この記事の要点
- 注文書ファクタリングの仕組みとメリット・デメリットを理解することで、自社に最適な資金調達方法を選択できるようになります。
- 具体的な利用手続きと審査のポイントを把握することで、スムーズな申込みと審査通過の可能性を高められます。
- 業種別の活用方法と実践的なノウハウを身につけることで、資金繰り改善と事業拡大の機会を最大化できます。

1. 注文書ファクタリングとは
資金繰りに悩む事業者にとって、従来のファクタリングでは対応できない「納品前の資金需要」に応える新しいサービスが注文書ファクタリングです。
注文書ファクタリングは、仕事を受注した時点で発行される注文書を売却することで、請求書の発行を待たずに資金調達を実現できる画期的な手法です。建設業やシステム開発業など、納期が長期にわたる業種では特に重宝されています。
本記事では、注文書ファクタリングの仕組みから具体的なメリット・デメリット、利用プロセスまで詳しく解説します。従来の請求書ファクタリングとの違いを理解し、あなたの事業に最適な資金調達方法を見つけるための参考にしてください。
1-1. 注文書ファクタリングの基本的な定義と仕組み
注文書ファクタリングとは、売掛先から案件を受注した際に発行される注文書をファクタリング会社に売却し、納品前の段階で資金化を実現するサービスです。
基本的な仕組みは以下の通りです。
まず、売掛先から注文書を受け取った事業者がファクタリング会社に買取を申し込みます。ファクタリング会社は注文書の内容と売掛先の信用力を審査し、買取価格を決定します。
審査通過後、注文書の金額から手数料を差し引いた金額が事業者の口座に入金されます。その後、事業者は通常通り業務を完了し、売掛先から代金を受け取った時点でファクタリング会社に買取金額相当を送金して取引が完了します。
注文書ファクタリングの最大の特徴は、まだ業務が完了していない将来債権を対象とすることです。民法第466条から第473条に基づく債権譲渡の原則に従いながら、将来発生が見込まれる債権を現在価値で評価し売買を行います。
2020年4月の民法改正により将来債権の譲渡が明確化されたことで、このサービスが本格的に普及しました。
1-2. 従来の請求書ファクタリングとの根本的な違い
注文書ファクタリングと請求書ファクタリングには、資金調達のタイミングと対象となる債権の性質において根本的な違いがあります。
請求書ファクタリングは、商品やサービスの納品完了後に発行される請求書を対象とします。これは確定債権と呼ばれ、既に業務が完了し支払い義務が確定している債権です。
一般的な支払いサイトは30日から60日程度で、比較的短期間での回収が見込まれます。
一方、注文書ファクタリングは受注段階で発行される注文書を対象とするため、将来債権を扱います。業務完了前の段階で資金化するため、支払いまでの期間が最大6ヶ月程度と長期にわたることが特徴です。
資金調達のタイミングを具体例で比較すると、4ヶ月の制作期間を要するシステム開発案件の場合を考えてみます。請求書ファクタリングでは制作完了後の請求書発行時点から資金調達が可能です。
しかし注文書ファクタリングなら受注時点で資金調達できるため、制作に必要な人件費や設備投資を事前に確保できます。
手数料についても違いがあります。請求書ファクタリングの手数料相場は2者間で8.0%から18.0%程度ですが、注文書ファクタリングは未回収リスクが高いため、2.0%から5.0%程度上乗せされる傾向があります。
1-3. 注文書ファクタリングが生まれた背景と市場ニーズ
注文書ファクタリングが誕生した背景には、中小企業特有の資金繰り課題があります。
従来の金融機関による融資では、過去3期分の決算書提出が求められ、赤字決算や債務超過の企業は利用が困難でした。また、審査に数週間から1ヶ月を要するため、急な資金需要に対応できないケースが多発していました。
特に建設業や製造業、システム開発業では、大型案件を受注した際の初期投資や運転資金確保が経営上の重要な課題となっていました。材料費や人件費、外注費などの先行投資が必要な一方、売上の回収は数ヶ月後となるため、キャッシュフロー改善が急務でした。
経済産業省が2021年に公表した「中小企業実態基本調査」によると、中小企業の約4割が資金繰りに不安を抱えており、特に受注産業では初期投資資金の確保が課題となっています。
こうしたニーズを受けて、2020年頃から一部のファクタリング会社が注文書ファクタリングサービスを開始しました。業界大手のA社が2021年1月に日本経済新聞で取り上げられたことで認知度が向上し、現在では複数の事業者がサービスを提供しています。
金融庁も2022年の事務ガイドラインで売掛債権を活用した資金調達の重要性に言及しており、健全な市場発展を支援する姿勢を示しています。
2. 注文書ファクタリングのメリット5つ
2-1. 受注時点での即座な資金調達実現
注文書ファクタリング最大のメリットは、仕事を受注した時点で即座に資金調達できることです。
従来の資金調達方法では、銀行融資なら数週間から1ヶ月、請求書ファクタリングでも納品完了まで待つ必要がありました。しかし注文書ファクタリングなら、注文書を受け取った当日に申込みを行い、最短即日での入金も可能です。
この迅速性は事業運営において決定的な差を生みます。例えば、建設業で大型工事を受注した場合、重機のレンタル費用や材料費の支払いが工事開始前に必要です。
従来なら自己資金や借入に頼る必要がありましたが、注文書ファクタリングなら受注と同時に必要資金を確保できます。
また、急な追加発注や緊急案件にも対応可能になります。通常なら資金不足で断らざるを得ない好条件の案件も、注文書ファクタリングを活用することで積極的に受注できるため、事業拡大の機会を逃すリスクが軽減されます。
個人事業主やフリーランスにとっても、大きな案件を受注した際の初期費用確保に威力を発揮します。これまで資金力の制約で断念していた規模の仕事にも挑戦できるようになり、事業の成長につながります。
2-2. 最大6ヶ月の支払いサイト短縮効果
注文書ファクタリングは、支払いサイトを大幅に短縮する効果があります。
一般的な請求書ファクタリングでは、支払いサイトの短縮効果は1ヶ月から2ヶ月程度です。これに対し注文書ファクタリングでは、受注から売上回収までの全期間を短縮できるため、最大6ヶ月程度の期間短縮が可能です。
具体的な効果を数値で示すと、従来4ヶ月の制作期間と1ヶ月の支払いサイトで計5ヶ月後に入金される案件の場合を考えてみます。注文書ファクタリングを利用すれば受注時点で資金化できます。
これは実質的に5ヶ月分の支払いサイト短縮効果を意味します。
この効果は特に長期プロジェクトを扱う業種で顕著です。システム開発業では要件定義から納品まで半年以上かかる案件も珍しくありません。
従来なら長期間にわたって資金を寝かせることになりましたが、注文書ファクタリングにより即座に現金化し、次の案件の受注や設備投資に活用できます。
資金効率の向上により、年間の売上高や利益率の改善も期待できます。同じ資金で従来より多くの案件を並行して進められるため、事業規模の拡大や競争力の強化につながります。
2-3. 売掛先への通知不要で取引関係を維持
注文書ファクタリングは基本的に2者間契約で行われるため、売掛先への通知や承諾が不要です。
これは事業者にとって重要なメリットです。ファクタリングの利用が売掛先に知られると、「資金繰りが厳しい会社」という印象を与える可能性があります。
特に継続的な取引関係がある企業との間では、信頼関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。
2者間契約により、ファクタリングの利用事実を秘匿したまま資金調達できるため、売掛先との関係を損なうことなく資金繰りを改善できます。これは長期的な事業展開において非常に重要な要素です。
また、売掛先の協力や手続きが不要なため、迅速な資金調達が可能になります。3者間契約の場合、売掛先の承諾取得に時間がかかったり、拒否される可能性もありますが、2者間契約ならそうしたリスクを回避できます。
ただし、償還請求権なしのノンリコース契約となるため、万が一売掛先が倒産した場合でも利用者に返済義務は発生しません。ファクタリング会社がリスクを負担する代わりに手数料が高く設定されますが、利用者にとっては安心して利用できる仕組みです。
3. 注文書ファクタリングのデメリット3つ
3-1. 手数料が通常より2-5%高く設定される理由
注文書ファクタリングの手数料は、一般的な請求書ファクタリングと比較して2.0%から5.0%程度高く設定される傾向があります。
この手数料の差は、ファクタリング会社が負担するリスクの違いに起因します。請求書ファクタリングでは既に業務が完了し、確定した債権を対象とするため、未回収リスクは比較的限定的です。
一方、注文書ファクタリングは将来債権を対象とするため、複数のリスクが存在します。まず、業務完了までの期間が長いため、その間に売掛先の経営状況が悪化する可能性があります。
また、業務内容の変更や追加により、最終的な請求金額が当初の注文書と異なる場合もあります。
さらに、利用者側の事情により業務が完了できない場合や、品質問題により売掛先が支払いを拒否するリスクも考慮する必要があります。これらのリスクを総合的に評価した結果、手数料が高く設定されています。
具体的な手数料相場は、請求書ファクタリングが8.0%から18.0%程度であるのに対し、注文書ファクタリングは10.0%から25.0%程度となっています。取引金額や売掛先の信用力、支払いサイトの長さにより変動しますが、コスト負担は決して軽くありません。
事業者は手数料負担と資金調達の緊急性を慎重に比較検討し、本当に必要な場合に限定して利用することが重要です。
3-2. 対応業者の限定性と選択肢の狭さ
注文書ファクタリングを提供している業者は、一般的なファクタリング会社と比較して非常に限られています。
現在、注文書ファクタリングに対応している主要な業者は10社程度に留まり、請求書ファクタリングを提供する数百社と比較すると選択肢が極めて限定的です。この状況は利用者にとって複数のデメリットをもたらします。
まず、相見積もりによる手数料比較が困難になります。業者数が少ないため、競争原理が働きにくく、手数料の引き下げ交渉も制約されます。
また、各業者のサービス内容や審査基準も限られた選択肢の中から選ばざるを得ません。
地域的な制約も課題となります。一部の業者は首都圏中心のサービス展開となっており、地方の事業者が利用しにくい場合があります。対面での相談や契約手続きを希望する場合、選択肢がさらに狭まる可能性があります。
業種による制約もあります。建設業やシステム開発業には対応していても、サービス業や小売業の注文書は受け付けない業者も存在します。
事業者は自社の業種が対象となるかを事前に確認する必要があります。
今後の市場拡大により業者数の増加が期待されますが、現時点では選択肢の狭さが利用上の制約となっています。
3-3. 審査基準の厳格化による利用難易度
注文書ファクタリングは、請求書ファクタリングと比較して審査基準が厳格化される傾向があります。
最も重要な審査項目は売掛先の信用力です。将来債権を対象とするため、長期間にわたって売掛先の支払い能力を維持できるかが厳しく評価されます。
上場企業や大手企業、官公庁などの信用力が高い売掛先でないと審査通過が困難な場合があります。
注文書の内容についても詳細な確認が行われます。金額や納期、業務内容が明確に記載されているか、契約条件に曖昧な部分がないかなどが慎重にチェックされます。
口約束や簡易な発注書では審査に通らない可能性が高くなります。
利用者の事業実績も重視されます。同種の業務を過去に完遂した実績があるか、必要な資格や許可を取得しているか、適切な人員体制が整っているかなどが評価されます。
新規事業や経験の浅い分野での案件は審査が厳しくなる傾向があります。
さらに、個人事業主の場合は法人と比較して審査が厳格になる傾向があります。一部の業者では個人事業主の利用を制限している場合もあり、利用できる業者がさらに限定される可能性があります。
これらの審査基準により、資金調達を急ぐ事業者であっても、必ずしも利用できるとは限らない点に注意が必要です。
4. 注文書ファクタリングの利用手続き
4-1. 申込みから入金までの具体的な流れ
注文書ファクタリングの利用プロセスは、一般的に以下の7つのステップで進行します。
第1ステップは事前相談です。ファクタリング会社に電話やメールで連絡し、取引内容や希望金額を伝えます。この段階で基本的な利用条件や手数料の概算を確認できます。
多くの業者がオンライン完結に対応しており、24時間受付を行っています。
第2ステップは正式な申込み手続きです。必要書類を準備し、ファクタリング会社の指定する方法で提出します。最近ではWEBサイト上での書類アップロードやメール添付での提出が主流となっています。
第3ステップは書類審査です。提出された注文書や関連書類をもとに、売掛先の信用力や取引内容の妥当性が評価されます。審査期間は最短数時間から1営業日程度ですが、複雑な案件では数日を要する場合があります。
第4ステップは条件提示です。審査通過後、買取金額や手数料、入金予定日などの詳細条件が提示されます。利用者はこの条件を確認し、承諾するかどうかを判断します。
第5ステップは契約締結です。条件に合意した場合、正式な契約書を取り交わします。電子契約に対応している業者も多く、迅速な手続きが可能です。
第6ステップは入金実行です。契約締結後、指定した口座に買取金額が入金されます。最短即日での入金も可能ですが、業者や申込み時間により翌営業日となる場合があります。
第7ステップは売掛金の回収と精算です。売掛先から代金を受け取った後、ファクタリング会社に買取金額相当を送金して取引が完了します。
4-2. 注文書以外でも認められる代替書類の種類
注文書ファクタリングでは、正式な注文書がない場合でも、受注の事実を証明できる代替書類で対応可能な場合があります。
最も一般的な代替書類は発注書です。売掛先が発行する正式な発注書であれば、注文書と同等の効力を持つものとして扱われます。
記載内容は注文書と同様で、発注者、受注者、業務内容、金額、納期などが明記されている必要があります。
契約書も有効な代替書類となります。業務委託契約書や請負契約書など、正式な契約が締結されている場合は、その契約書を根拠として利用できます。
ただし、基本契約のみでは不十分で、個別の発注内容が特定できる書類が必要です。
メールでのやり取りも認められる場合があります。売掛先から送信された正式な発注メールで、業務内容や金額、納期が明確に記載されていれば利用可能です。
ただし、口頭での約束や曖昧な表現では審査通過が困難です。
見積書の承認書類も代替書類として活用できます。事業者が提出した見積書に対して、売掛先が正式に承認した旨を示す書類があれば、受注の根拠として認められます。
FAXでの発注書も有効です。正式な書式でなくても、売掛先から送信されたFAXに必要事項が記載されていれば利用可能な場合があります。
ただし、これらの代替書類を利用する場合は事前にファクタリング会社に相談し、審査で受け入れられるかを確認することが重要です。
4-3. 審査でチェックされる3つの重要ポイント
注文書ファクタリングの審査では、主に3つの重要なポイントが厳格にチェックされます。
第1のポイントは売掛先の信用力です。これは最も重要な審査項目で、売掛先の財務状況、業歴、業界での地位などが総合的に評価されます。
上場企業や大手企業、官公庁は信用力が高く評価され、審査通過の可能性が高くなります。
具体的には、売掛先の決算書類や信用情報データベースでの評価、過去の支払い実績などが確認されます。業績が悪化している企業や支払い遅延の履歴がある企業は審査が厳しくなります。
第2のポイントは注文書の内容と妥当性です。業務内容が明確に記載されているか、金額設定が適正か、納期が現実的かなどが詳細に検証されます。
曖昧な記載や異常に高額な金額設定は審査に悪影響を与えます。
また、利用者の過去の実績と照らし合わせて、記載された業務を実際に完遂できる能力があるかも評価されます。経験のない分野での高額案件や、事業規模に見合わない大型案件は慎重に審査されます。
第3のポイントは利用者の事業実績と財務状況です。同種の業務を過去に成功させた実績があるか、必要な資格や許可を取得しているか、適切な人員や設備を保有しているかなどが確認されます。
財務面では、極端な債務超過や税金滞納がないか、継続的な事業運営が可能かなどがチェックされます。ただし、銀行融資ほど厳格ではなく、売掛先の信用力が高ければ利用者の財務状況に多少の問題があっても審査通過の可能性があります。
5. 注文書ファクタリングの活用場面
5-1. 建設業・システム開発業での活用メリット
建設業とシステム開発業は、注文書ファクタリングの恩恵を最も受けやすい業種です。
建設業では、工事着手前に重機のレンタル費用、材料費、作業員の確保など多額の初期投資が必要です。従来は自己資金や銀行からの借入に頼る必要がありましたが、注文書ファクタリングにより受注と同時に必要資金を確保できます。
特に公共工事では、発注者である官公庁の信用力が極めて高く、ファクタリング会社の審査も通りやすくなります。工期が長期にわたる大型案件でも、初期段階で十分な運転資金を確保できるため、安心して工事に着手できます。
国土交通省の建設業許可業者数調査によると、資本金1,000万円未満の中小建設業者が全体の約8割を占めており、これらの事業者にとって注文書ファクタリングは有効な資金調達手段となります。
下請け業者にとっても大きなメリットがあります。元請けからの発注書をもとに資金調達することで、支払いサイトの長い建設業界特有の資金繰り課題を解決できます。
これまで資金不足で断念していた規模の工事も積極的に受注できるようになります。
システム開発業では、要件定義から納品まで数ヶ月から1年以上を要する長期プロジェクトが多く、その間の人件費や開発環境の維持費用が課題となっていました。注文書ファクタリングにより、プロジェクト開始時点で必要資金を確保できるため、優秀な人材の確保や最新の開発ツール導入が可能になります。
大手企業からの発注案件では、売掛先の信用力が高く評価されるため、比較的有利な条件でファクタリングを利用できます。
5-2. 個人事業主・中小企業での資金繰り改善効果
個人事業主や中小企業にとって、注文書ファクタリングは資金繰り改善の強力な手段となります。
個人事業主の場合、大型案件を受注した際の資金不足が最大の課題です。これまでなら規模の制約で断念せざるを得なかった案件も、注文書ファクタリングを活用することで積極的に挑戦できるようになります。
例えば、フリーランスのWebデザイナーが企業から大型サイト制作を受注した場合、外注費や専門ツールの購入費用が先行して発生します。従来なら自己資金の範囲内でしか受注できませんでしたが、注文書ファクタリングにより必要資金を確保し、質の高いサービスを提供できます。
中小企業庁の小規模企業白書によると、小規模事業者の約3割が資金繰りに課題を抱えており、特に受注変動による資金需要の予測困難さが問題となっています。
中小企業では、季節変動や受注の波による資金繰りの不安定さが課題となっています。注文書ファクタリングを戦略的に活用することで、売上の変動に左右されない安定した資金繰りを実現できます。
また、成長段階にある中小企業では、事業拡大のための設備投資や人材採用が重要ですが、銀行融資では担保や保証の制約があります。注文書ファクタリングなら売掛債権を担保とするため、従来の融資では困難だった資金調達が可能になります。
特に、売掛先が大手企業や官公庁の場合、個人事業主や中小企業であっても信用力の高い債権として評価され、有利な条件での利用が期待できます。
5-3. 大型案件受注時の運転資金確保手段
大型案件を受注した際の運転資金確保は、多くの事業者が直面する共通の課題です。
大型案件では、プロジェクトの規模に比例して初期投資も大きくなります。人員の増強、専門設備の導入、外注先への発注など、売上回収前に多額の支出が発生します。
従来の資金調達方法では、これらの資金需要に迅速に対応することが困難でした。
注文書ファクタリングを活用することで、受注と同時に必要な運転資金を確保できるため、大型案件にも積極的に取り組めるようになります。これは事業拡大の大きなチャンスを意味します。
具体的な活用例として、製造業で大口受注を獲得した場合を考えてみます。原材料の調達、製造ラインの拡張、品質管理体制の強化などに多額の投資が必要ですが、注文書ファクタリングにより即座に資金調達することで、納期通りの生産体制を構築できます。
コンサルティング業では、大手企業からの長期プロジェクトを受注した際、専門スタッフの確保や調査費用の支払いが先行します。注文書ファクタリングにより、プロジェクト開始時点で十分な資金を確保し、質の高いサービス提供が可能になります。
重要なのは、大型案件の成功により事業実績が向上し、今後のより大きな案件受注につながることです。注文書ファクタリングは単なる資金調達手段ではなく、事業成長の加速装置としての役割を果たします。
6. よくある質問
6-1. 注文書がない場合でも利用できるの?
正式な注文書がない場合でも、受注の事実を証明できる書類があれば利用可能な場合があります。
多くのファクタリング会社では、発注書、契約書、正式な発注メール、見積書の承認書類、FAXでの発注書などを代替書類として認めています。重要なのは、発注者、受注者、業務内容、金額、納期が明確に記載されていることです。
ただし、口頭での約束や曖昧な内容のメールでは審査通過が困難です。また、業者により受け入れ基準が異なるため、事前に相談することが重要です。
一部の業者では、継続的な取引実績がある売掛先との間で、基本契約書と個別の発注メールの組み合わせでも対応している場合があります。また、官公庁の場合は入札結果通知書なども有効な書類として認められることがあります。
書類の不備により審査に時間がかかったり、希望する条件での利用ができない可能性もあるため、できる限り正式な注文書の発行を売掛先に依頼することをおすすめします。
6-2. 手数料の相場はどのくらいなの?
注文書ファクタリングの手数料相場は、一般的に10.0%から25.0%程度となっています。
手数料は複数の要因により決定されます。最も重要な要因は売掛先の信用力で、上場企業や官公庁など信用力が高い場合は手数料が低くなり、中小企業や個人事業主が売掛先の場合は高くなる傾向があります。
取引金額も影響し、数百万円以上の大型案件では手数料率が下がることが多く、数十万円の小口案件では高めに設定される傾向があります。支払いサイトの長さも重要な要因で、回収までの期間が長いほど手数料は高くなります。
利用者の信用状況や取引実績も考慮されます。過去にファクタリングを利用したことがあり、問題なく取引を完了している場合は優遇される可能性があります。
請求書ファクタリングと比較すると2.0%から5.0%程度高く設定されますが、資金調達の緊急性や事業への影響を考慮して判断することが重要です。
6-3. 個人事業主でも申込み可能なの?
個人事業主でも注文書ファクタリングの利用は可能ですが、業者により対応が分かれます。
法人のみを対象とする業者もある一方で、個人事業主の利用を積極的に受け入れている業者も存在します。ただし、個人事業主の場合は法人と比較して審査が厳格になる傾向があります。
審査では特に以下の点が重視されます。事業の継続性と安定性、過去の類似業務の実績、必要な資格や許可の取得状況、売掛先との継続的な取引関係などです。
また、個人事業主の場合は利用可能金額に制限が設けられることがあります。初回利用では数百万円程度が上限となる場合が多く、取引実績を積み重ねることで限度額の引き上げが期待できます。
売掛先が法人であることが条件となる業者が多いため、個人間取引での利用は困難です。開業届の提出や確定申告の実施など、事業としての実態があることを証明できる書類の準備が必要です。
6-4. 審査に通りやすくするコツはある?
注文書ファクタリングの審査通過率を高めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
最も効果的なのは売掛先の信用力を重視することです。可能な限り上場企業、大手企業、官公庁などの信用力が高い売掛先からの注文書を対象とすることで、審査通過の可能性が大幅に向上します。
注文書の記載内容を充実させることも重要です。業務内容、金額、納期、支払い条件などが明確に記載されていることで、ファクタリング会社の評価が高くなります。曖昧な表現や未記入項目は避け、詳細な情報を提供することが大切です。
過去の類似業務の実績を整理し、審査時に提出できるよう準備しておくことも効果的です。完了した案件の契約書、請求書、入金確認書類などを用意し、業務遂行能力を客観的に証明できるようにします。
複数の業者に相談し、条件を比較検討することも重要です。業者により審査基準や重視するポイントが異なるため、一社で断られても他社では承認される可能性があります。
事前相談を積極的に活用し、審査に必要な書類や条件を詳しく確認することで、準備不足による審査落ちを防げます。
6-5. 売掛先にバレずに利用できるの?
注文書ファクタリングは基本的に2者間契約で行われるため、売掛先に知られることなく利用できます。
2者間契約では、利用者とファクタリング会社のみで取引が完結し、売掛先への通知や承諾は不要です。ファクタリングの利用事実が売掛先に知られることはありません。
ただし、利用者は売掛先から代金を受け取った後、ファクタリング会社に送金する義務があります。この際、通常の入金と同様に処理することで、売掛先に気づかれるリスクを最小限に抑えられます。
一部の業者では3者間契約を採用している場合もあり、この場合は売掛先への通知が必要となります。手数料は安くなりますが、利用者の意向に反して売掛先にバレてしまうリスクがあるため、契約形態を事前に確認することが重要です。
ノンリコース契約により、万が一売掛先が倒産した場合でも利用者に返済義務は発生しません。これにより、売掛先の信用状況について過度に心配する必要がなく、安心して取引関係を維持できます。
長期的な取引関係を重視する場合は、2者間契約を採用している業者を選択することをおすすめします。
7. まとめ
注文書ファクタリングは、従来の資金調達方法では対応できない「受注時点での資金需要」に応える革新的なサービスです。
最大のメリットは、仕事を受注した時点で即座に資金調達できることです。建設業やシステム開発業など、長期プロジェクトを扱う業種では特に威力を発揮し、最大6ヶ月の支払いサイト短縮効果により資金効率を大幅に改善できます。
また、2者間契約により売掛先に知られることなく利用できるため、取引関係を損なうリスクもありません。
一方で、手数料が通常より2.0%から5.0%高く設定される点や、対応業者が限定的である点、審査基準が厳格化される点などのデメリットも理解しておく必要があります。
利用を検討する際は、資金調達の緊急性とコスト負担を慎重に比較し、売掛先の信用力や注文書の記載内容を充実させることで審査通過の可能性を高めることが重要です。
注文書ファクタリングを戦略的に活用することで、これまで資金制約で諦めていた大型案件への挑戦や事業拡大の加速が可能になります。適切に利用すれば、中小企業や個人事業主の成長を支える強力な資金調達手段となるでしょう。

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