この記事の要点
- 銀行系ファクタリングの仕組みと特徴を正確に理解し、自社に適したファクタリングタイプを選択できるようになります。
- 独立系ファクタリングの5.0%から20.0%と比較して1.0%から5.0%の低コストでの資金調達が可能となり、従来の高コスト資金調達から脱却できます。
- 審査基準や利用条件を事前に把握することで、効率的な準備と確実な利用承認を実現できます。

1. 銀行系ファクタリングとは
1-1. 銀行系ファクタリングの基本的な定義と仕組み
銀行系ファクタリングとは、銀行またはそのグループ会社が提供するファクタリングサービスのことです。三菱UFJファクターやみずほファクターなど、メガバンクの専門子会社から地方銀行まで幅広い金融機関が参入しています。
ファクタリングの法的根拠は民法第466条の債権譲渡制度に基づいています。企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却して早期資金化を図る仕組みで、法的には債権の売買契約として位置づけられます。
取引形態は原則として3社間ファクタリングとなります。利用企業、ファクタリング会社、売掛先企業の3者間で契約を締結し、売掛先から直接ファクタリング会社に支払いが行われることで、未回収リスクが軽減され低い手数料での提供が可能となります。
1-2. 独立系・ノンバンク系との基本的な違い
銀行系ファクタリングと他の事業者との最大の違いは運営主体です。独立系は専門会社、ノンバンク系は消費者金融などの貸金業者が運営しますが、銀行系は金融庁の監督下にある銀行が運営主体となります。
手数料体系においても大きな差が生じます。銀行系ファクタリングの手数料は売掛債権額の1.0%から5.0%程度であるのに対し、独立系ファクタリングでは5.0%から20.0%程度、ノンバンク系では3.0%から15.0%程度となっています。
審査基準についても、銀行系では売掛先の信用力に加えて利用企業の財務状況も重視されます。独立系やノンバンク系では売掛先の信用力を主要な判断基準とし、利用企業の状況は副次的な要素として扱われます。
資金化スピードは銀行系が最も時間を要し、申込みから入金まで1週間から2週間程度が標準的です。独立系では最短即日での資金化も可能で、この点では明確な違いがあります。
1-3. 主要なサービス種類
銀行系ファクタリングでは買取ファクタリング以外にも多様なサービスを提供しています。保証ファクタリングは売掛債権の回収を保証するサービスで、保証料は売掛債権額の1.0%から3.0%程度となります。
国際ファクタリングは海外企業との貿易取引に特化したサービスで、大手銀行系でのみ提供されています。従来の信用状取引と比較して手続きが簡便で、為替リスクや政治リスクにも対応できます。
一括ファクタリングは企業の支払業務効率化を目的としたシステム統合型サービスで、サプライチェーン全体の資金効率向上を実現します。
2. 銀行系ファクタリングの5つのメリット
2-1. 業界最低水準の手数料で資金調達コストを大幅削減
銀行系ファクタリングの最大のメリットは、業界最低水準の手数料率です。売掛債権額の1.0%から5.0%程度という手数料は、独立系ファクタリングの5.0%から20.0%と比較して大幅に低く設定されています。
この手数料差の背景には、銀行の資金調達コストの低さがあります。預金業務により低コストで資金を調達できる銀行は、その優位性をファクタリング手数料に反映させることができます。
具体的な金額差を計算すると、1億円の売掛債権を資金化する場合、手数料率3.0%の銀行系では300万円の手数料となります。手数料率10.0%の独立系では1000万円となり、700万円もの差が生じます。
継続利用や大口利用においては、この差額が経営に与える影響は非常に大きくなります。年間を通じた資金調達コストの削減により、企業の収益性向上に直接的に貢献します。
2-2. 金融機関としての高い信頼性と安心できる取引環境
銀行系ファクタリングの第二のメリットは、金融機関としての信頼性です。金融庁の監督下にあり、厳格なコンプライアンス体制を維持している銀行が運営主体となることで、取引の安全性が確保されます。
ファクタリング業界では許認可制度が存在しないため、一部で悪質業者の参入が問題となっています。金融庁も注意喚起を行っていますが、銀行系ファクタリングを選択することでこれらのリスクを回避できます。
契約内容の透明性も高く、手数料の内訳や取引条件が明確に開示されます。後から追加費用を請求されるような不透明な取引慣行は行われず、安心して継続的な取引関係を構築できます。
長期的な信頼関係の構築により、利用実績に応じた手数料優遇や審査簡素化も期待できます。単なる資金調達手段を超えて、企業経営のパートナーとしての関係を築くことが可能です。
2-3. 数億円規模の大口債権への対応力
銀行系ファクタリングの第三のメリットは、大口債権への対応力です。銀行の潤沢な資金力を背景として、数億円規模の大型案件も受け入れることができます。
大企業や建設業、製造業などで発生する大口の売掛債権について、分割することなく一括での買取が可能となります。これにより、大型案件の受注後に必要となる運転資金を効率的に調達できます。
複数の債権をまとめて取り扱うパッケージ型のサービスも提供されており、月次や四半期単位での継続的な資金調達により安定的なキャッシュフローを確保できます。
事業規模の拡大に伴う資金需要の増加にも柔軟に対応できる体制が整っています。大型プロジェクトの受注機会を逃すことなく、積極的な事業展開が可能となります。
2-4. 豊富なサービス種類による多様なニーズへの対応
銀行系ファクタリングの第四のメリットは、サービスの多様性です。買取ファクタリング以外にも保証ファクタリング、国際ファクタリング、一括ファクタリングなど、企業のニーズに応じた最適なソリューションを選択できます。
特に国際ファクタリングは、海外展開を行う企業にとって重要なサービスです。為替リスクや政治リスク、回収リスクを包括的にカバーし、海外取引の安全性を高めることができます。
既存の銀行取引との連携により、融資、決済、外為取引などと組み合わせたワンストップサービスの提供も可能です。トータルな金融ソリューションとして活用することで、資金調達戦略の最適化を図ることができます。
2-5. 継続的な取引関係による条件改善と付加価値
銀行系ファクタリングの第五のメリットは、継続取引による条件改善です。利用実績の積み重ねにより、手数料の優遇や審査の簡素化が図られ、長期的には非常に有利な条件での利用が可能となります。
企業の成長段階に応じて、ファクタリングから融資への移行サポートも受けられます。事業拡大に伴う資金需要の変化に対して、最適な資金調達手段を提案してもらえることは大きな価値となります。
定期的な経営相談や財務アドバイスなどの付加価値サービスも充実しており、専門的な知見を活用した経営支援を受けることができます。
3. 銀行系ファクタリングの5つのデメリット
3-1. 厳格な審査基準による利用ハードルの高さ
銀行系ファクタリングの最大のデメリットは、審査基準の厳格さです。利用企業の財務状況、売掛先の信用力、取引実績など多角的な評価が行われ、一つでも基準を満たさない場合は利用が困難となります。
赤字決算、税務申告の遅延、金融事故歴などがある企業では、審査通過がほぼ不可能です。また、初回利用のハードルは特に高く、既存の銀行取引がない企業の場合はさらに困難となります。
中小企業や個人事業主の場合、そもそも利用対象外とされることも多く、年商10億円未満、従業員数50名未満の企業では、現実的な利用は困難と考えられます。
継続的な取引を前提とした審査が行われるため、スポット利用や緊急時の一時的な利用には消極的な対応となることが一般的です。
3-2. 長期間を要する資金化プロセスによるスピード不足
銀行系ファクタリングの第二のデメリットは、資金化までの期間の長さです。申込みから資金化まで最短でも1週間から2週間程度、複雑な案件では1ヶ月以上を要することも珍しくありません。
この長期間は、多段階の審査プロセスと厳格なリスク管理体制に起因します。複数部署での検討、上級管理者の承認、法務確認など、慎重な手続きが実施されるためです。
緊急の資金需要や突発的なキャッシュフロー問題に対しては、この資金化スピードでは実用性に限界があります。競合他社への対抗措置や設備の緊急修繕など、迅速な対応が必要な場面では適用が困難です。
独立系ファクタリングでは最短即日での資金化も可能であることと比較すると、この差は事業運営において重要な制約要因となります。
3-3. 3社間取引による売掛先への通知義務と関係への影響
銀行系ファクタリングの第三のデメリットは、3社間取引による売掛先への通知義務です。原則として売掛先の承諾が必要となるため、ファクタリング利用の事実が取引先に知られることは避けられません。
取引先によっては、ファクタリング利用を資金繰り悪化の兆候と捉え、今後の取引条件や取引継続に影響を与える可能性があります。特に資金力を重視する業界では、企業イメージに悪影響を与えるリスクがあります。
売掛先の承諾が得られない場合は、そもそもファクタリングを利用することができません。取引先との関係性や業界慣行によっては、利用自体が現実的でない場合があります。
2社間ファクタリングによる秘匿性を重視する企業にとって、この制約は致命的なデメリットとなります。
3-4. 中小企業には現実的でない最低利用条件
銀行系ファクタリングの第四のデメリットは、採算性の観点から設定される高い最低利用額です。数百万円から数千万円の最低利用額が設定されており、小規模事業者の利用は現実的ではありません。
また、債権の種類についても保守的で、将来債権や仕掛債権、業界特有の債権などについては取扱いが制限される場合があります。建設業の出来高債権やIT業の開発債権など、特殊な性質を持つ債権では利用できない可能性があります。
利用条件の変更や契約内容の個別調整についても、銀行の内部規則により柔軟性に欠ける傾向があります。中小企業の多様なニーズに対するカスタマイズ対応は期待できません。
年商規模、従業員数、設立年数などの定量的な基準も設けられており、成長段階にある企業や新興企業では利用のハードルが高くなります。
3-5. 銀行取引への潜在的な影響とリスク
銀行系ファクタリングの第五のデメリットは、銀行取引への潜在的な影響です。ファクタリング利用の情報が銀行グループ内で共有される可能性があり、頻繁な利用や大口利用が将来の融資審査に影響を与える場合があります。
銀行にとって、ファクタリングの頻繁な利用は資金繰りの不安定さを示唆する指標として捉えられることがあります。メイン銀行でファクタリングを利用する場合は、今後の融資方針や取引条件に影響を与える可能性があるため、特に慎重な判断が必要です。
計画的でない利用や過度な依存は、銀行からの信用評価を低下させるリスクがあるため、利用頻度や利用目的について慎重な検討が必要です。
4. 銀行系ファクタリング利用時の重要な注意点
4-1. 審査準備における事前対策のポイント
銀行系ファクタリングの審査を通過するためには、十分な事前準備が不可欠です。過去3期分の決算書、直近の試算表、売掛債権明細、取引先情報、資金繰り表などの基礎資料を完備する必要があります。
財務面では、3期連続黒字、自己資本比率30.0%以上、流動比率120.0%以上などの指標をクリアしていることが望ましいです。税務申告の適正性や金融機関との良好な取引実績も重要な評価要素となります。
売掛先についても詳細な情報収集が必要です。上場企業や大手企業、官公庁など信用力の高い売掛先であることが審査通過の重要な要件となります。
事前相談の段階で、利用目的や資金需要の背景を明確に説明できるよう準備することも重要です。設備投資、運転資金、事業拡大資金など、具体的かつ合理的な資金使途を示すことで審査の円滑化を図ることができます。
4-2. 取引先への影響を最小化する配慮事項
3社間ファクタリングでは売掛先への通知が必須となるため、取引先への影響を最小化する配慮が重要です。事前に取引先との関係性を評価し、ファクタリング利用に対する理解が得られるかを慎重に判断する必要があります。
通知のタイミングや方法についても戦略的な検討が必要です。決算期末や資金需要が集中する時期を避け、取引先の理解を得やすいタイミングを選択することが重要です。
通知文書の内容についても、資金繰り悪化ではなく事業拡大や効率化を目的とした戦略的な資金調達であることを明確に説明する必要があります。
4-3. 独立系ファクタリングとの適切な使い分け判断
銀行系ファクタリングと独立系ファクタリングの使い分けは、資金需要の性質と企業の状況により判断する必要があります。計画的な資金調達で十分な準備期間がある場合は銀行系が適しており、緊急性を要する場合は独立系が適しています。
利用金額についても考慮が必要です。数千万円以上の大口利用であれば銀行系のメリットが大きく、数百万円以下の小口利用であれば独立系の方が現実的です。
企業の財務状況や信用力によっても最適解は変わります。財務健全性が高く、銀行との取引実績がある企業であれば銀行系を積極的に活用すべきです。
5. 銀行系ファクタリングに向いている企業の特徴
5-1. 大口債権を保有し継続的な資金需要のある企業
銀行系ファクタリングに最も適しているのは、数千万円から数億円規模の大口債権を保有する企業です。建設業、製造業、商社などで大型プロジェクトや大口取引を手がける企業において、銀行系ファクタリングの優位性が最大限に発揮されます。
継続的な資金需要がある企業にとって、銀行系ファクタリングの低手数料は大きなメリットとなります。月次や四半期単位での定期的な利用により、手数料削減効果が累積し、経営に与える正のインパクトが拡大します。
事業規模が年商10億円以上で、従業員数50名以上の中堅企業以上であれば、銀行系ファクタリングの利用条件を満たす可能性が高くなります。
5-2. 財務健全性が高く銀行との取引実績のある企業
銀行系ファクタリングの利用には、財務健全性の高さが不可欠です。3期連続黒字、適正な自己資本比率、良好なキャッシュフロー状況などの財務指標をクリアしている企業が対象となります。
既存の銀行取引がある企業は、審査において有利な評価を受けます。メイン銀行との良好な関係があれば、ファクタリング利用の相談もスムーズに進行し、有利な条件での利用が期待できます。
税務申告の適正性や法令遵守体制も重要な評価要素です。税理士や会計士による適切な財務管理が行われ、法的なリスクが少ない企業が好まれます。
5-3. 海外展開や特殊なニーズを持つ企業
海外展開を行う企業にとって、国際ファクタリングは非常に有効なサービスです。為替リスクや政治リスク、回収リスクを包括的にカバーできる専門性の高いサービスは、大手銀行系でのみ提供されています。
保証ファクタリングのニーズがある企業も銀行系ファクタリングに適しています。取引先が1社に集中している企業や、大口取引先への依存度が高い企業にとって、売掛債権の保証機能は重要なリスク管理手段となります。
長期的な成長戦略の一環として、銀行との総合的な取引関係を構築したい企業にとって、ファクタリングは関係強化の入口として機能します。
6. よくある質問
6-1. 銀行系ファクタリングの手数料相場はどのくらいですか?
銀行系ファクタリングの手数料相場は、売掛債権額の1.0%から5.0%程度となっています。具体的な手数料は、売掛先の信用力、利用金額、取引実績、利用企業の財務状況などにより決定されます。大口取引や継続利用の場合は、より有利な条件での利用が可能となります。
6-2. 審査期間はどの程度かかりますか?
銀行系ファクタリングの審査期間は、最短で1週間から2週間程度、複雑な案件では1ヶ月以上を要する場合があります。必要書類の準備状況や売掛先の調査内容により期間が変動するため、早期の相談と十分な準備が重要です。
6-3. 個人事業主でも利用できますか?
銀行系ファクタリングは原則として法人を対象としており、個人事業主の利用は困難です。一定規模以上の法人で、継続的な取引実績がある企業が主要な対象となります。個人事業主の場合は、独立系ファクタリングの利用を検討することを推奨します。
6-4. 2社間ファクタリングは利用可能ですか?
銀行系ファクタリングは原則として3社間取引のみとなり、2社間ファクタリングの提供は行われていません。売掛先への通知を避けたい場合は、独立系ファクタリングの2社間サービスを利用する必要があります。
7. まとめ
銀行系ファクタリングは、低い手数料と高い信頼性を両立した優れた資金調達手段ですが、利用条件が限定的で審査基準も厳格です。一定規模以上の安定した企業で、計画的な資金調達を行う場合には非常に有効な選択肢となります。
重要なことは、自社の状況と資金需要の性質を正確に把握し、最適なファクタリングタイプを選択することです。手数料の比較だけでなく、審査基準、資金化スピード、利用条件、将来への影響などを総合的に評価する必要があります。
銀行系ファクタリングを効果的に活用するためには、早期の相談と十分な準備が重要です。取引銀行との良好な関係構築、適切な書類整備、明確な資金計画の策定により、スムーズな利用が可能となります。

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