ファクタリング

リバースファクタリングのメリットデメリット特徴を解説

2024.11.11

この記事の要点

  1. リバースファクタリングの基本的な仕組みと通常のファクタリングとの違いを理解し、自社の資金調達戦略に活用できる知識を得られます。
  2. 発注企業と外注先企業双方のメリット・デメリットを具体的に把握し、導入検討時の適切な判断材料を獲得できます。
  3. でんさい導入から手数料負担まで実務的な注意点を理解することで、スムーズなサービス導入と効果的な活用が可能になります。

目次

ATOファクタリング

1. リバースファクタリングの基本的な仕組みと特徴

リバースファクタリングは、従来のファクタリングとは逆の仕組みで資金繰りを改善する金融サービスです。発注企業が外注先への買掛金支払いをファクタリング会社に立て替えてもらうことで、支払期日を調整できる特徴を持ちます。

本記事では、リバースファクタリングの詳細な仕組みから、発注企業と外注先企業双方のメリット・デメリット、さらには導入時の具体的な注意点まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説します。

1-1. リバースファクタリングの定義と核心的特徴

リバースファクタリングは、発注企業が保有する買掛金をファクタリング会社に立て替えてもらう金融取引です。通常のファクタリングが外注先企業の売掛金早期現金化を目的とするのに対し、リバースファクタリングは発注企業の支払期日調整を主目的とします。

この仕組みの最大の特徴は、3社間契約による相互利益の実現です。発注企業は買掛金の支払期日を先延ばしでき、外注先企業は売掛金を早期回収でき、ファクタリング会社は手数料収入を得ることができます。

1-2. 電子記録債権(でんさい)の必須要件

リバースファクタリングの利用には、発注企業と外注先企業の双方が電子記録債権(でんさい)を導入している必要があります。でんさいは株式会社全銀電子債権ネットワークが運営する電子決済システムで、従来の手形や振込に代わる新たな決済手段です。

でんさいの導入には金融機関での審査と契約手続きが必要となり、企業の財務状況や取引実績が厳格に評価されます。2024年時点でのでんさい利用企業数は約46万社程度に留まっており、この導入要件がリバースファクタリング普及の主要な制約要因となっています。

1-3. 通常のファクタリングとの根本的相違点

リバースファクタリングと通常のファクタリングでは、利用者、対象債権、契約の性質が大きく異なります。通常のファクタリングは債権譲渡取引として民法第466条に基づく債権譲渡契約を締結しますが、リバースファクタリングは立替払契約を締結します。

この違いにより、審査対象も変わります。通常のファクタリングでは売掛先企業の信用力が重視されますが、リバースファクタリングでは発注企業の財務状況と支払能力が審査の中心となります。

2. 発注企業側のメリット

2-1. 資金繰り改善による経営安定化

リバースファクタリングの最大のメリットは、買掛金の支払期日を先延ばしできることです。例えば本来60日後に支払うべき買掛金を、外注先企業には即日支払い、発注企業の実際の支払いを120日後に設定することが可能です。

この支払期日の調整により、発注企業は手元資金を確保でき、急な資金需要や他の支払い義務に対応する余裕を生み出すことができます。特に建設業や製造業など、外注費の比重が高い業種では、資金繰りの安定化に大きな効果を発揮します。

2-2. 下請法対応の円滑化

下請法では親事業者が下請事業者に対して60日以内に代金を支払うことが義務づけられています。しかし親事業者の資金繰りの都合上、この期限を守ることが困難な場合があります。

リバースファクタリングを活用することで、下請事業者には法定期限内に支払いを実行し、親事業者の実際の支払いを延期することが可能となります。これにより下請法を遵守しながら資金繰りの改善を図ることができ、法的リスクを回避できます。

2-3. 支払業務の効率化とコスト削減

多数の外注先を抱える企業では、支払業務の煩雑さが課題となります。リバースファクタリングを活用することで、複数の外注先への支払いをファクタリング会社への一括支払いに集約することができます。

これにより振込手数料の削減、事務処理の効率化、支払スケジュールの一元管理が可能となります。特に中小企業では経理部門の負担軽減効果が大きく、本業に集中できる環境を整備することができます。

2-4. 取引関係の維持強化

外注先企業との良好な取引関係を維持するために、支払いの遅延は避けたい要因の一つです。リバースファクタリングを利用することで、外注先企業には確実に期日内の支払いを実行できます。

支払いの確実性が高まることで、外注先企業との信頼関係が強化され、継続的な取引や優遇条件での受注につながる可能性があります。

3. 発注企業側のデメリット

3-1. でんさい導入の負担と制約

リバースファクタリングの利用には電子記録債権(でんさい)の導入が必須となります。でんさいの導入には金融機関での審査、契約手続き、システム操作の習得、社内運用体制の構築などが必要となり、小規模企業では負担が重くなる場合があります。

また、でんさいの利用には各種手数料が発生し、従来の支払方法との併用期間中は事務処理が複雑化します。でんさいの普及率が低いため、全ての取引先が対応しているわけではないことも制約要因となります。

3-2. 外注先企業の同意取得の必要性

リバースファクタリングは3社間契約であるため、外注先企業の同意が不可欠です。発注企業は外注先企業にリバースファクタリングの利用について説明し、手数料負担の条件も含めて合意を得る必要があります。

しかし、外注先企業にとって手数料負担というデメリットがあるため、同意を得ることが困難な場合があります。多くの場合、発注企業が手数料相当分を請求金額に上乗せすることで外注先企業の負担を軽減する必要があります。

3-3. 審査対象となることのリスク

リバースファクタリングでは発注企業が審査対象となります。ファクタリング会社は発注企業の財務諸表、事業内容、取引実績、経営者の信用情報などを総合的に評価し、安定したキャッシュフローと健全な財務状況が求められます。

通常のファクタリングでは売掛先企業の信用力に依存するため、申込企業の財務状況が悪くても利用できる場合がありますが、リバースファクタリングでは申込企業自体の信用力が重要となるため、審査に通らない可能性があります。

3-4. 取扱い会社の限定性

リバースファクタリングを取り扱うファクタリング会社は限られており、選択肢が少ないのが現状です。これは高額な買掛金を立て替える必要があるため、相当の資金力を持つ会社でなければサービス提供が困難であることが理由です。

現在リバースファクタリングを提供している主要な会社は、ビートレーディング、みずほファクター、一部の地方銀行系ファクタリング会社などに限定されています。このため、サービス内容や条件の比較検討が困難な場合があります。

4. 外注先企業側のメリット

4-1. 売掛金の早期回収による資金繰り改善

外注先企業にとってリバースファクタリングの最大のメリットは、売掛金を早期に回収できることです。契約内容によっては、請求書を発行してすぐに売掛金を現金化することも可能です。

この早期回収により、外注先企業は自社の支払い義務や運転資金に充当でき、資金繰りが大幅に改善されます。特に資金回転の早い業種や、設備投資を控えている企業にとって、この効果は非常に大きなものとなります。

4-2. 貸倒れリスクの完全回避

通常の売掛金では、発注企業の経営状況悪化により代金回収ができなくなるリスクがあります。しかし、リバースファクタリングを利用することで、ファクタリング会社が代金を支払うため、貸倒れリスクを完全に回避できます。

この保証機能により、外注先企業は安心して業務に集中でき、与信管理の負担も軽減されます。特に新規取引先や信用状況に不安がある発注企業との取引において、この効果は顕著に現れます。

4-3. 支払いの確実性による経営計画の安定化

リバースファクタリングでは、ファクタリング会社が確実に支払いを実行するため、外注先企業は支払い遅延の心配をする必要がありません。これにより、売掛金回収時期を正確に予測でき、経営計画や資金計画の精度が向上します。

確実な資金回収により、外注先企業は次の受注や設備投資の計画を立てやすくなり、事業拡大の機会を逃すリスクが軽減されます。

5. 外注先企業側のデメリット

5-1. 手数料負担による実質収入の減少

リバースファクタリングでは、外注先企業が手数料を負担する仕組みとなっています。手数料は買掛金の5%から10%程度が相場で、支払期日までの期間や発注企業の信用状況によって決定されます。

例えば100万円の売掛金がある場合、手数料が8%であれば8万円が差し引かれ、実際の受取金額は92万円となります。この手数料負担により、外注先企業の実質的な収入が減少することは避けられません。

5-2. でんさい導入の負担と学習コスト

外注先企業もリバースファクタリングの利用にはでんさいの導入が必要となります。既に導入している企業であれば問題ありませんが、導入には審査に通過しなければならず、利用方法なども学ぶ必要があります。

特に小規模な外注先企業では、でんさいの導入や操作習得に時間とコストがかかり、一時的に事務負担が増加する可能性があります。

5-3. 価格交渉への影響

リバースファクタリングの手数料を外注先企業が負担することで、発注企業に対して手数料相当分の価格上乗せを要求する場合があります。しかし、この価格交渉が受け入れられない場合、外注先企業は手数料分の負担を強いられることになります。

また、継続的にリバースファクタリングを利用する場合、その都度手数料負担が発生するため、長期的な収益性への影響を慎重に検討する必要があります。

5-4. 契約条件への制約

リバースファクタリングの利用は発注企業が主導するため、外注先企業は契約条件に対して限られた交渉力しか持ちません。手数料率や支払時期などの条件は、主に発注企業とファクタリング会社の間で決定される傾向があります。

この構造により、外注先企業にとって不利な条件での契約を余儀なくされる可能性があり、慎重な契約内容の確認が必要となります。

6. リバースファクタリングの活用シーンと適用例

6-1. 建設業における効果的活用

建設業では工事代金の回収サイトが長い一方で、下請業者への支払サイトが短いという特徴があります。リバースファクタリングを活用することで、下請業者には60日以内に支払いを実行し、元請企業の実際の支払いを120日後に設定することが可能です。

これにより、元請企業は工事代金の回収と下請業者への支払いのタイミングを調整でき、資金繰りの安定化を図ることができます。特に大型工事案件では、この効果は非常に大きなものとなります。

6-2. 製造業での部品調達最適化

製造業では部品調達コストの比重が高く、仕入先への支払時期の調整が重要な経営課題となります。リバースファクタリングにより仕入代金の支払期日を延長し、製品販売代金の回収との時期を調整することで、キャッシュフローの安定化を図ることができます。

特に季節変動の大きい製品を扱う企業では、繁忙期と閑散期の資金需要の差を平準化する効果が期待できます。

6-3. IT業界での外注費管理

IT業界では外注費の比重が高く、複数のパートナー企業との取引が発生します。リバースファクタリングを活用することで、外注先への支払いを一本化し、支払時期を調整することで、プロジェクトの資金管理を効率化できます。

また、長期プロジェクトでは途中での資金調達が困難な場合がありますが、リバースファクタリングにより支払期日を調整することで、プロジェクト完了時の収入と支出のタイミングを合わせることができます。

7. 他の資金調達手段との比較検討

7-1. 銀行融資との使い分け

銀行融資は資金を調達して手元資金を増やす手段である一方、リバースファクタリングは支払いを延期して資金の流出を遅らせる手段です。融資では利息が発生し、担保や保証人が必要な場合がありますが、リバースファクタリングでは手数料のみで担保は不要です。

審査期間も異なり、銀行融資では1ヶ月以上を要することが多いのに対し、リバースファクタリングでは1〜2週間程度で利用開始できます。ただし、リバースファクタリングでは外注先企業の同意が必要という制約があります。

7-2. 通常のファクタリングとの併用効果

通常のファクタリングは売掛金を早期現金化することで手元資金を増やす手段であり、リバースファクタリングは買掛金の支払いを延期する手段です。企業の資金繰り状況に応じて適切に使い分けることが重要です。

売掛金と買掛金の両方を保有する企業では、両方のサービスを併用することで最適な資金繰りを実現できます。例えば売掛金をファクタリングで早期回収し、買掛金をリバースファクタリングで支払延期することで、キャッシュフローの改善効果を最大化できます。

7-3. 手形決済との差別化要因

従来の手形決済では振出人が受取人に手形を交付し、満期日に決済が行われます。リバースファクタリングでは電子記録債権を利用するため、物理的な手形の管理が不要で、印紙税もかかりません。

手形では分割譲渡ができませんが、でんさいでは必要な金額のみを分割して譲渡することが可能です。また手形では満期日当日の取立手続きが必要ですが、でんさいでは自動的に決済が実行されるため事務負担が軽減されます。

8. 利用時の重要な注意点とリスク管理

8-1. 法的・税務的な取扱いの理解

リバースファクタリングは立替払契約であるため、会計処理や税務申告において適切な処理が必要です。発注企業では買掛金の消去と借入金の計上、手数料の損金算入などの処理が必要となります。

消費税法に基づく取扱いについても注意が必要で、ファクタリング会社への手数料支払いは原則として課税取引となります。これらの法的・税務的な取扱いについては、事前に税理士や会計士に相談することが推奨されます。

8-2. 契約条件の詳細確認

リバースファクタリングの契約では、手数料率、支払期日、対象債権の範囲、解約条件などを詳細に確認する必要があります。特に手数料については、固定率なのか変動率なのか、追加費用の有無なども含めて総合的に判断することが重要です。

また、契約期間中の条件変更の可否や、早期解約時のペナルティについても事前に確認しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

8-3. 継続利用時の収益性評価

リバースファクタリングを継続的に利用する場合、手数料負担が累積的に発生するため、中長期的な収益性への影響を定期的に評価することが必要です。一時的な資金繰り改善効果と、継続的な手数料負担を比較検討し、適切な利用頻度を決定することが重要です。

特に手数料率が高い場合や、利用頻度が多い場合は、他の資金調達手段との比較検討を行い、最適な資金繰り戦略を構築することが求められます。

9. よくある質問と実務対応

9-1. でんさい導入の具体的手順と期間

でんさいの導入は窓口金融機関での申込みから始まります。まずでんさいネットの参加金融機関一覧から窓口金融機関を選択し、必要書類を提出して利用申込を行います。審査では企業の財務状況、事業内容、取引実績などが評価されます。

審査に通過すると利用契約を締結し、利用者番号が発行されます。その後、でんさいネットの操作方法に関する研修を受講し、社内の運用体制を整備してサービス利用を開始します。導入期間は申込みから利用開始まで通常2週間から1ヶ月程度を要します。

9-2. 手数料水準の適正性判断基準

リバースファクタリングの手数料は買掛金の5%から10%程度が相場で、買掛金の金額、支払期日までの期間、発注企業の信用状況によって決定されます。一般的に支払期日が長いほど手数料率は高くなり、発注企業の信用力が高いほど手数料率は低くなります。

手数料の適正性を判断する際は、他の資金調達手段との比較、資金繰り改善効果の定量化、継続利用時の累積コストなどを総合的に評価することが重要です。

9-3. 外注先企業との合意形成のポイント

外注先企業の合意を得るためには、リバースファクタリングのメリット・デメリットを明確に説明し、手数料負担に対する配慮を示すことが重要です。多くの場合、発注企業が手数料相当分を請求金額に上乗せすることで外注先企業の負担を軽減します。

また、外注先企業にとっての早期売掛金回収のメリットや、貸倒れリスク回避の効果を具体的に説明し、Win-Winの関係であることを理解してもらうことが合意形成の鍵となります。

10. まとめ

リバースファクタリングは発注企業の買掛金をファクタリング会社が立て替えることで、支払期日を調整できる金融サービスです。通常のファクタリングとは利用者、目的、仕組みが異なり、発注企業の資金繰り改善と外注先企業の早期売掛金回収を同時に実現できる特徴があります。

発注企業にとっては資金繰り改善、下請法対応、支払業務効率化などのメリットがある一方、でんさい導入の負担、外注先企業の同意取得、審査対象となるリスクなどのデメリットも存在します。

外注先企業にとっては早期売掛金回収、貸倒れリスク回避のメリットがある反面、手数料負担、でんさい導入負担などのデメリットがあります。

利用には発注企業と外注先企業の双方のでんさい導入が必要で、3社間契約による合意形成が不可欠です。建設業、製造業、IT業など外注費の比重が高い業種では特に効果的で、下請法対応や支払業務の効率化にも活用できます。

ただし取扱い会社が限定的で、でんさい導入の負担もあるため、自社の状況を十分に検討した上で利用を判断することが求められます。

他の資金調達手段との比較検討を行い、最適な資金繰り戦略の一部として活用することが重要です。

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