ファクタリング

オンラインファクタリングの仕組みと特徴を解説

2024.11.13

この記事の要点

  1. オンラインファクタリングの仕組みを理解することで、従来型との違いを把握し適切なサービス選択ができるようになります。
  2. 法的根拠と契約プロセスの知識により、安全で確実な資金調達の実行が可能となり、法的リスクを回避できます。
  3. 手数料体系と審査基準の理解により、最適な条件での資金調達が実現し、資金繰り改善の効果を最大化できます。
ATOファクタリング

1. オンラインファクタリングの仕組みと基本特徴

オンラインファクタリングは、売掛債権の売買契約をインターネット上で完結させる新しい資金調達手法として、中小企業や個人事業主の間で急速に普及が進んでいます。

従来のファクタリングが対面での面談や書類の郵送を必要としていたのに対し、オンラインファクタリングでは申込から契約、入金まで全てがウェブ上で完結します。これにより申込から最短即日、場合によっては2時間程度での資金調達が可能となっています。

この記事では、オンラインファクタリングの基本的な仕組みから法的根拠、具体的な手順、手数料体系まで、事業者が実際に利用する際に必要な知識を体系的に解説します。急な資金需要への対応や、効率的な資金繰り改善を検討されている方にとって、実践的な判断材料となる情報を提供いたします。

1-1. 完全非対面型システムの概要

オンラインファクタリングとは、売掛債権の譲渡契約における一連の手続きを全てインターネット上で完結させるファクタリングサービスです。申込者は専用のウェブフォームから必要情報を入力し、請求書や通帳のコピーなどの必要書類をデジタルファイルとしてアップロードします。

このシステムの核心は、AIを活用した自動審査機能にあります。提出された書類データは画像認識技術により自動的に読み取られ、売掛先企業の信用情報や売掛債権の内容が即座に分析されます。

人的な判断を要する複雑な案件を除き、多くのケースで30分から2時間程度での審査完了が実現されています。契約締結においてもクラウドサインなどの電子契約システムが活用されており、印鑑や郵送による契約書のやり取りは不要です。

審査通過後は電子契約による合意形成が行われ、契約完了と同時に指定された銀行口座への振込処理が実行されます。

1-2. 従来型ファクタリングとの根本的違い

従来のファクタリングでは、申込者がファクタリング会社の事務所を訪問するか、担当者の来訪を受けて対面での面談を一般的に行っていました。この過程では事業の詳細な説明や資金調達の背景について詳細なヒアリングが行われ、契約まで数日から1週間程度の期間を要していました。

オンラインファクタリングでは、こうした対面でのコミュニケーションプロセスが省略され、提出書類とシステム上での情報入力のみで審査が完了します。これにより人件費や営業コストが大幅に削減され、その結果として手数料の低減やサービス提供時間の短縮が実現されています。

ただし、この効率化には制約も存在します。オンライン審査では定型化された与信基準に基づく判定が中心となるため、特殊な事情や複雑な取引構造を持つ案件については柔軟な対応が困難な場合があります。

また、経営相談や資金繰りに関するアドバイスといった付加的なサービスの提供も限定的になります。

2. 債権譲渡契約に基づく法的メカニズム

2-1. 民法に規定される債権譲渡の法的根拠

オンラインファクタリングの法的基盤は、民法第466条から第473条に規定される債権譲渡に関する条項に依拠しています。債権譲渡とは、債権者が第三者に対して債権を移転する法律行為です。

金融庁の公式見解においても、ファクタリングは「債権の売買(債権譲渡)契約」として明確に位置づけられています。重要な法的変更として、2020年4月に施行された改正民法により債権譲渡禁止特約の効力が制限されました。

従来は債権譲渡禁止の合意がある場合、債権譲渡そのものが無効とされていましたが、改正後は譲渡自体は有効となり、債務者が支払いを拒否できる場合が限定されました。この変更により、契約書に債権譲渡禁止条項が記載されている売掛債権についても、ファクタリング会社が譲渡制限について悪意または重過失でない限り、実質的に譲渡が可能となりました。

ただし、この立証責任は債務者側が負うため、多くの場合でファクタリングの利用に支障は生じません。

2-2. オンライン環境での契約成立プロセス

オンラインファクタリングにおける契約成立は、電子契約法に基づいて実施されます。申込者の本人確認は運転免許証やマイナンバーカードなどの顔写真付き身分証明書により行われ、電子署名による意思表示の確認が契約の要件となります。

債権譲渡の対抗要件については、2社間ファクタリングの場合は債権譲渡登記により第三者への対抗要件が具備されます。この登記手続きもオンラインシステムを通じて実施され、司法書士による代理申請が一般的です。

登記費用として登録免許税7,500円と司法書士報酬が必要となりますが、多くのファクタリング会社では手数料に含まれる形で提供されています。契約書面の保存についても電子データとして管理され、契約者は専用のマイページから契約内容をいつでも確認できます。

これにより書面による契約書の保管義務が解消され、事務手続きの簡素化が実現されています。

3. 申込から入金までの具体的手順

3-1. 必要書類の準備とデジタル化要件

オンラインファクタリングの申込には、最低限として請求書と銀行通帳のコピーの2点が必要です。請求書については売掛債権の存在と金額を証明する書類として、取引先企業名、請求金額、支払期日が明記されたものが求められます。

銀行通帳については直近3か月分の入出金履歴により、売掛先からの入金状況と事業の継続性を確認する目的で提出が必要です。法人の場合は追加として決算書2期分、個人事業主の場合は確定申告書が求められるケースが多くなります。

また、売掛先との基本契約書や納品書、検収書など取引の状況を証明する書類の提出を求められる場合もあります。書類のデジタル化においては、スマートフォンのカメラ機能による撮影でも受け付けられることが多いものの、文字が鮮明に読み取れる解像度での提出が必要です。

書類に汚れや折り曲がりがある場合、AI審査での読み取りエラーが発生し審査が遅延する可能性があるため、可能な限り鮮明なデジタルデータでの提出が推奨されます。

3-2. AI審査システムによる与信判定プロセス

オンラインファクタリングの審査プロセスは、AI技術を活用した自動与信システムが中心となります。提出された請求書データから売掛先企業名が抽出され、企業データベースと照合することで売掛先の信用情報が即座に取得されます。

帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関のデータベースとの連携により、売掛先企業の財務状況や支払履歴が自動的に評価されます。売掛債権の内容については、請求金額と支払期日、業種などの情報から回収リスクが算定されます。

建設業や介護事業、IT業など業種ごとの回収率統計データを基に、リスクスコアが自動計算され、手数料率の決定に反映されます。支払期日については、60日以内の短期債権ほど高い評価を受け、90日を超える長期債権は回収リスクの増大により手数料が高く設定される傾向があります。

申込者側の与信については、銀行通帳の入出金履歴から事業の安定性や売掛先からの入金状況が分析されます。過去に同一売掛先からの入金が継続的に確認される場合、取引関係の安定性が高く評価され、審査通過率の向上と手数料の低減につながります。

4. 手数料体系と資金調達コストの構造

4-1. オンライン特有の手数料設定メカニズム

オンラインファクタリングの手数料は、対面型ファクタリングと比較して低く設定される傾向があります。2社間ファクタリングにおいて従来型では8%から18%程度の手数料が相場とされていますが、オンライン型では債権額の2%から10%程度まで低減されているケースが多く見られます。

この手数料低減の要因は、オンラインシステムによる業務効率化とコスト削減にあります。対面での営業活動や事務所の維持費用、人件費の削減により、ファクタリング会社の経営コストが大幅に圧縮され、その効果が手数料の引き下げとして利用者に還元されています。

また、AI審査システムによる処理の自動化により、1件あたりの審査コストが削減されることも手数料低減に寄与しています。大量処理によるスケールメリットを活用することで、個別案件のコストを抑制し、競争力のある手数料設定を実現しています。

4-2. 2社間取引における手数料決定要因

オンラインファクタリングでは2社間取引が主流となっており、手数料の決定には複数の要因が影響します。最も重要な要素は売掛先企業の信用力であり、上場企業や大手企業を売掛先とする債権は最低手数料が適用される可能性が高くなります。

売掛債権の金額も手数料に大きく影響し、高額債権ほど手数料率が低く設定される傾向があります。100万円以下の少額債権では手数料率は債権額の5%から15%程度の範囲で設定されることが多く、1,000万円を超える大口債権では1%から3%程度の低い手数料率が適用されるケースもあります。

支払期日までの期間については、30日以内の短期債権が最も有利な手数料設定を受けられます。60日を超える債権では回収リスクの増大により手数料が上昇し、90日を超える長期債権では大幅な手数料増加となる場合があります。

利用状況も手数料決定の重要な要因となります。初回利用時は高めの手数料設定となることが多いものの、継続利用により信頼関係が構築されると段階的に手数料が引き下げられるシステムを採用するファクタリング会社が増加しています。

5. 適用対象と利用時の注意点

5-1. 法人・個人事業主の対応範囲

オンラインファクタリングは法人だけでなく個人事業主やフリーランスも利用可能なサービスが多数提供されています。ただし、債権譲渡登記は法人のみが対象となるため、個人事業主の場合は登記による対抗要件の具備ができません。

このため、個人事業主向けのサービスでは登記を求めない契約形態を採用するか、他の方法による債権譲渡の証明が行われます。法人の場合は設立からの経過年数に関係なく利用可能ですが、決算書の提出が必要となるため、設立1期目で決算書が存在しない場合は利用が制限される場合があります。

一方、個人事業主については開業届の提出により事業の開始が証明されれば、開業直後でも利用可能なサービスが多数存在します。買取可能金額についても幅広い設定となっており、数万円の少額債権から数億円の大口債権まで対応するサービスが提供されています。

ただし、個人事業主の場合は信用力の観点から買取上限が法人より低く設定される傾向があります。

5-2. 債権譲渡禁止特約への対応策

売掛先との契約書に債権譲渡禁止特約が記載されている場合でも、改正民法により譲渡自体は有効となるため、オンラインファクタリングの利用は可能です。ただし、売掛先が譲渡について悪意または重過失があったと主張し支払いを拒否するリスクは残存します。

このリスクを軽減するため、多くのオンラインファクタリング会社では売掛先への通知を行わない2社間取引を採用しています。2社間取引では売掛先が債権譲渡の事実を知ることがないため、支払拒否のリスクを回避できます。

ただし、債権譲渡禁止特約がある債権については、ファクタリング会社によって取扱方針が異なります。リスク回避のため取扱を拒否する会社もあれば、通常より高い手数料を設定して引き受ける会社もあります。

申込前に対応可否を確認することが重要です。また、売掛先との関係維持を重視する場合は、事前に債権譲渡について相談し了解を得ておくことで、後日のトラブルを回避できます。

特に継続的な取引関係がある重要な売掛先については、慎重な対応が求められます。

6. よくある質問

6-1. オンラインファクタリングは24時間申込可能ですか? 

多くのオンラインファクタリングサービスでは24時間365日の申込受付を行っています。ただし、審査や契約手続きは営業時間内での対応となるため、即日入金を希望する場合は平日の午前中に申込を完了させることが推奨されます。

6-2.  必要書類が不足している場合でも申込できますか? 

基本的な必要書類である請求書と通帳コピーは必須となります。その他の書類については、ファクタリング会社によって柔軟な対応を行う場合もありますが、審査の精度確保の観点から可能な限り完全な書類セットでの申込が望ましいとされています。

6-3. 手数料以外に追加費用は発生しますか? 

優良なオンラインファクタリング会社では、提示された手数料以外の追加費用は原則として発生しません。ただし、債権譲渡登記費用や振込手数料が別途請求される場合があるため、契約前に費用の内訳を必ず確認することが重要です。

6-4. 審査に落ちた場合の理由は教えてもらえますか? 

オンラインファクタリングでは自動審査システムによる判定が中心となるため、詳細な審査理由の開示は限定的です。ただし、売掛先の信用力不足や債権の支払期日超過など、明確な理由がある場合は通知される場合があります。

7. まとめ

オンラインファクタリングは、デジタル技術を活用して従来のファクタリングサービスを大幅に効率化した資金調達手法です。申込から入金まで最短2時間程度での資金調達を可能とし、手数料についても従来型より低い水準を実現しています。

民法に基づく債権譲渡契約として法的な安全性が確保されており、改正民法により債権譲渡禁止特約がある債権についても実質的な利用が可能となっています。AI審査システムによる迅速な与信判定と電子契約による効率的な契約締結により、事業者の資金繰り改善に大きく貢献するサービスとして確立されています。

利用にあたっては必要書類の適切な準備と、手数料体系の理解が成功の鍵となります。特に売掛先の信用力と債権の条件が手数料に大きく影響するため、これらの要素を事前に評価した上で申込を行うことが重要です。

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