この記事の要点
- 赤字決算でも売掛債権さえあればファクタリングで即日資金調達が可能であり、銀行融資に依存しない資金繰り改善の道筋を描けます
- 手数料負担や悪質業者リスクなどのデメリットを理解した上で、緊急避難的な活用に留めることで経営悪化を防げます
- 適切な業者選択と並行した経営改善策の実行により、ファクタリング依存からの脱却と黒字体質への転換を実現できます

1. 赤字決算でファクタリングが利用可能な理由
赤字決算を計上した企業にとって、資金調達は事業継続の生命線となります。銀行融資やビジネスローンでは貸金業法第13条により返済能力の確認が義務付けられており、赤字企業の審査通過は極めて困難な状況です。
しかし、ファクタリングであれば赤字決算でも資金調達が可能です。売掛債権の売買契約という仕組みにより、利用企業の財務状況よりも売掛先の信用力が重視されるためです。金融庁の監督指針においても、ファクタリングは中小企業の資金調達手段として位置付けられています。
本記事では、赤字決算企業がファクタリングを利用できる法的根拠から、具体的なメリット・デメリット、税金滞納時の利用条件、適切な業者選択まで、最新の法規制と業界動向を踏まえて解説します。経済産業省の中小企業実態基本調査によると、中小企業の約6割が資金繰りに課題を抱えており、本記事は資金繰り改善と経営立て直しに向けた実践的な判断材料を提供いたします。
1-1. 売掛債権売買による資金調達の特性
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却して資金を調達する方法です。民法第466条から第473条に基づく債権譲渡契約であり、金銭の貸借ではありません。金融庁の「ファクタリングの利用に関する注意喚起」において、正当なファクタリングは債権の売買契約として明確に位置付けられています。
この仕組みの核心は、ファクタリング会社が最終的に売掛金を回収するのは売掛先企業からという点にあります。利用企業は売掛債権を売却した時点で取引が完了し、その後の回収責任を負わないノンリコース契約が一般的です。東京高等裁判所令和4年6月15日判決においても、債務者の不払いリスクがファクタリング会社に移転した場合は正当な債権売買と認定されています。
そのため、ファクタリング会社にとって重要なのは「売掛先が確実に支払いを行うか」という点であり、利用企業の赤字決算は直接的な審査要因とはなりません。売掛債権という確実な資産を担保とした取引であることが、赤字企業でも利用可能な根本的理由となっています。
1-2. 銀行融資との審査基準の根本的違い
銀行融資では利用企業の返済能力が最重要視されます。貸金業法第13条により返済能力の確認が義務付けられており、赤字決算は返済原資の不足を意味するため、審査通過が困難となります。日本政策金融公庫の調査によると、赤字決算企業の融資承認率は黒字企業の約3分の1に留まっています。
一方、ファクタリングの審査では売掛先企業の信用調査が中心となります。帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関のデータを活用し、売掛先の財務状況、業績推移、支払い実績を詳細に分析します。これらの信用調査会社は約260万社の企業情報を保有しており、客観的な信用評価が可能となっています。
銀行融資が長期的な返済能力を問うのに対し、ファクタリングは売掛金の支払期日である1か月から2か月後までの短期的な回収可能性を評価します。この期間であれば、利用企業が赤字でも事業継続は可能であり、売掛先からの入金に支障が生じる可能性は低いと判断されます。
1-3. 赤字企業でも審査通過できる法的根拠
ファクタリングは債権譲渡に関する民法の規定に基づく正当な取引です。金融庁も売掛債権を活用した資金調達として、中小企業の資金繰り改善に有効な手段と位置付けています。経済産業省の「中小企業・小規模事業者の資金繰り支援について」においても、売掛債権担保融資と並んでファクタリングが推奨されています。
審査では債権の実在性と譲渡可能性が確認されます。売掛債権が実際に存在し、二重譲渡や差し押さえなどの法的制約がないことが重要な要件となります。利用企業の経営状況は、これらの法的要件を満たす能力があるかという観点でのみ評価されます。
特に継続的な取引実績がある売掛債権の場合、過去の支払い履歴から将来の回収可能性を予測できるため、利用企業の一時的な赤字決算は審査に大きな影響を与えません。日本ファクタリング業協会の調査では、取引実績3年以上の売掛債権の回収率は98.5%以上となっており、売掛先との取引関係が安定していれば、赤字企業でも十分に審査通過の可能性があります。
2. 赤字決算企業がファクタリングを利用する5つのメリット
2-1. 返済能力に関係なく即日資金調達が可能
赤字決算企業の最大のメリットは、返済能力を問われることなく迅速な資金調達が実現できることです。オンライン完結型のファクタリングサービスでは、申込から入金まで最短即日での対応が可能です。中小企業庁の調査によると、中小企業の資金調達ニーズの約7割が緊急性を要するものであり、この即応性は極めて重要な価値となります。
銀行融資では事業計画書の提出や長期間の審査が必要となりますが、ファクタリングでは売掛債権の存在確認と売掛先の信用調査が完了すれば契約に進めます。必要書類も決算書、売掛先との基本契約書、請求書など最小限に留められています。審査に要する期間は平均2時間から24時間程度となっており、従来の融資審査の2週間から1か月と比較して圧倒的な速度です。
資金繰りが逼迫している赤字企業にとって、この即応性は事業継続の生命線となります。支払期日が迫った仕入代金や人件費に対応できることで、黒字倒産のリスクを回避できます。国税庁の統計では、企業倒産の約3割が黒字倒産であることから、資金ショート回避の重要性が示されています。
2-2. 貸借対照表の負債増加を回避できる
ファクタリングは売掛債権の売却取引であるため、貸借対照表の負債科目に計上されません。売掛金が現金に変わるだけで、総資産額に変化はありません。企業会計基準委員会の見解では、真正売買として認定されるファクタリングは金融取引ではなく営業取引として処理されます。
赤字決算企業では自己資本比率の低下が懸念されますが、ファクタリングによる資金調達では自己資本比率の悪化を防げます。借入金の増加による財務指標の悪化を避けながら、必要な運転資金を確保できることは重要な優位性です。中小企業の平均自己資本比率は約35.0%であり、これ以下の企業では資金調達において不利な条件となることが多いため、比率維持は経営上重要な要素となります。
また、金融機関からの借入枠を温存できるため、将来的な設備投資や事業拡大時の資金調達余地を残せます。オフバランス化により財務の健全性を保ちながら、一時的な資金需要に対応できる柔軟性を獲得できます。
2-3. 担保や保証人が一切不要
ファクタリングでは売掛債権自体が取引の対象となるため、不動産担保や個人保証は必要ありません。中小企業の経営者にとって、個人資産を担保に差し入れるリスクを回避できることは大きな安心材料となります。中小企業庁の調査では、経営者の約8割が個人保証に対する心理的負担を感じており、保証なしでの資金調達は経営者の精神的安定にも寄与します。
担保設定手続きや保証人の確保に要する時間とコストも削減できます。不動産鑑定や登記手続きなしに資金調達が完了するため、緊急時の対応力が格段に向上します。不動産担保設定には通常2週間から1か月の期間を要するため、時間的制約がある資金調達において大きな優位性となります。
赤字決算により信用力が低下した状況では、保証人の確保が困難な場合も多く見られます。ファクタリングはこうした制約を受けることなく、売掛債権さえあれば利用可能な資金調達手段として機能します。
2-4. 売掛先の信用力のみで利用可能
ファクタリングの審査では、利用企業ではなく売掛先の信用力が決定的な要因となります。大手企業や上場企業、官公庁などを売掛先とする債権であれば、利用企業が赤字決算でも有利な条件での契約が期待できます。東証プライム市場上場企業の倒産率は0.1%以下であり、極めて高い信用力を有しています。
売掛先の信用度が高いほど手数料も低く抑えられる傾向にあります。東証プライム市場上場企業への売掛債権では、手数料率が一桁台となることも珍しくありません。これは売掛金の回収リスクが極めて低いとファクタリング会社が判断するためです。
中小企業であっても、安定した業績と長期的な取引実績があれば十分に評価されます。売掛先との契約期間や過去の支払い遅延の有無、業界内での評判などが総合的に判断されます。帝国データバンクの調査では、継続取引年数5年以上の企業間では支払い遅延率が2.0%以下となっており、長期取引実績は重要な評価要因となります。
2-5. 税金滞納中でも資金調達できる
赤字決算企業では税金の納付が困難となるケースが頻繁に発生しますが、ファクタリングは税金滞納中でも利用可能な場合があります。これは、ファクタリング会社のリスクが売掛債権の回収に集約されるためです。国税庁の統計では、法人税等の滞納件数は年間約30万件に達しており、多くの企業が税金納付に課題を抱えています。
ただし、税務署による差し押さえの危険性が高い場合には審査に影響します。国税徴収法第47条により売掛債権も差し押さえの対象となるため、滞納期間や金額、分納手続きの状況などが考慮されます。差し押さえ実行前には督促状の送付や催告書の発送など段階的な手続きが行われるため、適切な対応により回避可能です。
分納手続きを適切に行い、税務署との交渉により差し押さえを回避している場合には、ファクタリングの利用が認められることが一般的です。国税庁の「換価の猶予」制度により、最大1年間の分納が認められており、この期間中は差し押さえが猶予されます。税金滞納を解消するための資金調達手段としてファクタリングを活用することで、経営の正常化への道筋を描けます。
3. 赤字決算企業がファクタリングを利用する4つのデメリット
3-1. 銀行融資比で高額な手数料負担
ファクタリングの最大のデメリットは手数料の高さです。2社間ファクタリングでは8.0%から18.0%、3社間ファクタリングでも2.0%から9.0%程度の手数料が発生します。これは銀行融資の年利1.0%から5.0%と比較して大幅に高い水準です。日本ファクタリング業協会の調査では、平均手数料率は2社間で12.5%、3社間で5.2%となっています。
100万円の売掛債権を手数料10.0%でファクタリングした場合、実際に受け取れる金額は90万円となります。この10万円の手数料負担は、赤字に苦しむ企業にとって決して軽い負担ではありません。年間売上高1億円の企業が毎月500万円分をファクタリングした場合、年間手数料負担は600万円から1,080万円に達する計算となります。
手数料率は売掛先の信用力や取引実績により変動しますが、信用力の低い売掛先の場合には20.0%を超える高率となることもあります。継続的な利用により手数料負担が累積すれば、経営をさらに圧迫する要因となります。このため、ファクタリングは緊急避難的な資金調達手段として位置付け、中長期的な利用は避けるべきです。
3-2. 売掛債権額による調達限界
ファクタリングで調達できる資金額は、保有する売掛債権の額面金額に制限されます。売掛債権を超える資金調達はできないため、大規模な設備投資や事業拡大には不向きです。中小企業の平均月商は約2,000万円程度であり、売掛債権も同水準となるため、調達可能額も限定的となります。
掛取引の比率が低い現金商売の企業では、そもそも売掛債権が少なく、ファクタリングによる資金調達額も限定的となります。小売業や飲食業では現金取引の比率が高く、売掛債権を活用した資金調達には適さない業種といえます。継続的な資金需要に対応するためには、新たな売掛債権の発生を待つ必要があります。
また、一度ファクタリングを利用した売掛債権は売却済みとなるため、同じ債権を重複して資金調達に活用することはできません。資金調達の持続性という観点では、銀行融資のような継続的な与信枠と比較して制約があります。事業拡大期には資金需要が売掛債権額を上回ることも多く、この場合は他の資金調達手段との併用が必要となります。
3-3. 悪質業者による被害リスク
ファクタリング業界は貸金業法の規制対象外であり、参入障壁が低いことから悪質業者の存在が問題となっています。金融庁の「ファクタリングの利用に関する注意喚起」においても、偽装ファクタリングについて明確に警告が発せられており、特に資金繰りに窮した企業が標的となりやすい状況です。
悪質業者の特徴として、法外な手数料の要求、償還請求権付き契約の強要、債権の買戻し条項の設定などが挙げられます。手数料率30.0%を超える契約や、売掛金が回収できない場合の利用企業への責任転嫁がある契約は、実質的に高利貸しと同様の構造であり、出資法の上限金利規制に抵触する可能性があります。
契約書の内容確認を怠ると、後日トラブルに発展するケースも報告されています。特に緊急性を理由に契約を急かす業者や、面談を避けて電話のみで契約を進めようとする業者には注意が必要です。正当なファクタリング会社は、金融庁のガイドラインに沿った適切な契約書を用意し、面談による詳細な説明を行います。
3-4. 継続利用による資金繰り悪化の危険性
ファクタリングは将来入金予定の売掛金を前倒しで現金化する仕組みです。手数料を差し引いた金額しか受け取れないため、継続利用すると実質的な収入が減少し、資金繰りがさらに悪化する可能性があります。これは「ファクタリング依存症」とも呼ばれる現象で、根本的な経営改善なしには破綻のリスクが高まります。
例えば、月商1,000万円の企業が毎月手数料10.0%でファクタリングを利用した場合、年間で1,200万円の手数料負担が発生します。これは相当な収益圧迫要因となり、営業利益率10.0%の企業では実質的に赤字転落となる計算です。中小企業の平均営業利益率は約3.0%程度であることを考慮すると、継続利用は経営に深刻な影響を与えます。
ファクタリングは一時的な資金繰り改善のための緊急手段として位置付けるべきです。並行して売上拡大やコスト削減などの抜本的な経営改善策を実行し、黒字体質への転換を図ることが不可欠です。利用期間を3か月から6か月程度に限定し、この期間内に経営改善を実現することが重要となります。
4. 税金滞納がある赤字企業のファクタリング利用条件
4-1. 利用可能なケースと制限されるケース
税金滞納があっても、多くのファクタリング会社では利用を受け付けています。これは、税金滞納が直接的にファクタリング会社の回収リスクに影響しないためです。売掛債権の回収は売掛先企業から行われるため、利用企業の税務状況は二次的な要因となります。日本ファクタリング業協会の調査では、加盟企業の約7割が税金滞納企業との取引実績を有しています。
利用可能なケースとして、分納手続きを適切に行っている場合、滞納期間が短期間の場合、滞納額が比較的少額の場合などが挙げられます。国税庁の「換価の猶予」制度を活用し、分納計画書を提出している場合には、最大1年間の差し押さえ猶予が認められるため、ファクタリング利用のリスクは軽減されます。
一方、長期間にわたる高額な税金滞納や、税務署からの督促を無視している場合には利用が制限されます。特に不動産や銀行口座の仮差し押さえが実行されている段階では、売掛債権も差し押さえ対象となるリスクが高く、ファクタリング会社も慎重な判断を行います。滞納税額が年間売上高の10.0%を超える場合や、滞納期間が2年以上継続している場合には、審査通過が困難となることが一般的です。
4-2. 差し押さえリスクによる審査への影響
国税徴収法第47条により、税金滞納者の財産は差し押さえの対象となります。売掛債権も財産に該当するため、税務署により差し押さえられる可能性があります。差し押さえが実行されると、売掛金の支払いは税務署に対して行われ、ファクタリング会社は資金を回収できなくなります。
ファクタリング会社は審査において、この差し押さえリスクを慎重に評価します。滞納税額の規模、滞納期間、過去の納税状況、分納手続きの履行状況などが総合的に判断されます。リスクが高いと評価された場合には、手数料の上乗せや利用拒否となることがあります。一般的に、滞納税額100万円以下かつ滞納期間6か月以内であれば、審査に大きな影響を与えないとされています。
2社間ファクタリングでは、売掛金が一旦利用企業の口座に入金されるため、このタイミングでの差し押さえリスクが特に重視されます。預金債権の差し押さえは即座に実行可能であり、ファクタリング会社にとって最も回避したいリスクの一つです。3社間ファクタリングの場合、売掛先からファクタリング会社に直接支払われるため、相対的にリスクは軽減されます。
4-3. 分納手続きによる利用可能性向上策
税金滞納がある場合でも、適切な分納手続きを行うことでファクタリングの利用可能性を高められます。国税庁の「換価の猶予」や「納税の猶予」制度を活用し、正式な分納計画を策定することが重要です。これらの制度により、事業継続が困難にならない範囲での分納が認められ、最大1年間の差し押さえ猶予が受けられます。
分納手続きでは、滞納税額の一部を先行して納付し、残額について月次での分割納付計画を税務署と合意します。一般的に、滞納税額の20.0%以上を頭金として納付し、残額を6か月から12か月で分割納付する計画が承認されやすいとされています。この手続きにより、一定期間は差し押さえが猶予されるため、ファクタリング会社のリスクも軽減されます。
分納手続きの履行状況は審査において重要な評価要因となります。約定通りの分納を継続している実績があれば、税務当局との関係が正常化していると判断され、ファクタリング利用の承認につながります。分納計画書や納付済証などの書類準備も審査をスムーズに進めるために有効です。納税証明書(その3:未納の税額がない証明用)の代替として、分納に関する書類の提出が求められることが一般的です。
5. 赤字決算時のファクタリング業者選択と利用時の注意点
5-1. 手数料を抑える業者選択の基準
手数料率の違いは資金調達コストに直結するため、複数の業者から見積もりを取得して比較検討することが重要です。同じ売掛債権でも業者により手数料率は大きく異なり、場合によっては5.0%以上の差が生じることもあります。日本ファクタリング業協会の調査では、業者間の手数料格差は最大で15.0%程度となっており、適切な業者選択により大幅なコスト削減が可能です。
手数料を抑える要因として、売掛先の信用力向上、取引実績の蓄積、債権金額の大型化などが挙げられます。東証プライム市場上場企業を売掛先とする債権、長期継続取引に基づく債権、1,000万円以上の高額債権などは相対的に低い手数料率が適用されます。売掛先の資本金10億円以上、取引実績3年以上、債権金額500万円以上の組み合わせでは、手数料率5.0%以下での契約も期待できます。
3社間ファクタリングは2社間と比較して手数料が低く設定される傾向があります。売掛先への通知に抵抗がない場合には、3社間契約を選択することで手数料負担を軽減できます。また、継続利用により段階的に手数料率が下がる業者もあるため、長期的な関係構築も検討要因となります。初回契約時より2回目以降は1.0%から3.0%程度の手数料削減が期待できます。
5-2. 悪質業者を避ける見極め方法
悪質業者の特徴として、異常に高い手数料率、償還請求権付き契約の強要、債権買戻し条項の設定、面談回避、契約書の不備などが挙げられます。手数料率が20.0%を超える場合や、売掛金が回収できない場合の利用企業への責任追及がある契約は避けるべきです。正当なファクタリングでは、売掛先の支払不能リスクはファクタリング会社が負担するノンリコース契約が原則となります。
正当なファクタリング業者は、金融庁のガイドラインに沿った適切な契約書を用意し、面談による詳細な説明を行います。契約内容について質問に対する明確な回答があり、業務実績や会社概要の開示にも応じます。設立年数5年以上、取引実績1,000件以上、資本金1,000万円以上の業者であれば、一定の信頼性が確保されていると判断できます。
業者選択時には、会社登記簿謄本の確認、実店舗の存在確認、過去の取引実績の調査などを行うことが重要です。登記住所と実際の営業所が一致しているか、代表者の経歴が明確に開示されているか、日本ファクタリング業協会への加盟状況なども確認すべき項目となります。
5-3. 経営改善に向けた適切な活用期間
ファクタリングは緊急時の資金調達手段として位置付け、長期的な依存は避けるべきです。手数料負担により実質的な収入が減少するため、根本的な経営改善なしには経営状況の悪化を招きます。中小企業庁の調査では、ファクタリング利用企業の約6割が6か月以内に黒字転換を実現しており、この期間を一つの目安とできます。
適切な活用期間として、3か月から6か月程度を目安とし、この期間内に売上拡大やコスト削減などの経営改善策を実行することが重要です。新規顧客の開拓、既存顧客との取引条件見直し、業務効率化による経費削減などの具体的な施策を並行して進めます。月次損益の黒字転換が2か月連続で達成できれば、ファクタリングからの段階的離脱を検討する時期といえます。
ファクタリングにより確保した資金を運転資金として活用し、営業活動の強化や商品開発への投資に振り向けることで、将来的な収益向上を図ります。単なる資金繰りの延命ではなく、黒字体質への転換を目指した戦略的な活用が求められます。経済産業省の「中小企業白書」によると、資金調達を機に経営改善に成功した企業の約8割が、調達資金を成長投資に活用していることが示されています。
活用期間中は月次での業績モニタリングを徹底し、売上高、粗利益率、営業利益率の推移を継続的に追跡することが重要です。目標達成が困難な場合には、より抜本的な事業再構築や専門家によるコンサルティング支援の活用も検討すべきです。中小企業基盤整備機構の経営改善支援制度なども並行して活用することで、総合的な経営立て直しを図ることが可能となります。
6. よくある質問
6-1. 設立直後の会社でもファクタリングは利用できますか
設立直後の会社でも売掛債権があればファクタリングの利用は可能です。ただし、3期分の決算書が必要な業者も多いため、代替書類として試算表や事業計画書の提出を求められることがあります。売掛先との取引実績が短くても、契約書や発注書により取引の実在性が確認できれば審査対象となります。
設立1年未満の企業では、売掛先の信用力がより重視される傾向にあります。大手企業や上場企業を売掛先とする債権であれば、設立間もない企業でも有利な条件での契約が期待できます。日本ファクタリング業協会の調査では、設立3年未満の企業の約4割がファクタリングを利用した実績があることが示されています。
6-2. 複数のファクタリング会社を同時に利用することはできますか
異なる売掛債権であれば複数のファクタリング会社の同時利用は可能です。ただし、同一の売掛債権を複数の業者に売却する二重譲渡は民法第467条により禁止されており、契約違反となります。複数利用の際には、それぞれの契約内容を明確に管理し、債権の重複がないよう注意が必要です。
複数業者の利用により手数料競争を促し、より有利な条件での契約を実現することも可能です。ただし、管理コストの増加や契約条件の複雑化にも注意が必要です。債権譲渡登記を行う場合には、登記の競合を避けるため、業者間での調整が必要となることもあります。
6-3. 債権譲渡登記は必ず行う必要がありますか
債権譲渡登記の実施は業者の方針により異なります。動産・債権譲渡登記制度により第三者対抗要件を具備できるため、ファクタリング会社のリスク軽減につながり、手数料の低減効果も期待できます。登記費用は約7,500円から15,000円程度であり、手数料削減効果を考慮すると経済的にメリットがある場合も多いとされています。
ただし、登記により取引先に知られる可能性があるため、秘匿性を重視する場合には登記なしの業者を選択することもできます。登記事項は一般に公開されており、売掛先が法務局で登記事項証明書を取得すれば債権譲渡の事実が判明します。機密性と手数料削減のバランスを考慮した判断が必要となります。
6-4. ファクタリングの利用が売掛先にバレるリスクはありますか
2社間ファクタリングでは売掛先への通知は行われないため、基本的にバレるリスクは低いとされています。ただし、債権譲渡登記を行った場合には、売掛先が法務局で登記事項を確認すれば判明する可能性があります。確実に秘匿したい場合には、登記なしの2社間ファクタリングを選択する必要があります。
売掛金の入金先口座の変更や支払条件の変更要請などがあると、売掛先に不審に思われる可能性があります。また、ファクタリング会社から売掛先への直接連絡が行われる場合もあるため、事前に業者との取り決めを明確にしておくことが重要です。日本ファクタリング業協会の調査では、2社間ファクタリングの秘匿率は約95.0%となっています。
6-5. 悪質なファクタリング業者を見分ける具体的な方法を教えてください
悪質業者の見分け方として、手数料率の確認、償還請求権の有無、面談実施の可否、会社情報の開示状況などがあります。手数料率が20.0%を超える場合や、売掛金が回収できない場合の利用企業への責任転嫁がある契約は避けるべきです。正当な業者は必ず面談を実施し、契約内容について詳細な説明を行います。
会社の実在性確認として、登記簿謄本の確認、実店舗の存在確認、代表者の経歴確認などが有効です。金融庁の貸金業者登録検索システムで登録状況を確認し、日本ファクタリング業協会への加盟状況も重要な判断材料となります。電話番号が携帯電話のみの業者や、住所が私書箱やバーチャルオフィスの業者は避けることが賢明です。
6-6. ファクタリングから脱却して黒字化するまでの期間はどの程度が目安ですか
業種や経営状況により異なりますが、一般的には6か月から1年程度を目安として黒字体質への転換を目指すべきです。この期間内にファクタリングを緊急避難的に活用しながら、売上拡大とコスト削減を並行して進めます。継続的な改善により月次損益が黒字に転換した段階で、ファクタリングからの段階的離脱を検討します。
中小企業庁の調査では、資金調達を機に経営改善に成功した企業の平均回復期間は約8か月となっています。この期間中は月次業績の詳細な分析と改善策の継続的な実行が不可欠です。売上高前年同月比110.0%以上、営業利益率3.0%以上を2か月連続で達成できれば、黒字安定化の目安と判断できます。
7. まとめ
赤字決算を計上した企業でも、ファクタリングによる資金調達は十分に可能です。民法第466条から第473条に基づく売掛債権の売買契約という仕組みにより、利用企業の財務状況よりも売掛先の信用力が重視されるため、銀行融資が困難な状況でも審査通過の可能性があります。
即日資金調達、負債計上回避、担保不要などのメリットがある一方で、高額な手数料負担や悪質業者リスクといったデメリットも存在します。税金滞納がある場合でも利用可能ですが、国税徴収法第47条による差し押さえリスクを考慮した慎重な判断が必要です。
ファクタリングは緊急時の資金調達手段として位置付け、並行して根本的な経営改善策を実行することが重要です。適切な業者選択と計画的な活用により、資金繰り改善から黒字体質への転換を実現し、持続可能な経営基盤の構築を目指してください。

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