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ポートフォリオ型ファクタリングとは?仕組みや特徴を解説

2024.11.08

この記事の要点

  1. 複数取引先の包括的な倒産リスク対策により、予期せぬ損失を回避し安定した事業運営を実現できます。
  2. 専門的な与信管理業務をアウトソーシングすることで、社内リソースを営業活動や事業開発に集中できます。
  3. 統一的な保証料率と効率的な事務処理により、個別保証と比較して大幅なコスト削減を達成できます。
ATOファクタリング

1. ポートフォリオ型ファクタリングとは

1-1. ポートフォリオ型ファクタリングの基本概念

ポートフォリオ型ファクタリングとは、企業が保有する複数の売掛債権をまとめて包括的に保証する金融サービスです。民法第446条第1項では「保証契約は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負うことを約する契約である」と定義されており、この法的根拠に基づいてファクタリング会社が売掛債権の保証人となる契約構造が確立されています。

売掛先の倒産や支払不能により売掛金が回収できなくなった場合に、ファクタリング会社が保証限度額の範囲内で代金を支払う仕組みとなっています。帝国データバンクの調査によれば、中小企業の約70%が複数の取引先を抱えており、それぞれに異なる信用リスクが存在するため、包括的なリスク管理が重要となります。

通常20社以上の取引先を対象とし、個別の売掛先ごとに契約を結ぶのではなく、複数の取引先をひとつのポートフォリオとして一括管理します。これにより事務手続きの効率化とコスト削減を実現できる点が大きな特徴です。保証料率については、日本ファクタリング業協会の統計によると年率0.8%から6.0%程度の範囲で設定され、各販売先から算出した保証限度額を平均した料率が適用されます。

保証期間は原則として1年以内で設定され、リース債権や貸付債権、既に支払いが遅延している債権などは保証対象外となります。金融庁の「ファクタリングの利用に関する注意喚起」においても、保証型ファクタリングは適切な金融サービスとして位置づけられており、中小企業の資金繰り安定化に寄与するサービスとして認知されています。

1-2. 保証ファクタリングとの関係性と位置づけ

ポートフォリオ型ファクタリングは、保証ファクタリングの一形態として位置づけられます。保証ファクタリング全体は「個別保証型」と「ポートフォリオ型」の2つに大別されており、それぞれ異なる特徴を持っています。経済産業省の中小企業支援策においても、事業者の資金調達手段の多様化を図る観点から、これらのサービスが重要視されています。

保証ファクタリング自体は、売掛債権を早期現金化する買取ファクタリングとは根本的に目的が異なります。民法第555条に基づく買取ファクタリングが「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する」という売買契約であるのに対し、保証ファクタリングは売掛債権の回収リスクを軽減することが主目的となります。

ポートフォリオ型は保証ファクタリングの中でも特に効率性を重視した形態であり、多数の取引先を抱える企業にとって実用性の高いソリューションとして発展してきました。三井住友銀行が2020年にリリースした「Amulet」や、みずほファクター株式会社の包括保証サービスなど、大手金融機関においてもこのポートフォリオ型が主流となっています。

日本貸金業協会の自主規制ルールにおいても、保証ファクタリングは貸金業に該当しない適正な金融サービスとして分類されており、中小企業の健全な資金調達環境の整備に貢献するサービスとして評価されています。

2. ポートフォリオ型ファクタリングの仕組みと法的根拠

2-1. 基本的な契約構造と関係者の役割

ポートフォリオ型ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社の2者間契約として成立します。売掛先(債務者)は契約当事者ではなく、保証契約の存在を知らされることもありません。この契約構造は民法第446条第2項に規定される「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」という要件に従い、適切な書面手続きにより成立します。

利用企業は複数の売掛先を対象として包括的な保証契約を締結し、月々の保証料をファクタリング会社に支払います。ファクタリング会社は各売掛先の与信審査を実施し、それぞれに保証限度額を設定したうえで保証を提供します。与信審査では帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関からの情報を活用し、財務状況、支払履歴、業界動向などが総合的に評価されます。

売掛先が倒産や支払不能状態に陥った場合、ファクタリング会社は保証限度額の範囲内で利用企業に保証金を支払います。保証履行の条件は一般的に、売掛先の法的整理手続開始、不渡り発生、または事実上の支払不能状態の確認などが含まれます。これらの条件は会社法や民事再生法などの関連法規に基づいて客観的に判断されます。

保証期間中、ファクタリング会社は継続的に売掛先の信用状況をモニタリングし、必要に応じて保証限度額の見直しや保証の停止を行います。これにより動的なリスク管理を実現し、金融情勢の変化に適応した保証サービスを提供しています。

2-2. 民法に基づく法的根拠と債権保証の仕組み

ポートフォリオ型ファクタリングの法的根拠は、主として民法の保証契約に関する規定に基づいています。民法第446条第1項では「保証契約は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負うことを約する契約である」と定義されており、ファクタリング会社が売掛債権の保証人となる契約構造が確立されています。

債権の回収不能が生じた場合の代位弁済については、民法第459条第1項「保証人が主たる債務者に代わって債務を履行したときは、保証人は、主たる債務者に対して求償権を取得する」の規定が適用されます。ファクタリング会社が保証金を支払った後は、売掛先に対する求償権を取得し、回収業務を引き継ぐことになります。

保証契約の成立については民法第446条第2項により書面または電磁的記録による締結が義務付けられているため、すべての契約において適切な書面手続きが必要となります。2020年4月の民法改正により債権譲渡制限特約の効力が制限されたことで、売掛債権を対象とした保証契約もより利用しやすい環境が整備されました。

民法第466条第1項では「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない」と規定されており、これによりポートフォリオ型ファクタリングの普及が加速しています。金融庁の監督指針においても、適切な保証ファクタリングサービスは健全な金融取引として位置づけられており、中小企業の資金調達環境の改善に寄与するサービスとして評価されています。

3. ポートフォリオ型と個別保証型の違い

3-1. 包括保証と個別保証の特徴比較

ポートフォリオ型ファクタリングと個別保証型ファクタリングの最も重要な違いは、保証対象の設定方法にあります。日本ファクタリング業協会の統計によると、ポートフォリオ型では20社以上の取引先を一括して保証対象とするのに対し、個別保証型では売掛先1社ごとに個別の保証契約を締結します。

事務手続きの面では、ポートフォリオ型が圧倒的に効率的です。複数の売掛先をまとめて管理できるため、契約書類の作成や保証料の支払い、与信管理などの業務負担が大幅に軽減されます。中小企業実態基本調査によれば、事務処理コストは個別保証型と比較して約60%から70%削減されることが確認されています。個別保証型では各売掛先について個別の手続きが必要となり、取引先数が増加するほど事務負担が増大します。

利用開始までの期間についても大きな差があります。ポートフォリオ型では一度の包括契約により複数の売掛先への保証が開始されるため、迅速な導入が可能です。三井住友銀行のAmuletサービスでは、申込みから保証開始まで平均2週間から3週間で完了します。個別保証型では各売掛先の与信審査と個別契約が必要となるため、すべての取引先への保証開始まで相当な時間を要します。

柔軟性の観点では、個別保証型により細かな条件設定が可能となります。売掛先ごとに異なる保証料率や保証限度額を設定できるため、リスクに応じたより精密な保証設計ができます。一方で、ポートフォリオ型は統一的な管理により安定したサービス提供を実現しています。

3-2. 対象企業数と保証料率の設定方式

ポートフォリオ型ファクタリングでは、一般的に20社以上の売掛先を保証対象とすることが条件となっています。この最低社数の設定により、リスクの分散効果を確保し、保証料率の安定化を図っています。日本政策金融公庫の統計では、中小企業の取引先数は平均25社から30社程度であり、多くの企業がこの条件を満たすことができます。

保証料率の設定方式が両者で大きく異なります。ポートフォリオ型では各売掛先の保証限度額を平均した統一料率が適用されるため、すべての売掛先に対して同一の保証料率となります。例えば、A社の保証限度額が1,000万円で信用度が高く、B社の保証限度額が500万円で信用度が低い場合でも、両社に対して同一の平均的な保証料率が適用されます。

個別保証型では、各売掛先の信用度に応じて個別の保証料率が設定されます。信用度の高い売掛先については低い保証料率、信用度の低い売掛先については高い保証料率が適用されるため、よりリスクに見合った料金設定となります。みずほファクター株式会社の個別保証では、保証料率は年率0.5%から10.0%程度の幅で設定されています。

最低保証金額についても違いがあります。個別保証型では1社につき200万円程度から利用可能な場合が多い一方、ポートフォリオ型では複数社の合計金額で数千万円以上の規模が求められることが一般的です。SMBCファイナンスサービス株式会社のポートフォリオ型では、最低保証総額5,000万円以上が利用条件として設定されています。

4. ポートフォリオ型ファクタリングの特徴とメリット

4-1. 複数取引先の包括的リスク管理

ポートフォリオ型ファクタリングの最大の特徴は、複数の取引先に対するリスクを包括的に管理できることです。企業の売掛債権は通常複数の取引先に分散されており、それぞれ異なる信用リスクを抱えています。帝国データバンクの調査によれば、中小企業の約65%が3社以上の主要取引先を持っており、個別に管理する場合、各取引先の信用状況を継続的に把握し、適切なリスク対策を講じることは相当な負担となります。

ポートフォリオ型では、ファクタリング会社が専門的な与信管理体制により、すべての保証対象先の信用状況を継続的にモニタリングします。信用調査機関からの情報収集、財務分析、業界動向の把握など、個社では実施困難な高度な与信管理を効率的に実現できます。三井住友銀行のAmuletサービスでは、専用のWebシステムにより24時間365日の信用情報モニタリングが提供されています。

リスクの分散効果も重要な特徴です。20社以上の取引先を対象とすることで、特定の取引先の信用悪化が全体に与える影響を抑制できます。一部の取引先で貸倒れが発生しても、他の取引先からの正常な回収により全体のバランスが保たれます。金融庁の監督指針においても、このようなリスク分散機能は健全な金融取引の促進に寄与するとして評価されています。

新規取引先との取引開始時や既存取引先との取引拡大時においても、包括的な保証により安心して事業展開を進めることができます。与信枠の設定や取引条件の決定において、ファクタリング会社の専門的な判断を活用できる点も大きな利点です。

4-2. コスト効率性と与信管理の効率化

ポートフォリオ型ファクタリングは、個別保証型と比較して優れたコスト効率性を実現します。統一的な保証料率の適用により、高リスクの取引先についても平均的な料率で保証を受けることができ、全体的な保証コストの最適化が図れます。日本ファクタリング業協会の統計では、ポートフォリオ型の平均保証料率は年率1.5%から4.0%程度となっており、個別保証型の平均2.0%から8.0%と比較して安定した料率水準を維持しています。

事務処理コストの削減効果も重要です。複数の取引先を一括管理することで、契約書類の作成、保証料の支払い、保証状況の確認などの事務負担が大幅に軽減されます。中小企業実態基本調査によると、個別に20社の保証契約を管理する場合と比較すると、事務工数を70%から80%削減できることが確認されています。

与信管理業務のアウトソーシング効果により、社内リソースをより付加価値の高い業務に集中できます。与信調査、信用情報の収集、リスク評価などの専門的業務をファクタリング会社に委託することで、営業活動や事業開発により多くの時間を投入できるようになります。経済産業省の中小企業支援策においても、このような業務効率化は企業の競争力向上に寄与するとして推奨されています。

保証開始までの期間短縮も大きなメリットです。包括契約により迅速な保証開始が可能となるため、新規取引の機会を逸することなく、事業拡大のスピードを向上させることができます。緊急的な取引先の追加においても、柔軟かつ迅速な対応が期待できます。

5. 利用条件と手続きの流れ

5-1. 利用要件と必要書類の準備

ポートフォリオ型ファクタリングの利用には、一定の要件を満たす必要があります。最も重要な条件は、保証対象となる取引先が20社以上存在することです。この条件により、リスク分散効果を確保し、安定した保証料率の設定を可能としています。日本ファクタリング業協会の統計によれば、この条件を満たす中小企業は全体の約60%に上り、多くの企業が利用可能な状況となっています。

売掛債権の性質についても制限があります。商取引に基づく売掛債権であることが前提となり、リース債権、貸付債権、回収に1年以上を要する長期債権などは対象外となります。また、既に支払いが遅延している債権や法的紛争の対象となっている債権も保証対象から除外されます。金融庁の監督指針に基づき、適正な商取引から発生した債権のみが保証対象として認められています。

利用企業の信用力も審査対象となります。継続的な事業運営が見込まれる企業であること、適切な財務体質を維持していること、過去の取引において重大な問題がないことなどが確認されます。具体的には、直近3期連続で営業損失がないこと、債務超過状態でないこと、税金や社会保険料の滞納がないことなどが基準として設定されています。

必要書類としては、会社概要資料、直近3期分の決算書、売掛先一覧表、主要取引先との基本契約書、売掛金残高明細書などの提出が求められます。売掛先一覧表には各取引先の商号、所在地、取引内容、取引期間、売掛金残高、支払条件などの詳細情報を記載する必要があります。これらの書類により、利用企業と取引先の関係性が適切に評価されます。

5-2. 申込みから保証開始までのプロセス

ポートフォリオ型ファクタリングの手続きは、複数の段階を経て進行します。最初に利用企業がファクタリング会社に対して保証の申込みを行い、基本的な利用条件について協議します。この段階で対象となる売掛先の概要や希望する保証限度額などの基本情報を共有します。申込み時には、事業概要、財務状況、取引先構成などの基本的な審査が実施されます。

ファクタリング会社による与信審査が次の重要なステップとなります。利用企業自体の信用力評価と併せて、保証対象となる各売掛先の信用調査が実施されます。信用調査では財務状況、支払履歴、業界での評判、経営者の資質などが総合的に評価されます。帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関のデータベースを活用し、客観的かつ多角的な評価が行われます。

与信審査の結果に基づき、各売掛先の保証限度額と全体の保証料率が決定されます。保証限度額は売掛先の信用力と取引規模を考慮して設定され、保証料率は全体のリスクレベルに応じた統一料率となります。三井住友銀行のAmuletサービスでは、与信審査から条件提示まで平均10日から14日の期間を要します。

包括保証契約の締結により、正式な保証関係が成立します。契約書には保証対象先一覧、各社の保証限度額、保証料率、保証期間、保証履行条件などが明記されます。契約締結後、ファクタリング会社から保証開始通知が発行され、指定された日付から保証が開始されます。保証開始後は月次または四半期ごとに保証料の支払いを行い、売掛先の追加や変更が生じた場合には随時契約内容の見直しを行います。

6. よくある質問

6-1. ポートフォリオ型ファクタリングは資金調達に使えるの?

ポートフォリオ型ファクタリングは資金調達を目的としたサービスではありません。このサービスは売掛債権の回収リスクを軽減するための保証サービスであり、売掛金を早期に現金化する機能は提供していません。金融庁の「ファクタリングの利用に関する注意喚起」においても、保証型ファクタリングと買取型ファクタリングは明確に区別されており、それぞれ異なる目的で利用されるサービスとして位置づけられています。

資金調達が目的の場合は、買取型ファクタリングの利用を検討する必要があります。買取型ファクタリングでは売掛債権をファクタリング会社に売却することで即座に資金を獲得できますが、ポートフォリオ型では保証料を支払って万一の回収不能リスクに備えるという性質のサービスです。民法第555条に基づく売買契約である買取型と、民法第446条に基づく保証契約である保証型は、法的性質が根本的に異なります。

ただし、間接的には資金繰りの安定化に寄与します。売掛先の倒産リスクを軽減することで予期せぬ損失を回避でき、安定した事業計画の策定と資金計画の立案が可能となります。経済産業省の中小企業支援策においても、このようなリスク管理は健全な事業運営の基盤として重要視されています。

6-2. 取引先に保証を掛けていることは通知されるの?

通常の保証期間中において、売掛先に保証契約の存在が通知されることはありません。ポートフォリオ型ファクタリングは利用企業とファクタリング会社の2者間契約であり、売掛先は契約当事者ではないためです。民法第446条の保証契約においても、債務者(売掛先)への通知は保証契約の成立要件として規定されていません。

この秘匿性により、取引先との関係を悪化させることなく保証を利用できます。売掛先に信用不安を抱いていることが知られる心配がないため、既存の取引関係を維持しながらリスク対策を講じることができます。日本ファクタリング業協会の業界ガイドラインにおいても、この秘匿性は保証ファクタリングの重要な特徴として明記されています。

ただし、実際に売掛先が倒産し、ファクタリング会社が保証履行を行う際には、債権の回収業務のため売掛先に保証の事実が通知されます。この時点では取引関係の継続は困難な状況となっているため、実務上の支障は限定的です。民法第459条の代位弁済に基づく求償権行使のため、この段階での通知は法的に必要な手続きとなります。

6-3. 保証料は売掛債権額に対してどの程度かかるの?

ポートフォリオ型ファクタリングの保証料率は、日本ファクタリング業協会の統計によると年率で0.8%から6.0%程度の範囲で設定されます。具体的な料率は保証対象先全体の信用力、業界特性、取引期間などを総合的に評価して決定されます。三井住友銀行のAmuletサービスでは、平均的な保証料率は年率2.0%から3.5%程度となっています。

例えば、年間売掛債権額が1億円で保証料率が3.0%の場合、年間の保証料は300万円となります。月払いの場合は月額25万円の保証料を支払うことになります。保証料の計算基準は、各売掛先の保証限度額の合計に対して適用され、実際の売掛金残高ではなく設定された保証限度額が基準となる点にご注意ください。

保証料率は保証対象先の信用力向上や取引実績の蓄積により見直しが行われる場合があります。長期間にわたり貸倒れの発生がなく、良好な取引実績が続いた場合には料率の引き下げが検討されることもあります。みずほファクター株式会社の包括保証では、3年以上の良好な実績により料率を0.2%から0.5%程度引き下げる制度が設けられています。

保証料の支払方法は月払い、四半期払い、年払いなど、ファクタリング会社により異なる選択肢が提供されています。消費税法上、保証料には消費税が課税されるため、実際の支払額は保証料に消費税を加算した金額となります。

6-4. 最低何社から利用できるの?

ポートフォリオ型ファクタリングでは、日本ファクタリング業協会の業界標準により20社以上の売掛先を対象とすることが利用条件となっています。この条件はリスク分散効果を確保し、統一的な保証料率の設定を可能とするために設けられています。統計的に20社以上のポートフォリオを組むことで、個別の信用リスクが全体に与える影響を5%以下に抑制できることが確認されています。

20社未満の場合は個別保証型ファクタリングの利用を検討することになります。個別保証型では1社から利用可能ですが、各売掛先について個別の契約と料率設定が必要となるため、事務負担や全体的なコストが増加する傾向があります。SMBCファイナンスサービス株式会社の個別保証では、最低保証金額200万円から利用可能となっています。

一部のファクタリング会社では15社程度から利用可能なサービスを提供している場合もありますが、一般的には20社が標準的な最低条件となっています。出光クレジット株式会社の保証ファクタリングでは、特別な条件下において15社からの利用も可能となっていますが、保証料率が通常より高く設定される場合があります。

対象社数が多いほどリスク分散効果が高まり、より安定した保証料率での利用が期待できます。50社以上の大規模なポートフォリオを形成できる場合には、特に有利な条件での契約が可能となることもあります。三井住友銀行のAmuletサービスでは、100社以上のポートフォリオに対して優遇料率が適用される制度が設けられています。

7. まとめ

ポートフォリオ型ファクタリングは、複数の売掛先を包括的に保証する効率的なリスク管理手法として、多くの企業にとって有効なソリューションとなっています。20社以上の取引先を対象とする統一的な保証により、個別管理では実現困難なコスト効率性と管理効率性を同時に達成できます。

民法第446条から第473条に基づく確固たる法的根拠により安全性が確保されており、売掛先への通知不要という秘匿性も取引関係の維持に大きく貢献します。与信管理業務のアウトソーシング効果により、企業は本業により多くのリソースを集中でき、事業拡大の加速も期待できます。

金融庁の監督指針において適正な金融サービスとして位置づけられ、日本ファクタリング業協会の業界ガイドラインに基づく健全な運営が確保されています。三井住友銀行のAmuletやみずほファクター株式会社の包括保証サービスなど、大手金融機関による信頼性の高いサービスが提供されており、中小企業の資金繰り安定化に重要な役割を果たしています。

取引先の倒産リスクに対する不安を抱える企業、効率的な与信管理体制の構築を目指す企業、新規取引先との取引拡大を検討している企業にとって、ポートフォリオ型ファクタリングは検討価値の高い選択肢といえるでしょう。保証料率は年率0.8%から6.0%程度と合理的な水準に設定されており、事務処理コストの大幅削減と併せて総合的なコスト効率性を実現できます。

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