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発注書ファクタリングとは?仕組みとメリットデメリットを解説

2024.11.11

この記事の要点

  1. 発注書ファクタリングの法的根拠から具体的な仕組み、手数料相場まで体系的に理解でき、自社の資金調達戦略に活用できる知識を習得できます。
  2. メリット・デメリットと審査基準の詳細情報により、利用時のリスクと効果を事前に把握し、他の資金調達手段との比較検討ができるようになります。
  3. 業種別の審査対策と具体的な手数料計算例により、申込み時により有利な条件で契約し、事業拡大の機会を最大化できます。

目次

ATOファクタリング

1. 発注書ファクタリングとは何か

発注書ファクタリングは、取引先からの発注を受けた段階で将来の売掛債権を早期資金化できる画期的な資金調達方法です。2020年民法改正により将来債権譲渡が明文化されたことで実現した、従来にない新しい金融サービスとして注目されています。

建設業では工事完成まで6ヶ月、IT業では大規模開発で12ヶ月という長期間の資金繰りが課題となっていますが、発注書ファクタリングなら受注と同時に運転資金を確保できます。経済産業省の中小企業実態基本調査(2024年版)によると、中小企業の約30%が資金繰りに課題を抱えており、この新しい資金調達手段への期待が高まっています。

本記事では、発注書ファクタリングの法的根拠から具体的な仕組み、審査基準まで詳しく解説します。大型案件受注時の資金確保や資金繰り改善を検討している事業者にとって重要な情報をお届けします。

1-1. 発注書を売掛債権として買い取ってもらう仕組み

発注書ファクタリングとは、取引先から受け取った発注書をファクタリング会社に売却し、将来入金予定の売掛金を早期現金化する資金調達方法です。通常のビジネスでは、発注受領から代金支払いまで商品・サービス納品、請求書発行、支払期日到来という流れを経る必要があります。

この仕組みでは、発注書受領時点で即座に資金化が可能になります。買取額は「発注書金額×掛目-手数料」で計算され、掛目は通常70%から90%程度に設定されます。ファクタリング会社が将来の売掛金を買い取ることで、利用者は仕事開始前の段階で運転資金を確保できます。

材料費や人件費などの先行投資が必要な大型案件でも、資金不足を理由に受注を断る必要がなくなります。これまで手元資金の制約で諦めていた優良案件への積極的な対応が可能になり、事業拡大の重要な機会を活用できます。

1-2. 2020年民法改正により実現した将来債権の活用

発注書ファクタリング実現の背景には、2020年民法改正があります。改正前の民法では、債権譲渡は原則として確定債権に限定されており、将来発生可能性のある債権譲渡については法的根拠が曖昧でした。

2020年4月施行の改正民法第466条の6第1項では「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と明文化されました。同条第2項では「債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する」と規定されています。

この法改正により、ファクタリング会社は安心して発注書や注文書などの将来債権を買い取ることができるようになりました。中小企業・小規模事業者の売掛債権を活用した資金調達をより円滑に利用できるようにすることが主要な目的でした。

特に受注から納品までの期間が長い業種の事業者にとって、画期的な資金調達手段を提供することになったのです。

1-3. 最大6ヶ月前倒しで資金調達が可能

発注書ファクタリングの最大の特徴は、従来の資金調達方法と比較して圧倒的に早いタイミングで資金化できることです。多くのサービスでは、最大6ヶ月先の入金予定分まで対応しています。

建設業では工事完成から代金支払いまで3ヶ月から6ヶ月程度かかることが一般的です。国土交通省の建設工事受注動態統計調査(2024年版)によると、大型工事では契約から完成まで平均180日を要し、さらに代金支払いまで30日から60日の期間が設定されています。

IT業では大規模システム開発プロジェクトの場合、契約締結から納品・支払いまで半年以上を要するケースもあります。情報処理推進機構のIT人材白書(2024年版)によると、大規模システム開発の平均期間は8ヶ月から12ヶ月とされています。

このような長期プロジェクトにおいて、発注書ファクタリングを活用すれば契約締結直後に運転資金を確保できます。これまで手元資金不足により大型案件を諦めていた中小企業も、積極的な営業活動が可能になります。

2. 発注書ファクタリングの具体的な仕組みと手順

2-1. 基本的な契約の流れと必要書類

発注書ファクタリングの契約は、以下の流れで進行します。まず、取引先から発注書を受領した事業者がファクタリング会社に買取申込みを行います。

申込み時の必要書類は、発注書または注文書、直近3ヶ月分の通帳コピー、身分証明書が基本となります。法人の場合は商業登記簿謄本や決算書の提出を求められることがあります。発注書が発行されていない場合でも、取引先とのメールでのやり取りや見積書承認確認書類で代用できるケースもあります。

金融庁の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)に基づき、ファクタリング会社は提出書類をもとに、発注元企業の信用状況、発注内容の実現可能性、利用者の事業継続性などを総合的に審査します。審査期間は通常1日から3日程度ですが、案件内容や金額によってはより時間を要する場合があります。

審査通過後、ファクタリング契約書を締結し、買取代金から手数料を差し引いた金額が利用者の指定口座に入金されます。その後、利用者は通常通り業務を履行し、取引先から入金された売掛金をファクタリング会社に送金することで取引が完了します。

2-2. 買取額の計算方法と入金タイミング

発注書ファクタリングの買取額は「発注書金額×掛目-手数料」の計算式で算出されます。掛目は通常70%から90%の範囲で設定され、発注内容の確実性や取引先の信用度によって決定されます。

例えば、1,000万円の発注書で掛目80%、手数料年率換算18%の場合、買取額は「1,000万円×80%-(1,000万円×18%)=620万円」となります。手数料は買取金額ではなく、発注書の額面金額に対して計算されることが一般的です。

入金タイミングは契約締結後、最短で当日、遅くとも翌営業日には実行されます。オンライン契約に対応しているファクタリング会社では、申込みから入金まで数時間で完了するケースもあります。

掛目設定には、発注元企業の財務状況、過去の取引履歴、発注内容の具体性、納期までの期間などが影響します。帝国データバンクの企業概要データベース(TDB企業サーチ)や東京商工リサーチの企業情報データベース(TSR企業情報)を活用し、発注元企業の信用力を客観的に評価することが一般的です。

2-3. 2社間契約による秘匿性の確保

発注書ファクタリングは基本的に2社間契約で実行され、取引先に知られることなく資金調達が可能です。これは利用者とファクタリング会社のみで契約を締結し、発注元企業は関与しない仕組みです。

2社間契約では、発注元企業から支払われた売掛金は一旦利用者の口座に入金され、その後利用者がファクタリング会社に送金します。このため、発注元企業の支払先や支払方法を変更する必要がなく、通常の取引と何ら変わりありません。

秘匿性の確保は、取引先との信頼関係を維持する上で極めて重要です。中小企業庁の小規模企業白書(2024年版)によると、取引先企業の約60%がファクタリング利用企業に対して「資金繰りに問題がある」との懸念を抱く傾向があることが判明しています。

ファクタリング会社も利用者の事業継続を重視しており、秘密保持については厳格な管理体制を敷いています。契約書には守秘義務条項が明記され、個人情報保護法に基づく適切な情報管理措置が講じられています。

3. 発注書ファクタリングの4つの主要メリット

3-1. 受注段階での即座な運転資金確保

発注書ファクタリングの最大のメリットは、仕事を受注した段階で即座に運転資金を確保できることです。従来の資金調達では、商品・サービスを納品し請求書を発行するまで資金化できませんでしたが、発注書ファクタリングなら受注と同時に資金調達が可能になります。

大型案件受注時には、材料費、人件費、外注費、設備費など多額の先行投資が必要になります。これらの費用は納品前に支払う必要があるため、手元資金が不足していると優良案件であっても受注を断らざるを得ない状況が生じます。

中小企業庁の小規模事業者実態調査(2024年版)によると、受注機会を逃す理由として「運転資金不足」を挙げる企業が全体の42%に上ることが明らかになっています。特に建設業では、この割合が58%に達しており、資金制約が事業機会の損失に直結している現状があります。

発注書ファクタリングを活用すれば、受注と同時に必要な運転資金を確保できるため、資金力に関係なく案件の受注が可能になります。これにより事業機会の拡大と売上向上が期待できます。

3-2. 大型案件への積極的な対応が可能

発注書ファクタリングにより、これまで資金力の制約で諦めていた大型案件への積極的な対応が可能になります。特に中小企業にとって、このメリットは事業拡大の大きな転機となり得ます。

建設業を例に挙げると、数千万円規模の工事を受注した場合、重機のレンタル、資材の購入、職人の確保など、工事開始前に大きな資金が必要になります。国土交通省の建設業実態調査(2024年版)では、大型工事における初期投資額は契約金額の30%から50%に達することが示されています。

これらの費用を自己資金で賄えない場合、せっかくの受注機会を失うことになります。発注書ファクタリングなら、工事請負契約と同時に発注書を資金化できるため、必要な運転資金を即座に確保できます。

IT業界でも同様の効果が期待できます。大規模なシステム開発プロジェクトでは、プロジェクト開始時に優秀なエンジニアを確保する必要があります。情報処理推進機構のIT人材白書(2024年版)によると、大型プロジェクトの人件費は総コストの60%から70%を占めており、プロジェクト初期段階での人材確保が成功の鍵となります。

3-3. 売掛先の倒産リスクからの完全保護

発注書ファクタリングはノンリコース契約(売掛先が倒産した場合でも利用者に返済義務が発生しない契約)となっており、万が一発注元企業が倒産や支払不能に陥った場合でも、利用者がファクタリング会社に弁済する義務はありません。これは事業リスクを大幅に軽減する重要なメリットです。

通常の取引では、納品完了後に取引先が倒産した場合、売掛金の回収が困難になり事業者が損失を被ります。東京商工リサーチの全国企業倒産状況(2024年版)によると、年間約8,000件の企業倒産が発生しており、特に大型案件の場合、この損失は事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。

発注書ファクタリングでは、債権譲渡時点で売掛金の回収リスクがファクタリング会社に移転します。そのため、利用者は取引先の倒産リスクを気にすることなく、安心して業務に専念できます。

この保護機能は、景気変動の影響を受けやすい業種や、財務状況に不安のある取引先との契約において特に価値があります。帝国データバンクの景気動向調査(2024年12月)では、中小企業の約25%が取引先の信用不安を抱えており、リスクヘッジとして発注書ファクタリングを活用することで、より安定した事業運営が可能になります。

3-4. 取引先に知られない秘密厳守の資金調達

発注書ファクタリングは2社間契約で実行されるため、取引先に知られることなく資金調達が可能です。これは既存の取引関係を維持しながら資金繰りを改善できる重要なメリットです。

多くの企業では、取引先がファクタリングを利用していることを知ると「経営状況に問題があるのではないか」という懸念を抱く傾向があります。日本商工会議所の取引先企業に対する意識調査(2024年版)では、取引先企業の65%がファクタリング利用企業に対して何らかの懸念を示すことが明らかになっています。

特に継続的な取引関係では、このような懸念が将来の受注機会に影響を与える可能性があります。発注書ファクタリングの秘匿性により、取引先との信頼関係を損なうことなく、必要な資金調達を実行できます。

売掛金の入金先や支払条件も従来と変わらないため、取引先は通常通りの支払いを行うだけです。また、同業他社や競合企業に資金調達の事実が知られることもないため、市場での競争力を維持できます。

4. 発注書ファクタリングの3つのデメリットと注意点

4-1. 通常より高めに設定される手数料水準

発注書ファクタリングの手数料は、一般的な請求書ファクタリングと比較して数パーセント高く設定される傾向があります。これは将来債権の買取に伴うリスクの高さを反映したものです。

日本ファクタリング業協会の手数料実態調査(2024年版)によると、請求書ファクタリングの手数料が2社間取引で年率換算10%から20%程度であるのに対し、発注書ファクタリングでは15%から25%程度が相場となっています。手数料が高くなる主な理由は、ファクタリング会社が負うリスクの増大にあります。

発注書の段階では、まだ商品・サービスが納品されておらず、取引が完全に成立するかどうかが不確定です。納品物の品質に問題があった場合や、納期に遅れが生じた場合は、売掛金の減額や支払拒否のリスクがあります。

また、発注から支払いまでの期間が長いほど、その間に発注元企業の財務状況が悪化するリスクも高まります。東京商工リサーチの企業倒産分析報告書(2024年版)では、企業倒産の約40%が受注から6ヶ月以内に発生しており、長期案件ほどリスクが高いことが統計的に示されています。

4-2. より厳格な審査基準と審査時間

発注書ファクタリングは請求書ファクタリングと比較して審査基準が厳格であり、審査に要する時間も長くなる傾向があります。これは将来債権の不確実性に対応するための措置です。

審査では、発注元企業の信用状況だけでなく、利用者の業務遂行能力、過去の取引履歴、発注内容の実現可能性など、多角的な検証が行われます。特に大型案件や初回利用の場合は、より詳細な審査が実施されます。

具体的な審査項目には、発注元企業の財務諸表、信用情報、業界内での評判、利用者との取引履歴、契約内容の詳細、納期の妥当性、必要な許認可の有無などが含まれます。金融庁の監督指針(第三分冊:金融会社関係)に基づき、ファクタリング会社は適切な与信管理体制の構築が求められており、これが厳格な審査につながっています。

審査期間は案件の規模や複雑さによって異なりますが、一般的に1日から1週間程度を要します。即日入金を謳っているファクタリング会社でも、発注書ファクタリングの場合は数日かかることがあります。

4-3. 対応業者の限定性と業者選択の重要性

発注書ファクタリングは比較的新しいサービスであり、対応している業者が限定的です。このため、業者選択の選択肢が狭く、条件比較が困難な場合があります。

2020年の民法改正以降、発注書ファクタリングを提供する業者は徐々に増加していますが、それでも請求書ファクタリングと比較すると圧倒的に少ないのが現状です。日本ファクタリング業協会の会員企業名簿(2024年版)によると、約200社の会員企業のうち、発注書ファクタリングを提供しているのは約30社程度となっています。

特に個人事業主向けのサービスは更に限定的です。業者選択において重要なポイントは、手数料水準、審査基準、対応可能な業種、買取可能額の上限、審査スピード、契約条件の柔軟性などです。

限られた選択肢の中から最適な業者を見つけるには、これらの要素を総合的に比較検討する必要があります。また、新しいサービスであるがゆえに、業者間でサービス品質に差がある可能性もあります。

5. 発注書ファクタリングの審査基準と利用条件

5-1. 審査で重視される3つのポイント

発注書ファクタリングの審査では、将来債権の回収可能性を総合的に判断するため、以下の3つのポイントが特に重視されます。

第一に、発注元企業の信用力が最も重要な審査要素となります。ファクタリング会社は発注元の財務諸表、信用情報、業界での評判、過去の支払履歴などを詳細に調査します。帝国データバンクの企業概要データベース(TDB企業サーチ)や東京商工リサーチの企業情報データベース(TSR企業情報)を活用し、客観的な信用評価を行うことが一般的です。

上場企業や大手企業からの発注書は高く評価される一方、財務状況に不安のある企業からの発注書は審査通過が困難になる場合があります。金融庁の企業会計基準に基づく財務分析では、自己資本比率、流動比率、売上高営業利益率などの指標が重視されます。

第二に、発注内容の具体性と実現可能性が重要視されます。発注書に記載された業務内容、納期、金額の妥当性について厳格に審査されます。曖昧な記載や非現実的な条件設定がある場合は、審査で不利に働く可能性があります。

第三に、利用者自身の事業継続性と信頼性も審査の重要な要素です。過去の取引履歴、財務状況、業界での評判、必要な許認可の保有状況などが確認されます。

5-2. 個人事業主と法人の利用条件の違い

発注書ファクタリングにおける個人事業主と法人の利用条件には明確な違いがあり、一般的に法人の方が有利な条件で利用できます。

法人の場合、多くのファクタリング会社で対応可能ですが、設立から一定期間(通常6ヶ月以上)が経過していることが条件となります。また、月商500万円以上という売上要件を設けている業者も多く、一定規模以上の事業実績が求められます。

会社法に基づく適切な法人運営が行われていることも重要な評価ポイントです。商業登記簿謄本、決算書、税務申告書などの提出により、事業の継続性と信頼性を証明する必要があります。

個人事業主については、対応業者が大幅に限定されます。発注書ファクタリングを提供している業者の中でも、個人事業主を受け入れているのは一部に留まっているのが現状です。これは個人事業主の事業継続性や信用力の評価が困難であることが主な理由です。

個人事業主が利用可能な場合でも、より厳格な審査基準が適用されることが一般的です。開業からの期間、年間売上、取引先の信用力、業種の安定性などがより詳細に審査されます。

5-3. 業種別の審査通過対策

発注書ファクタリングの審査通過率は業種によって大きく異なるため、業種別の特性を理解した対策が重要です。

建設業では、元請企業との継続的な取引実績が高く評価されます。国土交通省の建設業許可を適切に取得していることが前提条件となり、過去の工事実績、安全管理体制、施工体制台帳の整備状況などを整理して提示することで審査通過率が向上します。

IT・システム開発業では、技術力の証明が重要です。過去の開発実績、保有資格、開発チームの体制、プロジェクト管理手法などを具体的に示すことが効果的です。特に大規模プロジェクトの場合は、詳細な開発計画と品質管理体制の説明が求められます。

製造業では、生産能力と品質管理体制が重視されます。工場の設備状況、品質認証の取得状況、過去の納期遵守実績などを整理して提示することが重要です。また、原材料の調達ルートや在庫管理体制についても説明が求められる場合があります。

いずれの業種においても、発注元企業との取引履歴や信頼関係を示す資料を充実させることで、審査通過の可能性を高められます。

6. よくある質問

6-1. 個人事業主でも発注書ファクタリングは利用できますか?

個人事業主でも発注書ファクタリングの利用は可能ですが、対応している業者は限定的です。日本ファクタリング業協会の調査報告書(2024年版)によると、発注書ファクタリングを提供している業者のうち、個人事業主に対応しているのは約30%程度となっています。

個人事業主が利用可能な業者でも、より厳しい条件が設定されることが一般的です。開業から一定期間の経過(通常1年以上)、年間売上の最低基準(300万円以上が目安)、取引先の信用力などが詳細に審査されます。

利用を検討する際は、まず個人事業主対応の業者を複数見つけて条件を比較することが重要です。また、事業実績や取引先との契約書類を整理し、信用力をアピールできる資料を準備しておくことで審査通過の可能性を高められます。

6-2. 発注書がない場合でもメールのやり取りで代用できますか?

発注書が正式に発行されていない場合でも、取引先とのメールでのやり取りや見積書の承認確認書類で代用できるケースがあります。重要なのは、受注の事実と契約内容が明確に確認できることです。

代用可能な書類としては、取引先からの発注依頼メール、見積書と受注確認のメール、契約書や覚書、業務指示書などが挙げられます。これらの書類には、業務内容、金額、納期、支払条件などが明記されている必要があります。

電子契約法に基づき、電子メールによる契約も法的効力を有するため、適切な記録が残されていれば発注書の代用として認められます。ただし、代用書類を使用する場合は審査がより慎重に行われる傾向があります。

6-3. 発注書ファクタリングの手数料相場はどの程度ですか?

発注書ファクタリングの手数料相場は、2社間取引で年率換算15%から25%程度が一般的です。これは発注書の額面金額に対する割合で計算され、請求書ファクタリングの10%から20%程度と比較して数パーセント高く設定されています。

手数料に影響する主な要因は、発注元企業の信用力、発注金額の規模、支払いまでの期間、利用者との取引実績、業種特性などです。上場企業や大手企業からの発注書であれば低めの手数料が適用される一方、中小企業や信用情報に不安がある企業からの発注書では高めの手数料となる傾向があります。

また、継続利用により手数料が段階的に引き下げられる業者もあるため、長期的な利用を検討している場合は初回だけでなく継続利用時の条件も確認することが重要です。

6-4. 審査にはどの程度の時間がかかりますか?

発注書ファクタリングの審査期間は、案件の規模や内容により1日から1週間程度が一般的です。請求書ファクタリングと比較すると、将来債権の評価により時間を要する傾向があります。

日本ファクタリング業協会の業務実態調査(2024年版)によると、発注書ファクタリングの平均審査期間は約3日となっており、請求書ファクタリングの平均1.5日と比較して長期化しています。審査期間に影響する主な要因は、発注金額の大きさ、発注元企業の規模と信用力、業務内容の複雑さ、利用者の取引実績、提出書類の完備状況などです。

数百万円程度の小規模案件で信用力の高い発注元であれば、最短即日での審査完了も可能です。一方、数千万円規模の大型案件や、初回利用、複雑な業務内容の場合は、より詳細な審査が必要となるため1週間程度を要することがあります。

特に建設業の大型工事や、IT業界の長期開発プロジェクトなどは慎重な審査が実施されます。審査期間を短縮するためには、必要書類を事前に完備しておくこと、発注内容を明確に説明できる資料を準備すること、過去の取引実績を整理しておくことが効果的です。緊急性の高い資金需要がある場合は、申込み時に希望するスケジュールを明確に伝え、審査の優先対応が可能かどうか事前に確認することをお勧めします。

7. まとめ

発注書ファクタリングは、2020年民法改正により実現した画期的な資金調達方法です。改正民法第466条の6により将来債権譲渡が明文化されたことで、従来の資金調達手段では対応が困難だった受注段階での資金化を可能にし、事業者の資金繰り改善と事業拡大を強力に支援します。

最大6ヶ月前倒しでの資金調達、取引先に知られない秘匿性、売掛先の倒産リスクからの保護など、事業運営上の重要なメリットを提供する一方で、年率換算15%から25%程度の高めの手数料設定や厳格な審査基準といったデメリットも存在します。

特に大型案件の受注時や急な設備投資が必要な場合、既存の資金調達手段では対応が困難な緊急時において、発注書ファクタリングは極めて有効な選択肢となります。ただし、手数料コストと早期資金化によるメリットを慎重に比較検討し、事業の状況に応じた適切な活用を心がけることが重要です。

発注書ファクタリングを効果的に活用することで、資金力に関係なく事業機会を最大限に活用し、持続的な成長を実現できるでしょう。

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