています。継続的な取引における安定性を重視する企業にとって有用な選択肢となります。

3. ファクタリング手数料の相場と費用構造

3-1. 2者間・3者間の手数料相場と具体的数値

ファクタリングの手数料は契約形態によって大きく異なります。2者間ファクタリングの手数料相場は5%から20%程度となっており、平均的には10%から15%の範囲で設定されることが多くなっています。

日本ファクタリング業協会の調査によると、2023年度の2者間ファクタリング手数料の平均値は12.5%となっています。具体的な事例として、売掛債権額500万円の場合、手数料12%であれば60万円が手数料となり、440万円が実際の入金額となります。債権額1,000万円で手数料8%の場合は、手数料80万円を差し引いた920万円が入金されます。

3者間ファクタリングの手数料相場は1%から10%程度で、平均的には3%から7%の範囲となっています。同じ500万円の債権を手数料5%で利用した場合、手数料は25万円となり、475万円が入金額となります。

手数料率は債権額によっても変動します。少額債権(100万円未満)では手数料率が高くなる傾向があり、15%から20%程度となることもあります。一方、高額債権(1,000万円以上)では手数料率が低下し、2者間でも5%から10%程度で利用できる場合があります。

初回利用時は手数料が高く設定される傾向があり、継続利用により段階的に手数料が下がることが一般的です。信頼関係の構築により、2回目以降は初回より2%から5%程度低い手数料での利用が期待できます。

3-2. 手数料に影響する5つの要因

ファクタリング手数料は複数の要因により決定されます。第一の要因は売掛先の信用力です。上場企業や官公庁など信用力の高い組織が売掛先の場合、手数料は大幅に低下します。帝国データバンクの調査では、上場企業への売掛金では手数料が2%から3%程度低くなることが報告されています。

第二の要因は売掛債権の支払期日までの期間です。支払期日が近い債権ほど回収リスクが低いため、手数料も低く設定されます。一般的に支払期日まで30日以内の債権は低い手数料率が適用され、90日を超える債権は手数料が上昇します。

第三の要因は利用企業の業種と財務状況です。建設業や介護業など支払期日が長い業界では手数料が高くなる傾向があります。また、利用企業の売上規模や経営年数も考慮要素となり、安定した経営実績のある企業ほど有利な条件での契約が可能です。

第四の要因は債権の種類と継続性です。継続的な取引による安定した債権は手数料が低く設定されます。スポット取引による単発の債権と比較して、月次で発生する継続債権は2%から5%程度手数料が低くなることがあります。

第五の要因は契約条件と付加サービスです。債権譲渡登記を行う場合は手数料が上昇し、逆に登記を省略できる場合は手数料が下がります。また、審査の簡素化や入金スピードの向上などの付加サービスを求める場合、相応の手数料上乗せが発生します。

3-3. 追加費用と総コストの計算方法

ファクタリングの総コストは基本手数料に加えて、各種追加費用を含めて計算する必要があります。主要な追加費用として、債権譲渡登記費用が挙げられます。これは一般的に5万円から15万円程度の費用が発生し、少額債権の場合は総コストに大きく影響します。

審査手数料や事務手数料として、債権額の1%から3%程度が請求される場合があります。債権額500万円の場合、5万円から15万円の追加費用となります。これらの費用は契約時に明示されるため、事前に確認することが重要です。

振込手数料や書類作成費用などの諸費用も考慮する必要があります。通常は数千円から数万円程度ですが、複数回利用する場合は累積的な負担となります。

総コストの計算例として、債権額1,000万円、基本手数料8%、債権譲渡登記費用10万円、事務手数料2%の場合を想定します。基本手数料80万円、登記費用10万円、事務手数料20万円の合計110万円が総費用となり、実効手数料率は11%となります。

年率換算での比較も重要な視点です。支払期日まで60日の債権を手数料10%で利用した場合、年率換算では約60%となります。この計算により、他の資金調達手法との比較が可能になります。

4. ファクタリングのメリットとビジネス活用法

4-1. 即日資金調達による資金繰り改善効果

ファクタリング最大のメリットは、資金調達スピードの速さです。申込みから入金まで最短即日、平均的には2日から3日程度で資金を確保できます。これは銀行融資の審査期間が数週間から数ヶ月かかることと比較して、圧倒的な優位性を持っています。

緊急の支払いが発生した場合の対応力が向上します。例えば、大口受注に伴う材料費の前払いや、季節変動による人件費の増加など、予期しない資金需要に迅速に対応できます。この機動力により、ビジネスチャンスを逃すリスクを最小限に抑えることができます。

キャッシュフローの平準化効果も重要なメリットです。売掛金の入金サイクルと支払いサイクルにズレがある場合、ファクタリングにより資金の流れを調整できます。特に支払いサイトが短い仕入先と、回収サイトが長い売掛先を抱える企業にとって有効な解決策となります。

運転資金の効率的な活用も可能になります。手元資金を設備投資や事業拡大に振り向けることで、企業成長を加速できます。売掛金を早期に現金化することで、新たな投資機会への対応力が向上し、競争優位性の確保につながります。

4-2. 信用情報への影響なしで利用できる法的理由

ファクタリングは債権売買取引であるため、信用情報機関への登録や照会は行われません。これは融資やローンとは根本的に異なる特徴であり、企業の信用履歴に一切影響を与えません。

民法上の債権譲渡は売買契約の性質を有しており、金銭消費貸借契約とは法的性質が異なります。信用情報機関は貸金業法に基づく貸付け情報を管理しているため、売買取引であるファクタリングは登録対象外となります。

将来の銀行融資への影響を回避できる点は重要なメリットです。信用情報に借入れ履歴が残ることで、後の融資審査に影響する可能性がありますが、ファクタリングにはこうした懸念がありません。成長段階の企業にとって、将来の資金調達選択肢を狭めない点は大きな価値があります。

決算書への影響も最小限に抑えられます。ファクタリングは売掛債権の減少と現預金の増加として処理されるため、貸借対照表の負債項目は増加しません。財務指標の悪化を避けながら資金調達を行えるため、取引先や金融機関からの評価への影響を抑制できます。

4-3. 売掛金回収リスクの軽減効果

ファクタリングには売掛金の回収リスクを移転する効果があります。一般的にファクタリング契約は償還請求権なし(ノンリコース)で締結されるため、売掛先が倒産した場合でも利用企業に返済義務は生じません。

貸し倒れリスクの完全移転により、財務の安定性が向上します。特に取引先の集中度が高い企業や、新規取引先との取引が多い企業にとって、リスク分散効果は大きな価値を持ちます。売掛先の倒産により連鎖倒産に陥るリスクを回避できます。

与信管理業務の負担軽減も実現できます。ファクタリング会社が売掛先の信用調査を実施するため、利用企業の与信管理コストを削減できます。専門的な信用調査により、より精緻なリスク評価が可能になります。

売掛金の回収業務からの解放も重要なメリットです。3者間ファクタリングの場合、売掛先からの回収業務はファクタリング会社が担当するため、利用企業は本業に集中できます。回収業務に要する人的コストや時間的負担の削減効果があります。

5. ファクタリングのデメリットと利用時の注意点

5-1. 融資より高い調達コストの実態

ファクタリングの最大のデメリットは、他の資金調達手段と比較して高い調達コストです。日本政策金融公庫の調査によると、中小企業向け融資の平均金利が年率2%から5%程度であるのに対し、ファクタリングの手数料を年率換算すると20%から120%に達する場合があります。

具体的なコスト比較として、1,000万円を60日間調達する場合を想定します。銀行融資(年率3%)では利息約5万円ですが、ファクタリング(手数料10%)では100万円の手数料が発生します。この差額95万円は企業収益に直接影響する重要な要素となります。

継続利用による累積コストの増大も深刻な問題です。月次で500万円を手数料10%で利用し続けた場合、年間手数料は600万円に達します。この負担が企業の収益性を圧迫し、財務状況の悪化を招く可能性があります。

手数料負担により売上総利益率が低下することも考慮が必要です。利益率10%の事業において手数料10%のファクタリングを利用した場合、収益性が大幅に悪化します。事業の収益性を十分に検討した上での利用判断が不可欠です。

5-2. 売掛金額による調達限度額の制約

ファクタリングは保有する売掛債権の範囲内でしか資金調達できないという根本的な制約があります。これは融資のように信用力に基づいて調達額を決定する仕組みとは大きく異なります。

売掛債権額が少ない企業では、必要な資金を十分に調達できない場合があります。例えば、月商500万円の企業が1,000万円の設備投資資金を必要とする場合、ファクタリングのみでは対応困難です。他の資金調達手段との組み合わせが必要になります。

季節変動の大きい事業では、閑散期の資金調達が困難になる可能性があります。売掛債権が少ない時期には調達可能額も減少するため、年間を通じた安定的な資金確保に課題が生じます。

売掛先の集中リスクも調達制約の要因となります。特定の取引先に依存している場合、その取引先との関係悪化や倒産により、一度に大きな調達力を失うリスクがあります。取引先の分散化が調達安定性の向上につながります。

5-3. 悪徳業者を見分ける5つのチェックポイント

ファクタリング業界には法的規制が不十分であるため、悪徳業者の存在が問題となっています。金融庁も「ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されています」と注意喚起を行っており、適切な業者選別が重要です。

第一のチェックポイントは、償還請求権の有無です。金融庁が公表した判例によると、東京高裁令和3年7月1日判決では「債務者が弁済しなかった場合、売主が債権額以上の金額をファクタリング業者に支払う旨の公正証書を作成するなど、ファクタリング業者が負担すべき不払いのリスクを負担していない」として貸金業法違反と判断されています。正当なファクタリング契約は原則として償還請求権なし(ノンリコース)で締結されます。

第二のチェックポイントは、手数料の水準です。異常に高い手数料(30%以上)を提示する業者は悪徳業者の可能性が高くなります。また、手数料の内訳を明確に説明できない業者も避けるべきです。適正な業者は手数料体系を透明化しています。

第三のチェックポイントは、会社情報の開示状況です。住所や電話番号が曖昧で、実在性に疑問がある業者は危険です。登記簿謄本の確認や、実際のオフィスの存在確認も有効な判断材料となります。

第四のチェックポイントは、契約条件の不当性です。売掛先への通知を禁止したり、利用者の預金通帳や印鑑を預かろうとしたりする業者は悪徳業者の典型的な特徴です。正当な業者はこうした不合理な条件を提示しません。

第五のチェックポイントは、取引経験と評判です。設立間もない業者や、インターネット上で悪評が目立つ業者は慎重に検討すべきです。業界団体への加盟状況や、他の利用者からの評価も重要な判断基準となります。

6. よくある質問

6-1. 個人事業主でもファクタリングは利用できますか?

個人事業主でもファクタリングの利用は可能です。法人と同様に売掛債権を保有していれば、ファクタリング会社との契約を締結できます。ただし、法人と比較して審査が厳しくなる傾向があります。

個人事業主の場合、確定申告書や開業届などの追加書類が求められることが一般的です。事業の継続性や安定性を証明するため、複数年度の売上実績や取引先との契約書の提出が必要になる場合があります。

売掛先が法人である必要があります。個人間取引による売掛債権は、回収リスクが高いためファクタリング会社に敬遠される傾向があります。建設業やIT業など、法人との継続的な取引がある個人事業主に適しています。

6-2. 建設業での利用に特別な手続きは必要ですか?

建設業でのファクタリング利用に特別な手続きは不要ですが、業界特有の事情を理解している業者の選択が重要です。建設業は支払いサイトが長く、下請け構造が複雑であるため、これらの特徴を理解した業者での利用が推奨されます。

工事請負契約書や注文書の提出が求められる場合があります。建設業では口約束での受注も多いため、債権の実在性を証明する書類の準備が重要になります。工事の進捗状況や完成予定日についても詳細な説明が必要です。

建設業特化型のファクタリング会社も存在しており、業界の商慣行を理解したサービスを提供しています。注文書ファクタリングに対応している業者もあり、工事開始前の資金調達も可能です。

6-3. 売掛先にファクタリング利用がバレることはありますか?

2者間ファクタリングの場合、売掛先にファクタリング利用が知られることはありません。債権譲渡の通知を行わないため、売掛先は従来通りの支払先に代金を支払います。ファクタリング会社への送金は利用企業が行うため、取引関係に変化はありません。

ただし、債権譲渡登記を行う場合は注意が必要です。登記情報は法務局で公開されるため、売掛先が調査すれば債権譲渡の事実を知ることができます。登記の要否については契約前に確認し、秘匿性を重視する場合は登記不要の業者を選択することが大切です。

3者間ファクタリングでは、売掛先の承諾が必要なため、必然的にファクタリング利用が明らかになります。この場合は事前に売掛先に説明し、理解を得ることが重要です。

6-4. 審査に落ちる原因と対処法を教えてください

ファクタリング審査で最も重要視されるのは売掛先の信用力です。売掛先の経営状況が悪化している場合や、支払遅延の履歴がある場合は審査に落ちる可能性が高くなります。売掛先の選定や、信用力の高い取引先からの債権を優先的に利用することが対処法となります。

売掛債権の支払期日が長すぎる場合も審査落ちの原因となります。一般的に支払期日まで90日を超える債権は敬遠される傾向があります。支払期日の短い債権を選択するか、支払期日の調整を売掛先と交渉することが有効です。

利用企業の業種や事業内容も審査に影響します。リスクの高い業種とみなされる場合や、事業内容が不明確な場合は審査に通りにくくなります。事業計画書や取引実績を詳細に説明し、事業の安定性をアピールすることが重要です。

必要書類の不備も審査落ちの一般的な原因です。請求書、契約書、通帳コピーなどの基本書類に加えて、売掛先との取引履歴や入金実績を示す資料も準備することが推奨されます。書類の記載内容に矛盾がないか、事前に十分な確認を行うことが大切です。

6-5. ファクタリングは金融庁の認可が必要な業務ですか?

ファクタリング業は金融庁の認可や登録が不要な業務です。これは債権売買取引であり、貸金業とは異なる性質を持つためです。金融庁も「ファクタリング全般を規制する法律はありません」と明確に回答しています。

ただし、償還請求権ありの契約や、事実上融資と同様の仕組みとなっている場合は、貸金業に該当する可能性があります。金融庁が公表した判例では、名古屋地裁令和3年7月16日判決において「譲渡債権の性質や、債権譲渡日から支払日までの期間の短さからして債務者による不履行の可能性は極めて低い」として貸金業法違反と判断された事例があります。

業界団体への加盟も任意となっています。一般社団法人日本ファクタリング業協会などの業界団体が存在しますが、加盟は義務ではありません。ただし、加盟業者は一定の自主規制ルールを遵守しているため、安心材料の一つとなります。

悪徳業者の見分け方として、貸金業登録の有無を確認することが重要です。債権売買を装いながら事実上貸付けを行っている業者は、貸金業登録を受けていない違法業者の可能性が高くなります。

7. まとめ

ファクタリングは売掛債権を活用した資金調達手法として、多くの企業で利用されています。民法第466条から第473条に基づく債権譲渡の法的枠組みにより、適正に運営される限り完全に合法的な金融サービスです。

最大のメリットは資金調達の迅速性にあります。最短即日での資金化が可能であり、緊急の資金需要や事業機会への対応力が向上します。信用情報への影響がなく、売掛金の回収リスクを移転できる点も重要な特徴です。

一方で、融資と比較して高い調達コストは十分に考慮する必要があります。日本ファクタリング業協会の調査によると、手数料を年率換算すると20%を超える場合もあり、継続利用による累積的な負担は企業収益に大きく影響します。

悪徳業者の存在も注意すべき点です。金融庁の公表した判例を参考に、償還請求権の有無や手数料水準、会社情報の透明性などを基準に適切な業者選定を行うことが重要です。

適切に活用することで、ファクタリングは企業の資金繰り改善と事業成長に貢献する有効な手段となります。自社の資金需要と財務状況を総合的に判断し、法的根拠に基づいた正確な理解のもとで戦略的な利用を心がけることが成功の鍵となるでしょう。

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