ファクタリング

ノンリコースファクタリングのメリットデメリットを解説

2024.11.08

この記事の要点

  1. ノンリコースファクタリングの基本的な仕組みから実践的な活用方法まで体系的に理解でき、資金調達の判断材料として活用できる知識を習得できます。
  2. メリットとデメリットを正確に把握することで、自社の状況に最適な資金調達方法を選択するための判断力を身につけることができます。
  3. 契約時の注意点や悪徳業者の見分け方を学ぶことで、安全かつ有利な条件でファクタリングを利用するためのリスク管理能力を向上させることができます。

目次

ATOファクタリング

1. ノンリコースファクタリングの基本的な仕組み

ファクタリングの契約形態には、「ノンリコース」と「ウィズリコース」の2つのタイプが存在します。

日本のファクタリング市場においては、ノンリコースファクタリングが主流となっており、多くの企業が資金調達の手段として活用しています。

ノンリコースとは償還請求権がない契約という意味で、ファクタリングにおける償還請求権とは、売掛債権の回収が困難な場合に依頼人に対して支払いを請求できる権利を指します。

このノンリコースファクタリングの特徴や具体的なメリット・デメリットを正しく理解することで、企業の資金繰り改善に効果的に活用できます。

本記事では、ノンリコースファクタリングの基本的な仕組みから実際の利用における注意点まで、体系的に解説していきます。

資金調達を検討している経営者や財務担当者の方にとって、判断材料となる具体的な情報を提供いたします。

1-1. ノンリコースファクタリングの定義と特徴

英語のリコースには「償還請求」という和訳があり、ノンリコースは償還請求権なし、ウィズリコースは償還請求権ありを意味します。

ノンリコースファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡した後、売掛先企業が倒産や経営不振により売掛金を支払えなくなった場合でも、利用企業がファクタリング会社に対して代金を支払う義務を負わない契約形態です。

この契約形態の最大の特徴は、売掛債権の回収不能リスクをファクタリング会社が負担することにあります。

償還請求権とは、売掛先が倒産して資金が支払われなかった場合に、ファクタリング会社が売掛金を売却した人に支払いを請求できる権利のことです。

ノンリコース契約では、この償還請求権が発生しないため、利用企業は売掛金の未回収リスクから完全に解放されます。これにより、企業は売掛先の経営状況に左右されることなく、安定した資金調達を実現できます。

1-2. ウィズリコースとの根本的な違い

ノンリコースと対照的な契約形態がウィズリコースです。ウィズリコースの特徴は、ノンリコースと対照的で、ノンリコースは償還請求権なしですが、ウィズリコースは償還請求権ありの契約となります。

ウィズリコース契約では、売掛先から売掛金を回収できなかった場合、ファクタリング利用者が売掛先の代わりに売掛金を支払わなければなりません。

この違いは単なる契約条件の差異ではなく、法的な取り扱いにも大きな影響を与えます。

金融庁の注意喚起によると、違法ファクタリング業者が摘発された事例や裁判の記録などを見ると、ノンリコースではなかったことが問題視されているケースが非常に多いとされています。

このため、日本では正規のファクタリング会社の大多数がノンリコース契約を採用しています。

1-3. 日本におけるノンリコースファクタリングの位置づけ

日本のファクタリング市場において、ノンリコースファクタリングが主流となっている背景には、法的な理由があります。

ウィズリコースで運営する場合、貸金業に該当するおそれがあるため、貸金業登録をしなくてはいけません。

一方、ノンリコースでは「売掛金の買取業」とみなされるので、貸金業の登録は不要となり、ファクタリング会社側の運営がしやすいメリットがあります。

このような法的要因により、ファクタリング会社にとってもノンリコース契約の方が事業運営しやすく、結果として利用企業にとっても選択肢が豊富になっています。

また、ノンリコース契約では債権譲渡という明確な法的構造により、企業の帳簿上で負債として計上されないため、財務諸表への影響を最小限に抑えることができます。

2. ノンリコースファクタリングのメリット5選

2-1. 売掛先の倒産リスクを完全に回避

ノンリコースファクタリングの最大のメリットは、売掛先企業の倒産や経営不振による売掛金の回収不能リスクを完全に回避できることです。

売掛先が倒産したり赤字経営になって、ファクタリング会社に売掛金の支払いができなくなっても、利用者に支払い義務が発生しません。

通常の企業間取引では、売掛金の回収は売掛先企業の支払い能力に依存します。特に中小企業においては、主要な取引先の倒産が自社の経営に致命的な影響を与える可能性もあります。

ノンリコースファクタリングを活用することで、このような連鎖倒産のリスクを効果的に防ぐことができます。

具体的には、売掛先企業が契約した支払期日に支払いを実行できない状態になったとしても、ファクタリング利用企業は既に売掛債権をファクタリング会社に譲渡済みであるため、回収不能による損失を被ることがありません。

これにより、企業は本来の事業活動に専念できる環境を確保できます。

2-2. 与信管理業務の負担軽減

ノンリコースファクタリングのもう一つの重要なメリットは、与信管理業務の負担を大幅に軽減できることです。

与信管理とは、売掛先の信用を把握し、売掛金の管理や取引条件の設定に取り組むことです。

大企業ならば、与信管理を専門とするセクターを設けるのが普通ですが、人材も資金も不足している中小企業には困難な業務となります。

従来の企業間取引では、売掛先の財務状況を継続的に監視し、信用限度額の設定や回収サイトの管理を行う必要があります。

しかし、ノンリコースファクタリングを利用することで、これらの与信管理業務をファクタリング会社に委託することができます。

ファクタリング会社は専門的な審査ノウハウとデータベースを保有しているため、より精度の高い与信管理を実現できます。

この結果、企業は限られた人的資源を与信管理から本来の営業活動や事業開発に振り向けることができ、全体的な業務効率の向上を図ることができます。

特に人員が限られている中小企業にとって、このメリットは非常に大きな価値を持ちます。

2-3. 迅速な資金調達の実現

ノンリコースファクタリングは、銀行融資と比較して圧倒的に迅速な資金調達を可能にします。一般的なファクタリングは、ノンリコースファクタリングでは最短即日での資金調達が可能とされています。

この迅速性は、急な資金需要に対応する際の重要な選択肢となります。

銀行融資の場合、審査に数週間から数ヶ月を要することが一般的ですが、ノンリコースファクタリングでは審査の主眼が売掛先の信用力に置かれるため、自社の業績が一時的に低調であっても資金調達が可能です。

また、必要書類も比較的少なく、手続きが簡素化されているため、緊急時の資金調達手段として非常に有効です。

設備の故障による緊急修理費用や、大口受注に伴う仕入資金の確保など、タイミングが重要な資金需要に対して柔軟に対応できます。

2-4. 財務諸表への影響最小化

ノンリコースファクタリングは債権譲渡取引であるため、銀行融資のように負債として計上される必要がありません。

ファクタリングは融資と違って借り入れにはならないため、自社の帳簿上で負債が発生せず、健全な経営状態を維持できます。

この特徴により、企業の財務指標に与える影響を最小限に抑えることができます。

負債比率の悪化を避けることで、金融機関からの信用評価を維持し、将来的な融資の可能性を損なうことなく資金調達を実現できます。

特に上場企業や金融機関からの評価を重視する企業にとって、この特徴は重要な判断材料となります。

投資家や債権者に対して、企業の財務健全性を示す上でも有効な資金調達手段といえます。

2-5. 信用力に関係なく利用可能

ノンリコースファクタリングでは、自社の信用力よりも売掛先の信用力が重視されるため、自社の業績や財務状況が一時的に悪化している場合でも利用可能です。

銀行融資では自社の信用力が審査の主要因となりますが、ファクタリングでは売掛債権の価値と売掛先の支払い能力が審査の中心となります。

創業間もない企業や、一時的な業績悪化に直面している企業でも、優良な売掛先を持っている場合は資金調達が可能となります。

これにより、企業の成長段階や業績の変動に関係なく、必要な運転資金を確保できる柔軟性を持っています。

3. ノンリコースファクタリングのデメリット4選

3-1. 手数料コストの負担

ノンリコースファクタリングの最も大きなデメリットは、相対的に高い手数料コストです。

ファクタリング会社が売掛金の回収不能リスクを負担するため、その対価として高い手数料を設定する必要があります。

ノンリコースのファクタリング手数料を平均すると10から20パーセントになるとされています。これは銀行融資の金利と比較すると非常に高い水準です。

特に売掛先の信用力が低い場合や、売掛金の回収サイトが長期間にわたる場合は、手数料がさらに高くなる傾向があります。

この高い手数料負担により、継続的にファクタリングを利用すると、企業の利益率に大きな影響を与える可能性もあります。

そのため、ファクタリングは緊急時の資金調達手段として位置づけ、中長期的には他の資金調達方法を検討することが重要です。

3-2. 利用可能な売掛債権の制限

ノンリコースファクタリングでは、ファクタリング会社が回収不能リスクを負担するため、買取対象となる売掛債権に一定の制限があります。

ノンリコース契約を締結するためには、売掛先の信用力が一定以上であることが求められます。

売掛先の信用情報が不足している場合や、経営状態が不安定と判断される場合には、ファクタリング会社が契約を引き受けないこともあります。

具体的には、売掛先が個人事業主の場合や、新設法人で実績が少ない場合、既に支払期日を過ぎている債権などは、買取を拒否される可能性が高くなります。

また、売掛先の業績が悪化している兆候がある場合も、審査を通過することが困難になります。

このため、企業が保有するすべての売掛債権をファクタリングで現金化できるわけではなく、資金調達の選択肢として制限を受ける場合があります。

3-3. 売掛先との関係性への配慮

ノンリコースファクタリングを利用する際は、売掛先企業との関係性に配慮する必要があります。

特に3社間ファクタリングの場合、売掛先企業にファクタリング利用の事実が通知されるため、企業の資金繰り状況を知られる可能性があります。

一部の売掛先企業では、取引先がファクタリングを利用していることを経営状況の悪化の兆候として捉える場合があります。

これにより、今後の取引条件に影響を与えたり、取引自体の継続に支障をきたしたりする可能性もあります。

2社間ファクタリングを選択することで売掛先への通知を避けることは可能ですが、その場合は手数料がさらに高くなる傾向があるため、コスト面での検討が必要になります。

長期的な取引関係を重視する企業においては、このデメリットを慎重に検討する必要があります。

3-4. 継続利用による利益圧迫

ノンリコースファクタリングを継続的に利用すると、高い手数料負担により企業の利益が圧迫される可能性があります。

ファクタリングによって確かに資金繰りは短期的に楽になりますが、手数料だけコストが増えて利益を圧迫してしまうリスクがあります。

特に売上高利益率が低い業種では、ファクタリング手数料の負担が事業の収益性に大きな影響を与える可能性もあります。

短期的な資金繰り改善のために利用したファクタリングが、中長期的には企業の財務状況を悪化させる要因となることもあります。

そのため、ファクタリングの利用頻度や利用金額については、事業の収益性と手数料負担のバランスを慎重に検討する必要があります。

根本的な資金繰り改善や事業改善と併せて検討することが重要です。

4. ノンリコースファクタリングの適切な活用方法

4-1. 利用すべき場面の判断基準

ノンリコースファクタリングを効果的に活用するためには、適切な利用場面を見極めることが重要です。最も適している場面は、急な資金需要が発生し、他の資金調達手段では対応が困難な緊急時です。

例えば、大口受注により仕入資金が急遽必要になった場合や、設備の故障により緊急修理費用が必要になった場合などが該当します。

また、売掛先の信用力に不安がある場合も、ノンリコースファクタリングの利用価値が高まります。

取引先の業績悪化の兆候がある場合や、業界全体の景気が悪化している状況では、売掛金の回収不能リスクを回避するための手段として有効です。

逆に、単純に運転資金が不足している慢性的な資金繰り問題の解決手段として継続利用することは推奨されません。

この場合は、根本的な事業改善や他の資金調達手段を検討すべきです。

4-2. ファクタリング会社の選定ポイント

ノンリコースファクタリングを利用する際は、信頼できるファクタリング会社を選定することが極めて重要です。

ファクタリング会社を選ぶ際には、ノンリコースを条件と考えるだけでも、違法業者を避けるのに役立ちます。

まず確認すべきは、契約がノンリコースであることを明確に表示しているかどうかです。手数料の透明性も重要な判断基準となります。

優良なファクタリング会社では、手数料の計算方法や追加費用について事前に明確な説明を行います。

逆に、手数料の詳細を曖昧にしたり、契約後に追加費用を請求したりする業者は避けるべきです。

また、審査スピードと手続きの簡便性も選定の重要な要素です。緊急時の資金調達を目的とする場合、迅速な審査と資金化が可能な業者を選択することが必要です。

4-3. コスト削減のための工夫

ノンリコースファクタリングの手数料負担を軽減するためには、いくつかの工夫が可能です。まず、売掛先の信用力を高めることで手数料を下げることができます。

上場企業や公的機関を売掛先とする債権は、回収不能リスクが低いため、手数料も相対的に低く設定される傾向があります。

複数のファクタリング会社から見積もりを取得し、条件を比較検討することも重要です。

業者間で手数料に差があることは珍しくないため、複数社の比較により最適な条件を見つけることができます。

また、継続的な利用関係を構築することで、手数料の優遇を受けられる場合もあります。

信頼関係が構築された取引先に対しては、ファクタリング会社も手数料を下げるインセンティブを持っているためです。

4-4. 他の資金調達手段との併用戦略

ノンリコースファクタリングは、他の資金調達手段と組み合わせて活用することで、より効果的な資金調達戦略を構築できます。

例えば、銀行融資による中長期的な運転資金の確保と、ファクタリングによる短期的な資金需要への対応を組み合わせることで、資金調達コストを最適化できます。

また、売掛債権の一部をファクタリングで現金化し、残りは通常の回収サイクルで回収することで、手数料負担を最小限に抑えながら必要な資金を確保することも可能です。

さらに、ファクタリングで得た資金を投資に活用し、投資収益がファクタリング手数料を上回る場合は、積極的にファクタリングを活用する戦略も考えられます。

5. ウィズリコースとの比較検討

5-1. 手数料面での比較

ノンリコースとウィズリコースの最も顕著な違いは手数料水準です。

ウィズリコース契約では、ノンリコースに比べて手数料が低い傾向にあります。

売掛先の不払いが発生してもファクタリングの利用者に支払いを請求できるため、ファクタリング会社がリスクを負いません。

ウィズリコースの手数料は一般的に5パーセント程度とされており、ノンリコースの10から20パーセントと比較すると大幅に低い水準です。

しかし、この手数料の差は単純な価格差ではなく、リスクの所在の違いを反映しています。

ウィズリコースでは利用企業が回収不能リスクを負担するため、手数料は低くなりますが、売掛先の倒産時には大きな損失を被る可能性もあります。

手数料だけを見てウィズリコースを選択すると、後に大きな損失を被るリスクがあるため、総合的なリスク評価が必要です。

5-2. 利用企業のリスク負担の違い

両契約形態における最も重要な違いは、利用企業が負担するリスクの範囲です。

利用者にとってウィズリコース契約のデメリットは、売掛金が回収できない場合に支払い義務を負うことです。

回収不能となった金額次第では、ファクタリングによって資金繰りが改善されるどころか、むしろ悪化させてしまう事態に陥りかねません。

ウィズリコース契約では、ファクタリング利用後も売掛先の経営状況を継続的に監視する必要があります。

売掛先の業績悪化の兆候を察知した場合は、迅速な対応を行わないと大きな損失につながる可能性もあります。

一方、ノンリコース契約では、売掛債権をファクタリング会社に譲渡した時点で、売掛先に関するリスクから完全に解放されます。

このリスク回避効果は、手数料の高さを補って余りある価値がある場合が多いです。

5-3. 適用場面の違い

ウィズリコースとノンリコースは、それぞれ適用すべき場面が異なります。

売掛先にデフォルトリスクがなく、単に自社が期日前に売掛債権を資金化したいだけの時は、ノンリコースではなくウィズリコースのファクタリングを選択したほうがよい場合もあります。

ウィズリコースが適している場面は、売掛先が上場企業や公的機関など信用力が非常に高く、倒産リスクがほぼない場合です。このような場合、回収不能リスクは極めて低いため、手数料の安いウィズリコースを選択することで資金調達コストを抑制できます。

逆に、売掛先の信用力に不安がある場合や、高額な売掛債権を対象とする場合は、ノンリコースを選択すべきです。

特に高額の売掛債権を売却する際には、ノンリコース契約を大前提とするのが賢明です。

ウィズリコース契約を選んでしまうと、売掛先の不払いに伴って高額の補償を負う危険性があります。

5-4. 法的な位置づけの違い

ノンリコースとウィズリコースは、法的な位置づけも大きく異なります。

償還請求権ありのファクタリングは、売掛債権の譲渡ではなく担保にした借入れとなります。

このため、ウィズリコース契約を提供する業者は貸金業登録が必要となり、利息制限法などの規制を受けます。

この法的な違いにより、ウィズリコースを提供できる業者は限定され、選択肢が少なくなる傾向があります。

また、貸金業法の規制により、ウィズリコースでは融資に近い審査プロセスが必要となり、資金化までの時間がノンリコースよりも長くなる場合もあります。

6. 業種別の活用ポイント

6-1. 建設業における活用方法

建設業では、工事の着手から完成まで長期間を要し、その間の運転資金確保が重要な課題となります。

ノンリコースファクタリングは、工事代金の回収を待つことなく資金を確保できるため、建設業にとって非常に有効な資金調達手段です。

特に下請け企業の場合、元請け企業の経営状況によって工事代金の回収に不安がある場合もあります。このような状況では、ノンリコースファクタリングにより回収不能リスクを回避しながら、必要な運転資金を確保できます。

また、建設業界では季節変動による資金需要の変化が大きいため、繁忙期における一時的な資金調達手段としても有効です。

工事の進捗に合わせて段階的に発生する売掛債権を活用することで、継続的な資金調達も可能となります。

6-2. 製造業における活用方法

製造業では、原材料の仕入れから製品の販売まで時間差があるため、常に一定の運転資金が必要となります。

ノンリコースファクタリングは、売掛金の回収を待つことなく次の仕入れ資金を確保できるため、製造業の資金繰り改善に大きく貢献します。

特に受注生産型の製造業では、大口受注により一時的に大きな仕入れ資金が必要になる場合もあります。

このような場合、ノンリコースファクタリングにより迅速に資金を調達し、受注機会を逃すことなく事業を継続できます。

また、製造業では取引先の業績変動が売掛金回収に直接影響するため、ノンリコースファクタリングによるリスク回避効果は特に重要な価値を持ちます。

海外取引を行う製造業においても、為替リスクや地政学的リスクを考慮した資金調達手段として活用できます。

6-3. 卸売業における活用方法

卸売業は薄利多売のビジネスモデルが一般的であり、高額なファクタリング手数料は利益を大きく圧迫する可能性があります。しかし、商品の回転が早く、売掛金も比較的短期間で回収される特徴があるため、適切に活用すれば効果的な資金調達手段となります。

卸売業でノンリコースファクタリングを活用する際は、手数料率の低い優良な業者を選定し、利用頻度を最小限に抑えることが重要です。

また、信用力の高い取引先の売掛債権を優先的にファクタリングすることで、手数料を抑制できます。

季節商品を扱う卸売業では、繁忙期前の仕入れ資金確保にノンリコースファクタリングを活用することで、売上機会を最大化できます。

在庫回転率の向上と併せて検討することで、より効果的な資金調達戦略を構築できます。

6-4. サービス業における活用方法

サービス業では、サービス提供と代金回収の間にタイムラグが生じる場合があり、この期間の運転資金確保が課題となります。

特に月次や年次で代金を回収するタイプのサービス業では、ノンリコースファクタリングが有効な資金調達手段となります。

情報技術関連のサービス業では、プロジェクトの完了から代金回収まで時間がかかる場合が多く、その間の人件費や外注費の支払いにファクタリングを活用できます。

また、プロジェクト型のビジネスでは、顧客企業の業績悪化により代金回収に不安が生じる場合があるため、ノンリコースファクタリングのリスク回避効果は特に重要です。

コンサルティング業や専門サービス業では、高額な案件を扱うことも多く、一件の回収不能が経営に与える影響は甚大です。

このような業種では、ノンリコースファクタリングにより回収リスクを確実に回避することで、安定した事業運営を実現できます。

また、人材派遣業や警備業などの労働集約的なサービス業では、給与支払いのタイミングと売掛金回収のタイミングにずれが生じるため、ファクタリングによる資金調達が特に有効となります。

7. 契約時の注意点と確認事項

7-1. 契約書の重要項目の確認

ノンリコースファクタリングの契約を締結する際は、契約書の内容を詳細に確認することが極めて重要です。

最も重要な確認項目は、償還請求権の有無が明確に記載されているかどうかです。

「償還請求権なし」または「ノンリコース」と明記されていることを必ず確認してください。手数料の計算方法と支払時期についても詳細な確認が必要です。

手数料が売掛金額に対する一定割合で設定されているか、追加費用が発生する条件があるかを明確にしておきます。

また、債権譲渡登記費用や事務手数料などの諸費用についても事前に確認しておくことが重要です。

契約の解除条件や違約金の設定についても確認が必要です。やむを得ない事情でファクタリング契約を解除する必要が生じた場合の手続きや費用負担について、事前に理解しておくことでトラブルを防ぐことができます。

7-2. 悪徳業者の見分け方

ファクタリング業界には残念ながら悪徳業者も存在するため、業者選定時には十分な注意が必要です。

金融庁によると、無登録営業の貸金業者は一般に「ヤミ金融」と呼ばれ、このような違法業者を「ファクタリングを装ったヤミ金業者」として注意を喚起しています。

悪徳業者の特徴として、契約条件の説明が曖昧であることが挙げられます。

手数料の詳細を明確に説明しなかったり、追加費用について事前の説明がなかったりする業者は避けるべきです。

また、異常に高い手数料を請求する業者や、契約を急かす業者も警戒が必要です。

正規の業者であれば、会社の所在地や代表者名、事業内容などの基本情報をホームページ等で明確に公開しています。

これらの情報が不明確な業者や、連絡先が携帯電話のみの業者は避けることが賢明です。

7-3. 審査に必要な書類の準備

ノンリコースファクタリングの審査をスムーズに進めるためには、必要書類を事前に準備しておくことが重要です。

一般的に必要となる書類は、売掛先との基本契約書、売掛金の発生を証明する請求書や発注書、自社の決算書類、売掛先企業の信用情報などです。

売掛債権の真正性を証明するための書類は特に重要です。

売掛先との取引実績を示す過去の入金履歴や、継続的な取引関係を証明する基本契約書などを準備しておくことで、審査の通過率を高めることができます。

また、自社の事業内容や財務状況を説明する資料も審査において重要な役割を果たします。事業計画書や資金繰り表、銀行取引明細などを準備しておくことで、ファクタリング会社に対して自社の信頼性をアピールできます。

7-4. 売掛先への対応方針

ノンリコースファクタリングを利用する際は、売掛先企業への対応方針を事前に検討しておくことが重要です。

2社間ファクタリングの場合は売掛先への通知は不要ですが、万が一ファクタリング利用の事実が知られた場合の対応策を準備しておく必要があります。

3社間ファクタリングを選択する場合は、売掛先企業との事前調整が必要となります。

ファクタリング利用の理由を適切に説明し、今後の取引関係に悪影響を与えないよう配慮することが重要です。

売掛先企業にとってもメリットがある説明方法を検討しておくことで、円滑な合意形成を図れます。

また、ファクタリング契約後の売掛金回収業務についても、売掛先企業との関係を良好に維持できる方法を検討しておく必要があります。

8. よくある質問

8-1. ノンリコースファクタリングの審査基準は?

ノンリコースファクタリングの審査では、主に売掛先企業の信用力が重視されます。

売掛先の財務状況、事業の安定性、過去の支払い実績などが審査の主要な判断材料となります。

自社の信用力よりも売掛先の信用力が重要視されるため、自社の業績が一時的に低調であってもファクタリングを利用できる可能性があります。

具体的な審査基準として、売掛先企業の設立年数、資本金規模、従業員数、事業内容などが評価されます。

上場企業や大手企業、公的機関などを売掛先とする債権は審査を通過しやすく、手数料も低く設定される傾向があります。売掛債権自体の信頼性も重要な審査項目です。

売掛金の発生根拠が明確であること、支払期日が適切に設定されていること、過去に同様の取引実績があることなどが確認されます。

8-2. ファクタリング利用は信用情報に影響する?

ノンリコースファクタリングは債権譲渡取引であり、融資ではないため、基本的に個人や法人の信用情報機関への登録は行われません。

そのため、ファクタリングの利用履歴が信用情報に悪影響を与えることはありません。

ただし、債権譲渡登記を行う場合は、法務局での登記情報として記録されます。

この情報は一般的な信用調査では確認されませんが、詳細な企業調査を行う場合には確認される可能性もあります。

銀行融資の審査においても、ファクタリングの利用履歴自体が直接的に悪影響を与えることはありませんが、資金繰りの状況を示す材料として参考にされる場合があります。

8-3. 売掛金の一部だけファクタリングできる?

多くのファクタリング会社では、売掛債権の一部のみを対象としたファクタリングも可能です。

例えば、月間売上高が1000万円の企業が、そのうち300万円分の売掛債権のみをファクタリングで現金化することができます。

一部ファクタリングを活用することで、必要最小限の資金調達を行い、手数料負担を抑制することができます。

また、信用力の高い売掛先の債権を優先的にファクタリングすることで、より有利な条件での資金調達が可能になります。

ただし、ファクタリング会社によっては最低利用金額が設定されている場合があるため、事前に確認が必要です。

また、少額のファクタリングでは手数料率が高くなる傾向があることも考慮する必要があります。

8-4. ファクタリング後に売掛先が倒産した場合の手続きは?

ノンリコースファクタリングでは、売掛先が倒産した場合でも利用企業に支払い義務は発生しません。

売掛債権は既にファクタリング会社に譲渡済みであるため、倒産による損失はすべてファクタリング会社が負担します。

利用企業が行うべき手続きは、売掛先の倒産事実をファクタリング会社に速やかに報告することです。

ファクタリング会社は債権者として倒産手続きに参加し、可能な限り債権回収を図ります。

2社間ファクタリングの場合は、売掛先からの入金がないことを確認し、その旨をファクタリング会社に報告する必要があります。

3社間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社が直接売掛先から回収を行うため、利用企業の手続き負担は最小限となります。

8-5. ファクタリング手数料は経費として計上できる?

ファクタリング手数料は、事業に関連する費用として経費計上が可能です。

勘定科目としては「支払手数料」や「売上債権売却損」などが一般的に使用されます。

税務上も適切な経費として認められるため、法人税や所得税の計算において費用控除の対象となります。

ただし、ファクタリングは売掛債権の売却取引であるため、会計処理においては売却損として処理することが適切な場合もあります。

具体的な処理方法については、顧問税理士や会計士と相談の上で決定することをお勧めします。

また、消費税の取り扱いについては、ファクタリング手数料は金融取引に関する手数料として非課税取引となるのが一般的です。

まとめ

ノンリコースファクタリングは、売掛債権の回収不能リスクを完全に回避しながら迅速な資金調達を実現できる優れた金融手段です。

特に売掛先の倒産リスクを懸念している企業や、緊急時の資金調達が必要な企業にとって、非常に有効な選択肢となります。

売掛先の倒産リスクの完全回避、与信管理業務の負担軽減、迅速な資金調達の実現、財務諸表への影響最小化、信用力に関係ない利用可能性という5つの主要なメリットにより、多くの企業が資金繰り改善の手段として活用しています。

一方で、相対的に高い手数料負担、利用可能な債権の制限、売掛先との関係性への配慮、継続利用による利益圧迫という4つのデメリットも存在するため、企業の状況に応じた適切な判断が必要です。

継続的な利用は利益を圧迫する可能性があるため、緊急時の資金調達手段として位置づけ、中長期的には他の資金調達方法も併用することが重要です。

契約時には償還請求権の有無を必ず確認し、信頼できるファクタリング会社を選定することで、安全かつ効果的にノンリコースファクタリングを活用できます。

業種別の特性を理解し、自社の事業形態に最適な活用方法を検討することで、資金調達効果を最大化できます。

適切な理解と活用により、企業の資金繰り改善と事業発展に大きく貢献する資金調達手段として、ノンリコースファクタリングは多くの企業にとって価値ある選択肢となるでしょう。

ウィズリコースとの違いを正しく理解し、自社の状況に最適な契約形態を選択することで、より効果的な資金調達戦略を構築することが可能です。

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