この記事の要点
- ファクタリングとリースの基本的な仕組みと適用場面の違いを理解することで、企業の資金調達戦略の選択肢が大幅に広がり効果的な資金繰り改善が実現できます。
- 設備投資における両手法の使い分け基準を把握することで、初期投資の抑制と資金調達スピードのバランスを取りながら最適な投資判断が可能となります。
- 法的根拠と業界規制の現状を理解することで、安全で適正な取引を実現し、企業の財務体質強化と持続的成長の基盤を構築することができます。

1. ファクタリングとリースの基本的な仕組みと目的の違い
経営者が設備投資や資金調達を検討する際、ファクタリングとリースという2つの選択肢があります。どちらも企業の資金繰り改善に有効な手段ですが、その仕組みや適用場面は大きく異なります。本記事では、ファクタリングとリースの基本的な違いから実務的な使い分けの判断基準まで、設備投資における資金調達の観点から詳しく解説します。
ファクタリングは売掛債権を早期に現金化する資金調達手法であり、調達した資金の使途に制限がありません。一方、リースは設備そのものを借りる仕組みであり、初期投資を抑えながら設備を導入できます。両者を適切に理解し使い分けることで、企業の資金繰りの安定性を大幅に向上させることが可能です。
1-1. ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することで、支払期日前に現金を調達する金融サービスです。民法第466条に基づく債権譲渡の法的根拠により、売掛債権の所有権が利用企業からファクタリング会社に移転します。
具体的な流れとして、利用企業がファクタリング会社に売掛債権を売却すると、手数料を差し引いた金額が即座に入金されます。その後、売掛先企業からの入金はファクタリング会社が回収するか、利用企業が代理回収してファクタリング会社に送金します。この仕組みにより、通常30日から120日程度かかる売掛金の回収期間を大幅に短縮できます。
ファクタリングには2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの2つの契約形態があります。2者間ファクタリングは利用企業とファクタリング会社の間で完結し、売掛先に知られることなく資金調達が可能です。3者間ファクタリングは売掛先企業も契約に関与するため、より安全性が高く手数料も低く設定されています。
1-2. リースの基本的な仕組み
リースは、リース会社が利用企業の代わりに設備を購入し、利用企業がリース会社に対して月々のリース料を支払うことで設備を使用する仕組みです。設備の所有権はリース期間中はリース会社に帰属し、利用企業は使用権のみを取得します。
リース取引にはファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類があります。ファイナンスリースは、リース期間中の中途解約が原則として認められず、リース料総額で設備の取得価額とリース会社の諸経費をほぼ全額回収するフルペイアウト契約です。一方、オペレーティングリースは中途解約が可能で、リース期間終了後の設備の残存価値を考慮してリース料が設定されます。
リース期間は法定耐用年数を基準として決定され、耐用年数が10年未満の設備については法定耐用年数の70%以上でリース期間を設定する必要があります。例えば、法定耐用年数4年のパソコンの場合、最短リース期間は2年8ヶ月となり、端数切り捨てにより2年以上のリース期間設定が可能です。
1-3. 資金調達における目的の違い
ファクタリングとリースでは、資金調達における根本的な目的が異なります。ファクタリングの主たる目的は資金調達であり、売掛債権を早期に現金化することでキャッシュインフローを増加させます。調達した資金は運転資金、設備投資、債務の支払い等、用途に制限がなく自由に活用できます。
リースの主たる目的は設備導入であり、購入による現金の一括流出を防ぐことです。リースを利用することで、高額な設備を導入する際の初期投資を抑制し、月々の固定費として平準化できます。これにより、キャッシュアウトフローの急激な増加を回避し、資金繰りの安定性を維持できます。
経済産業省が推進する「売掛債権の活用促進」において、ファクタリングは中小企業の資金調達手段の多様化に重要な役割を果たすとされています。一方、リースは設備投資における資金効率の向上と、企業の財務体質改善に寄与する手段として位置づけられています。両者を組み合わせることで、「銀行融資+ファクタリング+リース」による資金調達の多角化が実現し、経営の安定性向上が期待できます。
2. 設備投資における資金調達方法としての比較
2-1. ファクタリングによる設備投資資金調達
ファクタリングを活用した設備投資では、売掛債権の早期現金化により調達した資金で設備を購入します。この場合、設備の所有権は購入と同時に利用企業に移転し、減価償却や固定資産税の対象となります。ファクタリングの最大の利点は資金調達のスピードにあり、最短即日での資金化が可能なため、設備導入の機会を逃すリスクを最小限に抑えられます。
2者間ファクタリングの手数料相場は年率換算で8%から18%程度、3者間ファクタリングは2%から9%程度となっています。例えば、1,000万円の設備投資を行う場合、同額の売掛債権を2者間ファクタリングで資金化すると、手数料は80万円から180万円程度となります。設備投資の投資対効果が手数料を上回る場合、ファクタリングは有効な選択肢となります。
ファクタリングによる設備投資では、審査対象が売掛先企業の信用力となるため、利用企業の財務状況に問題があっても資金調達が可能です。特に、業績は好調だが資金繰りに課題を抱える成長企業にとって、ファクタリングは設備投資の有力な資金調達手段となります。ただし、継続的な設備投資には売掛債権の継続的な発生が前提となるため、事業の安定性が重要な要素となります。
2-2. リースによる設備導入と費用効果
リースによる設備導入では、購入に比べて初期投資を大幅に削減できます。例えば、1,000万円の設備をリースで導入する場合、頭金は不要で月々のリース料のみの負担となります。リース料は設備価格、金利、固定資産税、保険料、リース会社の管理費と利益を合計し、リース期間の月数で割って算出されます。
リース料の実質年率は設備の種類やリース期間により異なりますが、一般的に1.5%から4%程度とファクタリング手数料より低く設定されています。ただし、リース期間全体の総支払額は購入価格を上回ることが多く、長期的なコスト負担は増加する傾向にあります。それでも、資金繰りの観点では月々の支払いを平準化できるメリットは大きく、特に資金に制約のある中小企業にとって有効な選択肢となります。
税務上の観点では、リース料は全額損金算入が可能であり、法定耐用年数より短期間での費用化により節税効果が期待できます。また、会計上は中小企業の場合、所有権移転外ファイナンスリースであっても賃貸借処理が認められており、固定資産として計上する必要がありません。これにより、自己資本比率や総資本回転率等の財務指標への影響を回避できます。
2-3. 設備投資での使い分けの判断基準
ファクタリングとリースの使い分けは、企業の財務状況、設備投資の性質、資金調達の緊急度等を総合的に判断して決定する必要があります。ファクタリングが適している場面として、即座に資金が必要な場合、設備の所有権を確保したい場合、将来的な設備の売却や担保設定を検討している場合等が挙げられます。
リースが適している場面として、初期投資を抑制したい場合、最新設備への定期的な更新を予定している場合、固定資産の計上を避けたい場合、メンテナンス込みのサービスを希望する場合等があります。特に、技術革新の激しいIT関連設備や医療機器等については、リースによる定期的な更新が効率的とされています。
資金調達の緊急度も重要な判断要素となります。ファクタリングは最短即日での資金調達が可能ですが、リース契約には審査期間が必要で、通常1週間から2週間程度を要します。設備導入の機会損失を回避するためには、資金調達のタイミングを十分に検討する必要があります。また、売掛債権の有無もファクタリング利用の前提条件となるため、事業の性質によってはリースが唯一の選択肢となる場合もあります。
3. 所有権・契約期間・審査基準の違い
3-1. 資産の所有権に関する違い
ファクタリングで調達した資金により購入した設備の所有権は、購入と同時に利用企業に完全に移転します。これにより、企業は設備を自由に使用、改造、売却することができ、担保として活用することも可能です。所有権の取得により、設備は企業の固定資産として貸借対照表に計上され、法定耐用年数に基づく減価償却の対象となります。
一方、リース契約における設備の所有権は、リース期間中はリース会社に帰属します。利用企業は使用権のみを取得し、設備の改造や第三者への貸与等には制限があります。所有権移転外ファイナンスリースの場合、リース期間終了時には設備をリース会社に返却するか、再リース契約を締結するか、残存価額での買取を選択することになります。
所有権の違いは、設備投資の戦略的意義にも影響を与えます。設備を企業の競争力の源泉として長期間活用し、将来的な技術蓄積を図る場合には、所有権の取得が重要となります。特に、製造業における生産設備や独自技術を要する専用設備については、所有権の確保により企業のノウハウ蓄積と技術優位性の構築が可能となります。
3-2. 契約期間と資金化スピードの違い
ファクタリングの契約期間は売掛債権の支払期日までの期間に限定され、通常30日から120日程度となります。2者間ファクタリングの場合、最短即日での資金化が可能であり、緊急性の高い資金需要に対応できます。3者間ファクタリングでは売掛先の承諾手続きが必要となるため、資金化まで1週間程度を要することが一般的です。
リース契約の期間は設備の法定耐用年数を基準として設定され、通常2年から7年程度の中長期契約となります。契約期間中は原則として中途解約が認められず、解約する場合には残リース料の一括支払いが必要となります。これにより、リース会社はリース期間全体での収益確保が可能となり、利用企業には長期間の固定費負担が発生します。
資金調達のスピードにおいて、ファクタリングは圧倒的な優位性を持ちます。売掛債権の存在確認と売掛先の信用調査により、短期間での審査完了が可能です。リース契約では利用企業の財務状況、事業計画、返済能力等の総合的な審査が必要となり、審査期間は通常1週間から2週間程度を要します。設備導入の緊急性が高い場合、ファクタリングによる資金調達が現実的な選択肢となります。
3-3. 審査対象と申込要件の違い
ファクタリングの審査対象は売掛先企業の信用力であり、利用企業の財務状況は副次的な審査要素となります。売掛先が上場企業や公的機関等の信用力の高い企業である場合、利用企業の業績に問題があってもファクタリングの利用が可能です。審査では売掛債権の実在性、売掛先の支払能力、過去の取引実績等が重点的に確認されます。
リース契約の審査対象は利用企業の信用力であり、財務状況、業績動向、返済能力等が総合的に評価されます。特に、月々のリース料を継続的に支払う能力があるかが重要な審査ポイントとなります。審査では決算書、試算表、事業計画書等の提出が求められ、場合によっては代表者の個人保証や担保の提供が必要となることもあります。
申込要件についても両者で大きく異なります。ファクタリングの場合、売掛債権の存在が前提条件となるため、BtoB事業を営む企業でなければ利用できません。また、売掛債権の金額や支払期日、売掛先の信用力により利用可能な金額が決定されます。リース契約では売掛債権の有無は関係なく、設備投資の必要性と返済能力があれば利用可能です。ただし、信用情報に問題がある場合や債務超過の状態では、リース契約の締結が困難となる場合があります。
4. 手数料・コスト構造と資金繰りへの影響
4-1. ファクタリング手数料の相場と計算方法
ファクタリング手数料は契約形態により大きく異なり、2者間ファクタリングでは債権額に対して8%から18%程度、3者間ファクタリングでは2%から9%程度が相場となっています。手数料率は売掛先の信用力、債権額、利用頻度、ファクタリング会社との関係性等により決定されます。
具体的な計算例として、1,000万円の売掛債権を2者間ファクタリングで資金化する場合を想定します。手数料率が10%の場合、手数料は100万円となり、実際の入金額は900万円となります。年率に換算すると、支払期日までの期間により異なりますが、60日後の売掛債権の場合、年率換算で約60%の資金調達コストとなります。
手数料以外にも、債権譲渡登記費用、印紙代、振込手数料等の諸費用が発生する場合があります。債権譲渡登記は第三者対抗要件の具備のために実施されることがあり、登録免許税や司法書士報酬を含めて10万円程度の費用が必要となります。これらの諸費用も含めた総コストで資金調達の妥当性を判断する必要があります。
4-2. リース料の構成と総支払額
リース料は設備価格、金利、固定資産税、保険料、リース会社の管理費と利益を合計し、リース期間の月数で割って算出されます。実質年率は設備の種類やリース期間により異なりますが、一般的に1.5%から4%程度とファクタリング手数料より大幅に低く設定されています。
例えば、1,000万円のコピー機を5年リースで導入する場合を想定します。実質年率を3%、固定資産税年額5万円、保険料年額3万円として計算すると、月額リース料は約19万円となり、5年間の総支払額は約1,140万円となります。購入価格に対して140万円の追加負担となりますが、この差額で初期投資の回避、メンテナンスサービス、陳腐化リスクの軽減等のメリットを享受できます。
リース期間終了時の選択肢により、総コストは変動します。再リース契約を締結する場合、通常は設備価格の1%から10%程度の年額で継続利用が可能です。買取を選択する場合、残存価額は設備価格の1%から10%程度に設定されることが一般的です。これらの選択肢を含めた長期的なコスト分析により、リースの経済性を判断する必要があります。
4-3. キャッシュフローと資金繰りへの影響比較
ファクタリングはキャッシュインフローを即座に増加させる効果があり、資金繰りの急激な改善をもたらします。売掛債権の早期現金化により、支払期日前に資金を確保できるため、急な支払い需要や投資機会に対応可能となります。ただし、手数料の負担により実際の回収額は減少するため、継続利用では資金効率の悪化に注意が必要です。
リースはキャッシュアウトフローの平準化により、資金繰りの安定化を図る効果があります。高額設備の購入による一括支払いを回避し、月々の固定費として処理することで、資金計画の予測可能性が向上します。特に、季節変動のある事業や不規則な売上パターンを持つ企業にとって、固定費の平準化は経営安定化に重要な役割を果たします。
両者の組み合わせ活用により、資金繰りの更なる安定化が可能となります。例えば、売掛債権をファクタリングで早期現金化して運転資金を確保し、同時に設備投資はリースで実施することで、初期投資を抑制しながら事業拡大を図ることができます。このような複合的な資金調達戦略により、企業の成長と財務安定性の両立が実現可能となります。
5. 法的根拠と業界規制の違い
5-1. ファクタリングの法的根拠(民法債権譲渡関連条項)
ファクタリングの法的根拠は民法第466条から第473条の債権譲渡に関する規定に基づきます。民法第466条第1項では「債権は、譲り渡すことができる」と規定されており、売掛債権の譲渡可能性が法的に保障されています。2020年の民法改正により、債権譲渡禁止特約がある場合でも債権譲渡自体は有効とされ、ファクタリングの法的安定性が向上しました。
債権譲渡の対抗要件については民法第467条に規定されており、譲渡人が債務者に通知するか債務者が承諾することで債務者に対抗でき、確定日付のある証書による通知または承諾により第三者に対抗できるとされています。3者間ファクタリングでは売掛先への通知により対抗要件が具備され、2者間ファクタリングでは債権譲渡登記により第三者対抗要件を具備することが一般的です。
ファクタリング業界には貸金業法のような業法規制が存在せず、事業者の登録や免許は不要とされています。このため、日本ファクタリング業協会が2012年に設立され、業界の自主規制機関として適正取引の推進に取り組んでいます。同協会では、償還請求権の禁止、適正な手数料設定、契約書面の交付義務等を定めたガイドラインを策定し、健全な業界発展を目指しています。
5-2. リースの会計・税務上の取扱い
リース取引の会計処理については、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」により詳細に規定されています。金融商品取引法の適用を受ける上場会社等では、リース会計基準の適用が義務付けられており、所有権移転外ファイナンスリース取引についても売買処理による固定資産計上が必要となります。
中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」の適用により、所有権移転外ファイナンスリース取引について賃貸借処理が認められています。これにより、リース料を費用として処理し、固定資産として計上する必要がありません。賃貸借処理の適用により、企業の財務指標への影響を最小限に抑えることが可能となります。
税務上のリース取引の取扱いについては、国税庁の通達により詳細な要件が定められています。ファイナンスリース取引でも、リース期間が法定耐用年数の70%以上で、リース料総額が取得価額の90%以上の場合には、賃貸借として税務処理することが認められています。この要件を満たすことで、リース料の全額損金算入と早期の費用化による節税効果が得られます。
5-3. 業界団体による自主規制の現状
ファクタリング業界では、日本ファクタリング業協会とオンライン型ファクタリング協会の2つの主要な業界団体が自主規制に取り組んでいます。日本ファクタリング業協会は2012年の設立以来、業界の健全化を目的として活動を続けており、ファクタリングビジネスマネージャー(FBM)資格制度の運営や相談窓口の設置等を行っています。
オンライン型ファクタリング協会は2022年に設立された新しい業界団体で、大手ファクタリング会社や銀行等が加盟し、デジタル化の進展に対応した自主規制ルールの策定に取り組んでいます。両協会ともに、償還請求権の禁止、適正な手数料設定、契約書面の交付義務、関係法令の遵守等を定めたガイドラインを策定し、加盟企業に遵守を求めています。
リース業界では、公益社団法人リース事業協会が業界の代表的な団体として機能しています。同協会は1972年の設立以来、リース取引の健全な発展と社会的信頼の向上を目的として活動を続けており、会計基準や税務取扱いに関する提言、業界統計の作成、研修事業の実施等を行っています。リース業界は法的規制が整備されているため、主に業界の発展と社会貢献に重点を置いた活動が中心となっています。
6. よくある質問
6-1. ファクタリングとリースはどちらが資金調達コストが安いですか?
A1: 一般的にリースの方が資金調達コストは低くなります。リースの実質年率は1.5%から4%程度ですが、ファクタリングは2者間で8%から18%、3者間で2%から9%程度となります。ただし、両者は資金調達の目的が異なるため、単純な比較は困難です。即座に現金が必要な場合はファクタリング、設備導入が目的でコストを重視する場合はリースが適しています。
6-2. 個人事業主でもファクタリングやリースは利用できますか?
A2: 両方とも個人事業主の利用が可能です。ファクタリングは売掛債権があれば法人・個人を問わず利用できますが、BtoB取引の売掛債権が対象となります。リースも個人事業主の利用が可能で、事業用設備であれば対象となります。ただし、どちらも審査があり、事業の安定性や信用力により利用条件が決定されます。
6-3. ファクタリングで調達した資金でリース契約することは可能ですか?
A3: 可能です。ファクタリングで調達した資金には使途制限がないため、リース契約の保証金や初期費用の支払いに充当することができます。この組み合わせにより、手持ち資金を消費することなく設備導入が可能となり、資金繰りの更なる安定化が図れます。
6-4. 設備投資でファクタリングとリースのどちらを選ぶべき判断基準は?
A4: 主な判断基準として、資金調達の緊急度、設備の所有権の必要性、初期コストの許容度、財務指標への影響等が挙げられます。即座に資金が必要で設備を所有したい場合はファクタリング、初期投資を抑えて財務指標を改善したい場合はリースが適しています。また、売掛債権の有無もファクタリング利用の前提条件となります。
6-5. 両方を同時に利用する場合の注意点はありますか?
A5: 同時利用する場合、月々の支払い負担と総資金調達コストを慎重に検討する必要があります。ファクタリングは一時的な資金調達効果がありますが継続利用では手数料負担が重く、リースは長期的な固定費負担となります。資金繰り計画を十分に策定し、返済能力の範囲内での利用を心がけることが重要です。
6-6. ファクタリングやリースの審査に落ちた場合の代替手段は?
A6: ファクタリングの審査に落ちた場合、売掛先の信用力向上や債権額の調整、他のファクタリング会社への申込み等が考えられます。リースの審査に落ちた場合、保証人の追加、頭金の支払い、リース期間の短縮等により再審査を受けることが可能です。また、銀行融資、助成金・補助金の活用、出資による資金調達等の代替手段も検討できます。
7. まとめ
ファクタリングとリースは、企業の資金調達における重要な選択肢として、それぞれ異なる特徴と適用場面を持っています。ファクタリングは売掛債権の早期現金化による迅速な資金調達を実現し、調達した資金の使途に制限がないため、緊急の資金需要や多様な投資機会に対応できます。一方、リースは設備の初期投資を抑制し、月々の固定費として平準化することで、資金繰りの安定化と財務指標の改善を図ることができます。
設備投資の観点から両者を比較すると、資金調達の緊急度、設備の所有権の必要性、コスト構造、審査基準等において明確な違いがあることが分かります。ファクタリングは最短即日での資金調達が可能で設備の完全な所有権を取得できますが、手数料負担が重く継続利用には注意が必要です。リースは初期投資を抑制でき長期的なコスト予測が可能ですが、所有権はリース会社に帰属し中途解約に制限があります。
法的な観点では、ファクタリングは民法の債権譲渡規定に基づく法的根拠を有し、業界団体による自主規制が進んでいます。リースは会計基準や税務通達により詳細な取扱いが規定されており、より制度的な枠組みが整備されています。両者ともに適正な業者選択と契約内容の十分な理解が、安全で効果的な利用の前提となります。
企業の成長段階や事業特性に応じて、ファクタリングとリースを単独または組み合わせて活用することで、資金調達の多様化と経営の安定化を実現できます。重要なことは、短期的な資金需要には迅速性を重視してファクタリングを、長期的な設備投資には安定性を重視してリースを選択し、全体最適の観点から資金調達戦略を構築することです。

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