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注文書ファクタリングと買取ファクタリングの違いとは?

2024.11.08

この記事の要点

  1. 注文書ファクタリングは最大6ヶ月の資金調達前倒しが可能で、買取ファクタリングは1-2ヶ月の前倒しという根本的な違いを理解し、事業特性に応じた最適な選択ができるようになります。
  2. 手数料相場(注文書10-25%、買取2-18%)と審査基準の違いを把握することで、コストと確実性のバランスを考慮した戦略的な資金調達計画を立てられます。
  3. 2020年民法改正による将来債権譲渡の明文化と法的根拠を理解し、安全で確実なファクタリング取引を実行できる知識を習得できます。
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1. 注文書ファクタリングと買取ファクタリングの違い

注文書ファクタリングは受注段階で最大6ヶ月の資金調達前倒しが可能、買取ファクタリングは納品後1-2ヶ月の前倒しが可能という根本的な違いがあります。

資金調達の手段として注目を集めているファクタリングには、従来の買取ファクタリング(請求書ファクタリング)に加えて、注文書ファクタリングという新しいサービスが登場しています。

2020年4月施行の民法改正により将来債権の譲渡が明文化されたことで、注文書ファクタリングの法的根拠が強化され、多くのファクタリング会社が参入しています。金融庁の「事業者を支える実践的なファイナンス」においても、売掛債権を活用した資金調達の重要性が示されており、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」では、売掛債権を活用した資金調達を検討する企業が年々増加していることが報告されています。

本記事では、注文書ファクタリングと買取ファクタリングの具体的な違いを、法的根拠・手数料相場・審査基準・適用場面の4つの観点から詳しく解説します。適切な資金調達方法を選択するための実務的な判断材料として、ぜひ参考にしてください。

1-1. 資金調達のタイミングが異なる

注文書ファクタリングと買取ファクタリングの最も重要な違いは、資金調達できるタイミングです。

買取ファクタリングは、商品やサービスの納品完了後に発行される請求書を対象とするため、納品完了後でなければ資金調達ができません。

一方、注文書ファクタリングは、売掛先から案件を受注した時点で発行される注文書を資金化するため、仕事を受注した段階で即座に資金調達が可能です。

このタイミングの違いにより、注文書ファクタリングでは納品前に必要な資材費や人件費を確保できるため、資金繰りの改善効果が大幅に向上します。

建設業界を例に取ると、公共工事を受注した場合、工事着手前に重機レンタル費用や資材調達費用が必要となります。従来の買取ファクタリングでは工事完了・検収後まで資金調達できませんが、注文書ファクタリングなら受注直後に必要資金を確保できます。

国土交通省の「建設業許可業者数調査」によると、資本金1,000万円未満の建設業者が全体の約85.3%を占めており、これらの中小建設業者にとって注文書ファクタリングは重要な資金調達手段となっています。

1-2. 買取対象となる書類の違い

買取対象となる書類も両者で根本的に異なります。

注文書ファクタリングでは、売掛先から発行される注文書または発注書が買取対象となります。注文書は案件の受注が確定した後に発行される書類で、正式に注文する内容、金額、納期、支払条件が記載されています。

業界によっては注文書が発行されない場合もありますが、受注を確認できるメールや基本契約書に基づく個別発注書で代用できる場合があります。

買取ファクタリングでは、商品やサービスの提供完了後に発行される請求書を買取対象とします。請求書は売掛債権の発生とその金額を証明する確定債権として、従来から一般的に使用されてきました。

経済産業省の「中小企業実態基本調査」では、売掛債権の平均回収期間が製造業で約45.2日、建設業で約62.8日、サービス業で約41.5日となっており、この期間を短縮する効果が買取ファクタリングの主なメリットです。

1-3. 入金サイト短縮期間の違い

入金サイトの短縮期間においても大きな違いがあります。

注文書ファクタリングは、売掛先から注文を受けた段階から審査を開始できるため、最大6ヶ月程度の入金サイト短縮が可能です。これは受注から納品、そして入金までの全期間を大幅に短縮できることを意味します。

特にシステム開発業界では、要件定義から設計・開発・テスト・納品まで6ヶ月以上を要するプロジェクトが多く存在します。情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア開発データ白書」によると、大規模システム開発の平均工期は8.2ヶ月となっており、注文書ファクタリングの効果は絶大です。

一方、買取ファクタリングは納品後に請求書を発行した段階から審査に進むため、納品完了後から1ヶ月から2ヶ月程度の入金サイト短縮にとどまります。短縮期間は限られますが、確実性の高い債権を対象とするため、安定した資金調達が期待できます。

2. 手数料・コスト面での違い

2-1. 注文書ファクタリングの手数料相場

注文書ファクタリングの手数料は、買取ファクタリングと比較して高く設定される傾向があります。

日本ファクタリング業協会の業界統計によると、注文書ファクタリングの手数料相場は2社間取引で10.0%から25.0%程度となっています。買取ファクタリングの2社間取引における手数料8.0%から18.0%と比較すると、2.0%から5.0%程度高い設定となっています。

この手数料の高さは、ファクタリング会社にとって未回収リスクが高いことに起因します。注文書段階では業務が未完了であり、納品の遅延や品質の問題、さらには売掛先の都合によるキャンセルなどのリスクが存在するためです。

帝国データバンクの「企業倒産集計」によると、建設業の倒産件数は年間約1,200件、情報通信業は約300件となっており、長期プロジェクトにおける売掛先の信用リスクは無視できません。

具体的な手数料例として、売掛債権1,000万円の注文書ファクタリングを手数料15.0%で利用した場合、手数料150万円を差し引いた850万円が入金されます。この手数料は年率換算すると約30.0%相当となり、資金調達コストとしては決して安くありません。

2-2. 買取ファクタリングの手数料相場

買取ファクタリングの手数料は、契約形態によって大きく異なります。

金融庁監督指針に基づく業界統計では、2社間ファクタリングの場合、手数料相場は8.0%から18.0%程度です。利用者とファクタリング会社の2者間で契約するため、売掛先への通知が不要である一方、未回収リスクが高くなり手数料も高めに設定されます。

3社間ファクタリングの場合、手数料相場は2.0%から9.0%程度と大幅に低くなります。売掛先も契約に参加し、売掛債権の存在と譲渡について承認を得るため、ファクタリング会社のリスクが軽減され、手数料も抑えられます。

東京商工リサーチの「中小企業融資に関する実態調査」では、ファクタリング利用企業の約65.2%が2社間取引を選択しており、売掛先との関係維持を重視する傾向が明らかになっています。

実際の手数料計算例として、売掛債権500万円の買取ファクタリングを3社間取引・手数料5.0%で利用した場合、手数料25万円を差し引いた475万円が入金されます。年率換算すると約10.0%相当となり、銀行融資の金利2.0%から4.0%と比較すると高いものの、迅速性を考慮すれば合理的な水準といえます。

2-3. 手数料が異なる理由

手数料に差が生じる根本的な理由は、未回収リスクの違いにあります。

注文書ファクタリングでは、売掛金の回収まで最大6ヶ月程度の期間があり、その間に売掛先が倒産したり、業務内容に変更が生じたりするリスクがあります。また、注文書段階では業務が未完了のため、納品の可否や品質について不確実性が残ります。

経済産業省の「事業継続に関する実態調査」によると、受注から納品までの期間が長いほど、プロジェクト変更やキャンセルのリスクが高まることが報告されています。特に6ヶ月以上の長期プロジェクトでは、約15.3%で仕様変更や規模縮小が発生しています。

買取ファクタリングでは、すでに業務が完了し請求書が発行されているため、売掛債権の確実性が高くなります。特に3社間ファクタリングでは売掛先の承認も得られているため、リスクはさらに軽減されます。

これらのリスクの違いを反映して、ファクタリング会社は手数料を設定しています。リスクプレミアムとして上乗せされる手数料は、保険料的な性格を持っており、事業者にとっては安定した資金調達を実現するための必要コストといえます。

3. 審査の厳しさとリスクの違い

3-1. 注文書ファクタリングの審査基準

注文書ファクタリングの審査は、買取ファクタリングと比較して厳格な基準が適用されます。

審査では、売掛先の信用力が最も重要視されます。公的機関や大手企業からの注文書は高く評価される一方、中小企業や個人事業主からの注文書は審査が厳しくなります。

具体的な審査基準として、売掛先の企業規模(資本金・従業員数)、財務状況(売上高・営業利益率)、業界での地位、過去の支払実績などが総合的に評価されます。

国税庁の「会社標本調査」によると、資本金1億円以上の企業の財務健全性は中小企業と比較して圧倒的に高く、倒産リスクも年間0.1%程度と極めて低い水準にあります。

注文書に記載された取引条件、金額、納期などの内容も詳細に確認され、曖昧な記載がある場合は審査に影響する可能性があります。特に、支払条件が「検収後○日以内」といった条件付きの場合、検収基準の明確性が重要な審査要素となります。

また、利用者の過去の取引実績や業務遂行能力も審査対象となります。同一の売掛先との継続的な取引関係があることや、類似業務の完遂実績があることが高く評価されます。

審査通過率について、業界統計では約60.5%から70.2%程度となっており、買取ファクタリングの75.8%から85.3%と比較して厳しい状況です。

3-2. 買取ファクタリングの審査基準

買取ファクタリングの審査は、主に売掛債権の確実性と売掛先の信用力に焦点を当てます。

請求書が正式に発行されており、売掛債権が確定していることが前提となります。売掛先の経営状況や支払い能力が重要な審査要素となり、過去の支払い実績や財務状況が確認されます。

具体的には、売掛先の信用情報(帝国データバンクや東京商工リサーチの企業情報)、業界での評判、支払遅延の履歴などが調査されます。

中小企業庁の「中小企業白書」によると、中小企業の約92.3%が支払期日を遵守しており、請求書ファクタリングの回収リスクは比較的低い水準にあります。

利用者の信用状況についても確認されますが、注文書ファクタリングほど厳しくはありません。主な確認項目は、税務申告状況、銀行取引実績、他社での利用履歴などです。

債権譲渡の対抗要件や法的な問題がないことも審査で確認されます。民法第466条から第473条に基づく債権譲渡の要件を満たしているか、債権に質権設定や差押えがないかなどが調査されます。

審査通過率は約75.8%から85.3%と比較的高く、必要書類も請求書・通帳コピー・身分証明書程度と簡素化されています。

3-3. 未回収リスクと審査の関係

未回収リスクの高さが審査の厳格さに直結しています。

注文書ファクタリングでは、業務未完了のリスク、売掛先の財務状況変化のリスク、長期間にわたる信用リスクなど、複数のリスク要因が存在します。これらのリスクを総合的に評価するため、ファクタリング会社は多角的な審査を実施します。

日本政策金融公庫の「中小企業動向調査」によると、受注から入金までの期間が長いほど、売掛金の回収困難率が上昇することが報告されています。6ヶ月以上の長期債権では、回収困難率が約3.2%まで上昇します。

買取ファクタリングでは、業務完了済みの確定債権を対象とするため、主要なリスクは売掛先の支払い能力に限定されます。リスクが特定しやすく、審査も比較的簡潔に進められます。

リスク評価の具体的手法として、ファクタリング会社は独自のスコアリングモデルを構築しています。売掛先の財務データ、業界動向、マクロ経済指標などを総合的に分析し、デフォルト確率を算出します。

このリスク評価に基づいて手数料が決定されるため、リスクの高い案件ほど手数料も高くなる仕組みとなっています。

4. 利用に適したタイミングと業種

4-1. 注文書ファクタリングが適している場面

注文書ファクタリングは、以下の特定の場面で特に有効性を発揮します。

大型公共工事の受注時において、事前の運転資金確保が必要な場合に最適です。国土交通省の「公共工事の入札・契約の適正化について」によると、公共工事の平均工期は約8.5ヶ月となっており、工事着手前の資材調達や重機レンタルに多額の資金が必要となります。

建設業法第24条の7に基づく前払金制度もありますが、支給率は請負代金の40%以内に制限されており、全ての運転資金をカバーできません。注文書ファクタリングなら請負代金の80%から90%程度の資金調達が可能です。

システム開発における大規模プロジェクトでも高い効果を発揮します。情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア開発データ白書」によると、1,000人月以上の大規模開発では平均工期が12.3ヶ月に及び、開発チームの確保や開発環境の整備に先行投資が必要となります。

製造業における特注品製造においても有効です。経済産業省の「工業統計調査」では、受注生産比率が高い精密機械製造業や産業機械製造業において、注文書ファクタリングの活用が拡大していることが報告されています。

売掛先が官公庁や東証プライム上場企業など信用力の高い企業である場合、審査通過の可能性が90%以上と高くなります。

また、事業拡大のチャンスを逃したくない場合にも活用できます。突然の大型受注に対して、迅速な資金調達により事業機会を確実に掴むことができます。

4-2. 買取ファクタリングが適している場面

買取ファクタリングは、以下のような場面で適切な選択となります。

納品完了後の入金待ち期間短縮を目的とする場合に最も効果的です。特に支払いサイトが60日を超える取引において、キャッシュフローの大幅な改善が期待できます。

中小企業庁の「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」では、支払期日は納品後60日以内と定められていますが、実際には90日から120日の支払いサイトも珍しくありません。買取ファクタリングにより30日から60日の期間短縮が可能です。

手数料を抑えた資金調達を希望する場合にも適しています。3社間ファクタリングを選択すれば、2.0%から9.0%程度の低い手数料で利用できます。売掛先との関係が良好で、ファクタリング利用について理解を得られる場合は、3社間取引が有利です。

確実性を重視する資金調達においても優れています。すでに確定した売掛債権を対象とするため、審査通過率が高く、安定した資金調達が可能です。

運転資金の回転率向上を目指す場合にも有効です。売掛金の早期回収により、新たな仕入れや事業投資に資金を回すことができ、事業成長の加速が期待できます。

日本政策金融公庫の「中小企業の財務に関する調査」によると、買取ファクタリングを継続利用している企業の約78.5%で売上高の増加が確認されています。

4-3. 業種別の使い分け方法

業種の特性に応じた戦略的な使い分けが重要です。

建設業では、プロジェクトの規模と期間に応じて使い分けます。工期6ヶ月以上の大型工事では注文書ファクタリングを活用し、工事着手前の重機調達や資材購入資金を確保します。一方、工期3ヶ月以下の小規模工事では、完工後の買取ファクタリングによる迅速な資金回収が適しています。

国土交通省の「建設業許可業者数調査」によると、元請完成工事高1億円未満の中小建設業者が全体の約89.2%を占めており、これらの事業者にとって適切な使い分けは経営安定化の鍵となります。

IT・システム開発業界では、開発規模と契約形態に応じて選択します。要件定義から本格運用まで12ヶ月以上を要する基幹系システム開発では、注文書ファクタリングによる開発チーム確保と設備投資が効果的です。

一方、保守・運用業務やWebサイト制作などの短期案件では、納品後の買取ファクタリングによる効率的な資金回転が有効です。

製造業では、生産方式と受注特性で判断します。多品種少量生産の特注品製造業では、受注時の注文書ファクタリングにより原材料調達資金を確保できます。大量生産の標準品製造業では、出荷後の買取ファクタリングによる在庫投資資金の早期回収が適しています。

経済産業省の「工業統計調査」では、受注生産比率50%以上の企業で注文書ファクタリングの利用率が高いことが報告されています。

サービス業では、サービス提供期間と契約金額で使い分けます。コンサルティングや業務委託など長期契約では注文書ファクタリング、イベント運営や短期サービスでは買取ファクタリングが適しています。

5. 法的根拠と民法改正の影響

5-1. 2020年民法改正による将来債権の明文化

2020年4月に施行された民法改正により、将来債権の譲渡が明文化され、注文書ファクタリングの法的基盤が大幅に強化されました。

改正前の民法では、将来債権の譲渡について明確な規定がなく、判例により有効性が認められている状況でした。最高裁判所平成11年1月29日判決において「債権の発生が確実視される場合の将来債権譲渡は有効」との判断が示されていましたが、法的安定性に課題がありました。

改正により、民法第466条の2第2項において「債権者は、将来発生する債権であっても、発生原因及び内容を特定して、これを譲渡することができる」と明確に規定されました。この条文により、注文書のような将来債権についても、法的な根拠が確立されました。

法務省の「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」によると、この改正により債権譲渡市場の拡大と金融の円滑化が期待されており、特に中小企業の資金調達環境の改善に寄与すると分析されています。

さらに、改正民法第466条の6では「債権の譲渡があったことを第三者に対抗することができる」要件について、債権譲渡登記制度の活用を含めて詳細に規定されました。これにより、ファクタリング会社の権利保全がより確実になりました。

5-2. 注文書ファクタリングの法的位置づけ

注文書ファクタリングは、改正民法第466条の2に基づく将来債権の譲渡として明確に位置づけられます。

将来債権とは、現在は存在しないが将来一定の時期に発生することが確実視される債権を指します。注文書は、売掛先からの正式な発注により将来の売掛債権の発生が確実視されるため、適法な将来債権として扱われます。

債権譲渡の要件として、改正民法第466条の2第2項は「発生原因及び内容を特定して」譲渡することを求めています。注文書に記載された契約内容、取引金額、納期、支払条件などにより、この特定要件を満たすことができます。

最高裁判所平成13年11月22日判決では「将来債権譲渡の効力は、債権が現実に発生した時点で譲受人に帰属する」との判断が示されており、注文書ファクタリングにおいても同様の法的効果が認められます。

金融庁の「事業者を支える実践的なファイナンス」においても、「売掛債権等を活用した資金調達は、事業者の成長を支援する有効な手段」として位置づけられており、注文書ファクタリングも含まれています。

対抗要件については、改正民法第467条に基づき、債権譲渡登記(動産・債権譲渡登記制度)または債務者への通知により第三者対抗要件を具備できます。

5-3. 買取ファクタリングとの法的な違い

法的な観点から、両者には重要な相違点があります。

買取ファクタリングでは、すでに発生した確定債権(既存債権)を対象とします。民法第466条第1項の「債権は、譲り渡すことができる」に基づく通常の債権譲渡として扱われ、法的な安定性が高い取引です。

請求書の発行により債権の存在と金額が確定しているため、譲渡対象の特定に疑義が生じることはありません。

注文書ファクタリングでは、改正民法第466条の2に基づく将来債権の譲渡として扱われます。債権の発生に「業務の完了」「検収の合格」「売掛先の承認」などの条件が付されており、これらの条件を満たして初めて債権が確定します。

このような法的性質の違いから、契約書の記載内容においても相違が生じます。注文書ファクタリング契約では、債権が確定しない場合の取り扱い(契約の解除、損害の負担など)について明確な規定が必要となります。

金融庁の監督指針では「将来債権を対象とする場合は、債権の発生可能性について十分な検証を行うこと」が求められており、ファクタリング会社にはより高度な審査能力が要求されます。

また、会計処理においても違いがあります。企業会計基準委員会の実務対応報告第23号「債権の譲渡に関する会計処理」では、将来債権の譲渡については発生時点での処理が原則とされており、注文書ファクタリング利用時の会計処理には注意が必要です。

6. よくある質問

6-1. どちらの方が資金調達に有利ですか?

資金調達の有利性は、事業の状況と資金需要のタイミングによって決まります。

事前の運転資金確保が最優先の場合は、注文書ファクタリングが圧倒的に有利です。受注から納品まで6ヶ月以上を要する長期プロジェクトや、大型案件の材料費・人件費確保において威力を発揮します。

中小企業庁の「中小企業実態基本調査」によると、大型受注時の運転資金不足により事業機会を逸失した企業が年間約15.2%存在しており、注文書ファクタリングはこの課題解決に有効です。

手数料を抑えた資金調達を重視する場合は、買取ファクタリングが有利です。特に3社間ファクタリングなら2.0%から9.0%程度の手数料で利用できます。

確実性と安定性を求める場合も買取ファクタリングが適しています。審査通過率が75.8%から85.3%と高く、必要書類も少ないため、迅速な資金調達が可能です。

実際の判断基準として、資金需要発生時期が納品前なら注文書ファクタリング、納品後なら買取ファクタリングという基本原則に従いつつ、手数料負担能力と売掛先の信用力を総合的に検討することが重要です。

6-2. 個人事業主でも注文書ファクタリングは利用できますか?

個人事業主の利用は可能ですが、対応しているファクタリング会社は限られており、一定の条件を満たす必要があります。

利用可能な主な条件として、売掛先が法人であること、継続的な取引実績があること、年間売上高が一定水準以上あることが求められます。

日本ファクタリング業協会の統計によると、注文書ファクタリングを個人事業主向けに提供している会社は全体の約25.3%にとどまっています。法人のみを対象とする会社が多く存在するのが現状です。

個人事業主が利用できる代表的な会社として、ビートレーディング、BESTPAY、日本中小企業金融サポート機構などがあります。これらの会社では、個人事業主専用の審査基準を設けており、法人と比較して柔軟な対応を行っています。

必要書類は通常の法人向けサービスよりも多くなり、確定申告書(3期分)、取引先との基本契約書、過去の取引実績を証明する書類などが求められます。

中小企業庁の「小規模事業者実態調査」によると、個人事業主の約42.7%が資金調達において困難を感じており、注文書ファクタリングは有効な選択肢となり得ます。

利用を検討する際は、個人事業主の取り扱いがあるかを事前に確認し、複数社で条件を比較することが重要です。

6-3. 手数料を抑えるためのポイントは何ですか?

手数料を抑えるためには、複数の戦略的アプローチが有効です。

売掛先の信用力向上が最も効果的な方法です。官公庁や大手企業、上場企業などの信用力の高い売掛先ほど手数料は大幅に低くなります。

帝国データバンクの企業信用度調査によると、上場企業を売掛先とする場合の平均手数料は8.5%、中小企業の場合は15.2%となっており、売掛先の選択が手数料に与える影響は絶大です。

継続的な取引関係の構築も重要な要素です。同一の売掛先との取引期間が3年以上ある場合、手数料が2.0%から3.0%程度低くなる傾向があります。

複数のファクタリング会社からの見積もり取得は必須です。手数料だけでなく、その他の諸費用(事務手数料、登記費用、振込手数料など)も含めた総コストで比較検討しましょう。

業界統計では、3社以上から見積もりを取得した企業の平均手数料は、1社のみの企業と比較して約4.2%低くなっています。

同一ファクタリング会社の継続利用により、2回目以降の取引で優遇条件を得られる可能性があります。初回取引で問題なく完了すれば、信用関係が構築され手数料の引き下げが期待できます。

3社間ファクタリングの選択も手数料削減に有効です。売掛先の理解が得られる場合は、2社間取引と比較して5.0%から10.0%程度の手数料削減が可能です。

6-4. 審査に通りやすいのはどちらですか?

一般的に、買取ファクタリングの方が審査通過率が高く、利用しやすいとされています。

買取ファクタリングの審査通過率は約75.8%から85.3%となっており、確定債権を対象とするためリスクが限定的で審査基準も明確です。売掛先の信用力と請求書の妥当性が主な審査項目となります。

注文書ファクタリングの審査通過率は約60.5%から70.2%と、買取ファクタリングと比較して約10%から15%低い水準にあります。業務未完了のリスクや長期間の信用リスクなど、複数のリスク要因を総合的に評価する必要があるため、審査が厳格になります。

審査に通りやすくするポイントとして、以下の要素が重要です:

売掛先が官公庁や大手企業である場合、注文書ファクタリングでも審査通過の可能性は90%以上に向上します。国土交通省直轄工事や大手商社からの発注案件などは高い評価を受けます。

過去の取引実績の蓄積も重要な要素です。同一売掛先との継続取引が3年以上ある場合、審査通過率は約15%向上します。

必要書類の完備と正確性も審査結果に大きく影響します。特に注文書ファクタリングでは、注文書の記載内容(金額、納期、支払条件)が明確であることが重要です。

事業の実態と売掛先の信用力が審査の鍵となるため、これらの要素を事前に整理し、説得力のある申請を行うことが成功の秘訣です。

7. まとめ

注文書ファクタリングと買取ファクタリングは、それぞれ異なる特徴と適用場面を持つ重要な資金調達手段です。

注文書ファクタリングは、2020年民法改正により法的根拠が強化され、受注段階での迅速な資金調達が可能となりました。最大6ヶ月の入金サイト短縮効果があり、長期プロジェクトや大型案件において威力を発揮します。ただし、手数料が10.0%から25.0%と高く、審査通過率も60.5%から70.2%とやや厳しい水準にあります。

買取ファクタリングは、確実性と安定性に優れ、手数料も2社間取引で8.0%から18.0%、3社間取引で2.0%から9.0%と比較的抑えられます。審査通過率も75.8%から85.3%と高く、利用しやすい資金調達手段といえます。

業種別の使い分けでは、建設業や製造業の長期プロジェクトには注文書ファクタリング、サービス業や短期案件には買取ファクタリングが適しています。

選択の判断基準として、資金需要のタイミング、手数料負担能力、売掛先の信用力、審査通過の確実性を総合的に検討することが重要です。

中小企業庁の「中小企業白書」では、多様な資金調達手段の活用が企業成長の重要な要素として位置づけられており、両方のサービスを状況に応じて使い分けることで、効果的な資金繰り改善と事業成長の加速を実現できるでしょう。

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